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2018年5月11日金曜日

物欲の科学

 電子書籍で「へうげもの」の1から3巻が無料配信していたので購入(つっても0円)して久々に読み返してみましたが、改めて面白い作品だと思え非常に楽しめました。作者の独特な感性と歴史漫画でありながら現代アートに通じるようなデフォルメされた描き方もさることながら、主人公の古田織部(佐介)の物欲全開な活躍というキャラクターには心動かされます。
 そんなこの作品を見ていて、よく人間の三大欲求は食欲、性欲、睡眠欲と言われますが、実際にはこれに「物欲」も入って四大欲求とするのが適切ではないかと思えてきました。ネットで見るとさらに名誉欲を加えた五代欲求を挙げる人もいますが、この名誉欲はちょっと外れるのではないかと思え私は支持しません。

 少しまじめな話をすると、科学技術の発達していない未開の部族間でも定期的に宝物を交換し合う行為は割とどこでも見受けられ、この「交換」という行為はある意味で物欲というものが人間の生理的欲求に根差していると伺える根拠となるように思えます。同様に教育を受ける前の子供たちを見ても他人が持っているものを欲しがったりする行動が見受けられ、この点もこうした考えを支持するように見えます。

 では食欲に対する食べ物の臭いに相当する、物欲を刺激するものとは何なのか。これなんて先ほどの子供の行動を観察すると見えやすいですが、まず「他人が持っているもの」は理由なく物欲を刺激されるポイントと言っていいでしょう。ましてやそれが「自分が持っていないもの」であればなおさらです。
 ここでのポイントとして「比較」という現象が働いているのが分かります。例えば同じ種類の物でも、他人の持っている物より自分が持っている物のランクやグレードが高ければ安心しますが、その逆だと不安というか落ち着かなくなり、単純に言って奪いたくなるわけです。少し話の発展が早いですが、ある意味でこれが「嫉妬」の原点かもなとも思え、物欲こそが嫉妬を生む張本人とも思えます。

 話を少し戻すと、物欲においては比較という仲介行為が凄い役割を果たしており、これは逆に言えば唯一無二の比較しづらいものだとあまり物欲は刺激されないということとなり、その点で言えば収集を競い合う「同好の士」という存在もまた物欲を刺激する要素となりうるでしょう。
 ただ、中には一人孤独にある特定種類の物品収集に精を出す人もいますが、こういう人も考えると次の要素に当たる「コレクション」というか、「完全網羅性」こと全種類を揃えたくなるコンプリート欲求も見えてきます。現在の私を例にとると、時間があるので軍事研究を兼ねて戦闘機のプラモを作り始めたところ、姉妹機がめっちゃ多いフランカーを全種類揃えたくなってきていますが、まさにこう言うコンプリートを自然と目指すのも何かの欲求と見るべきでしょう。

 このほか検討を深めればもっといろいろ見えてくるでしょうが、先に話をまとめると意外とこうした物欲に関する研究とか議論はあまり見ないなと思います。私自身以上の考えは今日帰りに歩きながら、あと途中で醤油ラーメン食いながら考えた内容で、多分似たような意見を言う人はいるでしょうが私のようなまとめ方をしている人は絶対いないでしょう。それにしても明後日の方向見ながらラーメン食べてる自分を店員はどう見てたんだろう。
 こうした物欲に対する考え方は使い方によってはマーケティングにもすごい活用できると思うし、また「へうげもの」のように人心掌握のツールとしても活用できるはずですが、あまりそうした使い方を提唱する人は見ません。そもそも体系的にまとめようとしている人もいませんし、なんていうかもったいない気がします。

 最後にこちらはまだあまり自分の中で検証をしきっていませんが、先ほどの「物欲からくる嫉妬」について、男性は形の無い物、女性は形の有る物に覚えやすい傾向があるのではないかと思います。この男女差はどっから来るのか、また暇になったら考えます。

4 件のコメント:

サカタ さんのコメント...

形のないものを欲しがる男性と形のあるものを欲しがる女性ですが、老子のいう有形無形の考え方だと、形のあるものはいつかこわれるが、形のないものは恒久的に存続するのだとしています。だとすれば、男性は恒久的に変わらないものを欲しがり、女性は一過性の欲求を満たすものを欲しがるという事でしょうか。

もしくは少し見方を変えて、堅いものほどすぐに劣化し、柔らかいものほどよくもつと考える。歯はいつか抜けるが、舌は余程の事がない限り存続する。ガラスは割れるが、ゴムは簡単には砕けない。などのように堅いものが必ずしも優位なわけではなく、また形のあるものが必ずしも優位なわけではないのでしょうね。

花園祐 さんのコメント...

 この箇所はそれぞれ同性が持つ、男性は地位や能力、女性はブランド品や付き合っている男性に対して嫉妬することが多いように思ったから書きました。へうげものに出てくる茶器骨董は形の有る物ですが、その形の後ろにある哲学や概念は無形で、この辺の考え方などが面白いです。
 内容が関連するかやや微妙ですが、「硬ければ脆い」という考え方を持っており、その辺を次の記事で書きます。

ルロイ さんのコメント...

男性の物欲は自己満足で済むもので、女性の物欲は他人と関わるツールとして使えるものという漠然としたイメージはありますね。
異性と付き合っていることを、女性は同姓に見せびらかしたがるが男性は同姓から隠したがるという違いもありますし、男性は絶対価値、女性は相対価値を重視したりするのかなと思ったりもします。

花園祐 さんのコメント...

 女性の知り合いにも言われましたが、やはり他人の所有物に嫉妬する傾向があるそうです。この辺の違いなどジェンダー論として面白いテーマだと思うのですが、他にやってる人とかいるかな?