上の写真は今日の晩飯に食べた鳥のあばら骨付近の肉です。元はビニールで包装され、調理済みながら鳥をそのまま開いたような割と露骨な姿でしたが、さすがにそのままだと食べづらいので包丁で切り分けて皿に盛り食べました。こういう料理は普段は食べないのですが、ガチ封鎖期間に大家からもらったこともあり、お湯で温めて食べましたがおいしかったです。
さてこの食べ物ですが上記の通り鳥のあばら骨肉、敢えて言うなら鶏肋(けいろく)です。この鶏肋は三国志に出てくる有名な単語で、多分三国志において最も有名な料理の一つでしょう。といっても、このほか出てくる料理といったら劉安の人肉料理くらいですが。
・鶏肋(Wikipedia)
詳しくは上のWikipediaにも書かれていますが、この鶏肋という言葉は建国されたばかりの劉備率いる蜀漢が、漢中という地域で曹操の魏国と国境が接し、激突した漢中の戦いにおける故事成語です。内容はというと、ちょうど全盛期を迎えていた蜀漢相手に魏は敗戦が続いていたところ、何の気なしに曹操は陣中「鶏肋」とつぶやいたところ、近くにいた楊修という人物が、「鶏肋は不味くはないけど食べるところが少ない料理で、負け続きの漢中のことを例えたに違いない」と判断して、曹操の真意を「撤退」と読んだエピソードが元になっています。
もっともこうした曹操の無意識を勝手に読み取って撤退準備を始めたことに当の曹操は楊修のことを薄ら気味悪く感じ、その他の理由もありましたが処刑してしまいます。どっちかっていうと、「才は才に滅ぶ」の意味合いも含まれているような気もします。
話は戻しますが、まさにその鶏肋をこうして食べていて、ちょうど今のウクライナがロシアにとって鶏肋となりつつあるなと感じたわけです。
ロシアからすれば、ウクライナは国境が接しており、旧ソ連時代の重工業を担った工場群があり、何よりも黒海に面すという地理的条件から、鶏肋同様に「うまみのある」地域です。しかし先月に攻め入って以降、当初の作戦目標を達成することができず、進撃も止まり、むしろ追い返されてきている有様です。
自分は軍事の素人ですが、この戦い、もはや万に一つもロシアに勝ち目はないでしょう。今日の報道によるとロシア軍7人目の将官が死亡したとされ、ただでさえ弱り目の指揮能力が今後さらに減っていき、さらに将官が前線に出ざるを得ず、死亡リスクも高まることは必至です。また開戦当初から戦闘機や戦車などの主力兵器が冷戦終結以降としてはあり得ないほど撃墜されており、ミサイルに関しても誘導性能を持つものはあらかた打ち尽くしているように見えます。こうした兵器は必要だからと言ってすぐ補給できるものではなく、戦前に備蓄していた量に限定されるだけに、開戦当初の突破力はもう得られないとみて間違いありません。
それどころか、ロシア軍は食料や弾薬にすら補給が滞っていると言われます。経済制裁と中国への米国による釘差しもあり、この辺の補給は今後もロシアは得られない一方、ウクライナ側は西側諸国より無限に近い補給を受け続けています。どうもポーランドの自分も大好きなミグ29のウクライナへの供与に米国も同意したと報じられていますが、仮に事実だとしたら今後さらに強力な兵器がウクライナ側に回され、反撃力を高めていくことでしょう。
一言で言えば、ロシアはこれから物資がさらに滞るのに対し、ウクライナは補給を受け続けられるため、現時点で致命的な打撃を与えきれていないロシアが勝とうっていうのなら、それこそ核でも使わないともう無理な状態にあると自分は見ています。また報道によるとロシア軍はキエフ向け兵力を割り引いてまだ戦況のいいウクライナ東部に集中させようとしているとのことですが、内心これも悪手である気がします。集中させるならキエフの方であり、キエフさえ落とせばまだその後の交渉に活かせますが、東部諸都市をいくら落としても長期的にはウクライナ側に奪還される可能性が高いと自分は見ています。
以上のような戦況分析から、ロシアにとって今のウクライナは上記故事成語にある鶏肋そのものであるように自分は感じました。今後、ロシアがどれだけ粘っても失い物が増え続けるだけで得られるものはほぼ皆無に近く、撤退が早ければ早いほど有利となるものの、曹操のような損切りはプーチンには恐らくできないでしょう。
今思えば、初回の停戦交渉こそがプーチンが政権を維持する上で最後のチャンスだったかもしれません。あの交渉で全軍完全撤退の代わりに各国の経済制裁中断を条件として得ていれば、まだワンチャン政権を維持できた可能性があった気がします。しかし今ここで撤退しても、ロシアに対する経済制裁は今後数年は続くでしょうし、政権崩壊にも至る大敗北にもなれば、戦犯の処刑、高額な賠償金、ウクライナ東部自治州放棄、所有兵器の制限などの条件が付いてくるでしょう。正直言って、今やウクライナの方が停戦交渉においてロシアが差し出すものを選べるイニシアチブがあるようにすら見えます。
自分は、名将というのは戦争に勝つ指揮官ではなく、負ける戦を最小限の損害にとどめる指揮官だと思います。上記の曹操も実は結構敗北していますが、どの敗北も致命的な打撃に至る前に切り上げており、結果的にしぶとく生き残って天下をほぼ手中に握るに至りました。日本でも織田信長なんかまさに同じ例で、彼も所々で敗北を繰り返しているものの、大負けする前に撤退や講和に持ち込んでビッグになってます。言うなれば、勝つ指揮官より負けない指揮官の方が強いでしょう。
先ほども書いた通り、今回の戦でロシアは20人いる将官のうち7人が亡くなっているとされます。これ以下の佐官や尉官級の指揮官ともなれば、その被害はもっと膨大である可能性があります。兵器面での損害もさることながら軍事系人材のこれほどの喪失ぶりを考えると、ロシアが開戦前の戦力を取り戻すにはこれから10年、下手すりゃ20年くらいの年月が必要になるのではとすら思います。兵員の喪失も、既にアフガニスタン侵攻時を上回っているとも聞きますし。
また今回の開戦をきっかけに、旧ソ連領内の東欧諸国の協力関係は空前なほどに強まっています。下手すれば戦後はNATOとは別に、ジョージア、バルト三国、ポーランド、ウクライナなどを中心に、対ロシア軍事同盟が作られるかもしれません。これならNATOじゃないんだからウクライナも入れるし、NATOに入っている国もしれっとその軍事同盟に入れておけばいろいろ楽しそうです。
また長く書きましたが、言いたいことを書くと今のロシアはもはや鶏肋状態にあるのと、もはや戦後秩序をどのように組むかと考えるような状況にも入ってきたのではないかというのが自分の見方です。日本にとって一番望ましいのは、国連においてロシアを常任理事国から追放するということだと思え、こうなるようにもう動くべきタイミングじゃないかと思います。
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