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2010年7月29日木曜日

信頼性なき日本財政

 あまり世の中で取り上げられる事は非常に少ないのですが、小泉政権は世界的にも非常に珍しい偉業を一つ達成しております。その意業というのも、財政出動なしでの景気の回復です。

 小泉氏が総理になる前の自民党総裁選で小泉氏が公約として掲げたものの一つに、「国債発行高を30兆円以下に収める」というものがありました。その後見事総理に就任して小泉氏でしたが作った予算は結局30兆円からすこし足が出て、あの有名な、「この程度の公約違反、大したことではない」という発言が飛び出すこととなったのですが、それでも自らを「平成の借金王」とまで言った前小渕政権と比べると国債発行高は非常に抑えられ、全体の予算額もそれ以前から大きく縮小されました。

 この小泉氏、というよりは経済産業担当大臣だった竹中平蔵氏ら主導の予算案に対し野党議員、評論家、並びに身内の自民党議員からも、「不況期にどうして財政出動(公共事業)を減らすのだ(#゚Д゚)」と、当時の私が覚えている限りでもどこを見回しても肯定的な意見はありませんでした。小泉氏も小泉氏で、

「経済は竹中君に任してるから(´∀`)」
「えっ、全部俺!?(;´Д`)」

 てな感じで責任転嫁をしたので竹中氏が国会中で総叩きを食らう羽目となってしまいましたが、その数年後の9.11選挙で小泉氏が勝利した後に東証株価などが飛躍的に伸びるなど、リーマンショックが起きるまで一時的とはいえ日本の景気は回復傾向が起こりました。
 この景気回復に対しては今でも議論が行われており、格差を無理矢理広げた上での偽りの景気回復だった、それ以前の小渕政権までの財政出動が時間が経ってようやく効果がでたものだ、などという意見がありますが、失われた十年にあれだけ馬鹿みたいに財政出動して何の効果もなかった事、五年間の運営実績を考えるとやはり小泉政権の功績と取るべきだと考えております。

 さてここで経済学の話になりますが、中学校の公民の時間でも教わるくらい、一般的に不況期には政府は財政出動をして公共事業を行うことがよいとされていますが、これは20世紀のケインズが提唱した政策でフランクリン・ルーズベルトが採用してニューディール政策と呼ばれた事でも有名です。しかしそもそもの話、ニューディール政策自体が現在その効果が疑問視されており、また先にも述べた通りに日本も失われた十年の間に小渕政権を筆頭として財政出動を繰り返したもののはっきり関連が見える効果は何も生まれず、私自身本当にただの無駄遣いだったという評価をしております。

 では逆に財政出動を切り詰める所まで切り詰めた小泉内閣はどうして一時的な景気回復に成功したのでしょうか。それについては昔に書いた「竹中平蔵の功罪~陽編~」に詳しく書いていますが、最近これとは別に、かえって財政出動を減らしたこともよかったのではないかと思うようになってきました。

 こう思うようになった一つのきっかけはうちの両親の会話で、仮に親父が60歳で定年を迎えるにしろ年金をもらえるようになる65歳まで生活するのに平均で2,000万円以上の貯金が必要だとテレビか雑誌かで言われていると話し合い、現行の貯金額と受け取るであろう退職金額を予想した上ですでにリストラ候補となっているうちの親父がいつまで会社のリストラ要求を突っぱねて給料をもらい続けるかというシミュレーションを立てていました。またその会話で仮に現行の年金制度が維持されるならともかく、今後給付額が減らされる可能性もあることから実際にはシミュレーション以上の貯金が必要になってくるかもしれないとも話し合っていました。

 実際に日本の年金制度がこのままでは破綻するのは簡単にシミュレーションできることで、将来的には受給世代の給付額が減って現役世代の納付額が増やされる事は自明と言っていいでしょう。また年金に限らず今の借金漬けの日本の財政を考えるにつけ、医療費を含めた社会保障費はどんどんと減らされていくことも考えられ、そんな時代では消費よりも貯蓄の方に頭が行ってしまうというのも自然な話です。

 久々に大分前置きが長くなりましたが、要するに日本の財政、年金に信頼がないからこそ現代の日本人は消費意欲が低いのであって、それが景気に悪影響を及ぼしている最大の原因ではないかと私は言いたいわけです。
 小泉政権は確かに切捨てと言われるような厳しい政策を採ったものの曲がりなりにも財政再建に真正面から取り組んでいましたが、それ以降の政権では徐々に予算を拡大化させ、前鳩山政権に至っては税収以上の国債を発行する甲斐性なしの男性のような予算まで組みました。

 私はいくら今が不況だからって、借金がない状態ならともかくすでに借金漬けの現状で財政出動を行うのは余計に国民から財政への信頼を失わさせ、景気悪化を引き寄せる事になるのではないかと思います。それであれば弱者切捨てとなろうとも、まだ未来が持てるような政策を取った方がまだ最終的な犠牲者は少なくて済む気がします。弱者切捨て以前に、まず真っ先に切るべきは子供手当てでしょうが。

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