2014年4月21日月曜日

中国当局による商船三井所有船舶の差押さえについて

 ここ数ヶ月はとんと中国関連の記事を書いておりませんでしたが、今日は久々に大きな話題ということもあって頑張って調べて書くことにします。ま、どうせ来月になればまた量産体制に入るのでしょうけど。

商船三井の船舶差し押さえ=戦時中の賃借訴訟敗訴で-対日圧力の一環か・中国(時事通信)

 すでに各所でも報道されているので知っている方も多いでしょうが、中国の海運関連の裁判所に当たる上海海事法院は19日、日本の海運会社大手の商船三井が所有する大型船舶「BAOSTEEL EMOTION」を戦前の傭船契約違反に対し賠償支払いを命じる判決不履行を理由に、差し押さえたことを発表しました。中国政府は今回の判決についてあくまで民事上の訴訟の結果に伴うもので、日中間における戦前の賠償問題について取り決められた日中共同宣言とは関係なく、同条約の内容は今後も堅持する方針だと主張。ただ戦前の問題に対する賠償を現代に遡求して求めるという非常識としか言いようのない内容であることから、私個人としては今回のこの中国当局の行動は日中双方にとって悪影響しか与えないものだと考えます。

 まず問題の背景を一から簡単に説明しますが、事の起こりは1988年に中国の海運会社二社の関係者が商船三井を契約違反で訴えたことに始まります。中国側の原告の主張によると、二社は戦前に商船三井の前身となった会社(中国の記事によると「日本大同海運株式会社」)に対して傭船契約を結んで船を貸し出したものの、傭船費の支払いを受けられなかったどころか貸した船をおしゃかにされ、現在までの補償費用を請求する訴訟を起こしたというわけです。
 こうした背景から始まった裁判は長期間続いたものの2010年に中国の最高裁判所に当たる所で商船三井の敗訴が決まり、同社に対して約29億円の賠償費用を原告へ支払うよう求められました。この判決に対して商船三井側は原告への支払いを拒否した上で反論を行い、原告側と新たな和解案を作ろうと交渉を続けていましたが、支払い命令の不履行が続いていたことを理由に中国当局が商船三井の船舶を差し押さえたというわけです。

 中国当局側は改めて商船三井に対して賠償金を支払うよう求め、もし今後も支払わないというのであれば差し押さえた船を売却することを示唆しています。日本政府は菅官房長官が今回の中国側の行動に対して批判した上で、戦前の賠償問題については日中共同宣言で解決済みという立場を取っております。

 そんなわけで日本と中国で見事に議論は平行線が続いているわけなのですが、では中国側の報道はどんな具合なのか久々に特技を使って調べてみました。まずどっか論説でも書いてないかなと思って探したら中国で最も国粋主義的な新聞の環球時報が「扣押日本货轮,中国法律彰显正义
」という論説書いてて、じっくり読んだ後にほかの関連記事捜したら和訳記事が中国網日本語版にのってやがりました。

日本輸送船を差し押さえ、中国の法が正義を示す(中国網日本語版)

 内容は読んでもらえばわかりますが端的に言って「やってぜベイビー」って死語を使いたくなるくらい今回の判決を歓迎していて、日本国内で同様の訴訟を行っても賠償を勝ち取るどころか勝訴することも難しいが中国国内なら今回の判決をきっかけに勝訴する可能性が生まれたとした上で、

「日本の航空機や客船・輸送船などの交通ツールも中日の間を頻繁に行き来している。これは中国の司法機関による強制執行に、現実的かつ便利な条件を提供した。」

 という文言が入っております。こういってはなんですがこの主張はちょっと危険なもので、解釈によっては日本の企業が保有する船舶や航空機を今後も差し押さえるぞと言っていると受け取れます。

 もっとも環球時報は最も過激な論説を書くので他ではどうか、もとい和訳のある記事を引用してるだけだとまるで自分が中国語が読めない人間に見えるので他にも探してみたところ、「中国扣押日本28万吨轮船 因三井株式会赔偿问题(新華日報)」の記事が見つかりました。書かれている内容としてはやはり今回の中国当局の判決と差し押さえを支持した上で、強制労働、慰安婦、毒物化学兵器を始めとした日本の戦前に対する補償問題の数々は、中国国内で訴えることで解決の道筋が出来たなどと、まぁ簡単に言ってくれるなということが書かれてます。

 私の主張をこっから書いていくと、今回の判決は日本のみならず中国にとっても悪い結果しか生まないと断言できます。訴訟を起こしている当事者にとってはカチンとくるでしょうがいくら何でも戦前の補償を現代に求めるというのはナンセンス以外なんでもなく、むしろ国交回復以降に日本が行ってきたODAを中国人はもう少し評価してくれと言いたいです。その上で今回の判決によって確実に日本企業は中国への警戒心を深め、対中投資も控える動きがまず現れるでしょう。それは日中双方にとって儲かる話が儲からなくなるだけでいいことなんて何もありません。
 そして今回の差し押さえによって、確実に中国国内で同様の訴訟は増えるでしょう。そうすれば今後も日系企業の工場といった資産の差し押さえを片っ端からやってくのか、仮に中国当局がその通りに実行したら日本のみならず他国の企業も中国政府への不信を持ち、中国への投資を控える恐れがあります。かといって今後訴訟と強制執行を中国当局が控えるのであれば、なんで当局は前は実行したのに今度は実行しないんだ、生ぬるいなどと国内から激しい批判が来るでしょう。一言で言って、パンドラの箱を開けちゃったようなもんです。

 私個人は生まれてきた時代を間違えてしまったとリアルに言われるほど現代の日本社会に適合して生きられないためやや中国贔屓ですが、そんな自分でも今回の中国当局の行動はかえって中国の利益を損ないかねないものとして支持できません。一体何故中国はこんな行動を取ったのか、やはり第一に思い浮かぶのは習近平政権に変わってから露骨に日本批判が増えており、こんな時に前の胡錦濤だったらどう処理してくれたのかとやや懐かしむ気持ちを覚える限りです。

2 件のコメント:

  1. 三井財閥ですよね。ワシと関係がありますわ。

    返信削除
    返信
    1.  実はこの記事書く前に、君んとこの周辺はどんな話しているのか聞こうかとも考えた。こういう時、元財閥ってなんかいいよね。

      削除

コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

注:ブラウザが「Safari」ですとコメントを投稿してもエラーが起こり反映されない例が報告されています。コメントを残される際はなるべく別のブラウザを使うなどご注意ください。