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2016年11月7日月曜日

業種によって異なる付加価値に対する意識の違い

 このブログで何度も書いている通りに私は数年前に経済紙の記者をやった後で一旦日本に帰り、去年末まではプレスメーカーに品質管理として働いていました。勤務先もオフィスとかじゃなくリアルに油臭い工場で毎日作業着てはノギス片手に計測してましたが、今こうしてブログを書いている自分が一介のライターだとするならば、メーカーでの工場勤務経験を持つライターなんて普通はいないだけにかなりレアな経歴を持つに至ったと思えます。
 まぁゼネコン出身の記者もおり、何気にこの前日本であった人と共通の知人だったのでビビりましたが。

 鼻にかけるつもりはありませんが工場勤務を経験したことによって、完全に理解したとは言えないまでもマスコミ側では異なるメーカー側の視点もある程度得られたという自負があり、この視点はほかのライターと比較する上ではなかなかの差別箇所になると考えています。そんな自分に言わせるとマスコミとメーカー、というよりはサービス業従事者と製造業従事者の間にはある一点で明確に視点が異なっており、もったいぶらずに述べるとそれは付加価値に対する意識です。
 より具体的に述べると、サービス業従事者は業務において如何に付加価値を高めるかに意識が向く一方、製造業従事者は付加価値に対してほぼ全くそういった意識はなく、如何にコストを下げるかに意識が向きます。言ってしまえば前者は付加価値は変動するという価値観であるのに対して後者は付加価値は固定で、変動するのはコストだという前提があるのでしょう。

 実際に両者の業務を見比べてみれば一目瞭然でしょうが、サービス業ではコストといえるようなコストは基本的に人件費しかなく製造業とは違って設備費や材料費といった原価を意識することはほぼ皆無です。逆に製造業は常にそういった原価の変動に頭を悩ませる一方で、自らが製造して販売する商品は一旦契約で仕切値が決まると価格は固定されてしまい、仮に付加価値を高めようと品質の改善をしたところで客先からは「だから何?」と一蹴されて値上げ交渉なんて以っての外です。なもんだから自然と両者で付加価値に対する意識は乖離していくのでしょう。

 恐らく認識はしていなくても、上記の意見は勤務経験のある人間ならストンと納得して、意識の差に対する程度の違いは有れども異論を挟む人はいないと思います。私が見る限りは両者の差を「クリエイティビティがあるかないか」などと言う人はいますが、付加価値に対する意識を軸にする人は多分自分以外いないと思われます。
 その上で私からもう一言言えば、この事実を真に知るべきなのは就活やってる学生たちでしょう。大体の人は就職後に徐々にそれぞれの意識に染まっていくでしょうが、この業種によって異なる付加価値に対する意識を事前に知ることで自分が現時点で向いている職種なり業界なりをある程度絞ることができ、キャリアプランなども設計しやすくなる気がします。でもって中には、どっちか片っ方の意識しか持てない人間も確実に存在しており、そういう人なんかはまさにこの点に気をつけて職選びしないとえらいことになるでしょう。

 私なんかまさにそういうタイプで明らかに学生時代からサービス業向きでメーカーとかは全く向いておらず、でもってマスコミ業界がやっぱり合っていたと周囲からもよく言われます。ただそんな自分ですら工場で手に着いたらなかなか引きはがせないえらくねっとりした潤滑油をプレス機に注入してたりして数年間(しか?)働けたんだから気持ちの持ちようによってはどうとでもなるのかもしれません。

 最後に上記に上げた付加価値、というより付加価値とコストのどちらに意識を置けるかについて、両方に意識を置ける人間というのはどうのかという問いについて私なりに答えると、はっきり言ってそんな人間は普通に存在せずいたとしたら超人でしょう。私のようにある程度は逆方向の視点を持つことはできるかもしれませんがベースとなる視点はやはりどっちか一つに偏り、敢えて表現したら今の私もサービス業の視点から製造業の視点を覗いているに過ぎません。
 なおこと創業者に関して言えば間違いなく、メーカーにおいても付加価値意識の高い人間が多いと言えるでしょう。

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