なんかネットで「ピエロ岸田」と書かれてあって、可哀想と思う反面、よく思い出し笑いしています。ただいくらか本人にも帰すべきところがあり、禅譲を期待してみすみすチャンスを見逃すところもあったので、こう言われるのも仕方ないかなとは思いますが。
にしても総裁選挙をにらんで自説まとめた本書いたのに、発売日が投開票予定日の9月14日の翌日の15日ってのがマジ笑える。
本題ですが、上の記事見出しを見て二重に驚きました。まず一つ目は、「えっ、たった5万人の失業でニュースになんの?」という点です。自分の感覚では定例の雇用統計速報記事ならともかく、さもコロナで失業者が増えていると報じるならば100万人を超えてから、その前兆だと報じるにしても10万人を超えてから報じるべきだと思え、5万人で記事になるという事実に驚きました。
次に驚いたのは、「これ5万どころじゃなくて実際には少なくとも3倍はあるのでは?」という印象でした。そしたらすぐこんな記事も出てきました。
こちらの記事では派遣労働者限定とはいえ16万人減という、先ほどの私の「少なくとも3倍」という予想水準に比較的近い数値となっています。ただこの記事、よくよく見ると数値のリソースは、「今年の7月と去年の7月の派遣労働者数を比較したら16万人減少していた」という内容で、減少数が解雇によるものか、それとも労働人口減などの自然現象なのか内訳が分かりません。
また記事中に、「6月危機」という言葉をもっともらしく使っていますが、実際に6月中に契約を切られた具体的人数がないのであれば、本当に6月に大量のコロナ解雇があったのかどうか判断できません。ぶっちゃけこれ書いた記者には、「お前これわかってて書いてるだろ」と言いたいです。
それはともかくとして、同じ日に出た記事で解雇者数が5万人超、雇用減少数が16万人となんかすごい差があります。もっとも子細に眺めるとからくりがいくらか見え、後者の16万人は「去年7月と比べた今年7月の差し引き値」であるのに対し、前者は「今年2~8月におけるコロナ関連解雇数(事業所申告ベース)」です。
ということは後者のデータに比べ前者は去年7月から今年1月までの解雇者数は含まれていないんだから、小さくなるのも当然だね、ってことになるのですが、逆を言えば、労働人口の自然減を考慮に入れたとしても、去年7月から今年1月にかけて派遣労働者限定で10万人以上が失業したっていう風に計算できなくもないです。しかもこの半年の期間はコロナなんて全く流行していなかったのに、今年2~8月の約半年におけるコロナ関連解雇者数(約5万人)の倍もあり、コロナ流行時期と比べ流行してない時期の方が解雇者数(派遣労働者限定)で2倍っていうこっちの方がずっとニュースな感じに見えます、
無論、上記の試算はあくまで適当に数字弄っただけなので、実際にこういう数値が実態を表しているかとなると議論の余地があります。そもそもなんでこんなあやふやなのかというと、「コロナ関連解雇」という変な指標を設けているせいで、やや基準が曖昧となるこの要素を取り入れることは、まだ参考として入れるならともかく、こうして大々的に報じる数値なのかというと正直疑問です。はっきり言えば、全体失業者数などだけ報じて、こうした余計な数値はむしろ報じない方が適切でしょうか。この辺、次の記事を見ればそのあたりが分かりやすいでしょう。
見出しは例の「5万人超」という数字を並べてはいますが、こちらの毎日の記事の良いところは、全体データをきちんと入れている点です。その数値というのも、「7月時点の完全失業者数は前年同月比41万人増の197万人」というデータです。増加率にして26%アップとなりますが、繰り返しますがこっちの方がニュースじゃね?
さらにこの毎日の記事だと他の細かい内訳データも報じており、いくつか抜粋すると以下の通りとなっています。
<2020年7月時点就業者数データ>
・就業者数は前年同月比76万人減の6655万人
・このうち非正規労働者数は同131万人減の2043万人
・このうち正規労働者数は同52万人増の3578万人
さてこのデータを見て何を感じるでしょうか。ピンときたら110番じゃないけど、自分はこれ見てああなるほどと思いました。
ポイントは内訳の部分で、非正規労働者が131万人減少した一方、正規労働者数が52万人増加しているという点です。朝日新聞の報道では、派遣労働者が16万人減少したということですが、非正規全体(131万人)から見れば約10%の分量に過ぎず、派遣労働者も大事かもしれないけどアルバイトやパートタイマーの失業ももっと注目した方がいいんじゃねという風に見えてきます。そう見えるからこそ、朝日は131万人という数値をあの記事では出さなかったのかもしれません。
次に、去年7月と比べると確かに全体で失業者数が増え、就業者が減少していることは間違いないものの、非正規労働者が減少している一方で、正規労働者はこの1年で52万人も増えているという事実に気付けるか否かです。見方を変えれば確かに正規の雇用は保たれる一方、派遣が犠牲に合っているという風に読めなくもないデータですが、去年7月からのデータということを考慮するならば、非正規から正規へ雇用形態の切替えがなされた人も相当数いるのではと窺えるデータの様に私には見えます。そう考えると、派遣労働者が減少したという朝日新聞の報道も、単純に契約が切られたというだけでなく、雇用形態切替えによる減少も相当数存在するのではという疑念も持たれます。これっていいことじゃん。
いろいろと憶測に基づく試算を繰り返してきましたが何が言いたいのかというと、この雇用統計の構成、報道自体、きちんとした全体値や内訳をはっきり示していないということにかなり問題があるということです。本来用意すべき指標要素、具体的に言えば就業者数の減少が解雇なのか定年などによる自然減なのか、あと非正規労働者から正規労働者への転換数など、こうしたデータがなければ実態を掴めることができません。元データは面倒くさいから見てないけど、少なくとも今回引用した記事ではまだ毎日は良いとして、他の共同と朝日の報道は本当に一部を切り取ったデータをただ出しているだけという評価をせざるを得ません。
本来この手の雇用統計はもっと分析してしかるべきだというの、数字だけ出して失業が問題だとか派遣がどうのこうのとか、んなことしてる暇あったら自分の代わりにマージン率調べろよと言いたいです。
っていうか仕方ないから面倒だけど
元データも見てみましたが、前年同月比で分析しているから各メディアは報道で失敗しているように見えます。特に非正規労働者はピーク値から現在どれだけ落ちているかを報じるべきだったでしょう。
その上で、やっぱりこのデータの真のニュースポイントは、今年5月単月(マイナス1万人)を除き、コロナ期間中も一貫して増え続けている正規雇用者数でしょう。なんでコロナで大変大変言ってる割には正規雇用者数は増えているのか、これこそもっと追求すべきところじゃないでしょうか。
っていうかなんでどこも月次グラフを作らないのか。もう次のJBpressでこのネタ使おうかな。