その違和感の意味に気が付いたのは、このところこのブログでプッシュしている「瞬きより迅く!」という空手漫画を読んでからでした。この漫画は以前にも紹介した通り、直線的動きの多い空手という競技で、視点や効果線が非常に効果的に使われていることで異例なくらいに立体感のある動きを漫画で表現していると自分は感じています。これ以前に漫画の立体感についてはあまり意識していなかったのですが、この漫画を読んでからというもの3Dゲームの視点じゃないですが、視覚をどう運用して見せるかがどれだけ重要かが少しわかった気がします。
話を戻すと、この「瞬きより迅く!」を読んでわかったこととして、大暮氏の漫画版「化物語」は致命的なくらいに絵に奥行きがないということに気が付きました。この点はバトルシーンに特に顕著で、対峙する二人のキャラクターを横側から水平上に描くコマが非常に多いです。敢えて例えればスト2などの2D格闘ゲーム画面みたいな構図が多く、奥行きを感じさせられる斜めからの視点、並びにコマ間の動きの見せ方が非常に少なく、ほとんどのコマが2D画面っぽい構図になっているような気がします。
しかも大暮氏の場合、背景の作画に関しても主線をはっきり描く傾向があり、その結果、遠近法が全く働かずというか全く使用していないため、余計に絵に奥行きが感じ辛くさせているようにも見えます。
こうした作画パターンのためか、1枚1枚の絵を見る時間が「瞬きより迅く!」と比べて非常に短いです。というのも絵に動きがあまり感じられないため、サクッと見終わっちゃうためです。さらについでに書くと、大暮氏はバトル中の顔面ドアップも多い気がします。
改めて他の格闘漫画と比較すると、やはりこの絵の奥行きが非常に重要である気がします。視点を動かしたり効果線を付けたりすることで動きを表現しつつ、立体感を作るということがこのジャンルでは特に重要である気がして、1枚1枚の絵は非常に美麗ながら、あまりにも動きの表現がない大暮氏の特徴に気が付いた時にはなんかいろいろ思うところがありました。
逆に、「瞬きより迅く!」の動きの見せ方は秀逸そのもので、前にも書いたけど後ろ回し蹴りのコマは何度も見返すくらい非常に綺麗に描かれていてびっくりします。一体どこでこういう技法を学んだのか、真面目にどっかで聞いてみたいくらいです。
なお動きのある絵に関していうと、その表現力でずば抜けていたと感じるのはやはり「頭文字D」のしげの秀一氏です。車などの静物を走っているように描くのは非常に難しいと言われ、実際に他のレース漫画を見ても全然迫力が感じられないのですが、「頭文字D」に関しては全く違和感なく車が走っている条件が読んでて浮かべられ、その表現技法は真面目にこの分野でトップであるという気がします。
その走っているように見せる表現ですが具体的にいうと、まずは「ギュォォオン!」などの効果音を鳴らす、次に車体の輪郭をぼかして書く、でもって最後に効果線を描くというのが非常に役割として大きい気がします。この点、さっきの大暮氏の背景じゃないですが、輪郭を明確に描き過ぎるというのは動きのある絵にする上ではかなりマイナスになるのかもしれません。
そのしげの秀一氏の今連載されている「MFゴースト」では最新のシビックタイプRが出たそうですが、今の時代はスポーツカーも少ないから車種選ぶのも大変そうな気がします。レース描写のよかった「カウンタック」という漫画では欧米系スーパーカーをガンガン出してたけど、公道レース的にはスーパーカーだとちょっとなぁ(´・ω・)