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2014年6月11日水曜日

不振鳴り止まずして

 中国に来たらテレビとかも見ないし時間がゆっくりできるだろうと考えておりましたが、今のところは真逆で非常に苛立たしい時間を送ることのほうが増えております。一番の問題というのもネットの問題で、結論から述べると、おそらくどこかからか私のIDとPASSが流出したようで、同じ組み合わせを使っていたところから一斉に不正ログインの連絡がきました。

 最初に来たのはGoogleからで、不正ログインの可能性の高いアクセスがあったためブロックしたとの報告とともに、アクセスを仕掛けてきたIPアドレスと時間帯を丁寧にも送ってきました。その情報は下記の通りです。

2014年5月29日 18時05分21秒 UTC
IP アドレス:
60.71.104.188(softbank060071104188.bbtec.net)
場所: 日本, 東京都新宿区

 この時間帯には既に私は中国に渡っているため私自身がアクセスしたということはありえず、Googleが睨んだ通りに不正アクセスとみて間違いないでしょう。その後、楽天、ニコニコ動画、Yahoo、東京三菱UFJ銀行、Skypeなどからも不正アクセスの連絡が来て、それぞれで対策のためパスワードを変更しなくてはならなくなりました。このパスワード変更で何が苦しいかっていま中国にいるということで、中国政府の検閲のせいでGoogleのアカウントに直接アクセスできないという点です。最終的には色々裏ワザ使ってパスワード変更こそ達成したものの物凄い時間と労力が割かれ、このタイミングで不正アクセスしてきた上記IPアドレスの人間には もし会うことがあったら必ず生かしては置かないと心に決めています。
 で、その犯人ですが、IPアドレスの情報からするとソフトバンクBBのアドレスであるため、直接ソフトバンクBBに調査して捜査して捕まえて殺せと伝えましたが、不正ログインを行ったという直接的なログがないとさすがに対応できないと言われ、仕方ないのでGoogleにもしログがあるなら提出してくれないかと頼みましたが、対応を断られました。

 ソフトバンクBBにしろGoogleにしろこの対応は私としては残念ではあるものの、犯罪の証拠を求めるのは当然であるし、いちいち細かいログを抽出して提出するのも大変だろうしと考えると内心ではしょうがないと思います。ただ逆を言えば、こういう不正ログ インをおおっぴらにしてもなんも捜査が行われなければ処罰もない(仮に大企業への不正アクセスなら話は違うだろうが)と考えると、被害者はやられても泣き寝入りするしかないのが現代事情ということになります。面倒ではあるものの、こういうことをやらかす人間を虱つぶすみたいに一人一人目立つ形で殺してかないとキリないんじゃないかなと個人的に思います。実際に殺害まで行かないにしろ、初犯でも数年の懲役など厳罰化していってくれないものかな。IT企業同士で情報を共有するとかしてさ。

 なお、私のPCはスキャンをかけたところウイルスの類は一切発見されませんでした。怪しいサイトを踏んだ時にクッキーの情報が盗まれた可能性も否定できませんが、どちらかというとどっかパ スワードを登録していたサイトが流出したのではないかと、あくまで勘ですが私は考えております。というのも、どれも不正ログインの跡がありながら、ブロックされたこともありますが直接的な実害はなく、自分一人を狙ったというよりはまとめて得た情報を確かめているような、そんな素振りが見られるからです。内心、真っ先に思い出したのはmixiの件ですが、mixi自体を私はやってないしな。

 こうした不正アクセスへの対応もさることながら、新しいネット環境もすこぶる苛立たせる仕様が非常に多いです。Yahooメールを使っている方ならみんなわかるでしょうが、なんかバージョンを近日中に切り替えるということでこれまで使われてきた「正式版」から「ベータ版」に私も移行し ましたが、こういってはなんですが不満しかありません。元々、このベータ版はデータ量が重いことからネット通信速度の遅い中国だと閲覧が非常に苦しくなるので避けてきましたが、移行するというのだから腹くくって切り替えたところ、案の定重い上にバグの発生も非常に多いです。さっきもメール一覧に切り替えようとしたら全く切り替えようとしないため腹立ちまぎれに外付けキーボード叩いたらヒンジが折れて余計に腹が立ちました。まぁこのキーボードに関してはこれまでも叩きながらなかなかヒンジ折れなかった分だけ大した品物だが。
 このYahooメールに限らず、日本の一部サイトは通信速度が極端に低い海外での閲覧、使用を全く考えてない向きが見られます。特に企業サイトについてい えば余計なFLASHを入れているためにトップページが中国からだとなかなか開けない所も多く、もっとこういう点について考えてもらいたいとこの頃よく思います。

 そして最後が中国のやはり遅い通信速度です。遅い通信速度は何も今に限ったわけじゃありませんが、今回自分が使用している部屋はホテルの一室であるため、モデムとかの設置がどうも指定されているため、通信速度自体は契約した内容通りではあるものの、中国の検閲を避けるVPNが設置できない上、ノートPCから直接WIFI電波を飛ばすソフトウェアもなんだか不安定になってちょくちょく電波が切れます。このノートPCからWIFIを飛ばすソフトで私は最初に「Connectify」というメジャーなソフトを選びましたが、どうも 中国の回線とは肌が合わないようで電波が飛ばせず、しょうがないので友人が使用していると言った「Virtual router」というソフトに切り替えたところ何とか成功して、再びこちらで「パズドラ」を遊べるようになりました。といっても、本当にちょくちょく切れるは認証が出来なかったりでイライラする。

 それにしても悪いことは重なるというか、本当にイライラする毎日です。ちょうど中国が天安門事件のあった6月4日前後でネットの規制や検閲が厳しくなっている時期と重なったために余計な苦労もしょいこむこととなり、精神的にかなり負担をかける羽目となりました。この辺は海外で暮らしたことのある人間にしかわからないかもしれませんが、割とストレスとい うのはデータのように積み重なってくもので、負担を受けた分だけ許容しなくてはならなくなります。ちょうど引越しやら手続きやら仕事の準備やらで苦しい時期に余計なことしやがってと心から思うのと同時に、将来金に困らなくなったらこういう悪い輩を片っ端から始末する仕事人になりたいなと思った次第です。

2014年6月8日日曜日

ブログ再開、とこれまでの一週間

 やっとこさネットもつながったのでこのブログも再開です。相変わらず中国からだとBloggerのサイトにアクセスできないため、メールを利用しての投稿となります。

 まず中国に赴任してからのこれまでの一週間ですが、到着一日目は普通に上司の家に泊まり、二日目から中国人のローカルスタッフと共に部屋探しに入りました。探して二軒目ですぐOK出して決めたのですが、なんでこんなに早く決断したのかというと中国だと物事を進めようったってなかなか進まないことが多く、ベストを求めていたらきりきり舞いをすることになるため最低ラインを突破した時点ですぐに決断するが吉だと私自身が考えているからです。
 で、案の定というか、連休を挟んだ次の営業日になってみ ると大家が、「会社相手では契約しない」と、既に予約金も払っていたのにいきなり言い出して、結局その部屋の契約は流れました。内心、こういうトラブルはよくあることと思いつつも不動産屋に対して「時間の無駄だった!」などと文句言って、手付け金を返してもらい次の不動産屋へと向かいました。

 ここでちょっと中国の住宅事情について触れますが、家族用の住宅はたくさんある一方で独身の単身者用マンション物件というのは非常に少ない傾向があり、今回の部屋探しでもこの点で苦労しました。逆に日本は今、単身者用の物件のが多いような気がするだけに人口構成の差がそのまま出ているのかもしれません。

 話は戻って自分の部屋探し。二軒目の不動産屋に紹介されたのは、近隣にあ るホテルの一室ことオーナーズマンションでした。上海でもこういう形態の部屋に住んでて、水回りなどいざって時の対応がホテルフロントに頼めるということと、中国での賃貸にしてはまだ部屋がきれいだったので一軒目にて即決。家賃は月額2000元(約3万3000円)で、上海時代の3300元に比べると昆山市は安いなあなんて思っちゃいます。明けて翌日には正式に契約を交わしてすぐそのまま住み始めました。この辺りのスピード感は中国らしい。

 部屋が決まったことからようやく通信会社行ってネットの契約準備も始めたのですが、携帯電話とセットの契約で安くなると言うので中国移動で手続きを進めていたら、契約後になって「そちらの住所はネット接続サービス対象外です」と言わ れまたふりだし。結局中国電信という通信会社言って普通にまた契約して、昨日土曜日に工事に来るよう指定したのですが、その場で一年間のネット使用料を払わなくてはならず、手持ちの現金をリアルに使い果たして財布の中が一時20元(330円)しかなくなる事態に陥りました。
 それでもVISAカードでキャッシングすればいいとATMに行ったら何故か反応せず、前もホテルでの支払いに使用しようとしたら受け憑かなかったことがあったため、もしかしたら口座の設定で制限かかっているのかもしれません。さすがに20元じゃ明日生きてくのもつらいので上司から金借りて(1500元)生活しましたが、ようやく今日になって持っていた日本円を兌換したので、明日には上司にお金を返せそう です。

 なおその上司ですが、自分がこっちに赴任して三日目くらいに私の目の前で電動バイクに轢かれました。もっとも、轢かれたというよりは低速で後ろからぶつけられたというのが真実で怪我もなく軽症に済みましたが、私が本社へのメールでこの事実を冗談めかして隠れて報告したら、上司に対して日本から「お前、バイクに轢かれたんだって!?」という電話が次々かかってきてなんか笑えました。

 ネットにつながったのは昨日で本当は昨日にもブログをまた再開しようかと考えていましたが、ネット関連でいろいろ弄っているうちに時間が無くなって結局かけずじまいでした。具体的にどういうことしてたのかというと、手持ちのタブレットPCにWIFI飛ばせるように「Virt ual Router」というソフトをノートPCに入れたり(成功)、日本のサイトが見られるようにVPNの導入試験をやったり(こっちは失敗)などです。あとまだ詳細は明かせませんが、ネット関連でちょっと面白い事態に巻き込まれており、うまくいけば面白い顛末記事が書けるかもしれません。まだ結末が見えませんが。

 久々のブログ執筆ということでなんか調子が狂うというか、やや面倒くさい思いがします。それだけ以前は習慣化されていたのかと我ながら呆れると共に、一週間のブランク明けは意外とつらいもんだという気がします。明日はまたなんか、書きたいことでも書こうっと。

2014年5月29日木曜日

ネット環境が出来るまでしばらく休載

 この記事は予約投稿なのですが、この記事がアップされる頃には私はもう中国に行っています。大分前にも書きましたがようやくというか中国への駐在赴任が決まって、今頃は江蘇省のどっかでうろついてることでしょう。

 このブログについては中国のネット検閲によって直接アクセスすることはできませんが以前の反省からEメールから直接記事を投稿できるような態勢を整えているので、今後も更新は続ける予定です。ただまだ向こうでの住居も決まっていない状態で、ネット環境も当分は整わないと予想していることから次の更新まではしばらく空くことになると思います。その気になれば裏ワザは多少ありますが。

 ネット環境が整うまで全く予想がつかないのですが、そういうわけで多く見積もって2週間、早くて1週間くらいはかかるかと思います。普段から更新料が異常なほど多いこのブログで、3月に体調不良から予告なしに1週間ほど更新をサボったらあちこちからガチで心配する声をいただいただけに、休むにも予告が必要というなんか妙なブログになったもんだとつくづく思います。どうでもいいですがこの記事書いてる最中、数年前に突然更新が止まって管理人がどうなったのか、失踪したのかと心配された「エルエル」という個人ニュースサイトを思い出しました。まぁあのサイトほどこのブログの閲覧者は多くないけど。

2014年5月28日水曜日

時代に伴う主力産業の変遷

 先日、ネット上で興味深い記事を読むことがありました。その記事の内容は新卒就活を扱ったもので、今現在は銀行を始めとした金融や総合商社、あと製造業なら自動車系が志望先として人気が高いが、今現在定年を迎えようとする人たちが就活にいそしんだ40年前はどの業種が最人気就職先だったのかと問いかけた上で、その答えはなんと石炭関連産業だったと書かれてありました。

  石炭関連といっても今どきの若い子はぴんと来ないでしょうが当時の日本においては主力も主力の産業で、日本が唯一保有する資源として北海道の夕張や福岡県の北九州市などでは炭鉱夫が多く集まり、また採掘した石炭を加工して化学品を作るという二次産業も非常に盛んでした。しかしエネルギー革命によって主要エネルギー資源が石炭から石油に移ると一気に凋落し、石炭を輸入する商社は今現在も日本に存在して活動しておりますが、石炭を採掘したり二次加工したりする分野となるともはや絶滅に近い状態といってもいいでしょう。

 その記事はこうした時代の移り変わりを説明した上で、今勢いの強い産業でも40年先も同じとは限らないと述べた上で、自分が志望する業種にうまく就職できなくてもそれほど焦らないようにと言う具合にまとめられていました。非常に優しい提言だったので記憶に残ると共に、言われてみると数十年で産業というのものはがらりと変わってしまうもんだなと私もしみじみ思いました。
 石炭産業ほどひどくはありませんが、石炭産業と同様にかつての日本で主力だったのは富岡製糸場よろしく繊維産業でした。今は亡きカネボウも確か戦後の一時期において売上高が日系企業としては第一位になったこともあったようですが今となっては会社自体存在しておらず、そのほかの糸偏産業もうまいこと先端素材分野に転換できた東レや帝人を除くとお世辞にも日本をリードする産業とはとても呼べません。

 今の日本で最も競争力が高く強い産業は何かというとそれは間違いなく自動車産業です。自動車に関してはリーマンショック後も強勢を保ち恐らくあと10年くらいは何とか頑張ってけそうですが、日本でかつて自動車と双璧を成したエレクトロニクス産業に関してはもはや沈む夕日というべきか、斜陽産業となりつつある気がします。先程にも別記事のコメントに書きましたが、90年代後半において就職先として最も人気な企業の一つであったソニーはパナソニックやシャープといった赤字三兄弟の二社が前期にようやく赤字から脱したのに対し、ソニーだけは未だに赤字から脱することが出来ておりません。また私見として述べても、90年代のソニーと比べて今のソニー製品には覇気がないというか、高い金払っても買いたいと思える商品が本当に存在しないように思えます。昔はVAIOを持っているだけで自慢できたというのに。

 こう思うと周りから羨まれるような人気企業に就職しても、果たして定年まで羨ましがられるかというと微妙なもんです。むしろ各時代の花形産業というのはある意味で満開状態にあると言ってもよく、その時代を過ぎると後は枯れていくという可能性は決して低くない気もします。流れ的に見るなら、悲観的な気もしますがやっぱり日本のエレクトロニクス産業は今その時期なんじゃないかな。

 なんで今日この記事を書こうと思ったのかというと、デザートとして一昨日買っておいたのが「ちょっと贅沢 北海道メロンゼリー」だったので、

北海道メロン→夕張→炭鉱→石炭産業→前読んだ記事

 というつながりができたからです。今に始まることではないですが、なんか自分の頭の中の単語のつながりがおかしい気がしてなりません。

2014年5月27日火曜日

伝えることに全く努力しない日本人

 上司が部下に対して作業を指示したものの部下がその作業をきちんと達成できなかった場合、日本では十中八九その部下が悪いことになると思います。しかし私が日頃見ている限りだと、案外上司の方があいまいな指示を出しててそのあいまいさゆえに部下が失敗してしまうケースの方が多いような気がします。更に言えば、上司の指示(リーディング)がまずかったのではという可能性を日本人ならほぼ誰も検証しないということ自体がやっぱ異常な感じがします。

 私がこう思うようになったのはやっぱりというか中国で生活した経験があるからですが、中国だと作業が上手くいかなかったので従業員を叱ると、「お前の指示(説明)が悪いせいだ」 と本気で言いかえしてくるケースがあります。自分が言われたわけではないですが横から見ていて、確かに上司の方に問題があるとは日本人は考えもしないなと思い、それと同時にこれまで付き合ってきた自分の日本人上司の中には何が言いたいのかよくわからない指示を連発して、うまくいかなかったら下のせいにする輩が多かったようなと思うに至ったわけです。しかもそういう上司に限ってやたら「5W1Hは大事だぞ」と連呼していて、人に言う前に自分を省みろと何度も思ったものです。更に言うと5W1Hだけでなく、想定外の事態への対応である「もし」こと「If」もしっかり付け加えられる人は仕えててやりやすいです。

 話は戻りますがこうした上下関係に限らず、日本人は説明など口頭での伝達に関しては全く努力しないというか、基本的に「わからない奴が悪い」というスタンスを取ることが多いです。もっともこれは中国人にも少なからず共通する点がありますが、日本の場合だと上下関係だと特にひどく、教育現場においてはこれがまかり通ってていろいろな面で悪い影響を与えている気がしてないません。

日本料理人ブラック過ぎワロタ(アルファルファモザイク)

 上のリンク先はその一例というか料理人の世界の話ですが、新人は一切包丁を持たせてもらえず雑用ばかりさせられて、肝心の料理技術を教える段階では「見て盗め」などといって何も教えない、何のための指導だよといいたくなる現場の例が紹介されています。
 大分前に京都吉兆の支配人が言っていた言葉ですが、新人に包丁を持たせないのは先輩からのいじめ以外の何物でもなく、料理の腕を上達させるためには初めから持って始動させた方がいいと、ごくごく当たり前のことを言っていました。しかし日本だとこんな当たり前のことが通らずに非合理な言い訳がまかり通り、挙句にさっきの「見て盗め」なんて自分に説明する技術というか会話能力がないと自信を持って白状するセリフまで出てくる始末です。

 さすがにブルース・リーくらいのレベルになったら「考えるな、感じろ!」といってもいい気はしますが、少なくとも日本の日常においてはこんなセリフみたいなことを言うのは無駄でしかないし相手するまでもないでしょう。相手を理解させるべき立場の人間が理解させるための努力を放棄する、もしくは理解する側の人間にだけ歩み寄らせるなど、責任放棄もいい所です。

 ではなんで日本はこのように伝えることに努力を払わなくなったのでしょうか。一番大きな原因はもう断言してしまいますが、基本的日本は上(=理解させる側)が馬鹿でも末端の人間(=理解する側)が優秀であることが多いいため、あいまいでよくわからない指示でも必死で歩み寄り、相手の意図を頑張って読んでくれるためなんとなくそれでうまくいってしまうことが多いからでしょう。逆に欧米なんかだと移民の労働者に対して必死で理解させてもらうためコミュニケーションを工夫するというし。

 もう一つの理由として私が考えるのは、司馬遼太郎みたいであんまりいい気分しないけど、やっぱ旧日本陸軍が悪かったんじゃないかとも思えます。旧日本陸軍がやっていた教練や軍事作戦なんてどれも合理的に考えたら全く意味がなく非合理的なものが多かった(うさぎ跳びなど)のですが、それに対してさも価値や意味があるように非合理的な説明というか言い訳を繰り返して、「非合理的な行為に対して非合理的な説明をする」というのが日本全体で一般化してしまったのでは、なんて思うわけです。そりゃ戦争にも負けるよ。

 紙幅が余ったので如何に旧日本陸軍が非合理的だったかという一例を述べると、「バーデン=バーデンの密約」といって、明治から大正にかけて長州閥こと山口県出身者が陸軍内部で主要な地位を占めていたのに対し、この時の密約に出た陸軍幹部らは「俺たちがえらくなったら長州閥を締め出そう」と約束し合うのですが、念願かなって幹部養成学校の陸大の教官になると長州出身者に対して面接試験において、「校門からここまで何歩かかる?」なんてむちゃくちゃな質問をしては無理矢理蹴落としていき、事実ある年を境に長州出身の陸大入学者は完全にいなくなってしまいます。派閥を打倒するために別の派閥を作る、悪しき典例といえるでしょう。

2014年5月25日日曜日

荒れる国際情勢と米国の弱体化

 このところシリア内戦に始まりクリミア併合、タイのクーデター、南沙諸島での中越(「越中」と書いたら別の意味になるなぁ)の衝突など、控え目に言っても国際情勢が非常に荒れた状態となっております。最近すっかり鳴りを潜めていますが自分の真の専門は歴史学でも社会学でも漫画・アニメなどサブカルチャーでもなく、国際政治であると自負しており、そんな自分からすると今の状況は不遜ですが見ていて楽しいことこの上なく、今後どうなるかが本当に楽しみです。

 そんな自分の感傷は置いといてここで一つクエスチョンですが、何故このタイミングでこれほどまでに世界情勢が荒れてきたのでしょうか。 結論から述べると今これほど荒れるようになったのは米国の発信力というか威信が低下していることこそが原因ではないかと私は見ており、特に中国の増長は「何してもオバマは言ってこない」と安心しきっていることに尽きるでしょう。

 中国が近年増長するようになったのは一つには政治トップの総書記の交代があります。2012年に胡錦濤から習近平に総書記色が移りましたが、去年一年を見ている限りですとやっぱり胡錦濤はなんだかんだ言いながら日本に対して気兼ねしてくれてたんだなぁという風に思えてきました。逆に習近平はバックにいるのが江沢民を頂点に頂く上海閥で、この上海閥は軍とも近い距離にあると言われているだけに領土問題とかでも手段が強引になってきた感があり、習近平本人のパーソナリティかどうかまではまだ計りかねますが、今の指導部として考えるなら今後もこのようなペースが続くんじゃないかと思います。

 そんな習近平政権が強気になった一つのターニングポイントとしては、東シナ海の防空識別圏を去年の突如一方的に設置したあたりでしょう。記憶している方なら話は早いですが日本の領海を含むところまで勝手に防空圏だと抜かしてこの防空圏を通過する航空機は民間を含めて全部飛行ルートを提出しろと本当に勝手なことを抜かしてきました。たださすがに勝手が過ぎたのか日本や米国を始めほぼすべての周辺国から非難されて、「そういう意味じゃない」と急にしおらしくはなったものの、日本は割としつこく抵抗したものの米国は最初の一回だけ批判した後はすぐに飛行ルートの提出に応じちゃい、どうもこのあたりで中国が「米国は多少無理しても何も言ってこないな」と味を占めたような気がします。
 一度味を占めたらこっちのもんで、その後に中国は日本の航空機にレーダーを照射するは、南沙諸島で勝手に開発始めるわ、ベトナムの船にぶつかってくるわとやりたい放題になってきました。しかしこれだけやりたい放題しても、当事者の日本やベトナムは反発しましたが米国の反応はいまいちというか、オバマ大統領は結局あまり動きませんでした。元からオバマ大統領というか米国民主党は伝統的日本より中国寄りな姿勢を持ちますが、その姿勢がここにきて中国を増長させる一因になっているように見えて仕方ありません。

 そんなオバマ大統領の動かない姿勢は東アジアだけでなく中東、ひいては東欧においても同様です。シリアでの内戦に関してはやけに激しくシリア政府軍への空爆を提唱したもののロシアのプーチン大統領の反対に押し切られ(個人的な意見としては私も空爆反対だったし今も変わらない)、そのままの勢いでウクライナのクリミア半島もロシアに併合され、今現在もウクライナ東部の帰属をめぐってロシアが有利な立場で進めています。
 単純にオバマ大統領よりプーチン大統領の方が役者が、というより大統領が上だったと言えばそれまでですが、クリミア併合の際に私は、仮に今の米国の大統領がブッシュだったらこうも行かなかったろうなということが頭をよぎりました。まぁブッシュ前大統領はあんまり賢そうではなかったですが、いざとなったら武力行使に踏み切るという覚悟があったのに対し、今のオバマ大統領は口先ではどうとでもいうけど結局は何もしないということが見透かされているような感じがします。

 このような視点で今後の先行き予測を述べると、オバマが大統領を続ける限りは中国やロシアはどうせなにも出来やしないと見越して増長を続け、隙あらば即行動を取ってくると思います。ま、もしかしたら中国やロシアだけじゃなく中東のある国も隣国の政情が安定しないことを良いことに何かやってくるかもしれませんが。

 そんな中国とロシアですが、日本の報道によるとこのところ両首脳が度々階段を持つなど関係が親密化しており、今朝のニュース番組では両国の接近が日本の脅威になるとやけに大きく報じてました。逆に日本はクリミア併合で米国のロシアへの制裁に賛成したことから、ロシア側が不機嫌になり、余計に中国への接近を促してしまったなんていう報道も出ています。

 ただ私からすると両国の接近は楽観視しており、むしろ中国がロシアに接近すればするほど日本にとっては有利になるんじゃないかと密かに考えてます。こう考える理由としてはロシアは本当の意味で虎狼の国で、あらゆる条約とか国際常識が中国以上に通用しない国だと考えており、迂闊に中国がロシアから天然ガスを輸入し始めたが最後、絶妙のタイミングで裏切られてひどい目に遭うのではないかと思ってるからです。同じ理由から、私は日本がロシアから天然ガスを買うというかエネルギーを依存することに対して反対です。

 またえらく内容が濃い記事となりましたが最後に書くこととして、今後日本はどのような立場を取っていくかです。方針としては大まかに言って三つあり、一つは威信が低下しているとはいえ、むしろ低下しているからこそ米国と共同歩調を取って国際社会の安定を求めるという案。二つ目は米国なんてこの際宛てにせず、中国を抑えるためベトナムやフィリピンなどとより強固な連携を模索する案。三つ目は多少妥協することを条件に中国と共同歩調を取っていくという案。恐らく大多数の日本人は第二案を取るでしょうが、果たして数が多いとはいえ米国より発信力の国と組んでうまくいくのか、そういう視点を持つことも必要ではないでしょうか。
 じゃあ私ならどの案を選ぶのかというと、答えは第三案一択です。恐らくプーチン大統領としては、さんざ中国と共同歩調を取りつつ持ち上げ、躍らせたところでぽいと捨てるタイミングを考えてるんじゃないかなと思い、日本も同じように中国を泳がせるだけ泳がせていいタイミングで裏切るのが現状で吉じゃないかと考えるわけです。それこそ、オフレコで日本は中国の南沙諸島進出を支持すると言うだけ言ってみるとか。

 多少ずるい回答ですが、国際政治というのは将来確実に裏切ることを前提として仲良くするのも一つの手だと、私は考えます。

2014年5月24日土曜日

「ブラック・ラグーン」の10巻について


 上記の画像はネットでたまたま一昨日見つけて来たものですが、このたった一コマだけで何の漫画の一コマであるか一発でわかりました。わかる人にはわかるでしょうが、この漫画によく出てくる「飯田」が後にあんなことをしでかすなんて……。

 話は本題というかまた漫画の話ですが、今日また漫画喫茶に行ってきて以下の漫画をざらっと呼んできました。

・テルマ・エロマエ 4~6巻
・ジョジョリオン 7巻
・新世紀エヴァンゲリオン 5~13巻

 上記の漫画はどれも予定になかったというか時間が余ったので読んだのですが、元々今日読みたいと考えていたのは見出しに掲げた「ブラック・ラグーン」という漫画の最新巻(10巻)でした。目当てにしていたものの今日行った漫画喫茶には何故かおいてなかったので、どうせ手持ちのQUOカードが時期使わなくなるのでそのまま本屋行って直接買ってきました。

 このブラック・ラグーンがどういう漫画家というと、敢えて言うなら犯罪バイオレンスアクションものといったところです。特筆すべきは作者の広江礼威氏がとにもかくにもキャラクターの描き分けに長けており、日系商社勤務の日本人に始まり、軍人上がりのロシア系マフィアの女ボス、ルーマニア出身の双子暗殺者など実に国際色入り乱れておりますが、どれもそれぞれ特徴を持っていて容易に見分けることが出来ます。
 次なる特徴というかこの漫画の最大の魅力を述べると、激しい暴力描写を「なんともない」とする各キャラクターの言い回しで、一例を挙げると、死体処理に当たってバラかミンチかと聞かれて「脅しに使うからバラで」、とこともなげに言ってのけるなど、浮世離れした現場をすっ飛ばすかのようなジョークが飛び交います。

 そんなPTAからいろいろ文句が飛んで来そうなくらいぶっ飛んだ内容のこの漫画ですが、作者曰く体調不良とのことで、今回の最新刊が出るまで長らく休載が続いておりました。それは具体的にどのくらいかというと、ひとつ前の9巻が出たのが2009年10月で、10巻が出たのが2014年5月こと今月です。この間、約4年半。
  自分がこの漫画を読みだしたのはちょうど2010年の7月くらいで、その年の10月から中国に行ったので「最新刊がでたら読めないじゃん」とか思っていたら、まるまる中国にいた間に最新刊が発売されなかったというオチが付きました。

 そんなわけで文字通り首を長くして待っていた最新巻でしたが、結論から言うと非常に面白く、今日漫画喫茶で読んだ全部の漫画を足してもこの一冊に面白さで劣るのではとすら思う出来でした。相変わらず絵柄はブランクを感じさせないほど安定していてセリフ回しもテンポよく、今回で一番気に入ったセリフは「ああ可哀想なミス・北京ダック。盗むのは彼女じゃない、彼女は盗まれる立場なのに」でした。
 「ミス・北京ダック」という単語から類推する人もいるでしょうが、最新刊から始まった新しいシリーズでは中国人女性キャラが半主役です。作者が香港映画マニアだといううわさもあるだけに自分から見ても実にキャラが立っていて、多少不遜かもしれませんがこの女性キャラに対して自分は強く感情移入できました。なんでそんだけ気に入っているのかというと、この一言に集約されます。

「最后的最后都不放弃,这就是我的死法」

 これは背表紙に書かれてある言葉(もちろん中国語)ですが、同じ内容の言葉は作中でちゃんと日本語となって語られています。多少ネタバレになるので敢えて意味は書きませんが、この言葉は今の自分にはずしんと重く響きます。以前に甘粕正彦について書きましたが、国家や会社の命令に対し忠実に従った結果として国家や会社から追われることになる、そんなバカなということは現実に世に溢れているななんてこの漫画を読んで自分に重ねました。ある意味、また向こうに渡る前にこの漫画買って読めてよかったなと思った次第です。