2013年5月2日木曜日

漫画レビュー「レッド」

 自分が今年二月に日本に帰国した後、真っ先に買ったのが今回紹介する「レッド」という漫画です。この漫画について簡単に述べると、あさま山荘事件をはじめとした事件を起こした連合赤軍メンバー達の物語です。

レッド (山本直樹)(Wikipedia)

 連合赤軍と言っても自分くらいの年代の人間、さらには下の世代からしたら「何それおいしいの?」と言われるくらいわけのわからないものかもしれませんが、あさま山荘がテレビで中継されていたのを見ていた世代には説明など不要でしょう。一言で言ってしまえばよど号ハイジャックもやらかした過激派社会主義学生グループのことで、まごうことなきテロリスト集団です。この「レッド」はそんなテロリスト集団がまだ学生運動の延長で抗議デモとかしていた時代から始まり、銃砲店を襲ったり銀行強盗をやらかしたりして、挙句の果てには同志を組織防衛や意味の分からない考え方に基づいて粛清し、没落していく姿を描いております。といってもまだ連載中で一番の山場となる山岳ベース事件はこれからだけど。

 この漫画の特徴を挙げるとすると、その徹底した取材ぶりには感心を通り越してあきれてくるほどのものがあります。連合赤軍をテーマに、しかも限りなく真実に基づいて書こうとしているため永田洋子や森恒夫、坂口弘などといった事件の主役たちが出てくるのですが(名前は変えられている)、生き残ったメンバーらの回想録に書かれている通りのセリフが漫画の中でもしっかり、確実に採用されております。
 またちょっと変わった表現方法というか、作中で一部の登場人物にはすべてのコマで1から15までの番号が振られています。この番号は何かというとそのまんま言って死人番号、つまりこれからそのキャラが死ぬ順番を指しており、事実これまでのところ3番まで順番通りに死んでいきました。もっとも作中で「XX、長野県山中で死亡するまであとXX日」と何度もはっきり書いていますが。

 このような作品であることから後輩に「もし全共闘の時代に生まれていたら花園さんはヒーローでしたよ」と、今の時代じゃ俺はヒーローになれんのかと言いたくなるような誉め言葉を受け取った私からするとそれなりに楽しめるというか、過激派左翼がどのように内ゲバに至ったのかがわかって面白いのですが、正直な所ほかの人にはあまり薦められない作品です。理由はいくつかありますが、簡潔に述べてテーマや取材力は申し分ないものの、漫画作品として致命的な欠陥がいくつか存在します。

 まず最も大きな欠陥というのが、話の分かり辛さです。ただでさえ連合赤軍がどのように形成されたのか、何を目的に運動をしていたのかが同時代の人間にすらわかりづらいのに、こういった方面の補足説明が薄すぎます。また序盤から事件に関わる人物が一度に大量に登場させているため、書き分けがしっかりできていないのもあって誰がどんな人物なのかがなかなか覚えられません。事件について詳細を知っている私ですら、一回流し読みした限りだと何が何だかわからないくらいだったし。

 同じ登場人物における欠陥はもう一つ、名前にもあります。先程にも書いたように各人物はすべて実在の人間たちなのでありますが、その名前はすべて変えられており、日本にある山岳の名称が振られています。例を出すと、

永田→赤城
坂口→谷川
森→北

 これが非常にややこしく、また山の名前であることから頭に入ってき辛いです。はっきり言わせてもらえば余計なことなんかせずに実名をそのまま書けばよかったとしか言いようがありません。ついでに書くと組織名も微妙に変えられており「赤軍派」が「赤色軍」となってて、余計すぎる配慮でしょう。

 さっきから問題点ばかり挙げていますがまだ続きます。もう一つ致命的な点ですが、ストーリーの構成があまりにも悪すぎます。作中では主に京浜安保共闘の永田洋子、赤軍派の植垣康博の二者の視点で進みますが、この二者は所属する組織が当初別々であるため、話に全くつながりがなく見ようによっては関係ない話が突然始まったりするようにも見えてきます。その上、取材に力が入りすぎたというべきか詳細に書いているためストーリーのテンポが極端に悪く、なんだか話が堂々めぐりしているような覚えすらします。現在の所、単行本は7巻まで出ておりますが、1から6巻までは3冊くらいの分量に無理やりにでもまとめるべきだったでしょう。

 なんかもうずっと貶すことばかり書いていますが、それでもこうして私自身が取り上げようとしたのはやはりそのテーマ性です。自分自身も中国に興味を持つあたり左翼思想に何か魅かれる傾向があるのかもしれませんが、あの連合赤軍の事件は集団ヒステリーというものを色濃く反映した事件であるだけに興味が尽きず、また内ゲバに至るまでの過程をやっぱり何が何でも知りたいという欲求があります。そうした餓えに対して漫画で応えてくれる、だからこそ私はこの「レッド」を買い続けているわけですが、まぁちょっと妙な漫画が連載されているということを知っておいてもらえれば幸いです。

2 件のコメント:

  1. 私もレッド読んだことがあったのですが、もう7巻も出ているのですね!
    内ゲバは中国の文革と重なることが興味深いです。極端な左の思想に共通するところなんですかね?

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    1.  正直な所、自分以外にも「レッド」を読んだことのある人、それも同年代にいることにびっくりしました。あんな内容、自分みたいにやけに左翼系統に関心を持つ人間以外にいないだろうと思ってただけに。
       いいところを突いているというべきか、何故だか左翼思想の人たちというのは内ゲバというか同族嫌悪がやけに激しいと私も思います。敢えて言い表すと、大きな違いよりも小さな違いが我慢ならないというか気になる人が多いというか、そこら辺のメカニズムをうまく説明できたら論文の一本でも書ける気がするのですが。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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