各所でも大きく報じられておりますが、先月頃から反政府デモ隊と警察の衝突によって大きく混乱していたウクライナでとうとう大統領が逃亡、政権が崩壊へと至りました。現在は暫定政権が樹立されたことによって落ち着きを取り戻しつつあり、この後に予定されている大統領選には野党勢力で前政権では首相も務めた東欧版鉄の女であるティモシェンコ氏が立候補を表明しており、私の見立てだと何事もなければこの人が無難に次の大統領になるでしょう。
そんなウクライナ情勢ですが、ウクライナ国内はもとよりその周辺各国でも様々な思惑が渦巻き、渦巻きなだけにさながら大きな波紋を描いているようです。そもそも今回の政権崩壊は親ロシア政策を掲げていたヤヌコビッチ政権がヨーロッパ諸国連合ことEU寄りの政策に転換しようとしたところ、ロシア側がかなり過激な干渉を書けたことによって再びロシアの側に立ち、国内の反政府運動やデモ活動を禁止しようとしたことがきっかけでした。つまり崩壊自体が国内の政策や問題ではなく周辺国との外交に起因したものであるだけに、ヨーロッパ各国の駆け引きは今後ますます活発化していくものとみられます。
ここで近年のウクライナの政治史について簡単に説明しますが、まず一つの端緒となったのは2004年に起きたオレンジ革命です。 それ以前のウクライナはCISに加盟するなどロシアの衛星国として経済や軍事に関してもロシアに依存する傾向が強かったのですが、この年の大統領選挙では今回の政権崩壊によって逃亡したヤヌコーヴィチが一度は当選したものの、選挙戦の最中に不正を行ったとの疑惑から反対運動が起こり、また対抗馬であったユシチェンコがヤヌコーヴィチ側に毒(ダイオキシン)を盛られたとも主張したことから再選挙となり、その結果としてEU寄りの外交や政策を主張するユシチェンコがさっきも出てきた鉄の女、ティモシェンコが陣営に着いたことによって逆転勝利を収めました。これがオレンジ革命です。
このオレンジ革命によってウクライナは一気にEUへも加入かとも私は思ったくらいなのですが歴史はそのようにはならず、というのもユシチェンコの政権運営がうまくいかず、ティモシェンコ陣営もついたり離れたりしたことによって支持を失ったばかりか、ウクライナのEUへの接近を快く思わないロシアが天然ガスの供給停止をちらつかせるなどかなり激しい揺さぶりをかけてきたこともあって支持を落とし、2010年の選挙では前回でも大統領職を争ったヤヌコーヴィチに負けてしまいます。
こうしてヤヌコーヴィチが再びウクライナの手綱を握ることとなったのですが、経済的な市場の大きさから彼もEUとの関係構築を図るものの、ここでもまたロシアが邪魔してきます。報道によるとなんでもロシアは前回同様に天然ガスの供給停止をまたちらつかせたほか、ウクライナ製品の全面禁輸にも踏み切ったそうで、これには背に腹を変えられずヤヌコーヴィチも再びロシア寄りの立場を取らざるを得なくなったそうです。
なお少し話が脱線しますが、中国は尖閣諸島沖の漁船早突事件の後で日本に対しレアアースだけを禁輸してきました。日本と中国だけでみれば中国はなんて理性のない国だ(実際その通りだが)と思えてきますが、これにロシアを加えるとまだ良心的な奴に見えてくるほどロシアは虎狼の国だと言えそうです。
ざっと上記のような経緯を辿って今回の政権崩壊へと至ったわけですが、ロシアとしては散々に干渉してきたにもかかわらず新ロシア政権が倒れてしまって骨折り損のくたびれもうけって具合でしょう。また今回の政権崩壊を語る上で外せないのは先日まで開催されていたソチ五輪で、下手に政治的な発言や行動をしてしまうと影響が出かねない大イベントなだけにウクライナで混乱が続いている最中、ロシアは何も介入することが出来なかったのではとみております。逆にウクライナの反政府勢力やそれを支援するEUの組織達もそうしたロシアの足元を見て、短期間に決着をつけようと過激な手段を敢えてとったのでは……なんて妄想も出来たりするわけです。
それで今後のウクライナはどうなっていくか、一部のニュース解説でもありましたがEUとロシアの綱引きが今後も続くと私は思います。そんな今後を占う上で重要なのが次に大統領でそれになりそうなティモシェンコですが、彼女は三国志で言えば司馬懿仲達みたいに信頼のおけない人物で、当面はEU寄りの発言をするでしょうが条件次第では簡単にロシア側へ寝返ることも十分考えられますし、ウクライナの地域性を考えるとそうなるのが自然の様にも思えます。
一方、周辺諸国というかロシアとEUですが、ロシアはここ数年で急激に大国意識を増してきており、昨年のシリアへの空爆是非を問う国連の会議でも空爆実施を支持する米国を抑え結論を空爆見送りへと持っていくなど、実際に国際発言力も年々高まっております。まぁロシアが高まっているというよりは米国が落ちてきているというべきですが。
対するEUですが こうしたロシアの拡大を日本とは違って肌でビリビリと感じる立場なだけに何としてもと抑え込みにかかろうとするでしょう。しかしEUは債務危機問題で加盟国同士でもぎくしゃくしており、米国の後ろ盾を得てもどれだけ抑えられるかあまり大きな期待はできないのではというのが私の見方です。
では日本としてどっちを応援するべきかという論点ですが、それは今後どのような外交方針を持つかによって変わります。これまで通り親米路線を歩むというのならEUを応援した方が絶対得ですが、先ほども言った通りに米国はこの十年で明らかに国際的発言力を落としているだけでなく、世界全体におけるGDPシェアもかなり落ちてきています。今後も超大国でいることは間違いありませんが、かといって正午を過ぎた太陽をいつまで頼みに出来るかは残り時間を気にしなければなりません。
ハイリスクハイリターンを至上に掲げる私としてはもっと面白い道を探さないかと言いたいわけなのですが、やはり今後の世界情勢を見るにつけ軍事、経済の米国、軍事と領土とプーチンのロシア、そして圧倒的な人口シェアと共産党による一党独裁体制の中国が真面目にビッグスリーになっていく気がします。この中で最も理性的なのは米国で間違いありませんが、中国とロシアだけで比べると果たしてどっちがマシか、言うまでもないですが中国のが絶対マシだと断言できます。
外交というのは多面的に考えねばならず、親米路線を続けるにしろほかの二大国に対してどういうアプローチをかけてどんな距離を保つかを考えることは重要です。それこそ、中国を抑えるためにロシアとの関係を強化したらロシアに取って食われてた、なんて未来もあるかもしれないのだし、逆にロシア&米国を抑えるために中国と手を組む未来もあるかもしれません。
最後に以前にも書きましたが、中国は本気でロシアに対して強い恐怖感を抱いていると共に警戒心を一切解いていません。我々からしたら中国は平気で約束を破るしやり方も強引な国に見えますが、そんな中国からするとロシアはもっと強引な国に見えているようで、こうした中国を通したロシアの見方は一つの側面として日本人からしても参考になるのではないでしょうか。 ちょっと持ち上げ過ぎな気もしますが、何するわからないという意味でまだ中国はロシアに比べてわかりやすい気がする。
0 件のコメント:
コメントを投稿