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2016年11月17日木曜日

あの頃は水木しげるがいた

 今月の文芸春秋に、去年一月に逝去された水木しげるの細君とその娘二人による鼎談記事が掲載されていました。三人とも「まだお父ちゃんが亡くなった実感がない」と語っており、恐らく家族以外のほかの人にとっても同じような感想が持たれるのではないかと思います。

 この鼎談によるとなんでも布団につまずいて転んで頭を打って手術してから意識がなくなった後、一切何も話すことなく亡くなったとのことです。この死に方についてご家族は寂しいと思う反面、本人としてはある意味満足な形での自然死だったのではないかと受け取っています。バイタルが弱くなりいよいよという際には医師から延命治療を受けるかと尋ねられたものの生前からそうした物は拒否する姿勢を示していたこともあって提案は拒否し、そのすぐ後に亡くなったという顛末も書かれていました。

 こうした逝去時の顛末に加え生前の頃の話も語られており、個人的に印象に残っているのは双方ともにライバル視していた手塚治虫への態度で、娘たち曰く本人らは同じ時代に漫画業界でしのぎを削り合った戦友だと思っていた節があり、ラジオで手塚の逝去を聞いた際には、「ああ、逝ったのか手塚……」と呟き、葬儀にも出向いたというエピソードを披露していました。
 この二人の関係は若い頃に手塚からやっかみに近い文句を水木が受けたことは事実でそれを以って終生仲が悪かったようにも言われていますが、実際にはお互い連絡を取ろうと思えば取れるような関係で、水木の娘が手塚のサインを求めた際も、「今度頼んでおく」といってもらってきたこともあったそうで言われている程は仲が悪くなく、実力についても双方認め合う中であったことも間違いないでしょう。何気にスランプだった時期もある程度被ってるし。

 なお少し蛇足ですが、水木の命日は「ゲゲゲ忌」と呼んで関係者やフォロワー同士で何かすると報じられていますが、素直な感想を述べるとものすっごい語呂が悪くて発音し辛いように思います。それだったらもっとストレートに、「水忌しげる」でいいんじゃないのと密かに考えています。

2016年11月16日水曜日

ゲームレビュー:ZERO ESCAPE 刻のジレンマ

 またゲームの話で申し訳ないのですがこの前クリアしたので折角だし。

ZERO ESCAPE 刻のジレンマ(Wikipedia)

 今回紹介するのは「極限脱出シリーズ」と銘打たれた三部作の完結篇に当たる、「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」というゲームです。この作品というかシリーズは「極限脱出9時間9人9の扉」、「極限脱出ADV 善人シボウデス」、「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」の三部作構成となっており、ストーリーも時系列でつながっています。
 私は一番最初の「極限脱出9時間9人9の扉」は遊んでおらず「善人シボウデス」からプレイしており、こちらを去年にクリアした当時にはレビュー記事も書いています。このシリーズがどういうゲームかというといわゆる「脱出ゲーム」で、閉じ込められた部屋の中で仕掛けを動かしたり、手がかりを見つけたりして部屋から脱出するというのがメインとなっているのに加え、また部屋に閉じ込められる前後で複数の選択肢から次の行動なりを選んでその後の展開が分岐するというアドベンチャーゲーム的要素も混じっています。

 シリーズ全般に言えることですが、脱出ゲーム部分の所が非常によく出来ているというか「難しすぎず簡単過ぎず」というくらいに難易度が安定しており、詰まって全く脱出できないということはないもののそこそこ頭を使わされ、なんていうか頭の体操にもってこいな内容になっています。また脱出ゲームに使われるステージも豊富に取り揃えられており、前述の通りにストーリー分岐によって挑戦する部屋が変わり、「早く次の部屋に閉じ込めろよこの野郎!」と言いたくなるくらいに脱出が面白くなっていきます。
 ただそうした脱出ゲーム部分はもとより、全体の脚本というかストーリーの方が評価が高いでしょう。このシリーズはいわゆるループ物に当たり、何度も何度も過去に戻ったり別の時間軸に飛んだりしながら最後の最後で全体の謎が一気に解き明かされる構成となっており、どんでん返し的な結末は毎回意表を突かれその評価も際立って高いです。「善人シボウデス」もこの辺がよく効いており、続編が出たら必ず買おうと決めたくらい個人的にはまりました。

 そんなわけで「善人シボウデス」が発売されてから四年、私が遊んでから一年経ってようやくシリーズ完結作の「ZERO ESCAPE」が今年発売され、私にしては珍しく定価でガツンと買ってやりました。ゲーム全体の仕組みについて先に述べると、本作も脱出ゲームに一応は分類されますが、どちらかといえば選択肢を選ぶアドベンチャーパートの方に重きが置かれており、これまでとは逆にアドベンチャーゲームに脱出ゲームがおまけでついてきたかのように思えました。相変わらず脱出ゲームの難易度は絶妙だけど。
 次にストーリーについてですが、シリーズ完結編ということもあって過去二作で伏線として真相が明らかにされなかった謎については一応ちゃんと解答が出されます。ただ決してハッピーエンド的な内容に終わらないため、自分を含めほかの人のレビューを見ててもなんかもやもやとしたものを抱えている印象があります。

 あと宣伝ではシリーズ作品ではあるものの本作からプレイしても特に支障はないなどと謳われていますが、はっきり言ってこれは嘘もいい所で、前作「善人シボウデス」は最低でもプレイしておかないと全く話についていけなくなるかと思われます。最初に述べた通りに私は第一作目の「極限脱出9時間9人9の扉」は遊んでいませんが二作目は問題なく楽しむことが出来ました。しかし三作目の本作についてはただでさえややこしい話がさらにややこしくなり、また登場人物9人中5人が前作、前々作の登場人物でありその背景なりがわかっていないと完全に置いてきぼりとなるため注意が必要です。

 さてここから私個人のこのゲームに対する感想になりますが、一番目についたのはその暴力描写でした。前作「善人シボウデス」でも登場人物が死に至ることはよくある、っていうか最終的にはほぼ全滅することが多かったですが、その死に方は大半が薬殺で、あってもナイフで刺されるくらい見た目にも比較的ソフトでありました。
 しかし、本作は一味違うというか、はっきり言って桁が違いました。「バトルロワイアル」よろしく爆発する首輪が出てきて爆発後の首のない死体もかなりモロに表示されるほか、硫酸なんて目じゃないくらいやばいフッ酸シャワーを浴びせかけられ、後にはなんか赤い肉片らしくものが排水溝に流れるところも出てきます。チェーンソーでぶった切られるのも普通ですし、あと脱出ゲームの探索中、「なんやこれハロウィンのグッズかいな」と思わせられる妙なものがゴロゴロ転がってるかと思いつつ部屋を脱出したら、さっきまで一緒に行動していた仲間の生首が出てきて、「え、もしかしてさっき部屋にあったバラバラの手足や胴体ってこいつの?」と、後から血の気が引く演出もあり、心臓の弱い方には割と真面目にお勧めできないレベルです。
 なおシリーズ皆勤賞の倉敷茜というキャラクターについては、本作ではなんか返り血ばかり浴びているような気がしました。

 次に気になったのはビジュアル面です。アドベンチャーパートではフルCGのキャラクターが情景に合わせて動きつつしゃべるのですが、正直な所あんまり出来は良くなく、造詣がよく出来てるキャラとそうでないキャラで差を感じました。これだったらまだ前作のような画面構成の方がよかったような。
 そしてストーリーについてですが、前作も何もわからないまま謎の施設に閉じ込められるという世界観であったもののキャラたちの間ではまだ全体的には明るさがありましたが、今回はかなり陰鬱で、一部キャラクターが悲壮な決意で臨んでいるのもありますが序盤から一歩間違えれば誰かが確実に死ぬという状況にあるため、かなり内容な重苦しいです。まぁこの雰囲気は悪くありませんが。

 逆に致命的だったと感じたのは、本作からの新キャラが全く好きになれなかったところです。先に述べた通り本作では合計9人のキャラのうち前作、前々作に登場したキャラが5人続投していますが、新キャラ4人のうち、誰とは言いませんが2人のキャラが性格的にも全く共感出来ず、おまけにビジュアルの造形もかなり悪いこともあって見ていてストレス感じるくらい鬱陶しかったです。前作なんかほぼ全キャラがいい味出してたのにこの点は非常に残念な所です。
 そしてストーリーの結末についてはやはり大どんでん返しで、確かにあっと言わせる結末に結び付きますが、個人的には前作には及ばなかったというか、やや展開が強引に感じるところもありクリアした際の感動は前作のが大きく、完成度で言っても前作を越えなかったというのが私の評価です。

 最後に声優談義ですが、前作ではヒロインの声優を演じていた小見川千明氏は今作でも続投しているものの、キャラの立ち位置が変わったこともあり前作ほど演技に特別感じ入ることはありませんでした。一方、準ヒロイン……今作ではもしかした正ヒロインと呼べるかもしれませんが、そのキャラを演じた能登麻美子氏については、その声に狂気を感じました。ゲーム内では能登氏が演じるキャラがやや錯乱というか発狂に近い状態となるシーンがあるのですが、そのシーンにおけるセリフは耳にするだに背中が総毛立つというか、なんていうか目の前でガチな夫婦喧嘩が繰り広げられているのを見るかのような居心地の悪さを感じるほどで、感情がこもった演技というよりは狂気がはらんだような声で聴いてて本当に怖かったです。
 なお前作でも能登氏が演じるキャラが絡むエンディングがあり、そのエンディングが一番ゾクっとさせられました。能登氏が競争激しい声優界で十年以上もトップ声優として一線張り続けている理由が、今回やったゲームだけで十分によくわかりました。

2016年11月15日火曜日

日産自動車サイトの致命的な価格表示間違い

 何故か知らないが気温もめっきり冷え込んだこの時期に自宅内でダニがやたら発生し、最近になってパソコン使用時に使う箱型の椅子が感染源だとわかりましたが、一時期は座っているだけで尻に画鋲刺される様な痛みが走りっぱなしで嫌でした。あまりにも腹立ったからアイロンかけて根絶しようとしたけど、効果が一時的で長続きせず、この際だからパソコンデスクと椅子を新調しようかとも検討しています。

 話は本題に入りますが、ちょっと所用で電気自動車市場についてやけにみっちり調べる羽目となり各国の補助金制度とか各電気自動車の性能や価格を調べていた所、とんでもない事実を発見してしまいました。

<横長画像(PC閲覧時)>

<縦長画像(スマホ閲覧時)>

 上記の二枚の画像はどちらも日産自動車サイト内で、日産の電気自動車「リーフ」を購入した場合に国からもらえる補助金額を考慮した販売価格を表示、説明した物です。

 何故画像が二枚もあるのかというと画面が横長か縦長かで切り替わるためですが、注目してもらいたいのは「横長」の画像の「参考2 メーカー希望小売価」の行です。もう説明するのも面倒くさいのではっきり指摘しますが、車両本体価格の表示が間違っており、横長画像では「312.228万円」と書かれてありますがこれはその上の30kwhバッテリー搭載車の価格で、24kwhバッテリー搭載車の正しい価格は縦長画像にある「272.808万円」です。
 しかもこれ、本体価格が間違ってるもんだからその後の計算式も「312.228-26.4=246.408」という思わず首をひねる解となっており、よくもまぁこんな間違い、しかも本体価格と補助金を説明する重要な表示をこのままアップしたもんだと、最初に気付いた時は思わず声が出ました。っていうか本当に誰もこれ、アップロード前にチェックしなかったのだろうか?あとアップされた後も気づかないもんだろうか?

 別に日産には恨みはないし嫌ってる会社でもないので殊更に日産を悪く言うつもりはありませんが、あの日産ですらこういうミスをやるんだなと正直驚きました。「だったら俺だってたまには間違ってもいい」などと妙な自信につながります。
 日産の広報にそっと「間違ってるよ(´^ω^)」と教えてあげてもよかったのですが、教えたところでお礼は言われるだろうが次につながることもないし、ブログでネタにした方が絶対得だという打算が働いたためここでこうして記事に仕立て上げました。ごめんよゴーン。

 なおこれは日産が悪いわけじゃないのですが、今回電気自動車の補助金政策をいろいろ調べていて思ったことは補助金の種類が非常に多くてわかり辛く、また購入する場所によって自治体からもらえる補助金額が数十万円単位で変わるなど複雑すぎるきらいがあり、わかりにくい制度がユーザーの電気自動車購入を阻んでいるように思えます。それこそばつっと「1台100万円プレゼント」みたいに国が一括して払ってやればよかったと思うのですが、こういう風に考える当たり自分もやっぱ広告屋の血を引いてるもんだなと思えます。

2016年11月14日月曜日

中国人と大阪人に共通するDNA

 時は2010年。中国に初めて現地採用で渡る直前の私は姉の結婚式で会った従姉妹から、「あんた中国行ったら中国人に殴らるれんちゃう?」と、心配そうに声をかけられました。「いくらなんでも中国人もそこまで野蛮ではない」とやんわり否定しましたが、多分今でも中国に来たことがなければ、中国で日本人だとばれると殴られたりするのではと思っている日本人は少なくないと思います。

 時は変わって2012年、杭州にあるファッキンなハーネス組立工場を4ヶ月で辞めて上海にある日系新聞社で経済記者を当時やっていた私は今後日本は観光産業を柱にする必要があるとの信念から日本政府観光局(JNTO)の上海支部を訪れ取材を行っていました。どうでもいいですが星野リゾートの採用面接時にこの時の話したらすごいつまらなさそうに聞かれた上に落とされました。
 その際に快く取材に応じてくれたJNTOの方から、「こんなこと言うと日本人からすればおかしいと思われますが、中国人たちは日本に行くと日本人に殴られるとか本気で信じてるんですよ」ということを教えてくれました。この話は決して誇張ではなく本当の事実で、私自身も中国人から話を聞いているとそう考えていたという人が非常に多く、それだけに中国人が旅行で日本を訪れたら日本が思ったより、っていうよりかなりまともな国で拍子抜けするということをよく聞きます。

 話はJNTOへの取材時に戻りますが上記の話を聞いた際に私は、「そんなこと絶対あるわけないのにねぇ」と言葉を返しつつこの時一瞬、(大阪じゃあるまいし……)という言葉が密かによぎりました。

 大阪の名誉のために一応言っておきますが、いくら大阪でも路上で突然ぶん殴られたりするようなことは多分ないと思います。ただ昔、スーパーファミコンで発売した「初代熱血硬派くにおくん」という大阪を舞台にしたゲームでは路上にいるヤンキーはおろか、サラリーマン、OL、おばちゃんなどが脈絡なく主人公のくにお君に絡んで襲い掛かってくるので片っ端からなぎ倒さなくてはならないゲームがありました。しかもミナミに近づくほど敵が強くなってくるなど妙な所でリアルでしたが、発売当時に特に大阪からクレームが出たという話は聞いていません。

 私はかねてからこのブログで中国人と大阪人は気性が似ていて何故か馬が合うということを主張し続けており、具体的に共通する特徴としては「せっかち」、「思ったことをすぐ口に出す」、「声がでかい」、「目先の利益に飛びつくなど」、「なんでも大袈裟」などがあり、これらは中国人にも大阪人にも確実に当てはまる特徴ではないかと個人的に考えています。

 それで話はまた戻りますが、実は先日に民族系統に詳しい知り合いからちょっと面白い話を聞きました。その話というのも日本人の民族系統に関するDNAについてで、日本人は大きく分けて縄文系、弥生系の二種類にDNAが別れており、このうち弥生系は近畿地方に集中していて近畿地方から離れれば離れるほど縄文系のDNAが濃くなるとのことです。このDNA分布は暗に近畿地方の人間は大陸から日本列島へ渡ってきた渡来系のDNAが濃いことを示しており、系統的にもやはり近畿の人は大陸に近いと考えられるそうです。

 そのように考えると私が主張するように中国人と大阪人の気質が近いというの案外的外れなものではなく、DNA的にも似通っている影響と考えられるかもしれません。また最初の「路上で殴られる」と思ったことも、案外このDNAの相似が影響していたのかなとふと今日思いました。

  おまけ
 上海人の友人に聞いたところ、先に上げたゲームを含む一連の「くにおくんシリーズ」を遊んだことがあったそうです。もしかするとかつて日本の小学生たちがゲームを通して、「インド人は手足が伸びて火を吹く」と勘違いしたように中国の子供たちもくにおくんシリーズを遊んで、「日本人は相手が死ぬまでドッヂボールをぶつけ合う」、「水泳中に鉄アレイを投げつける」、「アイスホッケーではスティックで殴り合う」と勘違いしたことが上記の「路上で殴られる」という勘違いに繋がったのかもしれません。

2016年11月11日金曜日

小池都知事のかわいいインタビュー

「朝日だわねえ…」小池百合子が苦笑 AERA編集長が聞いた“タカ派”の真意(AERA)

 また手抜きな記事ですが今日見たこの記事が面白かったので紹介します。
 前に固い記事で私は小池百合子都知事が以前に文芸春秋に寄せたコラムが面白く、なかなかに分析力のある人だと感じてそれ以来ずっと評価していることを書きましたが、今回のこのインタビュー記事でも切り返し方が上手く、具体的に挙げると、

「──都庁や都議会をブラックボックスと断じました。

 ブラックボックスを開く前に、エンプティーボックスが見つかっちゃった(笑)。」

 というようなやり取りがあり、やっぱり頭いいなぁこの人と改めて感じさせられました。
 ただそれ以上に面白かったのは最後にある、「小池都知事に聞きたい20の質問!」みたいなコーナーで、「Q1.尊敬する政治家は?」に「サッチャー・英元首相、サダト・エジプト元大統領」と挙げていて、「お、サダトやったら俺と同じやな」と思って続きを読んで行ったら、「Q2.好きな戦国武将は?」という質問に対して、「蓮如」と答えており、「武将じゃないじゃん!」と心の中でツッコんでしまいました。
 その後も時たま妙な回答が出されており、

「Q7.休みの日は何をしていますか?
寝ている

Q8.「眠る」以外のストレス解消法は?
ただただ眠る」

 と睡眠に対してやけに深いこだわり方を見せたかと思いきや、「Q17.今の職業以外では何になりたかった?」という質問に対して、「子供の頃はデパートでプレゼント用にきれいに包装紙で包む人」と、また妙にかわいらしいというか変に細かい職業を挙げてきてやっぱこの人只者じゃないと思いました。

2016年11月10日木曜日

江戸時代の化け猫騒動に関する誤解


 上の写真はまたネットから拾ってきた江戸時代の化け猫を描いた絵画ですが、猫の表情がなかなか良く捉えられており個人的に気に入っているので何故か保存してしまいました。私の感覚だとこの表情はなんとなく機嫌がいい時で、普段はじゃれないくせにこういう時は何故か自分からじゃれてくるような時だと思います。
 話は本題に入りますが江戸時代に猫と言ったらそりゃもちろん鍋島藩の化け猫騒動ってことになるので今日は現代人が考えている化け猫騒動に関する誤解を指摘しようと思います。

化け猫(Wikipedia)

 一般的に認知されている化け猫騒動と言うと、江戸時代のとある武家の主人がつまらない理由で手打ちにされた後にその母、もしくは奥方が後を追って自殺し、その家で飼われていた猫が主人を手打ちにした上役の武士に復讐するため化けて出るというのがよくあるパターンです。
 こういった化け猫話のオリジナルは江戸時代に作られた講談からなのですが、出版されるやあまりの人気ぶりから芝居にも取り上げられて非常に流行したそうです。その講談の中で舞台となる地名には「嵯峨野」という実際に京都にある地名が使われているものの、これは暗に「佐賀の」と読めるようになっており、当時佐賀を治めていた鍋島家が実質的な舞台だと当時誰もがわかってたそうです。

 そもそも何故鍋島家が化け猫騒動の主役に据えられたのかと言うと、戦国から江戸時代にかけて鍋島家が成立した背景に理由があります。鍋島家の実質的な開祖とされる鍋島直茂は元々、北九州一帯に勢力を広げた龍造寺家の家臣でした。しかし龍造寺家の当主であった隆信が島津家との戦いで戦死してしまい後に残された若い世継ぎとともに直茂は自分が家宰を仕切って隆三氏家を盛り立てようとしましたが、豊臣秀吉や徳川家康といった時の権力者からは高く評価されていた直茂の方が実質的な領主であるように扱われ、龍造寺家も直系の跡取りが妻を殺した上で自殺してしまったことにより成り行きから直茂が引き継ぐこととなり、龍造寺家を引き継ぐ形で鍋島家が大名となりました。

 この過程は当時からも龍造寺家を鍋島家が乗っ取ったと見られており、鍋島家には龍造寺家の怨念が向けられているなどとよく噂されていたそうです。この噂に乗っかる形で化け猫騒動の講談が作られて大ヒットしちゃったもんだから、はっきりと名指しこそされてなかったものの鍋島家が、「非常に迷惑なんですけど!」と抗議を入れたため芝居の方は上演中止となったのですが、これが返って「やっぱりあの話ってマジだったんだ!」と、余計に真実味があるように思われてしまい、「鍋島=化け猫」という図式が広く定着してしまったそうです。

 なので鍋島家で実際に化け猫が出たという事実はなくあくまで講談の中のお話なのですが、同も聞くところによると北九州では、「うちは化け猫騒動の鍋島家ゆかりの家だから昔から猫を飼うことが出来ない」などと主張する輩が現代にもいるそうです。具体的に名前挙げると漫画家の柴田亜美氏が自分で言ってますが、そもそも化け猫騒動は現実には起きてない架空の話なので猫を忌避するという伝統が江戸時代とかにあったとは正直思えず、どちらかといえば箔をつけるために明治以降から使われだしたレトリックなのではと個人的に考えています。

 この例と同様によく瀬戸内海沿いの村上性の人が「うちは村上水軍に連なる出身だ」などと言う人がいますが、当の村上水軍は戦国時代に解散されたことを考えると真実味はやはり薄く、その動機としたらやっぱり家名に箔をつけるためでしょう。大体、歴史的な家系をきちんとした根拠なしに主張する人の大半は、そんなに悪意はなく主張してるのだと思いますが基本的には疑ってかかるべきでしょう。


 化け猫は存在しないと言っておきながらですが、こんな場面に遭遇したら、「こいつ化け猫なんじゃないか?」と疑ってしまうことでしょう。にしてもバランスいい猫だ。

米国の大統領選挙結果について

 前説は不要だし今日もちょいちょい世を忍ぶサラリーマンとしての仕事が遅かったのでとっとと本題に入りますが、今日開票結果が出た米国大統領選挙で「ヒラリー氏優勢」という日本の報道とは異なりかねてから暴言で世界中からいろんな意味で話題となっていたトランプ氏が次期大統領に当選しました。

 この結果、というより日本の事前報道については木村太郎氏が述べている通りに日系メディアの国際報道はかなり偏りがある上に結構レベルの低い人がやっていることが多く、私自身も信用できないものと考えているためトランプ氏が優勢かどうかはわからないもののヒラリー氏が優勢という報道は必ずしも正しくないと信じていなかったので、「想定外の番狂わせ」という日系メディアほどの驚きは現在抱いていません。むしろ選挙戦に入って以降、ヒラリー氏が演説をすればするほどアンチ層が増えているように感じていたため、トランプ氏が勝つ可能性も十分にあるのではという気もしていました。
 なお職場では今日、大統領選の結果を受けて市場が円高へ急激に振れたことにより出向できている日本人社員らが悲鳴を上げていました。

 話は今後に移りますが、まず市場については誰が言い出したか知らないけどうまいと思う「もしトラ」こと「もしもトランプがアメリカの大統領に当選したら」というトランプショックが取り沙汰されており、実際に今日は日経平均株価が大暴落しました。ただ私個人の予想ではこの株価の下落は一時的なものでむしろ下落した今は株を購入するチャンスだと思え、円高はしばらく続くかもしれませんが私自身は比較的楽観視しています。
 このような予想をする根拠として私自身は、トランプ氏が大統領選挙中に主張していた過激な政策はどれも現実離れしていて実際には実行できないだろうと見据えているからです。トランプ氏自身は政治家を含む公職には一度もついておらず行政経験は皆無に等しく、また選挙戦でのツッコミに対する対応などを見ている限りだと政治的、国際的知識にも薄いことは明白です。となると彼が大統領に就任した後は誰が政治を運営するのかと言ったらこれまで通りに「ホワイトハウス周辺の政治プロ」達しかおらず、今後の政策もこれまでから大きく軌道修正されることはないと見ています。

 逆に、比較的行政に長けたヒラリー氏が当選していれば話は違っており、しかも彼女は初めて大統領選に出馬した際には同じ民主党内で指名候補を争っていたオバマ大統領を共和党以上に激しく非難し続けていたことがあり、私の中のイメージだとどうも一つの内容に意識が集中して周囲が見えなくなる傾向があるように思え、こういう人が大統領に来られるとやり辛いよなぁとすら考えていました。それに比べるとトランプ氏であれば周辺にどんな人物が来ているかで方針が見え対策も立てやすいだけに、言ってることは過激でもいちいち相手にしなければ日本側としてはやりやすい相手だと思えるだけに比較的安心できます。逆を言えば、政治的にやり辛い相手と言うのは「次に何するかわからない」ような人間で、具体的にいえばプーで始まる大統領です。

 恐らく明日の報道ではトランプ氏が大統領になってどうなるのかなどという特集が各所で組まれるでしょうが、私がここで声を大にして言いたいことは「一般市民にとっては何も影響はない」ということで、要するに必要以上に実現するかどうかも分からない未来に右往左往するのは勿体ないっていうことです。恐らくどこも危機感を煽るようなことばかり書いてくるでしょうが、トレーダーならまだしも関係ないのに「これからどうしよう」などと心配するのは気苦労が増えるだけだし、「なんや面白いおっさんが大統領になってこれから面白くなりそうやな」程度に眺めるのが精神衛生上にもプラスで、なおかつ余計なフィルターに実像をぼかされるのを防ぐやり方だと思います。
 なお最後に一つ皮肉を述べると、今回の大統領選の結果に一番うろたえたは政府関係者でもトレーダーでもなく、沖縄で基地撤廃運動を煽っている連中じゃないかと思います。最初に書いたようにトランプ氏の主張はどれも実現性はなく沖縄からの米軍全面撤退も実際には有り得ないことですが、今後この主張は明日の新聞などを通して広く影響力を持ち、日本人全体で国防についていろいろ考えるきっかけにはなると思え、それが連中にとっては望ましくない結果だろうというのが今日の私の意見です。