このところ景気が落ち込み始めている中国は数年内にさらなるどん底に落ちるという予想をかねてよりこのブログで展開していますが、ここ数ヶ月の上海や国家統計データ状況を見ていて、こうした予想は確実だという意識を強めています。ただその一方、今後中国の経済が破綻して中国の効力は落ちるものの、中国企業の勢いが弱まるかと言ったらそうではなく、今後も世界で勢いを増し、国際市場において日系企業をより淘汰していくだろうと見込んでいます。
こうした見方を理解する上でいいモデルケースは、「失われた10年」こと1990年代におけるトヨタです。90年代当初のトヨタは「トヨッタ♪」という音声流れる素朴さあふれるCMをまだ展開しており、また実力はあるけど本社が地方にあって価値観がやや閉鎖的だなどと「田舎大名」とも呼ばれていました。
しかし90年代、特に1995年に「世界のヒロシ」こと奥田碩氏が豊田家以外で初めて社長に就任して以降は急激にグローバル化路線を広げ、それまでやや米国に偏っていた国際販売を一挙に世界中へと広げ、今日の「世界のトヨタ」を築ぎあげました。はっきり言えば奥田以前と以後でトヨタは全く別の会社です。
この間、日本国内は前述の通り「失われた10年」でどの大手企業の業績も悪化し続け昔日の勢いを失っていきました。伸びていたのはデフレの恩恵を受けた小売系、特に飲食系くらいで、小売でもダイエーなんかは破綻しました。
では何故日経済が悪化していたのにトヨタはでかくなり続けたのか。結論から言えば国内市場が落ち込むのを尻目に海外市場で稼ぐようになったからです。トヨタはこの間、国内市場でもシェアトップを維持し続けていますがそれ以上に海外売上高を拡大し、田舎大名から世界のトヨタへの華麗な転身を決めています。
こんな具合で、今後中国経済が破綻するとしても、海外で稼げる力のある中国企業は失った国内売上以上に海外売上を稼いで拡大を続けることでしょう。むしろ今見ていると有力な中国企業ほど国内市場の先行きをにらんでか、海外現地生産拠点を設けたりするなどグローバル展開に熱心であるように見えます。中国政府もこうした動きを応援しており、製造業に関しては恐らく今後中国国内の雇用は減るでしょうが企業の海外展開が加速するでしょう。
でもって、こうした中国企業の海外攻勢を受け、既に海外市場のシェアを削られている日系企業はさらに打撃を受けることになると思います。主な業界としてはやはり建機が一番割を食うように思え、自動車も新エネルギー車のシェアが広がるにつれて既存燃料車でも日系のシェアが削られると思います。電池に関してはもはや言わずもがなです。
何となく中国経済破綻を期待したうえで、「これでまた日系の天下が来る」などと述べる人をネットで見るのですが、そんなのははっきり言って幻想です。国家経済が悪化するとしても、その国籍の企業の業績が悪化するとは限らず、むしろ国内の不足分を国外で埋めようと海外展開を加速するきらいすらあるため日系は余計苦境に陥るとみるべきでしょう。中国経済の弱体化を中国企業の弱体化と同一視することはかえって危険です。
昔から言っていますが、敵失を期待するような連中には勝利など来ない。
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