2016年2月2日火曜日

派遣会社がなくなれば直接雇用が増えるのか?

 また一連のマージン率関連記事で申し訳ないのですが、友人から「生温いぞ!」と言われ、私自身もちょっと優しく書きすぎたなと思う部分があったので、それ以外の諸々も含めてちょこっと補足するような具合でもう一本記事を書きます。本当は中国の外食事情とかについて書きたいのですが。

 この前の土曜に書いたマージン率の調査記事で私は、去年の調査記事はいくつかのサイトに引用されたもののそのうちの一部サイトではやや偏った引用のされ方をして正直に不快だったと書きました。それは具体的にどのような引用だったかというと私が調査して出したマージン率の数字の引用の仕方で、何故か平均値(26.8%)には一切言及せず最高値(50.0%)だけを引用して、「派遣会社は何もせず派遣社員の報酬の半分をピンハネしている」などと書きたてるというものでした。
 実際にはこのマージン率から福利厚生費などを派遣会社が負担するのですから上記のような書き方は明らかに事実とは異なり、ましてや平均値には触れず派遣会社全体でマージン率が50%であるかのように書くことはこの業界への誤解を広げかねず、極言すればデマゴーグといっても差し支えないでしょう。正しい情報をきちんと公開せず偏った情報だけ流すという点で言えば、そのブログ主は義務付けられたマージン率を公開しない派遣会社と態度的にそう変わりない気がします。

 もちろん普通に記事が引用される分には光栄ですしプロフィール欄にも書いているように何も断りがなくても全然気にしませんが、私の作ったデータで捻じ曲げられた情報を発信されるというのであれば不愉快この上ないし、それを正す責務も自分にはあるでしょう。表現者として上を目指すならばそうした誤った引用すらできない記述をやって見せろと言いたいところですが、毎日こうやってブログ書いててもまだそんな水準には達せられてないので、やはりこうして一つ一つ新たに発信していくしかないのが現状です。
 直接名指ししてもいいのですが、今回は警告にとどめておいて次回何かあれば直接批判することにします、現実でも殴り合いを含めて喧嘩するのに何もためらいないし。

 と、ここで話をいったん区切って少し話題を変えますが、上記のような捻じ曲げた引用の仕方をしたサイトは複数あり、どちらも派遣会社は社会のダニで不法に儲けており存在自体なくなればいい、なくなれば直接雇用がもっと増えて労働者は助かるみたいな主張につなげていました。しかし断言してもいいですが、彼らにとっての社会のダニの派遣会社が日本からなくなっても日本で直接雇用の正社員は増えることはないでしょう。っていうか十年くらい前に終わっていると思う議論をなんで今更しなきゃいけないんだとちょっと書いてて今思いました。

 絶対的な事実として、企業の側からすれば同じ業務をやらせるにしても派遣社員を雇う方が正社員を雇うよりも支払うコストが大きくなります。正社員なら月30万円で済むところを派遣社員ならば40万円かかるという具合で絶対的なコストは派遣社員の方が上です。にもかかわらず何故企業は派遣社員を雇うのかというと、いざとなったらすぐに契約を切って解雇できるからで、逆を言えば正社員は売上げが落ちるなどして任せる仕事がない状態になっても解雇などで雇用調整することが出来ず、重石のような負債となってのしかかるリスクがあるというわけです。
 では何故正社員を解雇できないのか。法律解釈にもよりますが労働法で解雇条件が定められておりその条件を満たすのが難しいと考えられているため、どれだけ会社に損害与えても、問題ある社員でもおいそれと解雇が出来ないという認識が日本では強いです。加えて雇用の流動性が低く転職市場も海外と比べそれほど大きくないため、従業員側も負担が大きいブラック企業でも生活のためには我慢して働くため、いろんな意味で悪循環になってるわけです。

 突きつめれば雇用の流動性が日本だと低すぎるために派遣社員が企業に求められるわけです。ならば派遣社員をなくすためにはどうすればいいのかですがこれははっきりしており、正社員の特権を失くせばいいだけで、要するに解雇条件を緩和するなどして雇用側が簡単に解雇できるようにすればいいわけです。そうすれば企業はコストの大きな派遣社員よりもどこも率先して正社員を雇うようになり、それどころか真面目に働こうとしないのに会社にしがみついている問題ある社員も一掃されるでしょう。
 私はもう何年も前から上記のような考えに則って、「正社員という概念自体をもうなくして、みんなが派遣社員になれば日本人はみんな幸せになるよ。少なくとも派遣を批判している人たちは」と主張し続けてきました。そもそも東シナ海を股にかけて働いている私からすれば日本の労働市場の方が異常に見えて仕方なく、何故ブラック企業が存在するのか、何故有期雇用契約じゃないのか、何故労働契約書を書面でしっかりサインしないんだとか疑問でいっぱいです。しかも本人たちがその異常性に気付かずというか気づいていない振りして自分たちにだけ都合のいい意見や主張ばかり展開しているのが一番疑問です。

 この辺りはリツアンSTCの野中社長と考え方が一致しましたが、日本の労働市場における最大の欠陥は雇用の流動性が低いという点に集約出来ると思います。ではこれを改善する、流動性を高めるにはどうすればいいかとなると現状況下では派遣雇用を発展させることがまだマシな着陸点だと思え、ルールを徹底して健全に発展させるためにも情報公開が不可欠と考えたからこそわざわざマージン率の公開率を調べたわけです。なので直接本人にも言いましたが、派遣業界は大手が三つくらいに集約されればいいと思ってるしその中の一つに御社をぶちこみたいと話し、まともな派遣会社を育てたいし応援したいと伝えました。
 ってか書きながらつくづく思いますが、一連の調査で一番ミステリーなのは中国で暮らしている私がわざわざ日本のマージン率を調べている点でしょう。普段から行動怪しいけど。

6 件のコメント:

  1.  面白く読ませていただきました。
     雇用の流動性、必要といえば否定できないと同時に 
     流動性がある状態=景気が悪いとすぐ雇用打ち切り
     という図式を考えると(まあそこまで単純かどうかわかりませんが)、景気の波がより激しくなってくるようにも思え、どういう形がより望ましいのか、わからなくなりますね。正社員がのんびりしていて、派遣やパートさんのほうがよっぽど熱心というケースもありますし・・・。

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    1.  またコメントし辛い記事にわざわざコメントいただきありがとうございます。
       おっしゃる通りに、同じ会社で長くずっと働けるという方が経済的にも効率がいいし労働者にとってもいいに決まっています。しかし世の中、同じビジネスや仕事が永遠に続くわけでもなくある程度は市場の流動性に従わざるを得ないところもあり、その流動性に合わせる形で雇用も一程度の流動性が必要なんじゃないかと私は考えています。一番望ましいのは「同一賃金同一労働」の原則徹底ですが、今の日本社会は同じ仕事でも正社員か派遣やパートで給与に大きな隔たりがあり、極論すれば身分制に近い所がある気がします。それであれば流動性を高め、全体で給与が下がろうとも機会の均等を確保すべきではないかというのが自分の価値観です。

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  2. パソナとリクルート、どっちが好きですか?

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    1.  今やったらリクルート。

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  3. 派遣会社のマージン率の記事、いつも興味深く読ませて頂いてます。

    個人的には中国の派遣労働者事情に関して、お時間があれば記事にして欲しいです。確か、2年前に「労務派遣暫定規定」が改正されて厳格化されたと聞いております。

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    1.  まさか上の上海忍者以外にもこのようなリクエストが来るとは……。正直、こちらのコメント見て即座に思い浮かべたこととしては、「そんなんNNAとか時事通信に言ってくれよ……」っていう泣き言でした。
       でも確かに、この分野の日本じゃ報道されていないし日系企業もあんまり興味ないのか詳しく調べてないところでもあります。ただ今後、サービス産業系企業が進出するとなると中国でも派遣雇用は増えるかもしれませんし、余裕があればちょっと調べてみます。あくまで、余裕があればですが……。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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