2016年12月19日月曜日

電通事件で見られない残業代の遡及支払い

 またえらそうな口をきいてしまうことになるでしょうが、そこそこほとぼりが収まりつつある電通の過重労働問題について電通の元役員の方が今月の文芸春秋に寄稿しており、その中でいわゆる「鬼十則」について撤回すべきという声もあるがこんな標語だけを撤回した所で現場は何も変わらず、きちんと具体的な対策を見つけ実行すべきだと指摘していてなるほどと思ったのですが、当の電通は「鬼十則」を社員手帳から削除する方針を先日出しており、みんなこういった何の意味もない象徴的な行動ばかり取り上げて具体的な中身については何も取り合わないんだなと、日本のメディアを含め遥か上海の地でせせら笑っておりました。一人や二人は同じ価値観の人間がいるだろうと思っていましたが今の所それらしい意見は見当たらず、それどころかこの問題も段々としぼみつつあり恐らく来年の今頃には誰も覚えていないことでしょう。

 この電通事件について私が個人的に不思議に思ったのは、不払いの残業代は結局払うのか払わないのかでした。自殺に追い込まれた女性社員を含め電通社内では一程度を越えた残業時間は申請しないようにしており、中には百時間単位で残業代を申請してこなかった社員も多々いると報じられていたのですが、今回こうして問題が大事になったにもかかわらずそうした電通が実際に支払わなかった残業代をその後、過去に遡って払うのかどうかという点について電通側からの発信はなく、それ以上に日本のマスコミがその点について誰も追及しないことが誇張ではなく不思議で、自分が特別だなんて言うつもりは全くありませんがとてつもない異常性を覚えました。
 恐らくこの点については、最近頑張っている(と思う)BuzzFeed Japanが取材して取り上げていましたが、電通問題を批判している朝日新聞社内でも残業代の過少申告があったとのことで、同じ脛に傷を抱えた者同士で黙って指摘しない可能性もあります。まぁそういうレベルじゃなく、遡及支払いまで単純に頭が回らないのが実態でしょうが。

 話はここで私の最近の勤務状況に移りますが、現在私が世を忍ぶ仮のサラリーマンとして働く会社で私の職種は残業した場合、その時間の分だけ別の日に休みが取れる振替休暇制で動いています。この振替休暇制度が法的にOKかどうかは軽く調べたところややグレーなところらしいですが、そもそも日本の会社で働いているわけじゃないし当の本人である私は気にしておらず、むしろやらなきゃいけない作業があるなら一人で時間かけてでもずっと働いていたいと思う口なので、こうした制度があるだけめっけもんだと思っています。でも先週は本当に忙しく、家帰って左耳痛くなった時はマジビビりました。
 このように最近は残業が多くブログの更新もやや滞りがちだったわけですが、上司からはやたらと「遅くまでありがとう」と声をかけられています。これについて別の上司が、「最近の若い人は残業をあまりやりたがらない人が多いから率先して残業しようとする花園さんのことを単純にありがたがってるんだよ」と話していましたがそれについて私は、「間違ってはないでしょうが、多分会社が残業代をフルに払うとなれば若い連中でもいくらでも残業しますよ。残業代を払ってくれないのをわかってるからみんな残業をやりたがらないだけでしょう」と返しました。

 敢えて先程から話題を頻繁に切り替えていますが、私が一方的に敵視している団塊の世代辺りがよく私たちの世代について必死で働こうとしないとかすぐ会社から帰ろうとするなどと言っている声が耳に入ってくるのですが、やる仕事があり、残業代を払うというのならいくらだって残って働くに決まっています。こういうと上の世代から、よっぽどおかしい会社じゃない限り最近は厳しくなってもいるんだから残業代くらいきちんと払うだろという返答が帰ってきますが、断言しますが現在の日系企業の9割は残業代を規定通りに支払っていません。変な言い方ですがあの電通ですら満額を支払うどころか、人によっては既定の半分も出しておらず、ほかの企業に関しても大小を問わずまともに払ってないでしょう。
 なおこの議論で一番揉めたのは何を隠そう名古屋に左遷されたうちの親父でした。何故か大半の企業は残業代をきちんと払っていないという事実をなかなか信じなかったのですが最終的には私が、「数多くの中小企業を渡り歩いた俺が言うんだ。おっきい会社一つしか経験してへん親父と俺の認識のどっちが正しいか、そんなんきまっとるやろう」といって押しこみましたが、誇張ではなく私はこれまでアルバイトを含め一度も残業代というものを受け取ったことがなく、また周囲の友人もみなし残業として月30時間分を固定給に加える一方で月間200時間の残業を強いられるなど、満額の支払いを受けたという話はただの一度も聞いたことがありません。

 さてここで冒頭の電通の議論へ戻るわけです。私は本当に、電通が真摯に、真面目に反省しているというのであればこれまでの残業時間の過少申告状況を全て、洩れなく洗い直し、過少分について全額を直ちに支払うのが筋じゃないかと思っていますが、そんな話は一切出てこないし反省しているような素振りすら見せず、元役員がまさに指摘した通りに箸にも棒にもかからない「鬼十則」の撤回という象徴的で無意味な対応しかまだ見せていません。そしてマスコミを含めた外野もまた、残業代はもらえないのが当たり前というのが身に沁みついているのか、遡及支払いについて誰も何も指摘しません。私にとってこの状況は不思議この上なく、電通社内の労働組合に至ってはこれ以上の好機はないんだから弱みに付け込んでガンガン攻めればいいというのに何故やらないのか、本当に鬼十則読んでんのかてめぇらと見てるこっちが言いたくなります。

 恐らく経営側、労働側はどっちも及び腰になって明確な算定証拠がなく現実的でないとかいうでしょうが、こんだけの事やらかしたんだから自己申告で払ったればいいと私は思うしそうあるべきだと思います。過去に食品で問題が起きたレストランではレシートなしで返金に応じた例もあるのだし、反省する気があればまず真っ先にこの残業代の遡及支払いに取り掛かるべきでしょう。逆を言えばこれすらやろうとしない辺り、場当たり的にごまかす気で、労働担当役員とかどうでもいいポスト作ってる当たり反省する気などまるでないことが見て取れます。
 ただ仮に、これがモデルケースとして定着したら日本の世の中はすごく楽しくなると思います。未払い期間の金利を上乗せするようにすればさらに楽しいし、補完会社にも広がれば日本経済の血栓こと企業の内部留保も一気に吐き出せ、駄目な会社も一緒になって消えてもらえます。だからこそこの遡及支払いは非常に重要だと思え、真面目に日本で誰も指摘しようとしないことが不思議を通り越して異常というか間抜けな気がしてならないわけです。

  おまけ
 これまで数多くの中小企業を渡り歩いた私ですが、先日友人から何社経験したのかといわれて数えてみたところ既に6社に達してました。「武士は七度主君を変えねば武士とは言えぬ」と戦国切っての転職プレイヤーの藤堂高虎は言ってましたが、まさかその七つ目にもうリーチかかっているとは自分でも驚きでした。

7 件のコメント:

  1. 電通事件で見られない残業代の遡及支払いについて

    陽月氏の際立った才能の一つは、
    誰もまだ言っていないことを、自分の言葉で書ける才能だと思います。
    誰もが言いそうなこと、6割の人が考えそうな事ではなくて、
    陽月氏が発信しないと消える言葉、陽月氏にしか言えないことを持っていることが素晴らしいと、いつも思っております。
    時々、虚を突かれるような発想を前にして、なるほど!と思います。
    特に今回の「電通事件で見られない残業代の遡及支払い」は短い文章で分かり易く物事の本質を暴く文だと思いました。

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    1.  コメントありがとうございます。
       やや誉められ過ぎな気もしますが、多くの人がもやもやっと思っていることを言葉で表現して「そうそうその通りや」といわせるのが文学の醍醐味であり、私自身もそれを常に意識して書いているので、こうして共感いただけたということは素直にうれしく思います。もっとも、「短くてわかりやすい」とおっしゃっていただけましたが、この記事は少し長くなり過ぎたかなと反省してます。

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  2.  これはネットで指摘されたのを見ましたが、小池都知事の8時以降消灯や電通も22時以降消灯の方針を出しました。
     これはこれで一つのやり方なのかもしれませんし、仕事を自分自身で無駄に増やしている人なら確かに残業が減るでしょうが、本当に仕事が多い人は、結局、負担が減ることはなく、闇に消えて見えにくくなるだけなんですよね。

     ・・・最近よく日本人は生産性が低いといわれますが、その理由は何なのか?と考えたりしています。

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  3. 〉残業代を払ってくれないのをわかってるからみんな残業をやりたがらないだけでしょう
    私が働いてる職場は、残業代満額でますが、残業はやりたくないですね。

    それはさておき、八時以降消灯といった強制帰宅制度は物理的に業務量が半端ない場合は確かに無意味かもしれませんが、ある程度はメリハリがついていいと思うんですがね。
    残業しないことが評価されるというのにもつながっていくだろうし。

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    1.  残業代満額でるってええなぁ。俺、一度ももろうたことあらへん。

       上の歩むものさんへの返答を含めて書きますが、八時以降消灯はやはり無意味だし、これではいそーですかと納得してはならない対応だと私は思います。酷道マニアさんが描いている通り消灯時間を設定したからと言って業務量が減るわけではなく、各部署に対応した増員を含めた適切な人員配置や作業効率の改善などによって、上からではなく下から消灯時間が早められる動きが実現されない限りは何も変わりません。この記事の冒頭で引用した元役員もその点を指摘していて、本当に労働現場の改善を促すというのであれば「それじゃ意味ねーだろ!」ともっと深く追求する必要があると思います。

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    2. 酷道マニア2016年12月22日 4:04

      よく考えたら、うちも残業代満額でない(つけない)環境でした。
      30分くらいだったら申告しないし、極端に長く残業した月は、目立っちゃうんで少なめに申請等…
      さすがに30時間、40時間で頭打ちにはならないんで、比較的恵まれてるんでしょうけど(そもそも基本給高くないですけどね)

      冷静に考えると、100パーセント残業代が出るところて、存在しないかも。

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    3.  それ聞いて閃いたけど、仮に激務とはいえ会社が残業代を満額で支払っているとそこの残業時間は膨大な数になって、労基署から注意を受けることとなり、だったら過少申告した方がいいと考えるのかもしれない。前に取り上げたエイジスという会社は大幅な残業時間が問題視されて名指しされたけど、これは見方を変えればきちんと残業時間をつけている会社でもあるため、果たして電通を差し置いて名指しされるべきかというと甚だ疑問だ。記事にも書いたが繁忙期に業務が集中するという内情を知っているだけに、やはりあの厚生労働省の名指しは間違いだろう。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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