話は本題ですが先日に自分が書いた「習近平はいつまで総書記を続けるつもりなのか」の記事を見て、私のことを心配してくれた人も中に入るかもしれません。別にそこまで攻めて書いたつもりはなく、むしろこの記事を理由に自分をしょっ引いたらそれはそれで中国共産党としても問題となるような書き方をしており、どってことないっちゃどってことないです。それ以上にここで書いた習近平の人気に関する意見や議論が他に全くないって事実の方がやばいと自分は思います。
それはそれとして、多分2年くらい前なら日本人の9割がその存在を知らなかった、台湾の半導体大手TSMCの名はこの1年間で一気に普及した感があります。先日も熊本に工場建てるってんで経済紙が大きく取り上げていましたが、一部で指摘されているように、熊本の工場は20nmの半導体ラインとなるらしく、現在最先端の7nmと比べると型落ち感は否めません。でもって日本国内にTMSCの工場ができることにより半導体関連の日本人人材がTSMCに取られる可能性もあり、果たしてそこまで大喜びしていいものかと内心思います。
とはいえ、TSMCは今や世界の半導体業界におけるトップリーダーともいえる存在で、基本はインテルをはじめとする老舗半導体メーカーが設計した半導体の生産を受託するファウンドリー企業です。ただ、インテルは自ら設計した半導体を自ら生産することはできず、さっきの7nm半導体をはじめ、実質的に今世界でTSMCしか作れない状態となっています。文字通りTSMCが止まったら世界の半導体は止まるような状態となったため、TSMCに注文が集中し、昨今の半導体不足の状況が生まれることとなりました。
そんな超名門のTSMCですが、仮にここが生産を停止するとしたらどんな状況なのか。端的に言えば、中国が台湾に武力侵攻した場合、その時歴史が動いた的な状況になってくるでしょう。それだけに中国の台湾進攻は軍事面ばかり取り上げられますが、こうした産業面についてもどうしてこうも議論がないのかと嘆息をつくばかりです( ´Д`)=3
もちろん中国側としてもそうした状況は織り込み済みで、仮に武力侵攻するとしたら短期決戦にして世界経済への影響を最小限にしようとするでしょう。一番ベストなシナリオは沿岸の防衛施設のみ殲滅し、台湾政府に降伏を受け入れさせるというシナリオでしょうが、今日問題にしたいのはその後で、仮に中国が台湾を併合した場合、TSMCは中国政府の傘下に入るということです。これが何を意味するかって、一言で言えば米国に対して産業的に逆大手をかけられることになります。
前述の通り、今の世界の半導体業界はTSMCなくしては成り立たない状態となっています。プロ野球で言うなら、暗黒時代カープにおける黒田博樹元選手です。
そのTSMCが仮に中国の指導下に入った場合、その供給量や割り当ても管理できるようになります。ここまで言えばもうわかるでしょうが、意趣返しとばかりに米国への供給を止めてくることも考えられます。
トランプ政権時代から始まった米中貿易摩擦ですが、その主役は何といっても半導体で、この半導体の供給規制によりファーウェイなどは相当苦しめられました。しかし、その供給が規制された半導体の多くはまさにTSMCも作っており、TSMCを中国が抑えることができれば、この供給規制は実質的に無価値化するのではないかと考えています。
もちろんTSMCが作っている半導体はインテルなどのファブレス企業が設計したものですが、設計企業に関してはまだ代替が聞く一方、生産企業に関しては今の半導体不足状況のように、TSMCの代替はありません。仮に今の半導体業界状況が続く場合、文字通りにTSMCを制す者が半導体業界を支配しかねない状態です。
そういう意味では、今のままTSMCの天下が続いた状態で中国が台湾を併合することが、ある意味で世界戦略にもつながってくるわけです。半導体の供給を材料に外交を取ることだってできるでしょう。
では米国目線に立つとしたら、TSMCへの生産依存を下げる、それも旧西側諸国内でというのが最大の防衛策になってきて、多分そういう計画もあるのでしょう。中国側としたら、TSMCを増々応援することがその対抗策になってきますが。
一応米国内にもTSMCの工場があるし5nmの工場も新設すると発表していますが、こと半導体業界に関して言えば、TSMCが中国政府の支配下に入るというシナリオを日本も含めてもっとシミュレーションすべきじゃないかと思います。まぁそれ以上に、台湾進攻の際に米国が台湾について軍事行動を採った場合、安保的にどう動くのか(米国とともに前線に立つか後方支援にのみ徹するか、日本領土内からの出撃も制限するかなど)ってのももっと考えるべき内容でしょうが。