2016年12月2日金曜日

江戸幕府の死刑執行人一族

 これから書く記事はほかの人もたくさん書いているので正直私が書くべきなのか非常に悩みましたが、悩むくらいなら書いた方がいいという結論と、この次に各記事と合わせれば独自性が出せるからありかと割り切り書くことにしました。独自性これ大事。

山田浅右衛門(Wikipedia)

 フランスの死刑執行にはギロチンが使われ、その執行に当たってはサンソン家という一族が代々になっていました。もっとも有名なのはルイ16世を処刑した四代目のシャルル=アンリ・サンソンという人物で、彼に対してパリの人々は畏怖を込めてムッシュ・ド・パリと呼んでいたとされます。
 一方、日本の江戸時代においても代々死刑を執行する執行人の一族がおり、それが上記リンク先の山田浅右衛門と呼ばれる一族です。

 山田家は元々は刀剣の鑑定を兼ねた試し切りを専門に行う一族でした。当時の試し切りは木や動物ではなく人を直接斬って鑑定することに価値があると見られ、試し切りの対象には斬った所で差しさわりのない罪人が使われるようになり、転じて山田家は死刑執行の業務を担当するようになります。
 ただ死刑を執行しておきながらですが山田家は幕府の直参、直接雇用される立場ではなく身分上は浪人のままでした。何故こうだったかについては諸説あり、死刑執行人を直接抱えることが幕府に忌避されたというのが一番有力な説ですが、現代で言えば死刑執行の度に呼ばれるフリーの首切り請負人と言ったところで、なんでもフリーつければいいもんじゃないと書いてて思います。

 山田浅右衛門が歴史の舞台に登場するのは八代将軍徳川吉宗の代で、それまで試し切り、死刑執行を担当していた鵜飼十郎右衛門(この人は幕臣)という人物が逝去した後、試し切りの技術を後世に伝えたいと申し出た鵜飼の弟子が山田浅右衛門でした。吉宗は山田の実力を認めたことからその後、山田家が試し切り、死刑執行を専門的に担当するようになり、当主の山田浅右衛門が執行できない際はその弟子が代わりに行うというスタイルが確立されることとなります。
 山田家は浪人の家とはいえ生活は武家の中でも非常に裕福であったとされ、その理由としては幕府お抱えの試し切り鑑定家であったため他の大名家からも試し切り、並びに刀剣の鑑定依頼が殺到したことと、死刑を執行した罪人の遺体から肝臓などを持って帰り、漢方の材料として売却して得る収入が大きかったためとされます。この辺はフランスのサンソン家が医師も兼ねていたというところと共通しています。

 死刑の執行は山田家が任されていましたが山田家では代々、後継者は当主の子ではなく弟子の中から選ばれていました。やはり当時としても死刑執行人という職への風当たりは強かったらしくどの当主も子供へと継がせることに抵抗を示し、弟子の中から優秀な者を後継者に選ぶというパターンが多かったそうです。
 こうした継承の唯一の例外となるのは幕末期、あの吉田松陰や橋本佐内を処刑した七代目山田浅右衛門吉利で、彼だけは自分の長男である吉豊を後継者に指名しています。しかし世の中面白いもんだと言うべきか、真に首切りの才能を持っていたのはこの長男ではなく三男の吉亮だったとされ、八代目当主である兄に代わって明治の時代にあってもバスバスと首を切っていったことからこの三男の吉亮を「九代目」もしくは「閏八代」と呼ぶ声も多いです。そして長男の方は1882年に逝去した一方、件の三男は首切りによる処刑が廃止されてから1911年まで存命して山田家についての証言も残していることから歴代の中でも彼がとりわけ重要な人物であると見て十分でしょう。

 彼ら山田浅右衛門一族、ひいてはサンソン家の話から得られる教訓としては、いつどの場所であっても死刑執行人は世間から忌避される存在であったということでしょう。だからこそ一程度の収入や身分が保証された一族が一身に担う必要があり、その死刑に対する技術も脈々と受け継がれていったと考えられます。
 現在の日本では絞首刑が行われていますが、件数もそれほど多くないんだし、誰もやりたくないかもしれませんが何だったら専門に刑の執行を行う一族が現代にあってもいいような気もします。ただ死刑執行に限らずとも一族が代々と同じ仕事を受け継ぐということが現代においてはどの分野でも薄れており、そうした所が家族意識にも影響を与えているのでしょう。

 なお私の家系は曽祖父の代から何気に代々メディア企業に勤める一族ですが、メディアの中で記事を書く仕事についたのは私一人です。そんなもんだから親父の従弟からは、「君はうちの一族で唯一と言える直系の男子だから、爺さんもおった新聞社に記者として勤めてほしかった」と言われたことがありましたが、多分あの新聞社は思想信条的に私とは相容れないため難しいとやんわり断りました。

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