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2011年7月2日土曜日

奴国、邪馬台国、ヤマト王権の関係

 ちょっと期間が空きましたが、また古代史ネタです。前回までは古事記の解説が多かったですが今日はちょっとロマンある部分というか、資料館の紐解き部分をやります。

奴国
邪馬台国
ヤマト王権(Wikipedia)

 日本古代史における最大の論争は邪馬台国が九州、近畿、どちらにあったのかという「邪馬台国論争」でありますが、この論争については近年決着がつきつつあり、出土品などの調査から近畿説が強まっており私もこれを支持します。その上で次に主題となる論争は、恐らくこの古代三王国とも言うべき上記の国々の関係だと思います。

 上記三王国のうち、奴国、邪馬台国は中国の史書中に現れる王国です。どちらも、特に奴国については後漢書に書かれている通りの金印が出土していることからその存在は確実であることは間違いなく、また邪馬台国についても数多く現れる出土品、そして三国志魏志倭人伝と晋書の記述などからこちらも存在したことは確実でしょう。ヤマト王権については日本国内の古事記や日本書紀に頼る所が多いものの、朝鮮半島で出土した広開土王碑や畿内に数多くある古墳からも疑う余地はないでしょう。問題はこれらの国の関係というか連続性で、先ほどの邪馬台国がどこにあるのかという論争と合わせて様々な仮説が昔から現在に至るまで盛んに論壇をにぎわしめております。

 まず奴国と邪馬台国の関係性ですが、これについては私は両国は全く関係のない別々の政権だったと考えております。北九州にあった奴国が時代を経て邪馬台国になったという仮説をたまに見かけるものの、これはそもそもの話として邪馬台国が九州にあったことを前提とする説です。先にも述べた通りに私は邪馬台国は近畿にあったと考えており、また時代もかなり異なっていることから関係性は全くないと思います。関係性を証明する史料はおろか出土品もない状態ですし。
 肝心なのはその次の邪馬台国とヤマト王権の関係性です。どちらも弥生時代後半から古墳時代にかけて近畿に存在した類推され、中国に使者を送るだけの代表制と文化を持ち合わせていることから両国は同一の王朝、もしくは系譜を持つのではないかというのが邪馬台国の近畿説が強まるたびに仮説が現れるようになりました。

 ただこれに関しても先に結論を述べると、私はこちらも全く関係はない別々の王朝だと考えます。根拠としましては中国の史料中に現れる邪馬台国の記述で、邪馬台国は女王卑弥呼をトップに置くシャーマニズム性の強い祭祀国家です。これが古事記や日本書紀に書かれる古代ヤマト王権の姿とはどうも差があるように感じる上、中国に使者を送るという大事業について古事記や日本書紀がスルーするとは思えません。
 特に私が重要視するのは卑弥呼の死後についでです。中国の史料では卑弥呼の死後に男の王が立ったもののうまくいかず、最終的に卑弥呼に代わる別の巫女(壱与)が女王に立って落ち着いたと記しており、これは二代続けて女王が君臨しているということで考え方によっては卑弥呼の前や後も女王が最高権力者だったとも考えることが出来ます。どちらにしても相当女性の権力が高い国だったことが伺えるのですが、古事記や日本書紀だとそのような二代続けて女王が君臨するということは書いておりません。天皇の男系を強調するために敢えて書かなかった、改変したと考えることも不可能ではありませんが、古事記や日本書紀が成立した飛鳥、奈良時代は日本史上で最も多くの女性天皇が誕生している時期であり、改変する必要性があるのかとなると私は疑います。

 また邪馬台国とヤマト王権が連続性を持っている、同一政権という主張の中には卑弥呼は古事記に出てくる女性の別名だという説を数多く見かけますが、これはまた次回に書きますが聞いててあくまで素人ながらも見ていて非常に怪しいものばかりです。小説のネタなら許せるけど、いくらなんでも調子に乗りすぎじゃないかと思うくらい強引な説も少なくありません。

 最終的に結論を述べると、邪馬台国と初期ヤマト王権は同時代に同じ近畿地方に存在していた可能性はあるものの、それぞれ全く関係のない別政権だったと私は思います。それゆえに邪馬台国は晋に使者を派遣後、自然消滅したか侵略されたかで滅んだのではないかと考えております。それを滅ぼしたのはヤマト王権かもしれませんし別の豪族かもしれませんが、何かしら確たる史料や出土品が出ない限りは両国を無理矢理結びつける議論はあまり必要ないのではないかというのが今日の意見です。

光化学スモッグの被害(´Д`)

 先ほど上海の天気予報を見てみると、今日の最高気温は日本には負けるものの35℃あったそうです。実際日差しがきついのはわかってはいたのですが、ちょっと今度自分が書く記事に使う写真が撮りたかったので地下鉄なんて生易しいものは使わずにまた自転車を40分くらい漕いで市内中心部に行ってきました。
 写真自体は無事撮れたものの、汗を大量にかいて腕に塩が吹き出るほどだったのでこまめに水分を補給しつつ帰宅したのですが、帰宅後に自宅で右側頭部に軽い痛みを覚えました。多少疲れているのだろうと思ってシャワーを浴びてまた水飲んで横になったのですが、どうにも痛みが取れずますますひどくなるばかり。それどころか吐き気もするわ咳も出るわで、原因はなんだろうか、脱水症状にしては水はかなり飲んだつもりがするし(500mlペットボトルのDAKARA一本、水一本、スイカジュース一本)、暑い中で自転車漕いで夏ばてにでもなったのか、そういえば先週に浦東空港目指して帰ってきた時も似たような症状があったような。そういえば、毎年夏にはこういうのを経験してるようなって、光化学スモッグなんだと最後に気がつきました。

光化学スモッグ

 医者から正式な診断を受けたわけじゃないですが、多分光化学スモッグで間違いないと思います。
 というのも毎年夏に炎天下の中を無謀にも自転車で飛び出しては帰宅後に激しい頭痛+咳が出ており、そういう時に限って後で調べてみると光化学スモッグ注意報が出ているからです。第一、自転車自体がかなり激しい有酸素運動なので、光化学スモッグが出ている中で自転車に乗るなんてかなり危ない行為です。それでもこりずにいつもやってしまうのですが。

 具体的な症状としてはやはり頭痛と咳なのですが、私が光化学スモッグだと判断するのは咳が出るか出ないかです。頭痛自体はもともとの体質もあってよくするのですが、頭痛と咳が一緒になるのは毎年この夏の時期でしかなく、なおかつ例の注意報が出ている頃なので、今回も全く同じ症状だったことから今日は上海市内でも光化学スモッグが出ていたのでしょう。
 第一、今の上海の状態は光化学スモッグが起きるにはこれ以上ないおあつらえ向きな環境で、多量の排気ガスに加え厳しい日差し、気温。聞くところによると近年九州各地で光化学スモッグの発生数が増えているのは中国のせいだといいますし、日本みたいな放送による警戒はないものの連日発生しているのではないかと思います。

 もちろんわかってたらわざわざ気分の悪くなるようなことを自らするつもりはないので、これからしばらくは自転車で遠出することは控えようなかなと思います。なお今日の具合ですが、最初は軽度だったことから見送っていたものの光化学スモッグだと予想がついてすぐに頭痛薬を飲んだら大分調子が良くなりました。なんかこうしめると、結局ただの頭痛ではなかったのかって気がしてきますが。

2011年6月30日木曜日

日本車の中国市場価格

 前々からやろうと思っては面倒がってしなかった企画ですが、中国における日本車の自動車価格を調べてみました。

 ここで言う中国の自動車価格というのは人民元を現在のレート(1元≒12.5円)で計算した価格です。一体何故こんなことに興味を持ったのかというと、中国市場では日本での価格に対して設定販売価格は高めなのか安めなのかが気になっており、またメーカーごとに違いはあるかが気になっていたからです。
 余計な前置きはいいので、早速どうぞ。


メーカー(合弁会社名)
車種  中国価格(円)  日本価格(円)

スズキ
(長安鈴木)
アルト           538,800~754,800   677,200~1,109,800
SX4           957,600~1,605,600  1,659,000~1,869,000
スイフト         621,600~1,101,600  1,244,200~1,653,700
(晶河鈴木)
ワゴンR          486,000~718,800   1,071,000~1,367,100

マツダ(長安馬自達)
アクセラ         1,353,600~1,797,600  1,660,000~2,318,000
デミオ           969,600~1,263,600  1,149,000~1,621,700
アテンザ         2,049,600~2,397,600  2,100,000~2,500,000
MPV           2,637,600~2,997,600  2,700,000~3,360,000

三菱(東南三菱)
ギャランフォルティス  1,317,600~2,037,600  1,796,000~2,993,000

ホンダ(東風本田)
CRV           2,277,600~3,153,600  2,470,000~3,390,000
シビック         1,557,600~3,237,600  3,000,000~3,000,000
(広州本田)
オデッセイ         2,757,600~3,393,600  2,390,000~3,610,000
フィット           1,077,600~1,557,600  1,230,000~1,698,000
アコード          2,241,600~4,113,600  2,498,000~3,902,500
アコードツアラー     4,785,600~5,136,000  2,748,000~4,122,500

日産(東風日産)
エクストレイル      2,493,600~3,237,600  2,239,600~3,297,000
ブルーバードシルフィ  1,497,600~2,013,600  1,842,700~2,404,500
デュアリス        1,677,600~2,637,600  2,097,900~2,777,200
スカイライン       2,289,600~4,461,600  2,898,000~5,019,000
マーチ            838,800~1,114,800    999,600~1,644,300
ティーダ          1,281,600~1,797,600  1,499,400~2,182,900

トヨタ(広州豊田)
ヴィッツ          1,044,000~1,281,600  1,060,000~1,790,000
カムリ           2,193,600~4,377,600  2,507,000~3,470,000
(一気豊田)
RAV4           2,277,600~3,081,600  2,020,000~2,590,000
クラウン          3,942,000~10,795,200  3,450,000~5,590,000
ランドクルーザー     9,240,000~13,533,600  4,350,000~6,920,000
プリウス          3,117,600~3,357,600  1,890,000~3,270,000
カローラ          1,485,600~2,397,600  1,356,000~2,440,000
プラド            6,456,000~8,376,000  3,150,000~4,750,000
マークX           2,517,600~3,921,600  2,380,000~3,800,000

※1元=12.5円で計算。価格はメーカー希望小売価格。
価格参照元:太平洋汽車網(http://www.pcauto.com.cn/qcbj/qcbj_if_gngw.html)、Goo-net(http://www.goo-net.com/newcar/)

 表自体はエクセルで作成して本当は図表を貼り付ける予定でしたが、何故だかJpg化させると文字がにじんでしまうので、こうして手製のリストにしました。

 全体の傾向としてはどうやらどこのメーカーも日本での自動車価格に合わせて中国販売価格を決めているようで、車種やメーカーに関係なく日本の価格に一段低い価格に設定しているところが多いです。ただこれは現在の円高というレート状況が強く影響しており、実際にちょっと前の1元=15円で計算したら逆に1段高い値段にきれいに逆転します。
 なおかつ言えることとしては高級車は日本での価格より高めに設定されていることが多く、そのせいか高級車ラインナップが多いトヨタはRAV4とカローラを除いてどれも日本価格より高く設定されております。ランドクルーザーなんてあまりにも差がありすぎるので、なにか値段を間違えているような気すらします。

 なお中国で販売されている車はどれも中国企業との合弁会社とで作られており、車名は同じでも一代前の型式であったり、部品も中国メーカー製が使われているなどして全く同じ車ではありません。代表的なのはマツダのアテンザで、日本ではすでにハッチバック仕様が売られていますがこちらでは一昔前のセダン型しかありません。そのため上記のリストも、あくまで参考程度にご参照ください。

 最後に中国の値段感覚について一言。以前にタクシーの運転手と話をした際、街中をマツダのアテンザが多く走っていることに言及すると、
「ああ、マツダの車は安いからね」
 と話してました。
 この話からすると、どうやら上記アテンザの価格(2,049,600~2,397,600円)はこっちの感覚としては安い方のようです。なんか腑に落ちないなぁ。

2011年6月29日水曜日

豊臣秀吉の能力

 先日ネット上で、「日本史で最も英雄度の高い人物は?」というテーマの掲示板を見受けました。中には冗談で「野茂英雄」と挙げる人もいましたが、現代日本人への影響で言えば私はやはり徳川家康を挙げます。ただその一方で、最も図抜けた能力者という意味では今日の題となっている、豊臣秀吉を必ず挙げるでしょう。

 このところ古代史ばかりなのでたまには違う時代とばかりに秀吉を挙げてきましたが、彼の経歴については言わずもがなで一農民から完全な叩き上げで天下人となった「日本最強の成り上がり」と呼ばれる人物です。基本私は成り上がりが嫌いで、世界の富豪ランキングにも名を連ねる中国のパクリカーメーカーことBYD自動車会長も会った事もないのに嫌っていますが、この秀吉については別格で非常に人物としても気に入っております。具体的にどうして秀吉を気に入っているのかというと、晩年こそ判断ミスが多いものの全盛期の勘の鋭さについては歴史を眺めるだけでぞっとするほどのプレッシャーを感じるからです。

 秀吉の能力としての全盛期は信長の死後、いわゆる中国大返しをやった時期です。この中国大返しについては四年位前から「実は秀吉も信長暗殺に噛んでた。だからあらかじめわかってたので中国大返しも出来た」という異説が出てきましたが、これについては友人と夜中一時くらいまで議論しましたが最終的には疑わしいという結論に至りました。理由はいくつかありますが一言で言うと、毛利と和睦できる絶対的保証がなかったということに尽きます。

 それで話は戻りますが、中国大返しはその決断から行動に至るまで神懸り的な機敏さで、六月二日の本能寺の変から六月十三日の山崎の合戦に至るまでの九日間で以下のような行動を達成しております。

・交戦中の毛利軍との和議締結
・京都周辺の織田家武将との連絡、糾合
・部隊の撤退準備
・数万の部隊での200キロ程度の移動
・合戦準備

 これは言うは易いですが、実際にやるとなるととんでもない作業です。まだ最初の毛利家との講和は元から話が進んでいたのもあるので多少の譲歩をすることで達成することは可能ですが、数万の部隊での撤退準備ともなると武器やら兵糧やらをすべてまとめなおさなくてはならず、一週間以上かかってもおかしくない作業です。そのうえ200キロの強行軍、聞く限りだとある日の行程では一日70キロを走破させたとも言われ、世界史上でもこの速度はトップクラスと言ってもいいでしょう。
 その上で最後の合戦準備です。これも山崎周辺の武士から鉄砲などを調達する傍ら、合流した他の織田家武将たちとも打ち合わせを行っており、一体どうしてそこまでパワフルに動けるのかと信じられない気持ちでいっぱいになります。はっきり言ってこれらはすべて常識はずれの行軍で、これだけの行軍をされては敗戦した明智光秀も無能だったとは評価できないでしょう。

 ただ秀吉の絶頂期はこの中国大返しではなく、私は次の賤ヶ岳の合戦の頃だと考えています。これは以前の陽月秘話でもまとめましたが秀吉軍は雪解けのタイミングを見計らって軍を動かし、柴田勝家の軍をおびき出したところで急速に軍隊を引き返させ撃滅するという神業を達成しています。もっとも、前田利家が裏切らなければ柴田軍もああは負けはしなかったでしょうが。詳細は以前の陽月秘話のページを検索してください。

 これ以後も秀吉は外交から戦争に至るまで縦横無尽に処理し、あっという間に天下を平定してしまいます。もちろんそれは秀吉一人の力ではなく弟の羽柴秀長や軍師の黒田官兵衛など優秀な部下達があってのことでしょうが、そのような優秀な部下を活躍させるにも才能は必要です。九州平定のあたりも、改めて読んでみるとかなり凄い速さで始末してますし。
 晩年の秀吉は私が言うまでもなく判断ミスを繰り返しては豊臣政権の崩壊を自ら招いておりますが、それでも絶頂期の秀吉以上に才走る人物は日本史中にはいないと私は考えております。強いてあげるとしたら伊藤博文でしょうが、もう少しこの時期の秀吉について研究とか進んだら個人的に面白いような気がします。

 ちなみに秀吉が毛利家との対陣中に本能寺の変を知った際、黒田官兵衛は、
「やったじゃん、秀吉ぃ(´∀`*)」
 って言って、秀吉を大いに慌てさせたそうです。中国大返しも賤ヶ岳の合戦も実質取り仕切ったのは黒田官兵衛だと思われますが、こんなこと言ってればそりゃ警戒されるわな。

2011年6月28日火曜日

メガソーラー計画に対する私の意見

 震災に伴う福島原発の事故を受けて代替エネルギーの議論が激しくなる中、ソフトバンクの孫社長(最近アリババの問題でこっちの新聞にも良く出てくる)は大規模太陽電池発電によるメガソーラー計画を打ち出しました。概要はいちいち説明するまでもありませんが、休耕田などに敷くなどいろいろな案があって導入に前向きな自治体が出てくるなど続報ニュースをネットでよく見かけますが、このメガソーラー計画について私の意見を今回は紹介しようかと思います。

 結論から言ってあくまで一素人の意見ですが、私はメガソーラー計画に反対です。理由をいくつかありますが、ざっと要点だけ挙げると以下のようなものがあげられます。

1、太陽光発電では得られる電力が少なく、コストが高い
2、電力が天候に左右されやすく不安定
3、太陽電池の寿命について未知数
4、寿命後の太陽電池の処理に言及がない


 まず1については言うまでもなく、かねてからのネックです。確かに資本を投じて大規模生産を始め、広い土地に敷設すればそこそこのコストダウンと電力は確保できるかもしれませんが、それでも2番目の理由なども考慮すると絶対的に発電能力が足りないかと思います。
 次に2番目ですが、現行の太陽電池は大分マシになってきているとはいえそれでも天候が曇りや雨になると途端に発電能力が急減します。そうした場合に備えて現在では発電できない夜間を含めて大型電池と組み合わせ、昼に発電しつつ充電し、夜に電池を使うという案もありますが、なんとなく都合のいい話のような気がしてあまり信用できません。

 そして3番目ですが、これが一番重要で私が反対に立場を置く最大の理由です。あまりテレビとかでは宣伝しませんが太陽電池というのは作った後は半永久的に使えるものではなく、現行の電池でも寿命は約二十年と言われております。しかも二十年たったら突然使えなくなるというわけじゃなく、時が経つにつれて発電能力が徐々に落ちていき、二十年後には発電能力は1割以下になるという予想です。
 結構この辺の説明を省いて、「電力会社に売電して、施工費用は10年で元が取れますよ」と言っては住宅に太陽電池を敷いて、実際にはそれほど発電できなくて訴訟になるケースもちらほら出てきてます。多分二、三年したらもっと出てくるだろうけど。しかもこの寿命はあくまで現時点の予想であって、実際には二十年より早く駄目になるかも知れませんし二十年よりもっと使えるかもしれません。まぁこういうときの希望的観測というのは大抵外れるのですが。

 この太陽電池の寿命を考えると、今から大量に投資して一定度の電力を賄えるくらいに敷設したとしても二十年後、実際にはそれよりももっと早くにまた新しい太陽電池を作って取り替えなければなりません。それはいうなれば、二十年足らずで現在行う太陽電池の投資はすべて無に帰すということです。さらに言えばその二十年間の間に置いとくままというのも現実的ではなく、実際にはメンテナンスコストや盗難防止策などにもお金が取られること間違いなしでしょう。
 その上で4番目の理由です。上記の太陽電池の寿命を考えると、交換するたびに大量の廃棄物を出してしまうことになります。あまり構造について詳しくありませんが現在主流のシリコン型太陽電池は環境負荷の高い物質を含んでいるとも聞くだけに(薄膜系太陽電池は少ないと聞くが)、廃棄物をどう処理するかを全く考えずに今一斉に敷設するというのは未来に問題を先送りするだけ、程度はともかく原発を使うのと方向的には同じな気がします。リサイクル処理方法、施設が確立されているのであれば話は別ですが。

 ただ太陽電池に全く期待していないというわけではなく、上記の問題を解決できるというのであればまだありだと思います。せめて量産品で変換効率が40%以上、そして電池寿命も三十年くらいが保証されるのであれば私も賛成の立場に回りますが、少なくとも現状では資源の無駄遣い、環境破壊につながる恐れがあるので納得できません。そのため孫社長の目がソーラー計画については今すぐやろうとするよりはもっと技術の向上を待つべきだと思い、この方面の研究開発に投資するのが先のような気がします。

 では他の代替エネルギーについてはこれもあくまで素人として意見を言わせてもらうと、まず風力発電についてはあまり期待はしていません。早稲田大学に聞いたら絵に描いたような餅のような案を提供してもらえるかもしれませんが。一部で人気なメタンハイドレードなんかは前職の時に周りにも聞いたりしましたが、深海にあるという特性上、調達コストが高すぎてまだとても採算には乗れません。
 将来未来がある分野でなら、地熱発電なんかは日本という特性上は意外と面白いかもしれません。こちらも技術の発達を待たねばなりませんが、熱量を安定的に得られることを考えると面白い気がします。この地熱発電同様に昨日友達と盛り上がったのは水力発電で、この際だから人口の滝を作ったりなど、技術の熟成を待てばかなりいろいろなものが作れるんじゃないかとなんだか希望に満ちた都合のいい話をしてました。

 ただ水力発電については私はかつてシムシティといって街づくりが出来るシミュレーションゲームにて、街のど真ん中にとてつもなく高い山を作り、そこの頂上から麓まで水を通し、その川沿いに水力発電機を大量に設置して街の電力を賄おうとしたりしました。
 シムシティはまじめに無茶が出来るから本当に面白かった。警察署を一軒も作らず、「GTAの世界だ、ヒャッハー(゚∀゚)ヒャッハー」とか言ってたし。時代的にはファイナルファイトのメトロシティというべきかも知れないが。

2011年6月26日日曜日

日本人が海外に出て行きたくない理由

 現在世界的アーティストのレディー・ガガ氏が来日して様々な復興支援活動に参加してくれておりますが、やはり日本人として彼女の活動には頭が下がる思いがします。今回の支援活動においてレディー・ガガ氏は何度も日本が大好きだと言ってくれていますが、彼女に限らず海外の有名人の方には映画監督のスティーブン・スピルバーグ氏などのように日本を贔屓にしてくれる方が少なからず存在します。これまた日本人の私としては、「そんなに気に入ってくれるなんて(∀`*ゞ)テヘッ」などと照れる気持ちがするのですが、このところこうした日本贔屓の外人を見ていて、ひょっとするとここに日本人が海外に出て行きたくない理由があるんじゃないかと密かににらんでいます。

 近年、経団連の殴られたダルマみたいな顔した米倉会長を始めとして日本の若者が海外に留学したがらない、異動を嫌がるといったことを懸念する言葉を発していますが、結論から言うと、私は日本人が海外に行きたがらない理由は日本国内の生活があまりにも便利で快適過ぎるからじゃないかと思います。

 私がこの発想を最初に得たのは、友人とのある会話からでした。その友人によるとフィリピン人などは一刻も早く別の国に行って働きたがるそうなのですが、日本人はそうでもないと言うとそれはあなたの国が恵まれているからだと言われたそうです。確かに言われてみると日本の公務員は天下りこそあるものの不正は少なく、警察も外国ほど無茶はやらかしません。なおかつ市場に出回る製品も中国みたいに粗悪品は出回らず、生活も若いうちならアルバイトで一人暮らしが出来て、パソコンも買えればインターネットだってできます。よくネット上では日本の今の景気状態を嘆いてはこんな最悪の国はないという人がいますが、それでも他国、イギリス(飯がまずい)やフランス(街が汚い)などの先進国と比べても日本の状況はまだまだ優れたものだと断言できます。日本は老後の保証がないといいますがそんなのどこの国だって一緒で、中国なんか今の一人っ子の若者たちの老後を考えると他人事のはずなのに心配になってきます。

 その上で日本だけの特別な特徴を挙げると、隅々まで行き渡るサービスの細かさも見逃せません。海外に行ってみるとわかりますがあらゆる面における日本のサービスは神懸り的とでも病的とでも言うべきか、どうしてそこまでするのと思い知らされます。冷凍食品の種類の多さからコンビニでの予約と代理決済、定時通りの電車運行から商店員の態度にB2B取引の対応など、外国で暮らしてみると改めてその細かさや早さがどれだけ凄かったのかがわかります。
 敢えて逆に日本の方がサービスが悪いと思う分野を挙げると、敷金や礼金に加え保証人を求められる不動産業にいじめが絶えない義務教育などがありますが、それらを見越しても日本での生活は自分がネイティブであることを考慮しても快適の一言に尽きます。参考のために上海人の友人に来日直後は不便ではなかったかと聞きましたが、「コンビニに行けば食事などすべて事足りるから不便に感じることはなかった」とうまいこと言い切ってくれました。

 話は戻りますが、単純な問題として現下で快適な環境にあるのにわざわざ他の環境に行こうと思うでしょうか。それも外国となると言語面での不便は言うまでもなく食事や製品などの面で確実に日本での生活より苦しくなるのは間違いなく、生活費面ではどこの国でも確かにマシになるでしょうがそれだったら高いお金かけたいと思う日本人がいるわけで上海の日本食屋は成立するわけです。
 例の殴られたダルマみたいした米倉会長はハーバード大には中国や韓国からたくさん留学生が来ていると言っていますが、それは優れた研究環境というのが一番でしょうが、それとは別に彼らの国より米国という環境が住み心地がいいというのも大きな理由じゃないかと思います。韓国について言えば、そうでもしないと就職もし辛いという厳しい雇用環境もあるでしょうが。

 私は日本人が海外に出たがらない理由というのは、もちろん日本人が保守的とか内気とか言っても間違いではないと思うものの、その裏には日本での生活が世界最高峰なくらいに便利すぎるというのが最大の理由じゃないかと考えています。それゆえにレディー・ガガ氏を始めその文化や便利さに引き寄せられる海外の有名人も現れるのではないでしょうか。
 これを逆に言い換えると、日本人をもっと海外に出そうとするならサービスの質を下げるのが効果的なのではということになります。実際に私の体験でも、平気で私の前に別の客が割り込んできてもなにも注意しない店員とかを見てるとやっぱり日本はいいなぁとか思ってしまいます。あとちまちまやってはあっという間に長蛇の列を作る銀行とか。

 もっとも今更サービスの質を落とせといっても出来るわけないので、少数精鋭とばかりにまだ海外に行こうとする少数派の日本人をもっと行きやすく応援するようにした方が手っ取り早いと思います。もしくは日本に引き寄せられる外国人への対応を良くするとか。
 日本人にとって海外に行くということは、本当にごく一部の国を除いて生活の質を下げることにつながります。特に若者にとっては上から指示するだけの職位とか有り得ず、また私のような現地採用の人間は日本より低い給料に加え生活面での会社からの補助などありません。こういう状況わかって抜かしてるんだろうか、あのダルマは。

素顔同盟の思い出

 突然ですが、「素顔同盟」という短編小説はご存知でしょうか。
 この小説は中学校などの国語の教科書に引用されていて恐らく私と同年代の方なら誰もが呼んだことがある作品だと思いますが、あらすじを簡単に説明すると、人間は喜怒哀楽を表情に出すから争いが絶えないわけでみんなして笑顔の仮面を被って生きるのが当たり前の世界に疑問を持っていた主人公はある日、仮面を脱ぐ素顔同盟という団体があることを知り、その所属員らしき女性の素顔を見て仮面を脱ぐ決心をするというストーリーです。

 この話を何故唐突に持ち出したのかというと、これまたちょっと時間がたっていますが下記のニュースを見たことがきっかけでした。

訃報:すやまたけしさん60歳=作家(毎日新聞)

 今月十二日、この「素顔同盟」の作者であるすやまたけし氏が死去しました。
 このニュースを受けていろいろ思い出すところがあったのですが、実はこの作品に関しては一悶着というか、妙な思い出があってその他の教科書引用作品と比べても格段に強い記憶があり、上記訃報を聞いて「あの素顔同盟か……」とちょっと思い出すところがありました。

 その一悶着とはまさに中学時代にこの作品を国語の授業で扱っていた時でした。授業も終盤にさしかかって当時の教師は生徒に作品の感想を求めるプリントを配ったわけですが、「素顔同盟に走った主人公をどう思うか」という質問に対し、ちょっと妙な回答を私はしてしまいました。

「集団の秩序を乱そうとする典型的な破滅的行動である。テロリズム的な思想で気に入らない」

 これは冗談じゃなくマジで上記のように書いて提出してしまいました。というのもこの授業の直前に読んだ中国史の解説本にて、「始皇帝暗殺」で有名な刺客の荊軻について以下のようなくだりを読んでいたことが原因でした。

「荊軻の評価は暗殺者という特性上、その時代ごとに大きく変わりやすい。ある時代では圧政を敷く暴君に立ち向かう勇者として称えられる一方で、暴力によって権力を転覆せしめようとするただのテロリストとして扱われることもあり、現代ではそのような評価が強まっている」

 この論説を読んでたせいというかなんとなく素顔同盟の主人公も荊軻っぽいなぁとか思い、「テロリズム」という言葉が出てきてしまったわけです。しかもその時の教師も教師で、生徒からプリントを集めるや何を思ったか「こんな意見もありました」と言って上記の私の書いた感想を読み上げると、

「この感想を書いた人の仮面を取っても良いでしょうか、花園君( ´∀`)

 と、いきなりクラス中に名前をばらされてしまいました。
 言われた瞬間はそれこそ「オイオイ、マジかよっ!?Σ(゚Д゚;)ゲゲッ」って滅茶苦茶焦りましたが、元々仲が良かった教師なので問題あるとか気に入らない感想だからといった理由ではなく、「クセ球を投げてきたな、こいつ(・∀・)ニヤニヤ」ってな感じで暴露してきたんだと思います。
 もっとも授業後にこの件をネタにからかってくる生徒はいませんでしたがこの一件を経て私は、「絶対にこの教師には逆らわないでおこう」と決意するに至りました。