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2024年9月9日月曜日

静の恐怖から動の恐怖へ移るホラー作品の続編

 先行して中国で公開されて自分も見てきた「エイリアン・ロムルス」ですが、日本でも公開されて評判は上々のようです。前回レビューでも書きましたが本作品では過去のエイリアンシリーズが要所要所でオマージュされた場面があり、過去シリーズ作品に対する敬意を払ってエイリアンの伝統をきちんと受け継いでいるだけじゃなく、「いいアンドロイド」ともいうべき本作独自の要素による味付けも施されており、エイリアンシリーズとしてだけでなく一娯楽作品としても非常に評価できる名作だと個人的にも思っています。

 その過去作品のオマージュですが、古い作品も多いため解説記事でもこの点がよくポイントになりやすいです。それもそのはずというか第一作目は1979年公開という半世紀近く前の作品であり、リアルタイムで見た人となると結構な年齢を数えるくらいであり、若者からすると若干古典的作品に見えるかもしれません。
 その第一作目ですが、この作品の制作当時はCGはおろか特撮撮影技術も現代と比べて非常に低いものがありました。ただそんな制限された環境においてもリアリティを見ている人に感じさせるため色々工夫されており、一番肝となるエイリアンはその活発に動く姿を撮影することが難しかったためおなか破って出てくる赤ちゃんの頃を除き、最終盤まで全身像は移さず特異な顔面部分のみしか映されませんでした。ただこの演出が「潜む恐怖」というかどこにいるのかわからない、けど見つかったら終わりともいうべき恐怖感を作る上で貢献したと言われています。

 そんな第一作の続編として出された「エイリアン2」では一転して、大量のエイリアンが所狭しと画面内で大暴れしまくり、海兵隊とバトルし合うアクション性が強められた作品となりました。路線変更をしたものの公開当時の評価は非常に高く、「ターミネーター2」が出るまでは最も成功した続編作品との呼び声も高かったようです。
 もっともこの時代においても怪物がはしゃぎまわるシーンを撮影するのは困難で、エイリアンの人形(ぬいぐるみ?)は数体しか作られなかったものの、撮影方法を工夫して何十体も動き回るように見せていたそうです。

 話を戻すと上記のエイリアン1から2への路線変更については、静かに恐怖がにじり寄るような1に対し、2では反応が遅れればすぐやられる的な動の恐怖へ移行したと評する声があります。この静の恐怖から動の恐怖への移行ですが、勘のいい人ならすぐにピンとくるかもしれませんがもう一つ別のホラー作品でも同じ路線変更が指摘されています。
 その作品というのもホラーゲームの金字塔ともいえるバイオハザードで、それほど多くない敵キャラがあちこちの物陰に潜んでいるという1の作りに対し、2では大量のゾンビが街に溢れ激しい戦闘で撃退しつつ脱出を図るという、アクション性が強められた続編となっていました。

 エイリアンもバイオハザードも、同じホラーシリーズ作品としてともに1から2で静の恐怖から動の恐怖へと路線が変わっています。偶然と取ることもできるのですが、例えばホラーゲームのサイレンでもほとんど敵キャラへの抵抗手段がなく逃げるだけだった1に対し、2では重火器も登場して敵キャラの闇人(やみんちゅ)を薙ぎ払えるなどアクション性が盛り盛りに高められています。でもってこっちも評価が高いです。
 その他のホラー映画作品でも、ヒットした作品はこの静の恐怖から動の恐怖への路線変更が多かれ少なかれ働いている気がします。でもって3で若干迷走して評価を落とすというところも大体共通しています。それらを踏まえると、少なくとも1から2にかけてはこの静の恐怖から動の恐怖への移行が重要なのではないかと思いついたわけです。

 なおエイリアンについては3は閉鎖空間で武器なしというマゾチックな環境になり、バイオハザード3はよりアクション性が高められた上に「追われる恐怖」がテーマとなっています。ただどちらも1と2ほどの評価は得られず、4に至ってエイリアンはかなり迷走し、バイオハザードは恐怖よりもアクションによる快感性をより追及するという転覆的路線変更をこなして大成功しています。
 ちなみにバイオハザード3ではプレイしていて怖いと感じた以上に、市長の像の裏からマシンオイルが出てきたときに大爆笑しました。いやまぁ病院のステージは敵も強いし弾薬も補給できないから結構怖かったけど。

 ややオチの弱い記事ですが、何が言いたいかというと静から動への路線変更はホラー作品には手堅いヒットルートなんじゃないかってことです。もっともリメイク予定のサイレントヒル2はこの例にもれず1以上に静謐な恐怖感を強めてヒットしたあたり必ずしも法則通りというわけじゃないですが。

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