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2011年4月9日土曜日

徳川家光の姉の話

 敢えて趣向を凝らしたタイトルにしましたが、徳川家光の姉と聞いてとっさに誰だかわかる人はそう多くないと思います。これは冷静に考えれば難しくはないのですが、家光の姉とはほかならぬ、豊臣秀頼の正室であった千姫です。

千姫(Wikipedia)

 千姫というと徳川家の豊臣家の間を取り持つためにわずか七歳にして豊臣秀頼と結婚し、その後婚姻を取り結んだ張本人である実の父と祖父によって嫁ぎ先の豊臣家が滅ぼされてしまうなど運命に翻弄された女性というイメージがもたれているかと思います。実際に戦国時代を通して見ても淀君などにも劣らない波乱万丈振りでありますが、豊臣家崩壊後の千姫の人生については語られることはそれほど多くありません。
 大阪夏の陣後、千姫は一旦は両親のいる江戸の元へ身を寄せるのですが、この際に秀頼とその側室から生まれた奈阿姫の助命に奔走しております。奈阿姫は豊臣家の血縁ということで当初は処刑するべきという声が強かったのですが、この時に千姫は奈阿姫を自分の養子にし、文字通り身を挺してその命を守ろうとしました。ちなみにこの時船姫は十八歳、奈阿姫は六歳です。最終的にはこの千姫らの努力が実って奈阿姫は助命が許されるのですが、その後奈阿姫は鎌倉の東慶寺に入り、この寺を女性の駆け込み寺こと縁切り寺として確立させます。

 ちょっとこちらも合わせて説明すると、江戸時代は夫婦間での離婚決定権は男性にしかなく、女性はたとえ夫にどれだけ不満があろうとも勝手に離婚することは許されておりませんでした。しかしそうした女性の救済策というか特例として、東慶寺をはじめとした幕府公認の縁切り寺に駆け込んで一定の修行期間を積めば女性の側から夫に離婚を突きつけることが許されていました。この制度の成立過程で奈阿姫は一定の役割を果たしたといわれております。

 話は千姫に戻りますが、夏の陣から一年後に徳川四天王であった本田忠勝の孫の本田忠刻と再婚をします。再婚相手の忠刻とは仲が良かったそうですが残念なことに忠刻はわずか三十一歳で早世し、二回も夫に先立たれるという不幸を経験します。その後は本多家を出て江戸に再び出戻り、奈阿姫のいる東慶寺を支援するなどして過ごして七十歳で天寿を全うしております。

 こうして経歴をざらっと見てみると実に興味深い人物で、性格についても奈阿姫の助命を行うなどさすがは家康の孫とも呼べるような毅然さです。七歳で輿入りして嫁ぎ先が滅んだことからフランスのマリー・アントワネットと重なるところもありますが、実際には豊臣家が滅んだ後の人生の方が後世への影響が強い点で大きく異なります。
 私がこの千姫の後年の人生を知ったのはせがわまさき氏による「Y十M ~柳生忍法帖~」という漫画を読んだことがきっかけでしたが、千姫同様にこの漫画で取り上げられている会津騒動も今まであまり知らず、自らの不勉強を大いに恥じました。もっとも歴史に詳しい友人も知らなくて一緒に驚いたんだけど。

 さらについでに書いておくと、この会津騒動で当初会津を治めていた加藤嘉明に始まる加藤家は減封の上の転封となり、代わりに治めることとなったのは秀忠が一生に一度の浮気で生んだ保科正之です。この保科正之に始まるのが会津松平家で、幕末期にはどの徳川親藩家よりも幕府再興に尽力するなど徳川家最大の藩屏として歴史に大きく名を残すこととなります。最後に止めとばかりにもうひとつ書いておくと、現在の徳川宗家当主の徳川恒孝氏はこの会津松平家出身で、Wikipediaにはこんな面白いエピソードが載せられております。

「日本郵船に勤務していた際、恒孝と加賀前田家18代当主前田利祐(現宮内庁委嘱掌典)は、一時期、本社の同じ部署で勤務していたことがあり、その時の上司が『徳川と前田家の当主を使うのは太閤(豊臣秀吉)以来だろうな』と笑ったという話がある。」

2011年4月8日金曜日

震災復興によって起こり得る変化

 昨夜はまた東北地方で大きな地震が起こったようで、被災地の方々は不安な日々を送られているかと思います。時間が経ったとはいえまだまだ油断の出来ない日々が続きますが、どうか気持ちをしっかり持ってこの難局を早く乗り越えられるようお祈り申し上げます。

 さて各界では徐々にですが復興に向けた動きが始まっており、今後の対策についても活発な議論を見受けられます。そのような議論やニュースを見ていて、いくつかこれまで存在した慣習や制度が変更されるのではと思う節があり、今日はそのような震災を受けて変わる可能性のあるものについて私の考えを紹介しようと思います。


1、新卒採用選考時期
 今回の地震が新卒の就職活動シーズン真っ最中であったことを受け、一部の企業では採用選考の時期を延期したり説明会の数を増やすなどして被災地の学生に対する対応を行いました。元々これ以前から近年の就職活動シーズンの極端な早期化が学生にとって負担になっていると問題提起されており、去年にある大手商社が遅らせると言ったのを皮切りに経団連加盟企業などでも、実際に守られたかどうか非常に怪しいものですが、選考開始時期を春以降にすると発表していた矢先でした。

 私としてはここはもうズバッと、「選考は昔通りに夏以降にする」と言い切る企業が出てきてくれないものかと内心期待しましたが、さすがにここまでする企業は今のところまだ見ません。ただ全体としては確実に延期はされているようで、これを契機に就職活動の早期化に全体で歯止めをかけたほうがよいのではないかと考えています。
 私は以前から今の就職活動シーズンは学生、企業双方にとってデメリットしかなく、昔のように秋以降の選考に戻すべきだと主張してきました。学生にとってのデメリットは言うまでもなく学業面での支障、ならびに就職活動の長期化による多方面の拘束ですが、企業側のデメリットとしては人事部業務の集中が挙げられます。

 実際に人事部で働いた経験があるわけでもないのであくまで素人として意見を言わせてもらうと、三月から四月にかけては社内の人事異動、成果査定、退職者対応、新入社員研修と、傍から見ていると人事はやることがいっぱいあって採用選考なんてやってる暇なんかあるのかと疑問に感じます。上記四つの仕事内容は時期が選べないから仕方ないとしても採用選考だけならなにもこの時期にやる必要はなく、仕事を分散するという意味でもやはり秋頃にやるべきなのではないかと思います。

 なお蛇足ですが今回の震災後の人事対応で、トンボ鉛筆の話は聞いてていろいろ呆れました。私は元々三菱鉛筆の愛用者ですが、トンボ鉛筆はこれからは意図的に避けようと思います。本気で。


2、休日分散化
 去年に民主党内ではゴールデンウィークやお盆の長期休暇を業界ごとに分散化するという休日分散化案が議論されましたが、この案は私の目からすると世間一般の反応はどちらかといえばあまりよくなく、結局民主党内でも法案の提出は見送られました。しかしここにきて電力供給問題が立ち起こり、もしかしたら今年中に実現するのではないかという予想をこのところ一人で持っております。

 今回の地震で福島原発で事故が起きたことから、関東や東北地方の電力供給に混乱が起きていることは説明するまでもありません。現状はすでにある火力発電所の発電量を増やして対応しておりますが、現在の設備では電力使用量が冷房の使用などで高まる夏季の必要量には対応しきれないことが予想され、現在政府や経済界では対応方法を模索しております。
 政府は家庭での節電を呼びかけるとともに大口の使用者である企業にも協力を呼びかけており、それに答える形で経団連内部でも対応方法が議論され、昨日には自動車工業会から業界ごとの輪番休業を取ることが提案がなされました。輪番休業とは言ってみれば業界ごとに交替でまとまった休みを取ることで、たとえば八月の第一週は電機業界の企業が休みを取り、第二週は自動車業界、第三週は化学品業界というように、別々に休暇を取ることで電力需要のピークを下げるという案です。

 この輪番休業は言ってしまえば休日分散化と中身は全く同じです。もちろん実施する目的は異なっておりますが、今回の事態を受けて図らずも実現する可能性が高まっているのではないかと見ております。
 私の意見を言わせてもらうと、電力需要を下げる目的としては確かに理に適っており、多少は下がるでしょうが経済活動を著しく低下させずに軟着陸させるという意味では最も適当かと考えています。その上で私は休日分散化は観光産業の振興という観点から以前から必要だと考えており、今回の対応を契機に今後も継続して業界ごとの長期休暇が実現すればと密かに期待しております。


3、在宅勤務
 我ながら自分らしいと思いますが、今日ちょっと気になるニュースを小耳に挟みました。そのニュースというのは何でも、繊維メーカーの帝人が上記の夏季における電力供給問題の対策として社員の在宅勤務を検討しているそうです。検討を始めた理由は電力不足で停電や交通インフラが停止した際に備えるという目的と、大量の電力を使用する冷房などを節約するという目的からだそうですが、IT企業からではなく繊維メーカーからこういった議論が出てきたということに驚きを感じるとともに深く感心をさせられました。まぁほかの会社でも検討されているのかもしれませんが。

 実際問題として、これだけIT技術が発達した今の時代ならIP電話などを活用すれば在宅勤務はそれほど難しくないでしょう。もちろん一部の業務は担当者らが会社に出社して集まらなければ出来ないでしょうが、みんながみんな出社せずに一部を在宅勤務にするだけでも電力の節約に貢献でき、その上で在宅勤務社員をこの際生活圏ごと関東以西に移せば通常生活でも電力使用量は減らせられます。
 ただそれ以上に私は在宅勤務が増えることで仕事の幅が広がり、将来の日本企業の競争力強化につながるという期待の方がこの案に持つ感想としては大きいです。ただでさえ東京はラッシュ時のピークが半端じゃなく、これに対応するため鉄道会社も過密ダイヤを設定するなど大きな負担を強いられており、在宅勤務が実現したら世の中バラ色になると片道の通勤時間が二時間だった頃に何度も思いました。恐らく実行するに当たって労務管理等が障害となるでしょうが、それらの課題を克服して定着化できれば多方面でメリットがあると思うのでこれも今回をきっかけに広がってほしいと願っています。

 どうもこのところスランプ気味で文章の調子がよくありませんが、今日は内容がそこそこカバーできたのではないかと思います。もう一山乗り越えたら、なんか成長できそうな気がするんだけど。

2011年4月7日木曜日

文章が書けない時

 昨日は飲み会があり更新を休みましたが、今日は書かなければとパソコンに向かうもののどうも書けるような話題が浮かんできません。このところこういうことが続いているので、そろそろなんかまた連載でも立ち上げようかとも考えてますが、指しあたって今日は困った時の歴史ネタとばかりに思案に暮れてますが、すでに30分くらい無駄に時間が経っております。全く書くネタがないわけではないものの、果たして書くほどのネタかと思うものばかりでどうも慎重になりすぎているきらいがあります。

 こんなブログ程度でなにをかとも思えますが、やはり書こうと思う時、もしくは必要文字数が規定されている時に書けない状態ほど苦しいものはありません。作家のする話を聞いてても締め切り間際に何も浮かんでこないというのは非常に追い込まれるようで、心労をやむというのも案外嘘じゃない気がします。ちなみに私は比較的長ったらしい文章を書くのを得意にしており、文字数制限のある大学の卒業論文では自分の分はさっさと書き終え、同じゼミのほかの学生三人の執筆をいろいろ手伝っておりました。ひどいのになると一番肝心な考察部分を含めて半分以上を私が書いてしまってました。
 そんな具合で字数を埋めるのなら任せろと一時期はうぬぼれていた時期がありましたが、逆になんていうか、あらかじめ何文字から何文字以内と規定されると途端に文章が欠けなくなることがあります。一時期に投稿していた小説の新人賞などまさにそうで、普段だったら気にせず書けるものがどうも字数が頭の隅に入ってか全く筆が進まず、結局投稿をあきらめたことが何度もありました。そういう意味ではちょっと気持ちに弱いところがあるのかもしれません。その一方でこうした字数も内容の制限のないブログだと割りとのびのび書けるところがあり、今まで書いたブログ記事でも後から読み直してみて我ながらよく書いたもんだと寒心することもあります。

 よく小中学校の作文教育では夏休みの読書感想文のようにあらかじめ提出枚数が決められていることが多いですが、私は個人的にはそういた制限は取っ払い、完全に毎週は自由にしたほうがいいと思います。書きたい人はいくらでも書けばいいし、書けない人なら書けないなりに短くまとめたら評価すればいいだけですし、そのほうが評価するほうもしやすくていいんじゃないかと思います。

 明日は金曜ですが、明後日に現在いるサービスアパートメント内でまた引越しすることになりそうでちょっと気分的に盛り上がりません。あらかじめ6ヶ月契約にしたら家賃が安くなると聞いていたのでてっきり今いる1ヶ月契約で入った部屋を延長できるかと思ってたら、6ヶ月契約だと別の部屋になると先週言われていろいろ困ってます。これに限るわけじゃないけど、中国は本当に想定外のところでいろいろ問題が起こるからややこしい……。

2011年4月5日火曜日

成果主義議論のその後

 先日見たネットの掲示板で、現バンダイナムコのナムコが昔に出していた「テイルズオブエターニア」というゲームについて討論がされておりました。このゲームは今も続く「テイルズシリーズ」と呼ばれるRPGゲームの第三作目私も昔に遊んだ、というより発売前には東京ゲームショーでプロモーションも見ていたゲームなのですが、本当は「テイルズシリーズ」はこのゲームで完結する予定だったらしく、開発陣も総力を結集して作った作品だという話を誰かがしていました。真偽まではわかりませんが実際に遊んだことのある私も非常に納得する出来で、ちょうどPSP版(元々はPSで出された)がすでに発売されていると聞いたので、来月にこっちに遊びに来る予定の親父にでも持たせようとすぐAmazonで注文して日本の実家に配達を手配しました。

 さてこのテイルズシリーズですが、はっきり言って昔と今とで比べると知名度やブランド力は昔の方があったと言わざるを得ません。というのもこのエターニアが発売されたのは2000年ですが、その後このシリーズはそれこそ手を変え品を変えてバンバンと続編が発売されていったのですが、細かい売上本数までは確認していませんが発売前の話題性やら知名度は文字通り回を重ねるごとに低下していった印象があります。私の周りでも途中で買うのをやめていくのがほとんどだったし。もちろんシリーズのブランド力を維持するのは並大抵じゃありません。日本は100年企業が多いというだけにゲーム業界でも息の長いシリーズ作品はたくさんありますが、それでも往年の輝きを知っている世代からするとこのテイルズシリーズの凋落は見ていて如何なものかと思うほどです。

 では何故テイルズシリーズはブランド力が低下したのかですが、これまた又聞きで真偽は確かめられませんが一説によると当時のナムコが実施した成果主義を原因と指摘する話を聞いたことがあります。なんでも当時のナムコではヒット作を出した開発部署に報奨金を出すという成果主義を導入したらしいのですが、ブランド力が高かったテイルズシリーズはそれこそ出せば売れること間違い梨の鉄板タイトルであったため社内の開発陣はこぞってテイルズシリーズの開発部署に行きたがるようになり、また製作をするそばから次回作を乱発するようになったとのことです。実際にほかの有名RPGシリーズと比べてもテイルズシリーズの続編の発売速度は異常で、言われてみてそういう背景があったのかと妙に納得させられた話です。さらにこの成果主義によってナムコ社内では新ジャンルのゲーム開発意欲が失われ、焼き直しのような過去のヒット作の量産ばかり行われるようになって会社全体で開発力が落ちたとまで指摘されておりました。もっとも過去のヒット作の続編量産はナムコに限りませんが。

 真偽はどうであれ、少なくとも経営が悪くなったナムコはバンダイと合併したのは事実です。このナムコに限らず、失われた十年後半に非常にもてはやされた人事の成果主義は城繁幸氏が散々批判した富士通の例を筆頭に会社経営の改革になるどころか、むしろ経営の悪化要因にしかならなかったという話ばかりです。どうでもいいですが、富士通はこの前のみずほ銀行のシステムトラブルの際にあちこちで、「富士通だからな」と言われてたのがちょっと面白かったです。

 成果主義議論は以前にも何度かブログで取り上げていますが、現時点ではこの言葉自体がすでに死語になっているような感があります。一応どの企業でも年初に目標設定というものを一人ひとりにつけますが、これがどれだけ給与判定に影響を与えたかは実際にやったことのある私もわかりませんでした。むしろリーマンショック後に役員、管理職が減給されたなど、景気影響の方がストレートに反映されてたような。

 私自身はあまり給与にこだわらない性格なので成果主義だろうが年功序列主義だろうがあまり気にはせず、むしろちょっと前に「日本人の自己裁量権」の記事やそれ以前の陽月秘話で書いた記事で主張した、仕事の責任に合わせた裁量権を社員一人ひとりに与えることの方が重要だと考えています。ただそういった裁量権の議論をするにあたっても給与や評価方法は避けては通れないもので、これらと絡めて議論するというのであればやはりもっと成果主義を研究し、実施するべきという立場を取ります。

 私が思うに日本で成果主義が根付かない要因のひとつは社員一人ひとりの責任範囲が明確でないことにあると思います。どこからどこまでがその人の仕事の範囲なのかわからず、また複数人で関わる仕事で問題が発生すると誰の責任にするかで揉めるあたりつくづく日本人の曖昧さを痛感します。そういう意味でかねてから私が主張するようにもっと個人に自己裁量権を目に見える形で与えればこういった成果主義議論も一歩は前に進むんじゃないかという気がします。

 現在では(以前から?)成果主義は間違いだという意見の方が大半でしょうが、私は今の日本が実施している成果主義は不完全さが目立つもので、運用次第では活用できる範囲はあると思います。もちろん先ほどのナムコの例のように足を引っ張る例もあるので、もっとわかりやすく誰がどう見ても大きな功績を出した人に年に一回だけ報奨金を出すというような、シンプルな形でもないよりかはいいんじゃないかと思います。

 ちなみに私が日本で働いていた頃に自他共にファインプレーだったと認められた仕事に、金曜日に輸入検査の申請をするにあたって運送会社から必要書類がなかなか届かず、昼過ぎにFAXで受け取るや電車に飛び乗り、5時で閉まる申請所に最寄り駅から走って4時50分にたどり着いたというものがありました。申請所の方にはあらかじめ電話をしてなるべく待ってもらうように伝えていましたが、関西系の人だっただけに、「全く、ワシに残業させおって」といいつつ書類をきちんと受け取ってくれました。革靴で全力疾走したので、次の日はすねの辺りが筋肉痛になりました。

2011年4月3日日曜日

石原都知事への自民の許せない公認

 現在東京都では都知事選が行われており、来週十日には開票される予定です。今回の都知事選の主な立候補者は現職の石原慎太郎都知事をはじめ前宮崎県知事の東国原氏、ワタミ社長の渡辺美樹氏、共産党の全国会議員の小池晃氏など、選挙内容から知名度の高い候補者が集まっております。
 こちらで聞く情報では現在石原氏が優勢で選挙戦が進められていると聞きますが、今回の都知事選について、というより石原氏の出馬についてかねてから思うことがあったのですが今までは敢えて何も書きませんでした。恐らく私が書かずとも誰かが同じことを書くだろうと見ていたのですが、どうも今日に至るまでネット上のニュースでそのような内容の記事を見当たらなかったのでこの際書いてしまうことにします。

 まず結論から言って、私は石原氏には都知事の資格はないと思います。
 今回の任期中で石原氏はオリンピックの東京都招致に失敗しておりますが、招致失敗は時の運もあるのでいちいち責めたりはしませんが、東京都が今回の招致活動である広告代理店にわずか数分のPR映像作成費として、数億円(確か十億円だったような)を支払った点はちょっといただけありません。もちろん招致失敗後にこの費用について問題となりましたが、石原氏は招致失敗を含めてさも映像を作成した広告代理店に問題があるとして、招致失敗後にその広告代理店に費用の一部返却を要求しました(実際に返却されたかどうかまでは私は未確認です)。

 前にある評論家が言っていましたが、石原慎太郎ほど問題が起こるや責任逃れに走る男はいないという評価通りに、このオリンピック招致失敗時も、「都民があまり熱心でなかったからだ」などと、自己の責任には一切触れずにただ周囲を批判するだけでした。また以前の任期中に起きた新銀行東京の不良債権問題でも、散々自分が主導して設立したにもかかわらず経営陣が無能だったからと切って捨てています。
 ここ数年の石原氏の都政を見て、生憎ですが私はこれという評価すべき点は見つかりません。そして極め付けが例の、東日本大震災を「日本人への天罰」といった発言です。

東日本大震災:石原知事「津波は天罰」(毎日新聞)

 内容はすでに皆さんもご存知かと思うので詳しく説明しませんが、はっきり言って口が滑ったとかそういうものではなく私には石原氏の本心から出た発言だと思えません。無論このような考え方は人として理解することが出来ず、遠慮なく言わせてもらえば人格を疑う発言です。こんな人間が責任あるべき地位にいていいのか、即刻辞任すべきではないかと発言があった当時は強く感じました。

 この一点だけでも私は石原氏の再選は到底承服し難いほどに怒りを覚えるのですが、その一方で石原氏を公認して応援する自民党に対しても今回の都知事選には深い怒りを覚えます。というのも自民党はこの石原氏の発言とよく似た、「大阪にとって天の恵みというと言葉が悪いが、本当にこの地震が起こってよかった」と発言した、長田義明前府議会議長を先日告示された大阪府議選での公認を取消しているからです。

「地震は天の恵み」 “失言”府議会議長 自民が公認取り消し(産経新聞)

 公認を取消したのは自民党大阪府連で現在石原氏を応援する党本部との違いはありますが、同じ不謹慎極まりない発言をしながらも片方では公認が取消され、片方は以前と変わらず応援されるというこの自民党のダブルスタンダードは如何なものかと思います。
 ただこの背景についてもう少し詳しく話すと、現自民党幹事長は石原氏の長男の石原伸晃氏で、そうしたことがこのダブルスタンダードの成立に一役買っているのかもしれません。ただいくら肉親とはいえ上記の石原氏の発言を無視するというのは政治家としては許されるものとは思えず、むしろ肉親だからこそここは引導を渡すべきではないかと考えていたのですが、選挙前に伸晃氏は何度も出馬要請を行い続けてきました。

 私は正直に言って、石原氏の発言はその内容や彼の地位を考えると長田前議長以上に問題の多い発言だったと考えております。本人も発言した当初は意に関せぬ態度でしたがその後は謝罪しております。しかし謝罪以前の問題で何度も言いますが人格的に大きく問題のある発言です。
 無論都知事を誰に選ぶかは都民が決めることです。しかし一個人として今回石原氏が再選することは納得できないということを記録するため、こうして記事にまとめることにしました。

2011年4月2日土曜日

攻めに強い経営者が求められる中国

 中国の経済紙を見ていて不思議というか違和感をいつも覚えることに、「○○、収益が15%減」というニュースがあります。こういった見出しの記事の中身は大抵、「売上高が増加したにもかかわらず収益が□%低下した。低下した要因は……」という感じでまとめられているのですが、読んでていつも、「黒字保ってんだからいいじゃないか別に……」と思います。もっとも私がこういう風に思うのも日本にいたころにあまり経済紙を読んでいなかっただけかもしれませんが。
 あくまで私の主観ですが、こっちでも企業の収益が赤字になればそれはそれでニュースになりますが、どうも中国では成長率が前期比を少し下回るだけでもニュースになる、というより同程度がそれ以上の成長率を出して当たり前というような風潮があるように感じます。それこそ去年は収益が20%増加したのだから、今年は25%くらいないとおかしいというようなくらいに。

 しかし生まれてこのかた日本の景気が落ちるところしか見たことがない私からすると、たとえ売上や収益がいくら落ちようが黒字を保てれば企業としては立派なものだという風に考えるところがあり、たとえばユニクロのような毎年急成長を続けていた企業で成長率が低下したりした場合は話は別ですが、どうもこの辺で中国企業のニュースを見ていてギャップのようなものを感じさせられることが多いです。
 ただ中国では何もしなくともいい位に景気が上り調子ですので、成長率が落ちる方が確かに問題なのかもしれません。ちなみに最近だと、ここまで露骨にやらなくともいいだろうと思うくらいにデザインをパクリまくっている、自動車会社のBYD汽車の成長率減少のニュースが取り扱いが大きかったです。

 とまぁこの程度の内容だったら記事にするまでもないのですが、こうしたニュースに触れていてこのところちょくちょく思うこととして、今の中国には攻めに強い経営者しかいないのではというものがあります。攻めに強いというのは文字通りに積極的に業務拡大を行っていけるような経営者で、具体的には販売拡張や支店、営業所の設置、人員拡大などといったことをばんばん効率よく行っていける経営者のことを指しておりますが、実際に企業家のインタビューなどを見ていると如何に売上を伸ばすかという点を強く語る人が多いような気がします。
 攻めに強い経営者というのはそれはそれで資質に問題があるというわけではなく、経済が拡大している今の中国にとっては確かに必要とされる人材です。そういう意味では需要の多い人材が数多く世に出てきていると捉えることができるのですが、その一方で守りに強い経営者が存外少ないのでは、ということを覚えます。

 攻めの経営者に対して守りの経営者というのは、これまたあくまで私の定義ですが売上高が減少する中で以下に採算を守るか、赤字を出さないように経営の効率化を図れるような経営者を指しております。基本的に今の日本の経営者はこの手のタイプが重宝されており、敢えて有名なのを出すと日産のカルロス・ゴーン氏のような、やり方についていろいろ批判されてますが経費を徹底的に削減するコストカッターと呼ばれるような経営者です。日本の場合はデフレ下で売上が減少して当たり前なので、もちろん売上も伸ばせるのなら越したことはないですが、減少していく中で採算を確保することが今の経営者に一番に求められる資質です。

 いつものごとくまた前置きが長くなってしまいましたが、概して攻めに強い経営者というのは守りには滅法弱いところがあり、景気が全体で収束していくような時代ではかえって会社の経営を危うくする人間も少なくありません。それこそ日本のバブル期に名経営者と呼ばれた人材はバブル後になると評価が一転した人物も少なくなく、中にはかつての名声はどこにやらという感じで割と寂しい晩節を迎えた人もいます。大抵こういう経営者は売上が減少すると広告費や営業社員を増やせばまた上がるとして逆に資金の追加投入を行いますが、失われた十年の時代ではそうしたことをしても経費が増えるだけで売上も収益も伸びず、代表的な例だとダイエーの中内功氏のように結局一代で作って一代で駄目にしてしまった人もおりました。

 今の時代の中国においてはこのような心配は無用以外の何者でもないですが、不動産を筆頭に今の中国の経済はいくらかバブルの傾向があり、成長が鈍化したりマイナス成長時代に入ったりすれば対応できる守りの経営者がおらず、日本のバブル後同様に傷口を広げてしまうのではとやや気の早い予想をこのところしております。そういう意味で今の中国の経営者や会社員らには、「今の日本をよく見ておけよ」と、やや自虐的ですがこういうことを伝えたいなと思ったりします。

 逆に今の日本は文字通り守りの経営者ばかりで攻めの経営者はいるかですが、IT業界なんかにはそういう人も多くいるような気がするので、驚嘆に守りばかりに偏っているわけでもない気がします。もちろん理想を言えば攻めも守りも両方できる人材がいればそれに越したことはありませんが、そんな都合のいい人材はそうそういないのでやっぱり時代ごとに表に立つべき人間をしっかり見極め、選ぶことが重要かというのが今日の私の意見です。

  おまけ
 今の中国の不動産市場は明らかにバブルで、実際に住む目的よりも投資目的で購入する人の方が多いです。そのため去年から二件目の住宅の購入の際にはいろいろと条件を課す、固定資産税を導入(今までなかったというのがちょっと驚いた)するなど各都市ごとに制限を実施し始めておりますが、今のところまだ大きな効果は出てきておりません。ただ先月に初めて、中古住宅ではありますが平均価格が始めて前月比で下回りました。ちなみに私は友人(♂)から、誕生日プレゼントには上海の一等地の高級マンションがほしいとねだられているのでこの頃宝くじを買い始めました。

2011年4月1日金曜日

自民、民主の大連立構想について

 東日本震災発生から三週間経ち、ようやく復興案について具体的な議論が立ち上がってきました。月も改まったことで政府の閣僚には今日から背広を着る人間が出てきましたが、なんか一部では「もう作業着を脱ぐのか」などと非難する声が出ていると耳に入ってきますが、私はこういった批判についてはちょっとどうかと思うところがあります。ついでに書くとすでにこのブログで幾度も触れていますが、具体的に管首相のどのような対応が問題だったなのかいまいち自分には理解できません。決して100点満点の対応とまでは言いませんが、震災以降は首相として最低限の勤めを果たしているように私は評価しております。原発の事故ですぐに海水注入を指示しなかった点が問題だったとも言われますが、専門家の意見を無視して何かを決断するというのは往々にして問題が起こりやすいです。もっとも今回はその専門家たる東電が当初海水注入に反対するなど明らかな決断ミスを犯し、事態を悪化させてしまったのですが。

 さてようやくまた国会での審議が徐々に復活してきましたが、政界では国会外の自民党と民主党の大連立についての話題が中心となってきております。元々震災直後に管首相は自民党の谷垣総裁に入閣を依頼するという事実上の大連立を自民党へ申し込んでいますが、この時は谷垣総裁が拒否したことですぐに成立とは行きませんでした。いくら震災に対応するためとはいえ散々言い合いをしてきた仲ですし、党内の了承や根回しをせずに谷垣総裁がすぐに受諾していたらいろいろと面倒な問題が起こっていたように私は思え、そういう意味では谷垣総裁の決断は正しかったでしょう。
 そしてやや時間がたった今日、自民党内では森氏や安倍氏など首相経験者(いっぱいいるから困る)などが条件付で大連立を行うべきだと発言するなど、徐々に肯定論者が増えつつあります。その自民党内が検討している民主党への連立の条件ですが、子供手当てなどのばら撒き政策の廃止、閣僚ポストの数などいくつかありますが、一番議論の分かれるところは何と言っても管首相のクビでしょう。

 報道を見る限りですと連立に当たって自民党は管首相の退陣、首相の交代を要求するという話も出ているそうです。理由はまぁなんとなく想像はつきますが管首相の現在の支持率の低さなどに加え、民主党にイニシアチブを持たせないために自民党にとって有利な人物を選ぶという腹案があるのかもしれません。具体的にどのように有利となるかまでは書きませんが。
 ただこの震災の最中でまた首相を取替えていたら海外から、「日本はこんな時にも政争か」と思われる節があり、私はたとえ管首相がどれだけ問題があるとしても一度選んでしまったのだからこの際なんとか我慢してでも支え続けるべきだと考えています。その上で政権を安定し矢継ぎ早に対応を行うためには、震災前からも主張していましたがやはり大連立は必要だと思います。少なくともこれから一年は本当に復興対策に追われることは間違いないので、期限付きで一年後にはまた分かれても首相を交替させてもいいから、是非自民、民主の両党には真剣に大連立を行ってもらいたいと希望しております。
 幸いというか今回の地震を受け、民主党内ではかつてのマニフェストで掲げていた子供手当てからガソリン値下げ、高校無償化、農家の個別保障といったばら撒き策を撤回する機運が高まっています。恐らく民主党内の政策担当者も現実にはこれらの政策は実現できないと徐々に認識していた矢先でしたでしょうし、マニフェストの撤回によって自民党の掲げる政策に歩み寄ることも可能でしょう。もっとも程度の差こそあれ、自民党も似たようなばら撒き策を掲げてはいるのですが。