前にも書いた通りこのゲームでは20人超の主要キャラクターが登場しながら、誰一人個性(キャラ)が被っておらず、製作者のシナリオライターとしての才能に驚かされます。実際、このゲームを紹介しているサイトなどでも、単純に一つのSF小説としても読めるシナリオだと絶賛されており、自分もこの意見に同感です。
ここで一つトピックを出しますが、ではシナリオのいいゲームは、一本の小説として出してもそのまま評価されるのでしょうか。結論から言えば「されない」だろいうというのが私の見方です。
ドラクエを始め有名ゲームの中には小説化されて出版される作品もあります。ただ大概の作品は小説版を出すに当たり元のシナリオに推敲が加えられ、特にエンディング部分などは大きく変えられやすい傾向にあります。自分は読んだことないけど、「マザー2」の小説版なんかまさにそうで、ポーキーが転生して主人公の兄になるという、「マザー3」をプレイした後で知るとなんかやるせなくなる結末になってるそうです。
このようにどれだけ評価されるゲームシナリオであっても、やはり書籍として出すとなるとそれ相応の一手間が必要になるケースが多く、全くないことはないものの、ほぼそのまま書籍化しても評価されるパターンはかなり限られてくると考えています。個人的な意見として述べると、今もファンが多くなかなか出てこないリメイク作の期待も高いFF7ですが、あの作品もシナリオ部分が当時高く評価されていましたが、仮にそのまま書籍化しても評価されることはないと思います。FF7のシナリオはゲームだからこそ評価される類だったとみています。
ここで話をもう一歩進めると、書籍としてはダメでも、ゲームのシナリオとしてなら通用する、評価されるシナリオとはどういったものなのか。これは正直、実際にプレイするゲーム部分によっても左右されるでしょうが私個人の意見を通して述べると、キャラクターメイン、それもなるべく一人称的なシナリオがそれにあたると思います。
ゲームのシナリオと書籍のシナリオを比較した場合、何が一番違うかというと自分としては没入感だと思います。例えばRPGだと、主人公はその自分が操作するキャラクターがゲームの中では文字通り自分の分身となるので、ゲームの中の出来事に対しても主人公が覚える感情にエヴァ的なシンクロ率を持ちます。
まぁ時として、攻撃喰らって「それくらいよけろこのボケ!」といった一言も出てくることもありますが。
この没入感がゲームのシナリオを読む上で非常に大きく、それこそ思い入れのあるキャラクターがゲーム内で傷ついたり、死んだりした場合、小説の中のキャラクターの死などよりも心に感じるものが大きいことが多いと思います。無論、ゲーム内におけるキャライメージなどの映像やBGMの相乗効果もあるでしょうが、やはりいいゲームシナリオほどキャラクターへの没入感が高く、ゲーム内の出来事に対する一喜一憂もでかくなるように思います。
まぁ「ニンジャガイデン」みたく、難易度がハード過ぎて死にまくるのが当たり前なため、操作キャラクターに大して何も感情を感じなくなるゲームもありますが。
またここで一つ例えを出すと、ドラクエ7のキーファなんかやっぱそういう意味で没入感の高いキャラだった気がします。主人公パーティのリーダーとして率先して冒険に引っ張り、戦闘でも頼りになるアタッカーでもあっただけに、その途中離脱はプレイヤーに大きな心理的ダメージを与え、未だに「種泥棒」と呼ばれたり、それまでの投資が無駄になる例えとして「キーファの種」という用語まで作られています。これも彼が、そのプレイヤーの没入感が高かったことから未だ語り継がれている気がします。
まぁぶっちゃけ、ゲームで頼りになるキャラクターほど途中離脱後が辛くなって記憶に残ってるだけかもしれませんが。
以上を踏まえると、書籍としてはダメでもゲームだからこそ通用するシナリオは、操作キャラクターへの高まる没入感によって得られるカタルシスが大きいシナリオじゃないかと思います。言い換えると、プレイヤーに共感させる、シンクロ率を高めさせるキャラクターを用意し、そのキャラが遭遇する様々な出来事がプレイヤーにも深く感じさせるような系列のシナリオほど、ゲームとの相性がいい気がします。
逆にというか、キャラクターへの没入感が弱くなるような俯瞰的なシナリオ、キャラの入れ替わりが激しい群像劇や大局的な話が続く軍記物なんかは、ゲームとは相性が悪いシナリオな気がします。この手のシナリオだと没入感が弱まり、プレイしててもなんか他人事っぽく感じてしまいそうです。
まぁ群像劇でも、「ヴァルキリープロファイル」なんかはよくできたシナリオでしたが。
この辺、映画とかでもそうかもしれませんが、媒体によってシナリオの相性というのはあると思います。一時期流行ったケータイ小説なんかもガラケーだからこそって点もあったかと思え、今後もしかしたらスマホ小説とかも出てくるかもしれません。
0 件のコメント:
コメントを投稿