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2013年7月4日木曜日

漫画レビュー「進撃の巨人」

 自分が書く漫画レビューは決まってマイナーな作品が多いのですが、たまにはアクセスアップを目指してメジャーな作品を取り上げようと今日は「進撃の巨人」について私の目線で紹介しようと思います。かなり昔にこのブログでも書いていますが、よく周りから私はその知識量をとかく評価されがちですが自分が最も他に比して鋭さを持っているのはほかならぬ観察力で、そういう意味でこういうレビューや情勢分析を書く時が鍛えに鍛えた表現力と相まって一番真価を発揮するような気がします。

進撃の巨人(Wikipedia)

 まず知らない方に向けて簡単に説明すると、この「進撃の巨人」という漫画は文句なしに今一番売れている漫画で、先月なんか今も放映中のアニメ化を受けて、全漫画の販売冊数トップテンのうち半分以上をこの漫画の単行本が占めるという驚異的なヒットを続けております。本格的に売れ始めたのは今年のアニメ化以降からですがそれ以前、というより連載開始当初から作者である諫山創氏はこれがデビュー作という新人ながらも、その有り得ないと言いたくなるようなストーリー展開とハードさが大いに話題となり通常ではあり得ない人気作でありました。

 私がこの漫画を知ったのは去年に一時帰国した際、好きな本を買ってくれるあしながおじさん的な友人から「この漫画が売れてるらしいよ」と紹介を受けたからで、早速その晩に漫画喫茶で読んでみましたが確かにすごい作品だと一読して感じました。大まかなあらすじを簡単に述べると、タイトルの通りというか人間の何倍もの大きさを持つ巨人が徘徊する世界で人類が時には食べられつつ、時には踏み潰されつつもあの手この手で駆逐しようと戦っていくという話です。このほかにも非常にさまざまな設定があるのですがストーリー解説が主題ではないのでここでは割愛させていただきます。

 まず一読した直後の私の率直な感想を述べると、「これは海外で売れる」の一言に尽きます。海外、特に日本の漫画がよく売れる欧州地域では「鋼の錬金術師」のようなダークファンタジーや近未来SFがヒットする傾向にあり、ジャンルとしてはダークファンタジーに属するであろう「進撃の巨人」もグローバル規模で売れるとまず思いました。またこの作品も「鋼の錬金術師」同様に近代くらいの西洋をイメージした世界が舞台で、東洋人は今のところヒロインのミカサ(腹筋が割れているヒロインは漫画史上初かもしれない)だけという徹底ぶりで、この点も欧州での販売に大いに貢献する設定のように感じました。

 さらにというか、ストーリー展開のハードさと意表を突く裏設定も見事なものだと太鼓判を押します。作中では先ほども書いた通りに人間が本当に紙屑のように巨人に食われる描写が描かれてあり、主要キャラも割とすぐ殺されます。そして人間を食べる巨人も描写が見事というか、これは作者も意図的に描いていると言っていますが、その表情が巨人ごとに常に同じに描かれています。笑っている巨人はずっと笑ってて、怒っているのはずっと怒ったままの表情を浮かべていて、これがなんとも不気味というか表情があるのに人間味が全くなくて巨人の迫力を大いに増させる演出だと感じられます。

 以上のような具合でなんていうかずっとべた褒めが続いていますが、私は間違いなくこの作品は2010年代(2011~2020年)における最大のヒット作になると考えています。2000年代(2001~2010年)の最大のヒット作は私の中では「鋼の錬金術師」なのですが、ジャンルも先ほども言ったように同じダークファンタジーであることから、完全にこの系譜を受け継ぎ海外市場における強力なジャパンコンテンツになると見ております。

 最後に蛇足かもしれませんが、この漫画というか作者の画力についてちょっと感じるところがあります。というのもほかのレビュアーの方もいろいろ書いているのですが、率直に言ってあまりうまい絵ではなく、特に最初の方なんか人物の描き分けがよく出来てなくて、「あれ、この人って前食われてなかったっけ?」などと私もしょっちゅう見間違えてました。あと動きのある描写もコマ割りが悪いのかいまいちイメージが出来なかったりして困らせられましたが、この点は最新刊だと大分改善されつつあります。
 ただそうやって貶しておきながらなんですが、逆に諌山氏の絵をほかの漫画家が真似して描けるのかと言ったらまず無理でしょう。諌山氏の絵は一見すると雑ではありますがそのかわりに個性がはっきりと備わっており、その溢れる個性がハードなストーリー展開とマッチしていてこの作品の成功につながっていると言い切ってもいいです。

 そんな諌山氏の絵を見て何を感じるのかというと、流行というか時代の変遷です。あくまで私個人の意見ですが、1990年代から2000年代にかけて漫画の絵は劇的にきれいになったというか、スクリーントーンをふんだんに使用してアニメの絵に近くなっていった気がします。こうした流れを作った代表的な漫画家を私目線であげると「BUSTARD!!」の萩原一至氏、「封神演義」の藤崎竜氏、「天上天下」の大暮維人氏の三人ではないかと睨んでいます(狙ったわけではないのですが三人とも絵は確かに上手いものの、ストーリー展開では風呂敷を広げ過ぎて最後に畳めなくなるのも共通している)。
 こうした絵の発達の流れを受けてやや雑な絵の漫画は排除され、逆にストーリーが悪くても萌え絵の漫画は連載が続けられたりというような傾向が各漫画雑誌で少なからず見えたのですが、今回取り上げた「進撃の巨人」を筆頭に、近年になって多少絵に難があっても個性の光る漫画が評価されるようになってきたかと思います。ほかの作品でパッと思い浮かぶのは「暗殺教室」ですが。

 最終的に何が言いたいのかというと、ここ2~3年で漫画の流行が明らかに変わってきたと感じるということです。多少個性がなくてもきらびやかな絵の漫画よりも、他の人に同じ展開を描くことは出来ないというような個性のある漫画が勢いを増してきており、これからの趨勢を決めていくのではないかと勝手に妄想する次第です。

2 件のコメント:

すいか さんのコメント...

私は、超大型マフラーですよ~(今日が誕生日!)

花園祐 さんのコメント...

 お誕生日おめでとうございます。あの「進撃の巨人占い」は意味不明なワードの組み合わせばかりできるので、自分も身近な人の誕生日を当てはめては作って笑ってます。