・小1女児殺害で無期懲役=自白信用性を認定―「身勝手で残虐」・宇都宮地裁(時事通信)
本日、かねてからこのブログで取り上げていた栃木県の小1女児殺害事件の第一審裁判において本日判決が下り、被告の男性に無期懲役刑が言い渡されました。私自身は以前に書いた記事でも述べたようにこの被告の方は冤罪である可能性が高いと見ておりその理由についても既述しておりますが、矛盾しかなく整合性のかけらもない自白調書が先に証拠として採用された段階でこの判決はあらかじめ読めてはいました。とはいえ、何とか無罪判決が下りてくれないものかと願っていただけにこの結果に関しては非常に残念極まりなくニュースを見た瞬間に気分も大きく落ち込みました。
何故この事件が冤罪だと考えるのかという理由については過去の記事でも散々に述べていますが、一番大きな理由としては実際に遺体を検死した法医学者が自白内容と死体状況が一致しないと述べていること、二番目としてはこの事件を捜査したのがかつて足利事件を生んだ悪名高き栃木県警であることからです。まぁ足利事件以上に私の中では栃木リンチ殺害事件の方が大きいけど。
ただ私以外にもこの事件を冤罪と疑う人間は少なくないように思え、このところこのブログのアクセスも派遣マージン率と並んでこの事件に関連した記事も急激に増えてきております。同じように考える人間が少なからずいてくれてほっとする一方、今回の判決を報じるニュース記事に付けられたコメントを見ると大半の方が被告が犯人であると信じて疑わず、「何故真実を語らない」とか「どうして死刑にならない」などと言うコメントがずらっと並んでおり、世論的にはまだまだ私はマイノリティに属しているのでしょう。
そのようなコメントの中で少し目を引いたものとして、「犯人じゃないというのならなんで自白した。やましいことがないなら自白なんてするわけない」といった類のコメントが数件見受けられました。本来反論すべき立場でないことは重々承知ですが、はっきり言えばこの認識は大きく間違っているだろうし世の中舐めた発言じゃないかと思わざるを得ません。というのも、警察に逮捕され留置所、次いで拘置所に送られた場合の精神的圧迫というものは非常に大きいと体験者は皆口を揃えて話しており、最後まで抵抗し続けた人たちですら「嘘でもいいから自白して早く楽になりたい」という考えが何度もよぎったと後に述べています。
具体的にどのようにキツイのかというと外界の自由を奪われた上に近親者との交信も制限され、その上狭い部屋に朝から晩まで監禁され自白するまで延々と怒鳴られる、嫌味を言われる、肩とか腕を掴まれ思い切り揺さぶられるというのも話を聞いてる限りだとそんな珍しくない気がします。大阪府警なんかは取り調べ中の怒声が過去に録音されていますがあんなの聞いたら震え上がらない人間の方が珍しいと感じるくらいですし、ましてやこの被告は二年くらい拘留されており、精神が萎えるというのもごく自然だし正気を保つことも難しかったのではないかと思います。
そもそも栃木県警では過去の足利事件で犯人とされた菅谷さんを取り調べ中に散々脅したり、実際に暴行を加えたことも証言されています。結局それらの拷問に屈する形で菅谷さんもしてもいない殺人を警察に言われた通りに自白することとなりましたが、この菅谷さんを迂闊だと責められる人がいるというのなら一回同じ目にあってみたらどうかと言ってやりたいです。まぁ自分も成人してからはサツにパクられた事がないので取り調べ体験はないのですが。
こうした警察、検察の取り調べ過程についてはやはり体験者の話を聞くのが一番で、中でも一番おすすめなのは「国家の罠」を上辞した佐藤優氏です。モスクワでマフィアとそう変わらない海千山千の政治家や官僚とハードな交渉をしたり、軍隊に囲まれたリトアニア政庁に乗り込んで和解に奔走した元外交官の佐藤氏(ついでにかなり強面の悪人ヅラ)ですら、取り調べ中には何度も拘禁症状が出て涙を流したり、精神的にかなり追いつめられたという経験が先の本の中で赤裸々に書かれています。この佐藤氏ですら、自らにかけられた根も葉もない容疑を最後まで認めず屈しなかったものの、あれほどまで追い詰められるのだから自分などは同じ状況で耐えられる自信はとてもありません。
同じく無実の罪で投獄され、さらには証拠まで偽装された厚生労働省の村木厚子氏も最後まで屈することなく裁判で無罪を勝ち取りましたが、真面目に佐藤氏と村木氏のタフさには頭が下がります。本当にすごい官僚というのは物凄くタフなんでしょう。
少し話が脱線しましたが、どう考えてもこの事件には女の子を殺した真犯人がまだ野放しになっているようにしか思えず、栃木県警のサボタージュのために無辜の市民の人生が弄ばれるという事実は正直癇に障ります。被告とその弁護団は控訴する方針とのことですが、二審で無罪を獲得することを切に願います。
おまけ
「国家の罠」の中に書かれた佐藤氏と検事のやり取りの中で、佐藤氏が鈴木宗男氏からお金を受け取っていたとみた検事が佐藤氏の預金を調べたところ300万円あるのを見て、「きっとこの金こそムネオ資金だ」と最初は考えたそうです。しかし他の外務省職員の預金も調べてみたらみんな数千万、下手したら数億円単位で大量に預金を持っており、
検事「あんた一体なんでこれしか預金持ってないんだ。外務省職員は半端なく給料いいんだからもっとあったっていいだろう(;´Д`)」
佐藤氏「馬鹿にするなよ、300万円だって立派な預金じゃないか!(# ゚Д゚)」
という妙なやり取りがあったそうです。ちなみになんで佐藤氏の預金が少なかったのかというと、仕事で使うお金の大部分を自己負担しており、記者や商社員、外国政府職員などから情報を得ていたためだそうです。他の人だったらもしかして嘘じゃないかなと思ったかもしれませんが、この人に関してはとてもそんな疑念は全く浮かびません。
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