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2017年5月31日水曜日
書評「東芝解体 電機メーカーが消える日」
いつもAmazonの商品バナーは下部につけていますがたまには商品説明もかねて上からつけてみようと思います。まず結論から言えば非常に「買い」な本で、日系エレキ業界の現状を量る上では文句なしにお勧めできる内容です。
この本は私が「総理」というダメ本読んで勧めてくれた友人に文句言った後、「これならどうだ?」と訪問販売のセールスマンのように続けて勧められた本です。著者の大西康之氏はこれ以前にも「会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから」という本を読んでおり(勧めたのはまた例の友人)、その内容と取材ぶりにはかねてから評価していたのでこの本も言われるがままに手を取りました。
概要を簡単に話すと日系エレキ業界(電機と言わないのはシステムメインの富士通も入ってるから)の成り立ちから現状、そして何よりもその「親方日の丸」な構造について詳しく解説されており、さらに東芝やソニー、シャープなど各大手企業について個別に現状と今後について分析がなされています。長年エレキ業界に携わっていたという筆者名だけあってどのようにして紹介されている大手がのし上がり、そして衰退していったのかについてライブ感たっぷりに描かれてあり、特に富士通のニフティ売却について明確に「悪手」と評した上でその理由と背景を説明している点についてはよそではあまり見られない分析なだけに、読んでて大いに唸らされました。
そうした個別記事もさることながら、前半部に書いてある日系エレキ業界の構造こそがやはりこの本の肝でしょう。説明されてみるとごくごく当たり前の事実なのですが、逆を言えば指摘されない限りは気づきづらい「親方日の丸」の構造について、NTT(電電公社)と東電を頂点とする親子構造によって説明しており、具体的に述べるとNTTと東芝がそれぞれ通話料、電気料金という自分たちで自由に価格設定できる実質的な税金によって設備投資を行い、それらをNECや富士通、東芝や日立が受注することで成り立っていたと喝破しています。
しかしいうまでもなくこの構造は既に崩れており、それらがエレキ企業の衰退を招く一因となったと指摘しています。言われてみれば本当に簡単な構造ですが、恥ずかしながら自分は今の今までこうした構造を意識することがなかっただけに強く感銘を受けました。
このほか見どころとしてはソニーの出井時代について肯定的な評価がなされている点や、エレキの中で唯一の勝ち組と言われている日立の収益構造が先細っているという現状があり、内容的にはおっさんも学生もエレキ業界についてしっかり学べる内容になっています。
本来は少しは批判したりしないと書評として成り立たないのですが、この本については私から批判できる点は何もありません。前に読んだ三洋電機の本も見事でしたがそれ以上の鋭さを持って書かれており、あとがきにもありましたが著者の集大成的な本だと思えるので興味がある方はぜひ手に取ってもらいたいと思います。
おまけ
勧めてくれた友人に感想を伝えた際、第一声は「最初に出てきたお魚さんの絵がいい」でした。何故あそこでお魚さん使ったのかちょいちょい不思議ですが、不思議と私の心はがっちり捉えられてしまいました。
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