昨夜、私の冷凍たこ焼き好きの友人がキューバへ発ちました。何も亡命しに行ったわけでなくタダの旅行ですが、米国との国交回復が噂されているだけに今のうちに行っておきたいと思って計画したそうです。
キューバといえばチャベス大統領時代のベネズエラと共にアメリカの裏庭にありながら米国と対立していた代表的な国で、世界史にも記録されるケネディ政権時のキューバ危機を代表に米国の仇敵として長らくその存在を維持してきました。しかし近年は、米国の経済封鎖による影響もありますが、国内経済が一向に好転しないことと社会主義政策の行き詰まりから米国との対話にも応じるようになり、特に穏健的な外交を展開してきたオバマ政権が成立して以降はその動きが加速して現時点でも先ほど述べたように国交回復が近いのではと噂されるほどです。
ちなみに国交回復が展望された影響でプロ野球選手のグリエル兄弟はベイスターズに来なくなったとされ、日本にも案外余波が来てたりします。
このキューバと共に長年米国の仇敵として存在した国を挙げるとすれば、イランの名前は間違いなく外せないでしょう。二次大戦以降のイランの歴史はまさに米国の暗部の歴史のようなものですが、そうした背景から米国、イラン共に互いを激しく罵り合ってアフマディネジャド政権時に至っては文字通り一触即発の関係にもなりました。ただ現職のロウハニ大統領になってからは大統領本人が外交政策で穏健派であることから米国との関係も急速に改善していったことによってイランへの経済制裁は近く解除される方針となっております。
キューバとイラン、この米国の仇敵二ヶ国が米国との関係で大幅な改善をしつつあることを考えると現在の世界情勢は米国にとって有利な方向に進んできているように見えます。一体何故このような情勢となったのかという理由については先ほども述べた通りに穏健外交、というより対外派兵に消極的な民主党オバマ大政権が前任の共和党ブッシュ政権時と比べて対話の方に力を入れたことが何よりも大きいかと思われます。仮にこのままキューバとイランとの関係改善が進むようであればイデオロギー上の主要な対立国は消え去ることとなり、恐らくオバマ政権もそれを望んでいるでしょう。
ではこのまま世界は平和になっていくのかというと、そうは言いきれないのが現状です。何故なら現在のオバマ政権は海外派兵に対して消極的であると書きましたが、この影響を受けて米軍が撤退し始めたイランでは反政権派が盛り返し、ご存知の通りISISも跋扈する事態となっております。また同じ中東ではシリアでの内戦が一向に終わる気配を見せず、ようやく日本でも報じられるようになりましたが東欧を中心に難民が大量に発生しており国際社会への大きな課題となっております。
米軍が派兵されればこうした紛争はなくなるかといえばそうでもありませんが、かといってこのまま放っておいてもシリアの内戦が終わりを見せるのかというとそれもまた疑問です。一度は政府軍と反政府軍で和解の仲介が行われましたが物別れに終わり、しかも最近は反政府軍の一部がISISに乗っ取られてシリア政府軍、果てには一部の中東諸国が一緒になってISISへ空爆を行うなど混迷を深めております。
ただこのような混乱極まる中東情勢は、こと米国の世界戦略にとってはかえってプラスかもしれません。というのも米国が敵視するイスラム原理主義組織のアルカイダはISISと対立しており、米国から見たらシリア政府軍を含め敵同士が争い合ってくれているようにみているかもしれません。もしそのような視点であれば米国は介入などせずむしろ対立を煽ろうとする、なんて戦略ではと個人的に推測を立てています。
ここで次に考えるポイントとしては、オバマ政権以降の米国の戦略です。次の大統領が誰になるのか、そもそも民主党が勝つのか共和党が勝つのかまだまだ分からない情勢ですが、歴史的には民主党が消極外交、共和党が積極外交を繰り返すことが多く、案外次の大統領になったらまたあちこちの紛争に介入し始めるんじゃないかなという妙な期待を持っています。
なおこの民主党、共和党のサイクルを考えるにつけちょっと頭に引っかかるのが民主党のビル・クリントン政権です。この時代はまさに米国の絶頂期でしたが民主党の政権らしく紛争介入などには全く以って消極的で、先日私がこのブログで取り上げたルワンダでの虐殺が起こった時も上がってくる現地からの報告を無視するかのようにほとんど相手にせず、結局虐殺が続くのを黙視することとなりました。その結果どうなったかというとルワンダで大量の難民が発生したわけですが、これが今のシリア難民と被って見えるところがあります。まぁアメリカさんなんでもかんでもどうにかしてくれって言うのもよくないんですがね、日本政府に期待するのは大本から間違ってるし。
4 件のコメント:
米国はシェール革命のおかげで中東に関わらなくても良くなった、という面が強そうですね。経済大国かつエネルギー大国、なおかつ人口が増えてると日本から見たら羨ましい限りです。
最近米国内でヒスパニック系の人口が増えてる、という報道をよく目にしますが、これもキューバとの関係改善の一因になってるのではないか、と思いました。アメリカ大統領選候補者にキューバと関りがある人間が何人も居ますね。
あとキューバが米国へ接近する反面、「反米同盟」だったベネズエラが置いてきぼりにされた感があります。
聞くところによればスーパーで買い物するにも長時間並ぶ必要があったり、新聞を発行する紙が足りないとか、終わってますね。
スペイン語圏からも目が離せないと思います。
言われてみるとシェール革命も大きいですね。確かにこれでアメリカが中東に介入し続けなければならない理由が大きく減りましたし。
既にアメリカの人口は有色人種の割合が白人を上回っており、今のペースなら三分の二を占めるのもそう遠くないそうです。ただ有色人種の大統領が出るのはまだ先だろうと考えていたところオバマ大統領が就任したので、私の考えているよりも早くアメリカ社会は変わりつつあるのかもしれません。
スペイン語圏というか南米は確かに注目しています。ブラジルを筆頭に経済成長を続けており、またこれまで不安定な政権が続いていましたが以前に比べればまとまりを見せつつあり、こういった国々へアメリカ、日本がどのような外交を展開していくのか見物でしょう。
かつて傀儡であったパフラビー朝を打倒した現イラン政府と共闘して、現在傀儡であるイラク政府の打倒を目指すISISに対抗するアメリカ....複雑ですよね
まあ今のイランて割と言論の自由があり(ホメイニは糞だぜ!て公共の場でも言えるらしい)、アメリカへの留学生も多いなど、ISISとは全然違いますがね。
非常にわかりやすい比較で助かります。書かれている通り今のアメリカの中東における行動は「昨日の敵は今日の友」を地で行ってますよね。
中東各国を研究したわけでもなくそれほど詳しいわけでもないですが、聞いてる限りだとイランは中東の中でも最も民主主義が洗練されている国で、にもかかわらず民主主義を世界に広げると掲げるアメリカとイデオロギーで対立しているってのは、本当の意味で矛盾してます。私個人としてはそんな民主主義国家イランを盛り立てることが返って中東の安定化に最も近道になるような気がして、アメリカが現在の外交姿勢を維持していくことを実は陰で祈ってます。
コメントを投稿