先日コメント欄で中国の格差について質問があったので記事に書こうと思いますが、本題に応える前に私個人の疑問として、どうして日本人は中国の格差をやたら気にするのかということについて思いのままに書かせてもらおうと思います。
まずこの質問ですが、ぶっちゃけすごくよく聞かれます。初対面の人に自己紹介がてら「中国にいた」というと、「ちなみに、中国の方の格差って……」という具合で高確率で聞かれます。どっちかと言えば「中国の食事ってどうだったんですか?」の方がやや多く、比率的には6:4くらいではあるものの、実質この二つの質問が中国に行ったことのない日本人から聞かれる質問トップ2です。
中国の食べ物や食事について質問されるのはまだ理解でき、実際私もつい先日に知人には話したラー油事件が起こるなど、食事に関するトラブルは大分減ったものの存在し続け日本人も興味を持つのも自然なことでしょう。しかし格差については正直、一体何故これほど聞かれるのか本気で分からず、2013年に帰国していた折にやたら聞かれ続けてずっと不思議でした。
前もっていうと、私自身は格差に関心がないわけではなく、むしろこの方面に対しトップクラスに関心が強い人間であると自負しています。エリカが例えてあげると、一般人がトノサマガエルなら、私はウシガエルくらい格差に対して強く関心があり、学生時代からしょっちゅうこの問題追っては仮説を検証し続け、現在もそこそこの知見はあると考えています。あの派遣マージン率調査なぞ最たるもので、断言しますがあの調査は私だからこそできたのであって私以外にはまず誰もできないものだったでしょう。
そんな私がどうして日本人が中国の格差に関心を持つことに奇異を感じるのかというと、率直に言って自国の格差にはあまり目を向けないでおいてなんで中国の格差が気になるのかというのが分からないからです。恐らく間違いないでしょうが、中国の格差が気になる人は韓国、米国、インド、ネパール、東欧の格差については全く関心はなく、ピンポイントで中国の格差にのみ関心を持っていることでしょう。
そして日本国内の格差については、多分同様にあまり関心が持たれてないでしょう。自分がやった派遣マージン率の調査でも、やはり反応を見ていると当事者である派遣労働者たちのアクションがあまりなかったし、今となっては派遣格差について議論する人すら消え失せました。
このような疑問をずっと抱えていたのですが、今回改めてそうして日本人は中国の格差にだけ関心を持つのか考えてみたところ、割とすぐに仮説は浮かんできました。結論をここでいうと、目にする報道や現実にギャップがあって頭の中でいまいち理解できず、実態がどうなのか疑問を覚えているからではないかという気がします。
この考えのベースとなっているのは、上海を初めて訪れた日本人はほぼ例外なく、「上海がこんなに大都市だとは思わなかった」と述べる感想からです。上海に関する報道は日本でもたくさんあると思うのに、ほぼ一様に上海の街の規模やインフラに嘆息してみせ、一体日本ではどう報じられているのか、恐らく未だに中国はバーバリアンが闊歩する修羅の国のように報じられているんじゃないかと内心で思いました。
一方、現実では自分も何度も報じている通りにこのところ中国人は日本に大挙してやってきて膨大な買い物をして帰ります。恐らく日本国内にいる人たちからすれば、テレビや新聞では中国は未だ発展途上国で、最低限のインフラにさえ事欠き北京や上海のような大都市ではスラムが大量にできているなどと報じられているのに、日本に来る中国人はこれほどまで馬鹿買いしていくのは何故だろう的になって、中国国内には大量の貧困者がいる中、ごく一部の超裕福な中国人が日本に来ているのではと想像するようになったのかもしれません。またここまで行かずとも、同じ中国の報道でも上海の摩天楼と農村の貧しく差別される人たちが同時に映され、「これは本当に同じ国の話?」という具合で疑問に感じてるのかもしれません。
まぁ何が原因かとなると、きちんと中国の実態をうまく報じる日系メディアが多くないってことに尽きます。実際ネットの報道見ていても中国に関しては妙なバイアスかかってますし、意図的に格下のように中国を報じてますから、こうなるのも案外不思議でないかもしれません。
私個人としては先ほどにも書いた通り、所詮は外国の格差であって日本人がどうこう思ったところで何かが変わるわけでもなく、それよりむしろ自国の格差について考えたらどうかと気持ちが強いです。なおこのような価値観から、私は中国の路上生活者にカンパしないようにしています。カンパしたところで根本的解決にはつながらないし、またこれは中国人自身が対処するべき格差だと考えているからです。さすがに、賽銭箱に小銭は入れますが。
6 件のコメント:
コメントに返信をいただきありがとうございます.
日本での格差としては,花園祐さんが言及しているように正社員や派遣社員のことや労働基準法を守る会社,守る会社,老後を過ごす資産の有無などなどあることはあると考えれます.
これから未来がどうなっているか,考えたくないという気持ちもありますし,瞬間でいいから現状から目をそらすために,そのような質問をしたくなったいうこともあります.
米国においても,フードクポーンや移民の問題,少し古いですがウォール街のデモも記憶に新しいですし,また,契約社員に一度落ちると這い上がるのが難しいとは聞きます.
結局,格差はなくなりようがないと思います.陰謀論や穿った見方ですが,格差を少しでも小さくできる力を持った層が格差を利用して儲けている限りどうしようもないと思います.
10年くらい前に、東京都と当時一番平均所得が低い県(どこだったかは忘れた)とでは2倍くらい格差があるという話をしていたら、中国人留学生が「中国では10倍以上格差があるよ!2倍くらいで悲観に思うな」て言われたのを思い出しました。
中国やアメリカを見てると国民の格差と国力の相関はあまりないのかなと思えてきます。
政府は国民から税金を徴収するのが一番の目的ですから税金をたくさん払ってくれる国民を増やすために国全体で豊かになろうと努力してらっしゃるのでしょう。あと安倍首相はトリクルダウン理論を否定しているそうですが、アベノミクスはトリクルダウンではなかったのですか?
中国の格差実態についてはこの後また別の記事で書きますが、格差自体は私は否定しておらず、まっちぼうさん同様にあって然るべきだと考えています。一番訳がわからないのは日本では格差を是正すべきと言っていながら何も抵抗しない連中が多いことと、これまたおっしゃられているように一度非正規に落ちると実力関係なしにどの企業も正規採用しようとしないって点です。自分もこの点は実感しましたが、案外いろんなものが破綻しているからもう日本人にも訳が分からなくなってるのかもしれません。
今の中国なら平均所得、最低賃金ベースならばさすがに10倍超の格差はないですが、現金収入自体に乏しい農民と都市住民間の比較だったら恐らくまだ10倍超の差もある気がします。それにしても今回いろいろ考えましたが、格差って何と何を比較するかで全然話が変わってきてしまうので、十把一絡げにはやっぱ語りづらい内容です。
非常に鋭いご指摘です。
自分が思うに、中国や米国の格差はそのまま国家経済としての競争力拡充につながってますが、日本の場合はむしろ競争力を落としている気がします。そう考えるなら、国家にとってメリットのある格差の拡大と是正を考えてやってかないといけないのかもしれません。
あとアベノミクスは明らかにトリクルダウンを視野に入れた政策ですよね。口にしないだけまだマシかな。
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