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日本研究者:欧米の187人が安倍首相に送付した「日本の歴史家を支持する声明」全文(毎日新聞)
上記リンク先は先月初め、欧米の日本研究者187人が署名して発した「日本の歴史家を支持する声明」という文章全文(日本語)を載せた毎日新聞のページです。たった一ヶ月とはいえなんか随分前のような気もしますが、この声明文についてほとんどの日系メディアは、「欧米の研究者たちが揃って安倍首相の歴史認識を非難する声明を出した」と当時報じておりました。しかしその一方、下記のように報じるメディアもありました。
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「187人声明」は、"反日"でも"反韓"でもない(東洋経済)
上記リンク先の東洋経済の記事ではこの声明文の中心的執筆者二人にインタビューを行っており、両者はメディアが報じているように日本、ひいては安倍首相を非難する目的ではなくあくまで公平な視点で歴史を探求すべきだと日本の研究家に向けて発信しただけだと主張しています。となると「安倍首相を非難する」と報じたメディアが間違っていたのか、この辺りが疑問というか一体どっちやねんというもやもやした気持ちがこのニュースについてありました。
<間違っているのはどっちだ?>
向こうが出した声明文は一番上の毎日のリンク先に日本語版全文が載せられていますが、少なくとも私が見る限りだと、従軍慰安婦問題を引き合いに出してはいるものの特段日本を批判するような文言はなく、安倍首相の名前も終わりから三段落目の下記文章に一度だけしか出てきません。
「四月のアメリカ議会演説において、安倍首相は、人権という普遍的価値、人間の安全保障の重要性、そして他国に与えた苦しみを直視する必要性について話しました。私たちはこうした気持ちを賞賛し、その一つ一つに基づいて大胆に行動することを首相に期待してやみません。」
これだけ見るならば「正しい歴史認識に基づいた行動を」という具合で釘を刺している印象はあるものの、非難というレベルの書き方ではないように見えます。となると日系メディアが安倍批判に利用するため過剰に報じたのか、そういう疑問がもたげてきます。しかし報道では日系だけでなく海外のメディアもこの声明文を引用して同じように安倍首相を非難するものだと報じているとされ、またも一体どっちやねんと思えてきたわけです。
最終的に私が出した結論としては、「なら英語の原文を見よう。もしかしたら出回っている翻訳が間違っているかもしれない」というもので、英語の声明文をこの際だから自分で訳して検証してみました。というわけで、以下がその翻訳文です。
<私の手による英語声明文の和訳>
題:日本の歴史家を支援する公開文書
下記に署名した日本研究者は、日本にいる多くの勇気ある歴史家がアジアにおける第二次世界大戦の正確な歴史を探ろうとすることについて結束することをここに表明します。日本は我々研究者の大半にとって第二の故郷であり、日本と東アジアの歴史を研究し、記憶していくことは共有すべき関心事であるため我々はこの声明を発します。
記念すべき重要な今年、我々は日本とその隣国の間における70年間に及ぶ平和をお祝いいたします。戦後日本はその民主主義の歴史において軍隊の文民統制と警察の抑制、政治的寛容、科学の発展、他国に対する総合的な支援はどれも賞賛されるべきものです。
しかし歴史解釈の姿勢に関する問題がこれらの賞賛を妨げております。最も関係を悪化させている歴史問題はいわゆる「従軍慰安婦制度」です。この問題は日本や韓国、中国の口汚い民族主義者によって大きく歪められており、研究者だけでなくジャーナリストや政治家においてすらも、人間のありようを理解させ改善を求めようとする歴史探求における原則的な終着点を失わせています。
かつての「慰安婦」の犠牲者の苦痛を……(注:この箇所は非常に面倒くさい言い回しをしているため翻訳を拒否。書いた奴には死んでほしい)。しかし、慰安婦に何が起こっていたのかという事実を否定、もしくは矮小化することは同様に受け入れることが出来ないことです。数多くある20世紀の戦時中の性暴力、または軍による売春例の中、「慰安婦制度」はその広範な運用と軍による管理された点と、日本の植民地、または占領地の若くて貧しく、無力であった女性に対する搾取であった点で他の例とは異なっております
「正しい歴史」へと簡単に至る道などありません。日本帝国軍の多くの記録は廃棄済みです。女性を軍へと斡旋していた業者の行動は記録されていなかったかもしれません。しかし歴史家によって軍隊が女性の輸送や売春宿の管理に関わっていたとする数多くの文書が明るみに出されています。犠牲者の証言もまた重要な証拠です。彼女らの話は多様でかつ矛盾が生まれやすい記憶の影響を受けつつも、彼女らによって提供され集まった情報は心を動かされるもので、なおかつ兵士やその他の証言同様に公文書によって(正しい情報であると)補填されています。
「慰安婦」の正確な数について歴史家の意見は分かれていますが、「¥恐らく確実な数は永久に知ることはできないでしょう。犠牲者の推計数を打ち立てることは確かに重要です。しかし究極的には、その数はその犠牲者数が正確に1万人だったのか10万人だったのかに関わらず、日本の支配地域と戦地においてこうした行為が行われてきたということは紛れもない事実です。
いくつかの歴史家は日本軍がどれほど従軍慰安婦制度に関わったのか、また女性はどれほど強要されて「慰安婦」になったのかという程度について議論しています。しかし多くの女性が意思に反して恐ろしく野蛮な行為にさらされたということは既に証拠が明らかにしております。特定の団体、または犠牲者の暴力的な被害をなかったこととしたり無視したりするような反論に焦点を当てた法律主義的な討議を採用することは……(注:この箇所の動詞の扱い方がおかしいのでここも翻訳拒否。なんで「and ignores」と続くんだよ)。
日本における我らの同僚のように、我々は注意深く天秤にかけつつあらゆる過去の資料の文脈を精査することによってのみ、正確な歴史を作ることが出来ると信じております。そのような作業では民族主義や性別への偏見を排除しなければならず、また政府の情報操作や検閲、脅しから影響を受けてはなりません。我々は歴史探求の自由を守り、すべての政府にそれらを守ることを求めます。
多くの国にとって過去の不正義な事実は受け入れがたいものです。米国政府が二次大戦中に二次大戦において隔離した日系米国人への補償を行うまでに40年以上かかりました。米国法で奴隷制が廃止され平等が約差即されたものの、アフリカ系米国人は約一世紀の間それを実感することができず、アメリカ社会には差別意識が根深く残っていることは真実です。19~20世紀における欧米や日本を含む帝国主義勢力の中で過去の差別や植民主義、戦争、そして世界中で無数の市民を犠牲にした歴史をきちんと清算したと主張できる国はありません。
日本は今日、最も弱い人を含め個人の生活や人権を認めています。日本政府は現在、「慰安婦制度」のような制度上での女性への搾取を国内だけでなく海外でも認めていません。当時においてさえ、いくらかの役人は倫理的な立場に立ったでしょうが、戦時中の管理体制では個人を犠牲にして国家に奉仕せざるを得ず、ほかのアジア人同様に日本人自身も多大な犠牲を起こすこととなりました(注:日本人からも多くの女性が慰安婦になったと言いたいのだと推察する)。そのような悲劇は二度と繰り返してはなりません。
今年は日本政府が過去の植民地政策と戦時中の侵攻について発言と行動することによって、そのリーダシップを示すのに一つのよい機会です(注:「よい機会」だなんて勝手に決めるなと読んでて思う)。4月の米国議会において安倍首相は人権の国際的価値観、人間の安全保障について言及し、日本が他国に与えた苦しみにも直視しました。我々はこうした(安倍首相の)心情を賞賛し、これらすべてを具体的な行動に移すことを強く促します。
過去の過ちを認める行動は民主社会を強化し、周辺国との関係も発展させます。「慰安婦問題」は平等な権利と女性の尊厳が核となっており、この問題の解決は日本、ひいては東アジアや世界の男女同権の歴史的な前進となり得ます。
我々の教室では日本や韓国、中国など世界各国から来た生徒が十分な敬意を払いつつ誠実にこの難しい問題を議論しています。彼らの世代は、我々が彼らへと託す過去の記録とともに生きていくこととなります。性暴力と人身売買のなき世界を彼らが作るのを支援するため、またアジアにおける平和的な友好を促進するため、我々は出来うる限り完全かつ偏見のない過去の過ちの清算を残さなければなりません。
(和訳文終わり)
<翻訳を行ってみた印象>
日系メディアなどで出回っている声明文の日本語版はこの声明を発した団体自らが用意したものですので、共通したものが使われています。その向こうの和訳と比べて私の和訳とはどのような違いがあるかですが、基本的な内容は一緒で、何かの語句を省いたり意味が大きく異なっているような箇所はありませんでした。ただ全体的に原文では英語版と比べて日本語版だと表現が全体的に緩められており、語の感じが軟らかく受け止められるように変えられている印象を覚えました。
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「過去の過ち清算」せよと叱責する「日本研究者」の正体(産経新聞)
この日本語版では表現を緩めている点については上記の産経新聞の記事も指摘しており、産経はきちんと英語版と日本語版を見比べていたことがわかります。ほかのメディアはきちんとやったかは知りませんが、何故日本語版では緩めたのか、その意図がやや気になります。
そしてもう一つ気になった点として、私はこの声明文の英語版原文を
このサイトから取ってきたのですが、声明文自体は今年の5/5に発信されていますが、5/7に署名者を追加した上でアップデートされ、その際に
声明文の概要を書いた前文が追加されております。こちらは日系メディアでは多分どこも翻訳していないので、こっちも私の方で下記の通り翻訳してみました。
<追加された前文の和訳>
オンライン人権、社会科学ポータルサイト「H-Asia/H-Net」は2015年5月7日、日本の安倍晋三首相に対し、先の4月29日に日本の首相として初めて米国の両院合同議会で行った歴史に関するスピーチで持ち上げた問題について、「具体的な実行」を呼び掛ける、日本研究者187人による公開声明をここに発信します。
この声明では安倍首相に対し、彼自身が現在の日本について語ったスピーチで話した内容を確実実行するよう特に強く促したい。そのスピーチ内容というのも国家はなによりも「人権」と「安全保障」に重きに置くというもので、この目標の達成に当たって、(署名した)学者たちは安倍首相に対し、70年前(に終結した)の占領と戦争の時代に日本が他国に与えた苦痛を含む真実の歴史を直に知るよう求めます。最も大事なこととして、こうした真実の歴史を知ることは日本と過去に占領統治されたアジアの周辺国家との間で、公正な歴史事実に基づいた和解を促すこととなります。これらを実行するという方針は今日の日本とは大きく異なっていることを明確に示します。
南京大虐殺、靖国神社(戦犯を含む戦没者に対する東京のモニュメント)と並び、(アジア)地域の歴史問題において緊張を招く重要な要素の一つである、いわゆる日本軍の「従軍慰安婦」の歴史は特別注目に値するものです。(この声明に署名した)学者は安倍首相に対し、従軍慰安婦制度は軍隊によって大規模かつ規則的に、また植民地や占領地の若くて貧しく、そして無力であった女性に対する搾取によって運営された著名な制度であったということを公に認めるよう求めます。
1993年以降、日本政府の歴代首相は2006~2007年の安倍政権を除き、この卑しむべき歴史に対し謝罪談話を発し続け、その言葉と実行において程度の差こそあれ日本の方針として堅持し続けてきました。
「直接的にせよ間接的にせよ、当時の日本軍は慰安所を設立、運営し、慰安婦を送り続けました。慰安婦の斡旋は主に軍から要請を受けた民間の斡旋業者が行っていました。政府(注:どこの政府なのか本文中に明示していない)の研究によって明らかになったこととして、慰安婦らは多くの場合、口車に乗せられたり無理強いされたりなどして本人の意思に反して斡旋されており、時には軍の管理関連の人間も斡旋行為に直接参加していました。強制的な環境下における慰安所での彼女らの生活は悲惨でした。日本を除くと、そのような戦地に送られた慰安婦の大半は朝鮮半島から送られていました。当時の朝鮮半島は日本の統治下にあり、彼女らの斡旋や管理などはほとんど彼女らの意思に反し、口車に乗せられたり無理強いされたりなどによって実行されていました。(注:なんで同じこと二度言うねん)」
1993年以降、この慰安婦制度が大半の犠牲者が生まれた韓国と中国でどのように運用されていたのかについて研究が深まっていったことに加え、我々は日本軍がその占領範囲を広げたフィリピン、インドネシア、シンガポール、サイパン、グアムなどでもどれほどこの制度が援用されたのかを深く知りました。
しかしながら2014年春、当時発信した官房長官の名前が付けられた「河野談話」として知られる教書を安倍首相が「見直す」と発表したことにより、理解と共感を深めようとするあらゆる作業は、特に日本と韓国の間で破滅的なまでに頓挫してしまいました。今年は70周年(注:何の70周年なのかくらい書けバカ)という重要な節目となる年であるのに、東京、ソウル間の関係は「過去最低」とまで評され、2015年6月22日にソウルと東京は国交正常化50周年を祝うはずであることからその関係はなお一層注目されています。
我々はこの声明文全文を下記に英語、日本語それぞれで配信致します。この声明文はアジア研究者を対象として毎年シカゴで開かれるオープンフォーラムの2015年5月の会で、日本国外の日本研究者の間で協議して作られ、当初は英語版のみで公開されたものです。この声明文の主眼は、署名者は過去長い間証明されてきた歴史を民族主義的な価値観で捻じ曲げようとする行為に対し最大限の努力でもって拒否するということを明示するということです。
この声明文の結論には、我々が後世に残そうとする過去の記録を学ぶ今日における世界中の生徒に対し、署名した我々全員は「可能な限り完全かつ偏見のない過去の過ちの清算」を残すことについて責任を分かち合うという、視点でもってまとめてあります。
(和訳終わり)
<安倍首相に対する明確な悪意アリ>
最初の翻訳同様に荒い訳なのでところどころ間違っているような箇所もあるかと思いますが、全体的な概要位なら私の翻訳でもカバーできてるかと思います。
それでこの前文ですが、声明文本文はマイルドにまとめられていたもののこちらは安倍首相に対し明確に非難する内容となっており、執筆者は安倍首相に対し明確な悪意を持っていることが伺えます。声明文本文では一度しか出てこない安倍首相の名前が前文では何度も出てきており、特に具体的に非難めいて書いている箇所としては、以下の三段落目の末文です。
「(この声明に署名した)学者は安倍首相に対し、従軍慰安婦制度は軍隊によって大規模かつ規則的に、また植民地や占領地の若くて貧しく、そして無力であった女性に対する搾取によって運営された著名な制度であったということを公に認めるよう求めます。」
ここではっきりと従軍慰安婦は日本政府の関与のあった制度だと認めろと書かれてあります。まぁこれ自体はそもそも議論にならない箇所だと私は思うのですが。
またここだけでなく終わりから三段落目も河野談話関連で安倍首相を名指しで強い口調で非難し、「過去長い間証明されてきた歴史を民族主義的な価値観で捻じ曲げようとする行為」と書くなど悪意というか敵意満々です。
<結論>
結論としてはあの声明文は前文とセットで読むとすれば、安倍首相を非難する文章だと言って間違いなく、東洋経済の記事は読者をミスリードする内容と言われても仕方ない気がします。そもそもあの記事、記者の質問と声明文執筆者の回答がほとんど噛み合ってないひどい内容だし。
それにしてもなんで日系メディアはこの前文を翻訳してくれなかったのか、余計な手間かけさせやがってと思うにつけこの点が私にとってむしろ疑問です。
また声明文本体がマイルドな表現に抑えられていたことについては、執筆者が何かしらの意図をもってそうしたのではないかと思えます。というのもあの声明文はタイトルからして「日本の歴史家を支持する声明」とよく意味の分からないもので、本文も具体的に何が言いたいのか全体を通して曖昧な表現が貫かれていて読んでて激しくイライラさせられます。どうしてこういう書き方をしたのかというと、署名者を増やすためだったりとか、集めた署名を別目的で利用するつもりだったのか、そういうような意図があったのではないかと勝手ながら私は推測しています。
最後にこの声明文に対して私の意見を述べると、やっぱり偏見の強い主張であるかのように感じられ、産経新聞同様に相手にする必要のない声明だと思うしここに署名した学者連中はあんま宛にならない連中だとも思います。少なくとも日本は歴史研究において周辺国の様に何かを主張することに対して弾圧はしていないし、従軍慰安婦問題に関してはこの団体が引用している解説文書をみると明らかに事実と違う内容が書かれています。
あとこれは愚痴になりますが、日本でもそうですがどうしてアカデミック関連の文書はああも読み辛くてわけのわからな言い回しが多いのか、全く以って理解できません。単純に自分の技量不足かもしれませんが今回訳した文章は非常に手間がかかり、昨晩から今日の夕方まで「ファックファック」とずっと呟きながら、非常に不機嫌な状態で翻訳し続けました。なるべく自分で翻訳したくなくてどこかのメディアなりブロガーが翻訳してくるのを一ヶ月も待ったというのに、なんで誰もやってくれなかったんだろう。