先週中国では抗日戦争勝利70周年記念として北京で軍事パレードを行いました。この日は中国では祝日となり私も会社のスケジュール表に「抗日戦争勝利記念日( ゚Д゚)<ヤスミ!」と書いておきましたが、日本ではどう報じられていたのか、私の上司は「あんま今日は外で歩かない方がいいんじゃね?( ゚Д゚)」と治安を気にしてましたが、別にどってことないからといって日本食屋に連れ出しました。
私が書くまでもないですがその連休中は日本人は中国人に白い目で見られるとか悪口言われるとかそういう体験は一切なく、ただの普通の休日でした。さっきにも書いた通り日本ではどう報じられていたのか知りませんが、未だに二次大戦での怨みがどうこうといって日本人に因縁つける中国人などいようものならほかの中国人は「古い価値観のおかしい奴だね」と鼻で笑う事でしょう。尖閣諸島問題は現代の領土問題ということもあって中国人も日本を強く敵視しますが、二次大戦を引っ張り出して日本がどうこう言うことに対しては中国人にとってもおかしな行動の映っていると私には感じます。まぁどこの国とは言わないが。
話は軍事パレードに移りますが、パッと私が日本の報道を見ている限りだと装備品とか兵隊の練度とかにはあまり言及されず、実際軍事マニアらにとってもあまり面白味のないパレードだったのではないかと推察しています。同じパレードでもインドではとても面白そうですが中国にはこの手のユーモアがないのか演出家もいなかったのか、パレードの中身自体にはそれほど触れられていません。ただパレード中の習近平総書記の発言は、私もちょっと注目しました。その発言というのも、人民解放軍の兵力を現在の状態から30万人削減するという内容です。
中国軍に当たる人民解放軍の兵力は陸海空合わせて現在約230万にいるとされ、この兵数は人口大国なだけあって間違いなく世界でも最大でしょう。そもそも兵力が100万人を超える国なんてほとんどなく、この数字が突出したものであるかについては他の世界の軍事比較サイトなどを閲覧ください。たださっきそれで検索かけてみたけど、なんかサイトによって数字がえらく上下するから注意深く見る必要がありそう、多分予備役とかの区別をしてないところもあるんだろうな。
そんな突出した兵力を持つ中国が今度30万人を減らすということで一見するとこれは大規模な軍縮に見えますが、話はそうは簡単なもんじゃないというのが私の見方です。というのも現代の軍隊は兵力が大きければ大きいほど有利というわけではなく、実際にはどれだけ優秀な兵器を多数保有しているかの方が軍事パワー的には影響度が大きいです。そしてその兵器を生産・開発・保有するに当たっては予算が物を言い、30万人の削減によって浮いた人件費を中国が兵器に傾けるとしたら確実に現在よりその脅威度は増すと断言できます。
そもそも、中国政府はかねてから解放軍の人員削減を目指してきた節がありました。かつて鄧小平の時代にも100万人を削減したことがありましたが、中国での軍隊は社会保障的な意味合いが強く、職にあぶれた荒くれ者を雇用して社会を維持するという観点でもってこれまで約230万人という兵数が維持されてきましたが、これだけの兵力を抱えるとなると人件費も馬鹿にならなくて経済投資や軍備拡充を図るに当たって中国政府は本音としてはもっと早く削減に手をかけたかったとかねてから噂されていました。
それだけに今回のポイントとしては、「何故このタイミングなのか」に尽きるでしょう。何故このタイミングで習近平総書記は兵数削減に手をかけたのか、それもわざわざ軍事力を誇示する軍事パレードという晴れの舞台中にどうして発表したのかということが実は一番気になりました。結論をここで述べると恐らく軍部への根回しはなく不意打ち的に削減を発表したのではと思う節があり、今後ますます習政権と軍部の間で火花が起きるのではという懸念があります。
何故このように考えるのかというと習政権はこれまでに軍部との対決姿勢を強く示してきたからです。前任の胡錦濤政権は政府内の汚職対策として要人を逮捕することもありましたが、軍部の人間に対してはとうとう誰一人として手を付けることがありませんでした。しかし習政権は発足してから軍部の超大物を逮捕したのを皮切りに次々と軍部内の人間を汚職でひっ捕らえ、中国の市民からも大喝采を受けて評価されております。
無論、こうした内部の逮捕者続出に軍部はいい気持ちをするわけがありません。以前に尖閣諸島沖で日本の戦闘機に対して中国の戦闘機が照準レーザーを当てていた事件は明らかに中国政府は把握しておらず、軍部が政府への当て付けとばかりに勝手な行動をしたのではと思う節がありました。今度の30万人削減も軍内部からすればポストが少なくなって昇進の可能性が減るだけでなく影響力も落ちることから、削減を歓迎するようなのといったら主計部くらいなもんでしょう。
この辺は本当に勝手な推察ですが、習近平総書記はただでさえ対立中の軍部に対してどうせ反対されて手間かかるだけだから根回しなんかせず、世論をバックに不意打ち的に兵数削減を打ち出し、さらに世界中のメディアに報道させて一気に削減計画を既定事実化させて軍部を追い込もうとしたのではないかと私には思えます。少なくとも中国市民は明らかに習政権側を支持しており、逆に人民解放軍に対しては強い嫌悪感を持っているだけに今回の削減発言も歓迎する声が多いです。
ただ計画通りに削減が粛々と実行されるかについてはまだ断言できません。軍部側もあれこれ抵抗するでしょうし、下手すりゃ以前同様に南か東の国境線近くで騒動起こして政権にプレッシャーをかけてくるかもしれませんし、削減が実行されたとしてもその瞬間には30万人の失業者が生まれるというこことで何かしらも社会不安も起こる可能性があります。
その上で日本としてはどうあるべきが望ましいのか。単純にパワーバランス的にはこのまま役にも立たない兵士を中国が抱え込んでいてくれる方が良いように見えますが、この削減が実現したら中国でも文民側がイニシアチブを高めることになるのでもしかしたら緊張が少しは改善するかもしれません。まぁこの辺はどっちに転ぶかわからないし、黙ってみるだけしかないでしょうが。
最後に実現性について述べると、多少の紆余曲折はあるかもしれませんが今後10年内には達成するんじゃないかと私は思ってます。理由は先ほども述べた通りに習政権への国内の支持度が高いことと、ほぼすべての中国人は解放軍が嫌いだからです。実際、外国人より自国民に銃口を向けることが多いような軍隊だし、普段偉そうにしていることもあり、また汚職の度合いも半端じゃないという三拍子がそろっているので、こういってはなんですが同情する中国人なんていないでしょう。
4 件のコメント:
リクエスト取り上げて頂きありがとうございます。
確かに国内の治安維持用に既に武警があるのだから200万は多すぎですよね。
私事ですが、微信で中国の方(日本語を勉強したいと向こうから接触してきた)が今回の軍事パレードの記事を転載してて、それを私がそのまま転載したら「朋友圈で政治の話をするな」と言われてブロックされました。私も迂闊だったと思いますが。
こちらこそあんま対した内容でなくて申し訳ありません。正直、このネタは書こうとは思ったけどあまり特殊な事実は書けないとわかってたのでスルーしてました。
ウェイシンのその話は逆に変わった中国人だなと思いますね。むしろ中国人の方から政治の話を振り向けられることが普段生活してて多いのですが、もしかしたらその連絡取ってきた人ってのは自分の国の中国が嫌いなタイプだったのかもしれませんね。私を含め、海外志向の高い人間ってのは多かれ少なかれ自国に嫌悪感を持つタイプが多いですし。
でもそうはいっても自国の軍を愛している中国人も相当多いですよ
コメントありがとうございます。
そりゃどこの国だって軍隊が嫌いな人もいれば好きな人だっているでしょう。やや乱暴な言い方になりますが私はこの記事で中国の概況を書いているのであって存在の有無までを論じているわけではなく、私の周囲の反応や私自身の見方を書いているだけです。根拠を出そうったって、解放軍への信頼度調査なんて中国ではやってないんだし。
コメントを投稿