2012年4月7日土曜日

海外企業に対する日本人のアレルギー

 大分今更な話ですが、先日(去年)に友人から勧められたこともあって「ハゲタカ」という小説を本日読み終えました。自分が敬服している友人なだけに見事なチョイスと言わざるを得ないくらい面白く、久々に小説に心動かされました。この作品は既にドラマや映画にもなっているので内容について知っておいでの方も多いでしょうが、ちょうど失われた十年の後半から小泉改革初期の頃の日本が舞台なので、まだ義務教育期間中ではあったものの自分も見聞きした事件が題材にとられていてなんていうか感慨深いものがありました。

 それで読み終えた感想ですが、作者自身も「言い訳をしながら生きることはもう止めよう」というのがテーマだと述べているだけに、改めて日本人の無責任性というか経営に対する価値観のなさを思い知らされたというのが大きなところです。特に去年から今年にかけては東電にしろ大王製紙にしろAIJにしろ、一番責任を取らなきゃいけない人間たちが無責任さを存分に発揮するという光景が何度も繰り広げられているだけに、日本企業はあの時に結局、何も反省しなかったのかというような思いを覚えました。
 こうした感想とともにもう一つ、これは多分私くらいじゃないかと思いますが、海外に対する価値観というかものの見方が日本人はやはりひん曲がったものがあるんじゃないかという気もしました。具体的にどういうことかというと、それこそ製造業に例を取るならば今の日本企業はどこも「海外に出ていかなければ……」と強い進出意欲と危機感を持っております。しかしその一方でこの小説に出てくる「ハゲタカ」こと外資系投資ファンドのように、海外から日本にやってくる企業や人間に対してはその存在価値すら頭から否定するところがある気がします。

 古くは日産のカルロス・ゴーン氏で、彼の就任当初はそれこそ「それ全く関係ないだろ」というくらいの個人批判もあれば、実際に業績が上向いてくると「所詮一時的なものだ」と負け惜しみかのような声がほぼ毎年聞かれました。さすがに十年以上も好業績を保っているのでほとんどの批判は消え失せましたが、ついでなので書かせてもらうと現在の中国で最も成功した日系企業と問われるなら私は迷うことなく「大企業なら日産」だと答えています。トヨタやホンダがシェア争いで低迷する中で確実に毎年シェアを伸ばしておりますし、真面目に中国のどこ行っても日産の「ティアナ」は見ることが出来ます。

 話は本題に戻しますが、日本企業が海外に新しい拠点や工場を建設するとそれはいいことだとみんな手放しで誉めると思いますが、逆に現実に海外メーカーが日本に大規模な工場を建てようとするものなら、人件費などの関係でほとんどないものの、恐らくほとんどの日本人はいい気分をしないと思います。場合、これも具体名を出すとそれが中国や韓国系企業だった場合は「技術を盗もうとしている」などと陰謀論も出るでしょうし、工場誘致に当たって自治体が補助金を出そうものなら「魂を売った」などとその自治体も激しく批判されることでしょう。
 現実に向う見ずな投資で堺工場を建てちゃって首が回んなくなっているシャープが、かつては「世界の亀山モデル」とでっかく喧伝していた三重県亀山工場の一部設備を売却した際は方々から批判を受けましたし、私自身も地元自治体から補助金もらっときながらと批判してましたが、やっぱ周りの批判を見ていると「よりによって海外に売るなんて」っていうような売った行為以上に売った対象に対する批判が強いような気がしました。

 冷静に考えてみると日本でいう国際化というのは海外に出ていけるだけの知識や技術の獲得、現地で生活できる人材の育成という意味はあっても、海外で実施されている効率的な経営手法や現地ルールの受け入れというものは含まれていない気がします。これは言うなれば、一時は金融界では欧米式ルールの導入が激しく叫ばれたということがありましたが、どれだけ日本のルールがおかしかろうが、間違っていようが海外のルールには変更しないという価値観の現れなのかもしれません。
 別に自分は人類皆兄弟なんて幻想を抱いていなければ変に国際協調を促すつもりなんて全くありません。ただ自分たちが勝手に出ていくのは国際化であっても、相手のルールややり方を受け入れるのはそうではないというのは何か都合が良すぎるのではという気がします。自分を認めてもらうからには相手の認めるところは認める、こうした姿勢をもう少し日本人が持つことこそが国際化の条件なのでは、ひいては日本全体にとっても必要なことなんじゃないかというのが私の意見です。

 最後に補足ですが、何故このように私が感じたのかという背景として、この前に中国のある都市で日系企業の誘致イベントに参加してきたからだと思います。そのイベントでは招かれた日本人は食費、宿泊費は現地政府持ちで、それこそ市長級の重鎮も大勢招かれていて、中国では外国企業の誘致にここまでするのかといろんな意味で驚きました。ちなみに招かれた日系企業の中にはそりゃ大企業も一部含まれておりましたが、大半は聞いたこともないような中小企業ばかりでした。
 恐らく中国人も昔は昔で日本人みたいに海外企業を誘致するに当たってアレルギーが会ったんじゃないかと思います。しかし効率的に外資を誘致することは誰がどう見たって間違ってないし、現実にそれで中国は利益を上げていることを考えると、この点で日本は中国に先を進まれているのではないかと不安を感じました。

0 件のコメント:

コメントを投稿

コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

注:ブラウザが「Safari」ですとコメントを投稿してもエラーが起こり反映されない例が報告されています。コメントを残される際はなるべく別のブラウザを使うなどご注意ください。