ただでさえ正当性なき侵略行為に対し銀行取引の凍結など経済制裁が強められていますが、仮にこの戦争がロシア側の目的達成に終わったとしても、これらの制裁により戦後にロシアは過酷な経済情勢が待っていることは必至です。
そのロシアにとって、唯一大きな後ろ盾と言えるのが中国です。開戦直後の対応の混乱ぶりから、中国外交部はもしかしたら本当に知らなかったのかもしれませんが、開戦前にロシアの天然ガスを購入することを約束したり、去年から小麦をはじめとする食料の輸入を増やしていた点といい、中国トップに関してはこの開戦を事前にロシア側から通知されていたとみてほぼ間違いないでしょう
なお開戦時期については北京冬季オリンピックの時期は避け、ロシアの想定だと48時間で決着つける予定であったことから、パラリンピック開催までには終了する予定だったのでしょう。その目算が崩れたことにより、中国外交部とかも対応をどうすべきか迷っているのだと見えます。
中国は現在までに国連のロシアに対する非難決議に反対または棄権を続け、直接的な批判を避け続けています。従って経済制裁後も、ロシアに対しエネルギー輸入をはじめとする経済的支援を続けることはほぼ確実だと私は見ています。
こうした中国の態度について、現時点でリスク要素と私が見ているのは米国から中国に対する経済制裁です。冒頭に書いた通り、現時点でロシアは明らかに国際法、特に平和維持に対する冒涜ともいえる行為を繰り返しており、ロシアに対し制裁を課すことに、反対する国は現在世界中でほぼ皆無です。しかしロシアに経済制裁をかけたところで、抜け道を用意する国が現れるとなると、まぁその制裁は効果をやや落とします。
はっきり書けばロシア側が中国に期待している点はそこで、中国がロシアから天然ガスを買うだけでなく、ロシアが諸々の貿易を禁止された後、中国経由で貿易できるようなパイプライン的役割を求めているはずです。それに対し、米国はどう出るかと言ったら言わずもがなで中国にも経済制裁を課してくると予想しています。
具体的には、「人道、平和に対する冒涜を行った勢力(ロシア)へ支援を行っている」ことを口実にするとみられ、ロシア政府、企業と取引を続ける中国企業をターゲットにした経済制裁を行い、同盟国にも同調を求めてくるのではないかと見ています。この場合、真っ先にターゲットになるのはかねてから米国が潰そうとしているファーウェイ、そしてエネルギー関連として中国の国有石油会社が挙がってくるでしょう。
私見として述べると、米国としてはかなり都合のいい口実ができるように見えます。中国がロシア側に立つことはほぼ確実であり、中国を弱らせるのに願ってもない制裁口実です。また中国そのものとの取引をすべて禁止するのではなく、「ロシアとつながりのある企業」に狙って制裁を課せることとなり、高い恣意性が持てます。実際につながりがあるかどうかは不問でしょうし。
また既に世界中でエネルギー価格が高騰していますが、仮にこの制裁を大きく広げられるシナリオなら、中東の産油国に対しても中国への原油供給を止めてくる可能性もあります。その結果、他の同盟国向けの供給量が増えることとなり、価格高騰にもブレーキをかけられるので一石三鳥です。
上記のような見方から、自分は日系企業の中国ビジネスに関しても国家リスクがかなり高まってきているように見えます。既に対策と化している企業があるなら具体的な内容を指導してもらいたいものです。
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