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2010年8月4日水曜日

過剰な消費者保護によって起こる弊害

 最近元気のない記事が続いているので、久々に手のかかる記事を書こうと思います。
 さて世の中経済々々とそれしかこの世にはないのかって言いたくなるくらいにみんなして経済を良くしなければと口々に言っていますが、単純に経済を良くする為にはどうすればよいのでしょうか。この経済を良くするための処方箋は時代によって異なり、戦前の日本であれば如何にして生産力を上げるかが最も重要視されましたが、近現代の日本においてはいかに消費力(主に国内の)を上げるかに注力されました。

 この生産力と消費力ですが、言ってしまえばこの二つのうち片方だけが良くとも経済が好転するわけでもなく、効率よく力強い経済システムをつくるためにはこの生産と消費が二つ噛み合って高い水準になければならず、これは言い換えるなら物やサービスを作って付加価値をつける生産者、それらを購入して消費する消費者それぞれが成長しなければ経済も成長しないという事です。先ほど近現代では消費力を上げる事に政府は注力していると書きましたが、これは現代日本の生産力に比して消費力が不足しているという考え方からの処方策です。

 このように消費と生産は車の両輪のよう揃っていなければいい経済にはならないのですが、生産者側、言い換えると物やサービスの売り手側の努力に対して近年の日本人消費者の行動や反応ぶりがこのところいささか目に余るというか、かえって全体利益を損なわせているのではないかと思うところがあります。もう早いところ結論を述べると、ちょっとこのところは政府や世間は消費者を甘やかし過ぎなんじゃないかと言いたいわけです。

 私がこのように思うようになったのも、先日に政府で100円ライターの販売禁止が検討されている事が一つの大きなきっかけになりました。
 事の起こりはこうで、小さい子供らを車の中に残しておいたところ、所有者である子供の親が置いていたライターを子供がいじくったのか車が炎上してしまい、そのまま数名の子供が火傷で死亡した事件が今年にありました。この事件が起こるや設立の初めからきな臭くは感じてはいましたが消費者庁が飛びつき、子供が遊ぶと危険だからしっかりとした対策がなされない限りは現行の100円ライターは全面禁止にしようと言い出しました。
 しかし100円ライターを子供に渡しても平気なほどの対策を行うとなると明らかに製造コストが跳ね上がり、現製造メーカーらは規制が作られれば廃業してしまうと主張したものの消費者庁はだったら廃業してしまえと言わんばかりに、今でも聞く耳を持っていません。

 そもそもの話、私はライターを子供の手の届く所に置いていたことこそが一番問題だと思います。厳しい意見となりますが子供が死亡した先ほどの車の炎上事件ではライターが置かれていた車内、さらには燃えやすい可燃物も置かれていたそうで、寝ていたとはいえ子供をそんなところに置きざりにしていたのですから同情こそするもののそれでライターを置いていたことが事故の原因とするのにはおかしさを感じます。

 またこの100円ライター同様、二年前の秋葉原連続殺傷事件で両刃のナイフが使われたことを受けてすぐさま一定の長さ以上の両刃ナイフが販売はおろか使用まで禁止されましたが、牡蠣の養殖業を携わる方によると閉じた牡蠣の殻を割って中身を取り出す際に細身の両刃ナイフが長年使用され続けてきたのですが、この新しい規制によってこのナイフまで使用禁止となり、使用していた場合には罰金刑が課されるようになってしまったそうです。

 100円ライターにしろ両刃ナイフにしろ、絶対的多数の人間、それこそ99%以上の人間が本来の生活上役に立つ使い方をしていたにもかかわらず、1%にも満たない不心得物が間違った使い方をしたのを受けて正直者99%に使用を禁止するなんて、どれだけ馬鹿な世の中なんだと言いたくなってくる話です。
 特に100円ライターについては私は煙草を吸わないものの、家で逝去した祖父母に線香を焚く際によく使いますし、突然の大地震やバイオハザードが起きてゾンビが街に溢れたりするサバイバルな状況下では非常に有用なツールになるので禁止されるなんてふざけるなと声を大にして言いたいです。まぁバイオハザードはともかくとして、線香に火を点けるのであればチャッカマンでもいいのではと言う声もあるかもしれませんが、それだとライターが駄目でチャッカマンがいいという論理がまたおかしい気がします。第一、煙草に火を点けるのもチャッカマンに変えたら余計に危ない気がするし。

 このように近年は何か事件や事故、しかも明らかに使用者側に問題があると思われるケースが起こるたびにすぐ規制がかかって関係のないほかの使用者も使えなくなるということが増えているように思えます。消費者保護といっては聞こえはいいですが実態的には単なるメーカーやまじめな使用者イジメにしかなっておらず、メーカー側もこうしたわけの分からない規制やクレームに対応しなければならないことを考えると社会全体に対して重いコストにしかなっていません。
 もちろん商取引上、生産者(販売者)の方が消費者に対して偽装や欠陥を秘匿することができるため基本的には消費者保護の姿勢を社会は持たねばなりませんが、過剰な消費者保護は生産者はおろか真っ当な消費者の利益をも阻害しかねないと私は考えます。

 特に近年は脅迫まがいのわけの分からないクレームをつける人間も増えており、消費者を保護する一方で真面目な生産者を社会が保護する必要性も現れてきたかと思います。生産者の側も商品やサービスを提供するからと言ってなんでもかんでも頭を下げても結局はそういったクレーマーを助長させることにしかならず、そろそろ正当なクレームと脅迫はしっかりと分けて、脅迫をしてくる人間に対しては「帰れボケッ( ゚皿゚)キーッ!!」って、時には怒鳴り返すことを社会も認めるべきでしょう。あくまで時にはだけれど。

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