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2019年6月23日日曜日

経済記事における二大視点

 新聞社に入って仕事を始めた頃、上司によく言われたのはどのような視点でニュースを書くかという点でした。
 具体例を出して説明すると、「携帯電話会社がどこも大幅増益」というニュースについては、この通りそのまま書くこともできますが、一味工夫するならばどの会社が増益幅が大きいのか、またその原動力というか他社との差は何だったのかを主題に据えて記事を書くこともできます。記事内容で言えば後者の方が間違いなく鋭く、同じ事実であってもどの部分に着目して紹介できるかが貴社としての腕前が問われるところです。

 なお上記の例は私が入社三日目くらいで実際にやった例で、これやってから上司も少し認めてくれるようになりました。

 話は戻りますが、このように良い記事を書くにはどの視点でニュースを切り出すかが肝心なのですが、こと経済記事に関しては大前提となる二つの大きな視点があります。それは何かと言うと、生産側で書くのか、消費側で書くのかという点です。

 経済記事というのは突き詰めれば金勘定の話であり、どれだけのお金がどのように動くのかがニュースです。ただそのお金の動きですが、供給側と消費側の双方で動く金額に関しては同一ですが、付加価値の動きを追う上では全く異なる属性というか流れを持ち合わせています。
 こちらでも具体例を出すと、例えばトヨタ車について生産側の視点で書くとなるとカンバン方式を始めとしたコスト削減や、研究開発投資といったテーマが主となってきます。一方、消費側の視点で書くとしたらまずは単純に実際販売台数、そして人気車種の傾向やデザイン、価格、このほか消費者に選ばれる技術的特徴といったものがテーマとなるでしょう。

 もちろん双方の視点を同時に取り入れた記事もあるでしょうが、私は経済記事においては供給側なのか消費側なのかで大きく二分できるかと思います。ただ単純な記事量で言えば、需要分析の観点から消費側の記事の方が量的には多くなり、業界によっては取材の難しさもあって供給側観点の記事がほとんど見られないという業界もあります。
 そういった業界の代表として私が考えるのはコンテンツ業界です。例えば漫画家の作品で稼ぐまでもコストや損益分岐点、編集者の関与度が作品に与える影響に関する考察はほとんど見られませんが、これはやはり当たるか当たらないかのインパクトが大きいことと、時間や労力に比例して作品の質が向上するとは限らないという特徴もあって分析し辛いことが原因でしょう。そのため結果的には、今流行の作品はなんなのか、そうした流行作品の特徴はどうかなど、ほぼ消費側の視点限定で語られることがコンテンツ業界には多いです。

 そういった背景もあることから、明日JBpressで出す記事ではあるコンテンツ業界について徹底して供給側目線で記事を書いており、個人的にはすごく楽しく書けました。多分こうした目線であの業界書くのは、ないわけじゃないけどかなり珍しいと思います。
 テクニック的にはコンテンツを「無形資産」と捉え、どのような研究開発投資の仕方が当たりとなる結果を引き寄せるのかという見方で分析を行いました。先程コンテンツ業界の供給側分析は難しいと書きましたが、製造業ではこうした無形資産投資に関する分析手法が確立されていることを考えると、こうした手法を援用することでもっといろんな分析ができるのではないかと思っているだけに、もっとこうした研究や分析が広がるといいなと考えています。

2 件のコメント:

片倉(焼くとタイプ) さんのコメント...

スマートフォンのニュースについては各社出荷台数シェアばかりが話題になります。
出荷台数シェアだけを見ると1位がサムスンでアップルとファーウェイが横並びです。
シェアだけを見るとアップルは落ち目のように見えますが、スマートフォン市場の
利益の80%をアップルのiPhoneが占めています。(2~3年前のデータなので今は
多少違うと思いますが)

普通のニュース番組ならともかく某経済新聞社が株主であるテレビ局の経済報道番組でも
スマホの出荷台数シェアについてだけ語り、利益については触れない事も多々ありますね。

花園祐 さんのコメント...

 あんまりディープすぎる話だと読者も付いてこれないのは理解できるものの、携帯電話業界に関しては確かにもう少し掘り下げてもらいたいものですね。利益率もそうですし、満足度の高いプランやオプション、逆に誰も得せず金だけ取られるオプションとかいろいろ書ける内容あるのに。