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2024年9月7日土曜日

日本で消えた戦争文学

 2年半前の時点で、今も続くウクライナ戦争が現在も続くとはおそらく誰も予想していなかったです。私自身も寒さ厳しいあの地域で冬季装備の準備もなく始まった戦争だった故に、長くても次の冬季までには停戦にはなると予想していましたが現実にはさにあらず、ロシア領内のクルスク州にも戦線が広がるなどむしろ拡大を続けています。
 もっともその代償は大きく、かねてからこのブログでも書いているようにロシアはこの戦争が終わった瞬間に戦時中以上の経済混乱に見舞われることになると私は予想しています。幸いな点は中国経済がこのところ不調であるという点で、かつての好景気を維持していたらロシアは中国の経済植民地化する可能性もあった気がします。

 ただこのウクライナ戦争ですが、戦況の報道こそ活発なれども戦争そのものをどう見るかという分析や解説はあまり多くない気がします。もちろん戦争が続いている中でこのようなことを論じようものなら批判も来るだろうし、分析も足りず誤った見方を招く恐れもあるため仕方のないことだと思いますが、この点について先ほど考えたところ、近年において日本で戦争そのものをどう考えるのかという議論、特に戦争文学が極端に少なくなっているのではないかということに気が付きました。
 それもそのはずというか、日本が実際に戦争に直接参加したのは約70年前の二次大戦が最後で、それ以降の戦争において日本は傍観者的な立場であり続けました。実際に戦争を体験することはなくベトナム戦争やイラク戦争を眺めるだけで、これでは戦争がいいか悪いか以前に戦争とは何なのかを深く考えることも難しい気がします。

 それこそ昭和の時代であれば、水木しげるをはじめ実際に戦争を体験した人、それも高所からではなく末端の現場兵士だった人たちが数多く、彼らの体験に対する作品を通して間接的ながらも戦争を考える機会は数多くありました。しかし現代日本においてそのような戦争体験者はごく限られ、目下においては米国における従軍経験者らの話を聞く以外にはこの手の情報に触れることはできなくなりつつあります。

高部正樹(Wikipedia)

 唯一の例外として私もエッセイ漫画を読み続けている、この元傭兵だった高部正樹氏の証言があります。現代においては珍しい実戦込みの従軍経験者な方なだけあって興味深い話が多く、敢えて一つ挙げればエッセイ漫画の冒頭にて語った、

「戦争を避けるための話し合いの重要性は否定しないが、今すぐにも殺されそうな環境にある人たちは確実に存在していて、彼らを守るための武力もまた絶対に必要」

 という、虐殺の危機にある立場にある人からの目線には私も考えさせられました。

 私自身も戦争に関して決して偉そうなことを言えるような立場ではありませんが、それでもまだ若い世代に比べれば昭和の戦争文学や水木しげるの戦争体験漫画を見てきただけに、戦争に関して考える機会はまだ多くあったように思えます。そういう意味で私が憂えているのは、今後時代が下るにつれてますますこの手の戦争文学に触れない世代が増えていくということです。何故戦争が起き、何故続けられ、その結果がどうなるのか、また結果にかかわらず参加した人はどうなるのか、戦争の現場では何が起きているのか、こうしたことについて考える機会を日本国内においてももっと作らなきゃいけないと思います。

 中でも一番自分が危機的だと思うのが見出しにも掲げた戦争文学です。文学とはなにかという定義について私は、「文章を通して自分が体験していない状況や経験を間接的に経験する」ことであり、やはり戦争を考える上では文学の価値は非常に高い気がします。それだけに、実際に従軍経験ある人は少ないものの、聞き取りベースでもいいからもっと戦争文学を日本語で出す必要があるのではないかと思います。
 もちろん二次大戦の戦争文学でもいいのですが、基本的に古い作品が多いだけに現代語に合わせてアップデートや再編集が求められてくるでしょう。そうした努力をもっと日本社会全体で意識で、続けていく必要があるのではという考えた次第です。

 なお戦争をテーマにした文学は少ないもののガンダムシリーズをはじめアニメ作品は枚挙にいとまがありません。ただそのガンダムシリーズ、とりわけあのガンダムWを見て戦争を考察しようとするなら、多分余計に悩みそうな気がする。改めて見返すとガンダムWは登場キャラの思想がどれもぶっ飛びすぎてて「平和って何(;´・ω・)?」って気になってくる、
 むしろ戦後というものをテーマにしている点で、ガンダムXなんかは地味にいい作品な気がします。かつての戦前に囚われている人間、PTSDになっている人間、戦後に生まれ新しい時代に目を向ける若者の対比が非常によくできている気がするし。

2 件のコメント:

片倉(焼くとタイプ) さんのコメント...

ガンダムWにはモビルドールというAIで動く無人MSが出てきました。モビルドールは出た当初は ガンダムパイロットですら苦戦する等凶悪な強さを見せました。ですが、プログラム通りにしか動けずそれを読まれれば攻略できる、味方機からの攻撃(敵に乗っ取られた有人機からの攻撃)には全く対応しないなどの欠点が露呈しました。 番組内での描写も、当時の視聴者層も「AIは便利だけど 人間の高度な判断や機転には及ばないよね」という認識でした。 ですが我々現実社会のAIは高度に発達しました。 イスラエルでは 街を走る車にIDを付属させて特定の車だけミサイルで狙い撃ちする技術、実際の攻撃行為まで(人の判断ではなく)AIに行わせる技術まで確立したようです。もはやAIは人の高度な判断能力すら超えているのかもしれません。 この前ガンダムWを見返しましたが、AIに関する描写を 古臭く感じてしまいました。

花園祐 さんのコメント...

 あのモビルドール、ドロシーが使う時を除いて基本的に人間の指揮官がコマンドせずにずっとオートで動くので、なんちゃってな感じが強かったですね。ただほかの平成ガンダムの量産型と比べトーラスは比較的認知度が高いように見える辺り、個性付けには一役買ったのでしょう。