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2022年2月2日水曜日

救いのない物語は何故面白いのか

 連休三日目ですが先週あたりからやけに寒く、今日にいたっては雨も降り、震えながら過ごしています。室内気温も10度台で動かないし、さすがにこれだと自分もきつい。
 でもって雨で外いけないから自宅でプラモ作ろうとしたところ、中国メーカー(小号手)の古いキットのせいかパーツの整合性が悪く、また組立が異常に面倒くさくて「やってられるか(# ゚Д゚)」と言って投げだしました。ただ自分が創るの下手なだけですが、無駄にストレス溜めるくらいならと思ってもう作るのやめて、別の買い置きしているプラモをまた今度作ろうと思います。

 さて話は本題ですがそんなかんだでプラモ作りを投げ出し、買い置きしていたあるRPGのゲームを遊んでました。このゲーム、非常に救いのない話で、マルチエンドですが基本主人公は一切救われず、ルートによっては物語序盤から一緒についてきたヒロインとも戦う羽目となり、殺害にも至るというショッキングな内容で、徹頭徹尾プレイヤーの心を折りに来ています。
 ただ、そんな内容ながら遊んだ人からの評価は高く、自分も実際にそうした評判を聞いてこのゲームを遊んでみようと思いました。一体何故こんな救いがない内容、鬱度満載な内容ながらそれほど評価が高いのかと言いたいところですが、むしろ話は逆で、救いがなく心を深くえぐるからこそ評価が高いというべきでしょう。

 このゲームに限らず、古来より鬱度の高いシナリオというかストーリーは「悲劇」というジャンルとして成立してきました。シェイクスピアは言うまでもなく、日本国内でも夏目漱石の「こころ」を筆頭に、読後に読者を暗い気分にさせたり落ち込ませたりするような内容であっても名作に数えられる作品は少なくありません。
 映画、ゲームにおいてもこれは同じで、前者であればやはり今でも語り継がれるのブラッド・ピットの出世作の「セブン」で、後者のゲームにおいては、自分は生憎プレイしなかったのですがPS2の「ドラッグ・オン・ドラグーン」に至っては「史上最高の電波ゲー」とまで評されています。詳しくは他のサイトの紹介を見てもらえばいいですが、個人的にビビったのは子供を亡くしたことがきっかけで胎児を食べるようになった女性キャラクターがいるのですが、このキャラを声優として演じていたのは林原めぐみ氏で、当時妊娠中だったと聞いて、「何考えてんだこのゲームのスタッフども(;´・ω・)」と心底思いました。

 実際に私が遊んだ中で有名な鬱ゲーとしてはスーファミの「ライブ・ア・ライブ」なんか有名ですが、このほかこっちのサイトにあるゲームで実際遊んだのになると以下の通りです。

・サイレン
・コープスパーティ
・零~深紅の蝶
・かまいたちの夜2
・ゆめにっき
・勇者30(言及されているステージはクリア方法を変えると感動の嵐になる)
・滅やばたにえん
・夕闇通り探検隊
・ファイナルファンタジーVII
・フロントミッション
・ファイナルファンタジー零式
・青鬼
・サガフロンティア
・serial experiments lain
・ペルソナ2 罪
・ブレスオブファイア4
・ガイア幻想紀
・Linda³
・ドラゴンクエストII 悪霊の神々
・ダブルキャスト
・零
・ダンガンロンパ
・弟切草

 まぁぶっちゃけこれらの作品は有名どころが挙げられているだけで、なんとなくホラーが鬱に分類されているだけと感じる作品が多いです。この中でガチで鬱作品と自分が思えるのは「ブレスオブファイア4」と「Linda³」、「ファイナルファンタジー零式」くらいじゃないかと思います。「コープスパーティ」に至ってはギャグホラーです。
 また「ガイア幻想紀」が挙げられていますが、これより同じ会社の次の作品である「天地創造」の方が結末の鬱度で言えば高い気がします。

 という感じでまた話が脱線してきたので戻すと、端的に言って、こうした救いがない作品というのが何故評価されるのかというと、結局人間というのはどれだけ心が動かされたか、つまりそれまでの既存概念や価値観がひっくり返されたり、疑うきっかけを作らされたりなど、感情がどれだけ揺り動かされたというのがそのまま「面白さ」と感じるのだと思います。文字にするとそのまま「感動」となりますが、感動はストーリーを素晴らしく思うプラス方向だろうと、ストーリーにショックを受けるマイナス方向だろうと、振り幅が大きければ大きいほどその本人の心理に影響を及ぼし、気分的に楽しくなるかどうかは別として「面白さ」として感じられるのだと思います。
 ではその振り幅は何によって決まるのか。やはりその作品に触れた人間の想定を破る、既存の知識や概念にない展開をどれだけ見せるかによって決まると思います。あり得ない逆転劇、想像もしてなかった結末、かつて考えたことすらない悲惨な描写、これらがそのまま作品の面白さに直結するとかねてから考えています。

 その上で、世の中やはりハッピーな方がいいってことで基本的に普通の作品はハッピーエンドで終わることが多いのですが、だからこそ少数派のアンハッピーエンドこそ悲劇が少数派の強みを生かしてかえってその作品に触れたものの心に残りやすくなるという特徴がある気がします。いわば心を充足させる作品が多いだけに、心をえぐる作品がえぐる分量が大きくなっているような感じです。

 私自身、世にハッピーエンド作品が溢れているからこそ、悲劇的な作品に惹かれている自覚があります。まぁそれ以前に、本来の世の中不幸に満ちているからハッピーエンド作品はどことなく嘘くさく感じてしまうというのもありますが。
 ただこの手のアンハッピーエンドを狙った作品においては方向性を勘違いし、ただグロテスクな猟奇的描写を載せるだけの作品も少なくないです。先にも書いた通り、ホラーと鬱はジャンルがやはり別れると私は考えていますが、鬱な作品を狙ってホラーになってしまうパターンがかなり多い気がします。でもってそういう作品はホラーとしては評価できても、「悲劇」としては全く評価できなくなるわけです。

 じゃあ「悲劇」ってなんやねんという風になりますが、ぶっちゃけこれに関しては自分の中でも答えが出ていません。有体に言えば、「裏切り」はホラーでなく確実に悲劇に分類されると考えており、こうした裏切りがテーマな作品はまず悲劇と呼べるのではないかと思います。さっき挙げたゲームの中では「ブレスオフファイア4」なんかまさにそうですし。
 もう一つ確実に悲劇と呼べるテーマとしては、「無意味、無価値」も悲劇だと思います。これも「ブレスオブファイア4」が当てはまり、「天地創造」も若干入るというか、これまで頑張ってきた過程がすべて無価値とされる結末はやはりいろんな人の心を一発で折ってくれる気がします。

 そういう意味では冒頭に上げた「救いのない物語」というのは、後者の「無意味、無価値」がバックボーンとなるからこそ人を惹きつける悲劇となっているのかもしれません。ただキャラクターが死んでいくだけではなく、それまでやってきた努力が否定され、むざむざ死んでいく、消えていくからこそ人の心を揺り動かし、作品としての面白さに繋がってくるのではないかというのが、この記事書きながら考えた結論です。

 普段、こういう記事書くときは自転車乗りながら思考を巡らせますが、この記事はそういう自分にしては珍しく書きながら一から最後まで話を組み立てました。やはりしっかり休養を取った上で、何らかの作品に触れた直後にすぐ書きだすというのは執筆においてはプラスです。

2022年2月1日火曜日

石原慎太郎逝去に対する中国の反応

 今日は運動不足解消のため自転車で50km走ってきましたがその最中、春節の上海の風景観ながら「上海→蒼天の拳→阿弖流為II世」という感じで原哲夫氏の漫画を連想ゲームしていて、阿弖流為II世に出てきた石原慎太郎モデルのキャラはよく似てた、っていうか似せ過ぎだったなどと思いながら休憩に寄ったコンビニでニュース見たら逝去報道出ててあら偶然みたいに思いました。
 ちなみにこの漫画の石原慎太郎モデルのキャラはWikipediaだと、

「東京都知事。独自の情報ルートで田村麻呂が異星人である事実を掴み、未納分の税金を取り立てるべく自ら装甲車に乗り込み、銀座の町に出動するが、毛利総理の放った刺客によって銃弾を撃ち込まれ死亡した。」

 と紹介されています。

 わざわざ書かなくてもいいかなとは思いますが折角なので日記風に残すため、この報道に対する中国の反応を少し見てみました。っていうか中国の記者も、初一(=元旦)からこんな風に速報書く羽目になってちょっと同情する。

 まず反応としては明らかに多く、速報ベースで日本側の報道を紹介する記事がすでに大量に出ています。記事コメントもそこそこついているものもみられますが、恐らく若い世代なのか「誰?」というコメントもみられ、この辺は時代経ってるしなという気がします。
 速報の内容としては経歴紹介とともに「尖閣諸島問題で日中関係を悪化させた」、「右翼論客」などと書かれていることが多く、中国絡みの報道としてはなくてはならない部分でしょう。

 見方を変えると、逆にこれほど速報が出るほど中国人にとっても著名な日本人であったということの証左と言えるでしょう。実際、日本人としては蒼井空に並ぶくらいの知名度を石原慎太郎は持っていたと自分は思います。比較対象がなんですが。
 ただ表舞台から引いてもはや何年も経っていることもあり、かつては蛇蝎の如く嫌っていた中国人の間でも、今回の報道を見てその存在を思い出した人が多いのではないかと思います。その上で、彼に代わる「右翼論客」的な著名な人物が日本人からその後現れてもいないようにも思います。これは親中派が増えたというよりも、排他的な外交思想、というより反米思想の持主がかつてと比べ全くでなくなったことが影響していると推察します。

 いろいろ言われますが、私個人は石原慎太郎は反中思想というより反米思想が先立っており、その延長線で中国を批判していただけだとみています。彼にとっては中国どうこう以上に日本の米国からの完全独立が優先すべき目標であり、その方針に基づく価値観から中国も嫌いになっていっただけだと思います。
 やはりこの辺の反米か親米かは戦前生まれと戦後生まれで全く価値観の変わる部分であり、時代が下るにつれて戦前生まれの反米思想の持主も漸減傾向にあるでしょう。というよりここ数年、明確な反米思想に基づく政治的発言を私自身全く聞かず、「反米」という単語自体が死語になってきた感すらあります。

 そういう意味では実際に政治的影響力を有した反米思想の持主としては、石原慎太郎がほぼ最後の人物となる可能性があります。かつて日本の外交議論は反米か親米かの二種類しかないと言われましたが、現代においてはこれが反中か親中に置き換わってきており、昭和の価値観じゃもはややってけないというのが書いてて思ったことです。

2022年1月31日月曜日

ある中国人少女の「中華一番!」に対する誤解

 仕事柄、中国人同僚と接する機会も多いのですが、地味にそうした同僚との会話でさりげなく最近の中国人の関心事を探ったり、それとなく質問して記事の取材として使うことが多いです。ちなみに以前、自分の記事をある同僚に見せたところ、「この記事で挙げてるアイドルって私が教えた奴じゃん!」とツッコミ入れられました。実際、「最近、中国ではどんなアイドル流行ってんの?」とさりげなく聞くスタイルで取材してました。

 そのように懇意にしていて取材によく使う中国人同僚女性の一人と、この前食事に行く機会がありました。この女性は日本での留学時によく岐阜県を訪れていたので岐阜にいくらか土地勘のある自分とも話が合うのと、単純に賢くてやや難しめな経済論の話題もきちんと応答できるためいろいろメシ食わせてよく話を聞くのですが、ある時に「子供の頃に、一番好きなアニメがあった(´・ω・`)」とやおら話を振ってきました。
 話を聞くと、中国が舞台で、登場人物もみんな中国人の料理アニメで、その子が子供のころ放映されていたという材料から、「それはきっと『中華一番!』(チョンファーイーファン)だな」と見事当てて見せてやりました。実はこのアニメ、自分も少し気になるところがあって、以前にも別の中国人に話題を振っていた作品でもありました。

 日本の漫画やアニメ作品ではラーメンマンを筆頭に、中国系なキャラクターが結構よく登場します。モデルパターンとしてはまさにラーメンマンのようなカンフーの使い手が多く、「バキ」シリーズに出てくる烈海王など明確に強キャラ扱いされ、人気のあるキャラも少なくありません。
 こうした中国系キャラについて中国人はどう思うのかが実は前から気になっており、日本のアニメに出てくる中国人キャラをどう思うか一時期は手あたり次第聞いていました。ただ反応は芳しくなく、そこまでアニメを見ていなかったり、または見ていても中国人キャラが出てこない作品だったりしてあんまこれという感想は聞かれませんでした。

 唯一、「聖闘士星矢」の紫龍というキャラはある程度通りがいいのですが、知り合い「別に好きじゃないし人気ない(`・ω・´)」という返事がきました。まぁ実際、日本でもあんま人気がなく、戦闘の度にクロス脱ぐから露出狂とか言われているけど。

 話を戻すとその同僚は子供の頃に中華一番!が大好きだったらしく、何度もビデオとかで見返していたそうです。この作品は2019年、2021年にリブートみたいな感じで「真・中華一番!」というタイトルにてアニメがまた作られていたので、「そんなに子供のころ好きだったのならこっちの最新版も観てるの?観てないならおすすめ」的に話したら、「実は……」と言いながら、顔をうつ向かせてきました。そして、

「実は……『中華一番!』はこれまでずっと中国のアニメ作品だと勘違いしていて、日本の漫画が原作だとは子供の頃は全く知りませんでした。そのリブートがされた二年くらい前に、初めて日本の作品だと知りました。」

 という、さほど衝撃でもない告白をしてきました。

 ぶっちゃけ、この同僚の言い分も全く分からないでもありません。登場人物はみんな中国人で日本人は出てこないし、舞台も中国で普通に中国の地名がバンバン出てきます。でもって料理もうどんやそばなんて出てこずすべて中華料理で、同僚も実際試しに作中に出てくる料理を作ったそうですがまずかったそうです。

 もちろん本人に悪気はなく、ガチで中国産アニメと誤解していただけなのですが、逆を言えばそれだけ原作が中国人が見ても日本の作品だとはわからないほど中国らしさを表現できていたと言えるでしょう。ただなんていうか、結構破天荒な展開も多いだけに、中国人に誤解されていたという点でなんかいろいろ笑えて来ます。

 なお帰り際に同僚には、「自分が一番覚えているのは『黄金饅頭』だ」と言いましたが、この料理を同僚は覚えていませんでした。残念(´・ω・)

漫画レビュー「僕が私になるために」

 最近、ウクライナがよく話題になるためウクライナの歴史をまた勉強しなおそうとホロドモール(「ホモドロール」と一回打ち間違えた)を調べていたところ、Wikipediaのホロドモールが出てくる作品に「白百合は朱に染まらない」というのがあり、試しにこの漫画のAmazon紹介ページを見てみました。
 この「白百合は朱に染まらない」は旧ソ連の女性パイロットを扱った漫画とのことで、「平沢ゆうな」という作家が描いているとのことでした。ついでにこの作者の過去の作品とか見ようとAmazon紹介ページを見てみたところかわいらしい自画像が描かれてあり、「おいおい、こんな子が独ソ戦まともにかけるとでも?」などと無駄に舐めたこと思いつつ、ついでに作者のWikipediaページを見ました。するとそこには、

「メンサ会員、物理学修士」

 と書かれてあり、この時点で「えっ、何この人!?ってかなんで漫画家してんの?」とびっくりしましたがさらにその先には「性転換手術を受け、男性から女性に性別を変更」とも書かれてあって、なんなのこの人を通り越して「なにこれめちゃ面白そうな経歴(;´・ω・)」という感想を持ちました。でもって買って読んだのがこの「僕が私になるために」です。

 この漫画はタイトルの如く、作者が性転換手術を経て、法手続きを行って男性から女性へと性別を変えるまでのいきさつをまとめたかなりマジな漫画です。絵柄こそ少女漫画を意識したような少年漫画風に描かれていますが内容はかなり壮絶で、男性だった頃の性同一性障害による自らの身体への悩み、また家族の反応への恐怖などが書かれてあります。
 なお家族に関しては兄妹は非常に応援してくれて、この点で非常に恵まれていたと書かれています。

 その後日本での診断や紆余曲折を経てタイで性転換手術を受けることとなるのですが、なんでもこれが初の海外渡航だったらしく、いろいろタイ、っていうか東南アジアの無茶ぶりに驚く様が描かれています。ただそれ以上に、性転換手術について非常に詳細に書いており、個人的には切り取った男性器の幻肢痛(ファントム・ペイン)に悩まされたという過程は、読んでてマジで鳥肌立ちました。
 っていうかこの世にそんな恐ろしい痛みがあるのかとガチ恐怖し、読んだ後に自転車乗って帰る際、なんか運転がおぼつきませんでした。

 そんな激しい痛みを乗り越えて術後期間を経て日本に帰り、裁判所で戸籍などの性別変更手続きはどうやるのかなども詳細に描かれています。読んでて感じたこととして、単純にやっぱ賢い人だという印象を受けるというか、非常に読みやすく内容が頭に入ってきやすく描かれています。
 なお裁判所で女性の裁判官に、「あらあなた私よりかわいいわね」と言われたこと書いてましたが、「自慢か?」とちょっぴり思いました。ちなみに本人の現在の姿はネットで確認できますが、一見して本当に女性にしか見えません。

 あと末尾部分で、女性となった後の感想として本当に男性の頃と比べ力がなくなったとも書かれてました。それまでは女性が重たいものを持ちたがらないのことをやや特権的に言っていると感じていたものの、実際に女性になって体力がなくなり、世の中の女性に対して謝りたくなったことが書かれています。この点についてはすごい説得力あるというか、ちょっと自分もレディーファーストを考え直そうと感じました。

 こんな感じで、多分男性にすれば読んでて痛いイメージがかなり激しくする内容ですが、文字通り普通の作家なら体験し得ない体験をかなり詳細に描いており、実際のトランスジェンダーはこのような過程を経るのかというのを見る上ではよくできた漫画だと感じました。っていうかこの経歴だけでもこの人は他の漫画家と一線を画す。
 ちょっと毛色の変わった漫画ですが、逆にこの経歴と先に書いたわかりやすい構図などから将来化けるかもなという印象を覚えたので紹介することにしました。いやはや世の中広いもんだなという気がいします。


中国自動車業界の潮目

エンジン車が100万台売れなくなった!大転換する中国自動車市場(JBpress)

 というわけでいつもの自分の記事紹介ですが、また例によって中国自動車統計の記事です。統計結果については記事内容を読んでもらえばいいのですが、敢えて強調するとしたら見出しにも持ってきた最後の部分、全体市場が拡大しながらエンジン車が100万台減少しており、明らかに新エネ車にシェアを食われているという事実でしょう。


 わざわざ上の比較表まで持ってきましたが、少なくとも自分が見る限り、エンジン車(=従来燃料車)のみの販売台数を前年と比較する記事は他になく、多分こうした言及をしたのは私が初めてだと思います。

 端的に言って、ラインナップでEVがほとんどなくエンジン車しかほぼない日系自動車メーカーにとって、去年の中国市場実績は市場縮小と言ってもよく、さらに今後についても、新エネ車が拡大する一方でエンジン車は縮小する一方である可能性が高いことから、日系自動車メーカーは今後中国市場で販売台数を伸ばすことが極端に難しくなります。むしろ減っていくことが普通であり、中国市場向けに部品を供給しているメーカーの売上げも今後縮小する可能性が高いのではと見ています。
 なお自動車部品にはエンジンやギアなどエンジン車にしか使われない部品と、インパネやブレーキ、ライトなど新エネ車にも使われる部品に分けられますが、上記予想が当たる場合、どちらの部品においても日系部品メーカーの売上げは落ち込むでしょう。理由は単純に、そもそも供給先の日系メーカーの弾が出ないからです。

 では今後中国市場で販売台数を伸ばすにはどうするかと言ったら、単純にEVのラインナップを増やしていくしかないのですが、正直今の現状を見ると日系はかなり出遅れてきていると感じます。VWなどは既に中国市場でEVを投入してきており、また以前自分も取り上げたように中国系の新興メーカーも今年は恐らく年間10万台の大台を超える会社が数社現れるでしょう。っていうか去年の時点で、中国市場の三菱自動車の販売台数超えてるし。

 ただはっきり言えば、時既に遅しという感があります。EVメーカーというイメージが日系にはほぼなく、これからEVを投入してもユーザーが選択するかブランドイメージてんで少し懸念があります。個人的な意見を言えば、テスラが中国市場で本格的に現地生産と販売をし始めた2019年までに何らかのEV車種を投入しておかなければならなかったのではと考えています。既にEVというと、中国ではテスラと新興メーカーという風になっています。

 ヤフコメとかを見るとこのEV販売台数の大半は超低価格EVの宏光MINIによるもので、この車自体は一過性で大したことがないと侮る声が多いように見えます。しかし宏光MINIの販売台数は約40万台で、残り290万台は他の車です。前にも取り上げましたが蔚来や小鵬、あと哪吒汽車など自分の目から見てもいい車を作るメーカーが成長してきており、宏光MINIが市場を引っ張っているのは事実ではあるものの、この新エネ車販売台数は宏光MINIだけによるものではなく、やはり本格的なEVシフトがもうすでに始まっているとみるべきだと自分は考えています。

 以上にも関わらず記事の反応を見ていると、なんというか他人事のように語るコメントの多いこと。世界最大の自動車市場で100万台も市場が縮小し、完成車、部品を問わず日系メーカーの売上げが今後低下、ひいては従業員の雇用や報酬にも影響しかねない傾向を示すデータなのに、自分たちの話題と考えず中国での話題として割り切っている人が異常に多いことに逆に自分は驚きました。今回で初めてわかりましたが、やはり日本の不利益につながる情報ほど他人事と思う人が多い気がします。真面目にもうあかんかもな。デジャブがあるというかかつてのエレキ見ている感覚がします。

2022年1月30日日曜日

盛り上がらない北京五輪

 中国は明日が大晦日で明日から春節の長期連休に入りますが、最終出勤日の今日も仕事でした。ただ今日の仕事の効率は新しい方法試したらシャレにならないくらい早く、3時で終了出来たのでそこで切り上げて帰りました。
 ちなみに中国人同僚とのチャットで顧客の悪口言う時によく「( ゚д゚)、ペッ」って顔文字をよく使います。中国人はめっちゃ唾吐くけどこの顔文字についてどう思うのか密かに気になります。中国語にするなら「( ゚д゚)、吐」になるのかな。

 話は本題ですが、北京冬季五輪が全く盛り上がっていません。日本国内も報道を見ている限りだとほぼスルーされている状態に見えますが、ぶっちゃけ中国現地もスルーされています。先日も友人から「全然盛り上がってない」と連絡来たので、「ウクライナのが盛り上がってる」と返信しました。

 何故北京五輪がこれほど盛り上がらないのかというと、日本語媒体でもいろいろ分析が出ていますが基本的に世間で言われている通りの原因からです。まず単純に中国ではウィンタースポーツはほとんど人気がなく、競技人口もかなり限られています。
 比較的人気なのは最近は中国人選手も表彰台に乗ってくるフィギュアスケートとかで、スケート競技であれば割と中国の北の方では嗜む人も少なくありません。一方、世界的にはむしろこっちが主役的なスキーやスノボといった雪上スポーツはほとんど人気がない、というかやれる場所がほとんどなかったりするので、競技人口も極小といっていいくらいいません。

 中国では北の方なら確かに雪が降り積もりますが、それでも絶対量的に降雪量は日本の日本海側と比べると少ないです。また降る地方があっても、そこに山がなかったりするので、スキーなどの競技を行える環境がそもそもほとんどなかったりします。それこそやろうってんならめちゃくちゃ山深いところまで移動しないとできないほどで、とても気軽に楽しむようなスポーツとしては成り立っていません。
 ちなみに昔、吉林省にプリンスホテルがスキー場を開発するというニュースあったけど、あれどうなったんだろうな。自分も取材しようとしたけど編集部にストップかけられ、記事化できず担当者に申し訳なかった、っていうか最後は返信くれなかったけど。

 以上のような背景から、街中を歩いていても日本のアルペンのようなウィンタースポーツ用品店もなく、あってもスケート靴屋くらいで、尚且つ華中以南ともなると雪すら降り積もらないので全く関心がないという有様です。もっともその分、雪が大量に降り積もる日本の冬景色に、物珍しさから関心を持つ中国人も多いのですが。

 また単純にウィンタースポーツの人気がないことに加え、例によってコロナのオミクロン株が中国でも各地で感染者を出すほど流行していることも影響しています。結局北京五輪も一般客は入れないことになりましたが、そもそも一般販売しても見に来る人がほとんどいなかったと思うから、運営側としては内心言い訳できたとホッとしているんじゃないかなとも邪推しています。
 北京の状況は詳しくは見ていないですが、やはり大会開催前でコロナ流行を阻止する目的からかなりの厳戒態勢となっており、外出とかも聞いてる限りだとなんとなくし辛そうです。なお近くの河南省出身の同僚に春節は帰省するのかと聞いたら、「なんか面倒そうだからやめる(´・ω・`)」と言ってました。

 もっとも、いま盛り上がってないとはいえ実際に開催したら盛り上がる可能性もあるだけに、あまり後ろ向きに見過ぎるのもどうかとは思います。個人的にはこういうくらい世の中だから明るいニュースがあればいいなと思いますけど、このタイミングでウクライナで紛争起きたら本当に世の中の関心があっちに取られてしまうだけに、「頼むから五輪後に」って感じで中国政府も今必死でロシアを引き留めているんじゃないかと思います。下手すりゃ米国以上にロシアを説得しているかもしれません。

 自分は明日から1週間の連休中、ともかく体力が落ちててさっきも椅子の上に立って、窓の外に身を乗り出して窓拭いてたらえらい疲れたので、自転車漕いで体力つけようと考えています。あとセールの時に買い貯めた本が大量にあるのでこちらも消化し、こっちもたまっているプラモのキットを消化していく必要があります。

2022年1月29日土曜日

リアルサイレントヒル

 今日明日は土日ですが、中国では春節休暇をまとめて1週間にするため営業日に変えられたため普通に出勤日です。とはいえ春節間近とあって仕事は少なく、昨日もやる仕事ないから有休使って午後半休にし、今日明日も何もなければそのまま1日オフにしようとしていたら、間隙を縫うかのように仕事の依頼が舞い降り、ようやくそれ終えたら明日1日食いそうな依頼(納期もほぼ明日中)がすぐまた舞い降り、明日も普通に仕事させられそうです。
 さすがに後者の依頼については「長期休暇前後は日程にもっと気をつかえ!(# ゚Д゚)」と、中国人の同僚相手になんか吠えてました。同僚からは「顧客がこの納期で譲らない」と言われましたが「あいつらの状況なんて知るか!(# ゚Д゚)」と、自分でもなんかわがままな中学生みたいだと感じる発言繰り返してました。

 さて話は本題ですが、この前会社の後輩と食事している最中にまた奈良の魅力を挙げつつディスり始めたところ、「そういえば、奈良にはディズニーランドパクった施設があるそうですね」と後輩が言うので、「おいお前、俺の前でそんな発言していいと思ってんのか?奈良ドリームランドに触れようものなら3時間は語るぞおい」と言いつつ、奈良ドリームランドの歴史についてマジで語り始めました。さすがに3時間は続かなかったけど。
 奈良ドリームランドについては過去にも記事を書いていますが、この話題に触れると奈良に住んでいる奈良大好きおじさんなら誇張ではなく本気で3時間くらい語り続けます。この人に限らず、関西圏出身の30代以上だったらほぼ確実に奈良ドリームランドに行ったことがあるので、「話題に困ったら奈良ドリームランドに触れろ」と後輩に無駄なアドバイスしてきました。

 話を戻すと奈良ドリームランドはその閉園直後、上記の奈良大好きおじさんとその跡地について何故か当時いろいろと議論したことがあります。おじさんは「あの立地と面積からすると大学のキャンパスを誘致するのが人口アップ的にも一番なんやけど、実際誘致に応じる大学があるかどうかやな」と話しており、私もこの意見に当時同意しました。奈良市には奈良教育大とか奈良女子(ナラジョ)とかあるものの、やはり他の年同様に少子高齢化が進んでおり、若者人口を一気に増やせる大学があるとやっぱいいなと当時思っていました。
 ただ私や奈良おじさんの期待通りとはいかず大学は来ず(そもそも誘致もしてなかったろうが)、その後も時が減るにつれ奈良ドリームランドについては話すこともなくなっていきました。うちのソ連人民の敵である親父とともに奈良おじさん(親父の従兄弟)のところを尋ねに行っても、「最近、柳生の里がマイブームやねん」など、忍者学園の存在とその活動ばかり話題にするだけでした。

 そこで先日、ちょうど後輩の一言で自分のドリームランド熱が盛り上がったこともあり今どうなっているのかと調べてみました。


 中でも目を引いたのが上の、日本在住フランス人写真家のjordymeow氏が公開している2010年の写真です。なんでフランス人がこんなところにというツッコミはさておき、この時はまだ残されたアトラクションも放置されてて「リアル廃墟テーマパーク」となっており、その方面の人たちを沸かせていた頃でした。
 さすがに写真家だけあっていい写真が多く、特に光の角度とかに凄みを感じます。っていうか夕方ごろを映した写真はなんかその廃れたアトラクションと相まって、ゲームのサイレントヒルみたいな写真になっているとすら思います。実際、リアルにサイレントヒルが出たらこんな感じでしょう。

 ただこれら残されたアトラクションについてはその後撤去されて、今はもう何もないそうです。税金の滞納や地権者の分散などでなかなか引き取り手が見つからなかったそうですが、2015年になってようやくある不動産会社が買収したそうです。しかしその後も具体的な再開発とかは始められず、今もまだこの場所は霧に包まれるとあるはずのないアトラクションが出てくるサイレントヒルみたいな場所になってたらいいなとか思います。

 ただほんと奈良に関してはよく馬鹿にしてますが個人的にはもっと盛り上がっていい場所だと考えており、この奈良ドリームランド跡地を含め、もっと面白い施設が再開発してくれればと密かに考えています。マッドシティと揶揄する松戸市といい、ある意味街ってのはディスれるからこそ愛着が湧くもので、グンマーとかもその類だと思います。
 逆にディスり辛かったり、ネタにするとマジギレする街とかだと、自分はあまり好きになれません。嫌いというわけじゃないですが横浜市なんかちょっとそういうところがあって、ディスり辛いためちょっと自分は住みにくいかもと考えています。足立区と尼崎市はみんなでディスれるけど実際には住みたくはないです。