2011年9月3日土曜日

日本プロ野球、魔球の射手たち

 野球漫画ときたら魔球、と言われるくらいに野球における変化球というものはいろんな意味で人の注目を浴びます。まぁそういっておきながら自分が一番好きな野球漫画は魔球とか一切出ない、ちばあきお氏の「キャプテン」なんだけど。
 前からやろうやろうと思ってなかなか実現できずにいた企画ですが今日はその変化球に絞り、拙い私の知識ながらも現実のプロ野球選手の中でひときわ記憶に残る「魔球」と呼ばれるような変化球を投げていた投手とその球種を紹介しようかと思います。

1、伊藤智仁(スライダー)
 一番に持ってこないと怒る友人がいるので早速持ってきましたが、元ヤクルトの伊藤智仁選手とくればなんといってもスライダーです。生憎中国だとYoutubeがつなげられないのでもってこれませんが、実際に現役時の伊藤選手のスライダーを見てもらえばわかりますが、明らかに物理学の法則を無視した軌道で、バッターの目の前で真横に曲がっているようにしか見えません。もっともこんなとんでもないスライダーを投げられたのはもともと伊藤選手の方がルーズショルダーという、脱臼しやすい特殊な体つきをしていたからだそうで、そのせいか現役時代が短かったのは残念な限りです。

2、佐々木主浩野茂英雄(フォーク)
 現在でもアメリカでは普通に魔球として取り扱われるフォークボールですが、その使い手と言ったらなんといっても大魔神・佐々木選手とパイオニア・野茂選手の二人が自分の中で挙がってきます。二人とも日米球界で活躍したのはもとより、バッターからすると「目の前ですとんと落ちるため視界から消える」と言わせるほどの落差の大きいフォークボールを決め球として持っていましたが、それ以上に特徴的と言えるのはそのフォークを生かす速球の威力でしょう。二人とも全盛期の最高球速は時速150キロを超えており、それ故にバッターもフォークに対応できなかったと言われています。
 なおフォークボールの神様と呼ばれる杉下茂氏によると、現在のフォークボールはSFF(スプリット・フィンガー・ファストボール)などといった亜流が多く、本物のフォークを投げたのは自身と村山実選手、村田兆治選手、野茂選手、佐々木選手の5人を挙げています。それにしても日本は変化球にも神様がいるあたり、バラエティが本当に豊富な気がする。

3、藤川球児(ストレート)
 現在私が最も好きな選手の一人ですが、実際に野球選手になれたからよかったものの親にこんな名前を付けられると相当なプレッシャーものです。
 変化球と言っておきながらですが、藤川選手の投げる直球ことストレートもよく魔球として取り扱われます。藤川選手については何度もこのブログで取り上げていて誰も覚えていないでしょうが繰り返しになってしまいますが、私が2005年のシーズンで藤川選手の投球を見た際は文字通り目を疑いました。これも実際の動画を確かめてみればわかりますがどのバッターも藤川選手のストレートを空振りする際はいつもボール二、三個分下を振りぬくのですが、対戦したバッターによると「ボールが浮き上がってくるように見える」そうで、実際にテレビ画面で見ていてもボールの軌道が浮いているように見えます。それ故に私は当初、直球に近いシュートという変化球を投げたのではないかと思い、テレビでストレートと表示されても最初は疑ったほどでした。

4、潮崎哲也(シンカー)
 シンカー(スクリュー)という球は手首を捻じるようにして投げるため、ダルビッシュ選手ですら封印したほど肘などを故障させてしまいやすい球種です。ただ潮崎選手のようなサイドスローやオーバースローでは腕の振りと合わせて投げやすいそうで、それ故に現在のプロ選手でもオーバースロー以外の投手が投げることが多いように思います。
 そんな潮崎選手のシンカーですが、1番の伊藤選手同様にどこかで物理学を無視したような動きをしてました。当時のバッターからも来るのがわかっていても打てないと言われたほど変化する軌道が大きかったことはもとより、バッターから見て最初右に変化したかと思ったら急激に左下へ落ちてくるというタイミングの合わせ辛い球だったそうです。ゲーム中で私も潮崎選手と対戦しましたが、確かに相手していて「反則だろっ」って言いたくなる変化球でした。

5、ジェフ・ウィリアムス(スライダー)
 阪神ファンからするとバースと並び記憶に残る外人選手のウィリアムス選手ですが、いろんな意味で私の中のサイドスロー投手の常識を打ち破った選手でもあります。というのも私の中でサイド、アンダースローの選手というのはどこか非力な感じがして速球はそれほど速くないという印象があったのですが、このウィリアムス選手に至ってはサイドスローながら速球が時速150キロを超えるなどパワフルな投球をしており、それに加えて文字通り左から差し込むスライダーの凄さには目を見張りました。
 ウィリアムス選手は左利きなので左手からボールを投げるのですが、サイドスローゆえにほかの投手と比べてリリースポイントが大きく左にずれており、そこから放たれるスライダーというのは横一文字に大きく変化するのが特徴でした。ただ球が早い、投げるポイントがずれているとかいうのではなくともかく大きく変化するのが特徴で、なんでも空振りした右バッターに投げたスライダーボールがそのままぶつかるといったことが何度かあったそうです。現在ヤクルトの久古健太郎選手もサイドスローでスライダーを武器にしていますが、案外こういった投球方法は定着してくるかもしれません。

6、星野伸之今中慎二(スローカーブ)
 変化量が大きい変化球といったらこの二人を忘れるわけには行かないでしょう。両選手ともおおよそ野球選手にとしては似つかわしくないほど細身の長身選手で、ルックスと相まって現役当時は女性ファンなども多かったと聞きます。そんな二人ですが今中選手はまだ最高球速が時速145キロに達したものの、星野選手に至っては130キロ前後が限界というほど他の一般の投手と比べて非力さをあちこちから指摘されていました。しかし両者ともそれを補って余りある投球術に加え、時速100キロを切るとんでもなく遅いスローカーブを武器に、奇しくも同時期に長きに渡って活躍しておりました。
 これも当時に対戦したバッターらの証言ですが、左バッターからすると両者(どちらも左利き)が投げるスローカーブは大きく変化するために背中から入ってくるため、通常の構えからすると完全に一時視界から消えるそうです。しかもそんな遅い球を投げられた後だと速球との球速の落差に目が慣れず、それほど速い球でもない割に空振りを失してしまうことが多かったようです。
 それにしても星野選手の球速の遅さは色々とエピソードが多く、奥さんからは「私でも打てる」と言われ、完封勝利後に相手チームの西武の選手らから、「今日の星野は一段と遅い」、「ボールが止まって見えた」などと言われたそうです。個人的にはすごい好きな選手ですが。

7、渡辺俊介(シンカー)
 通称「地上3cmの男」ことマリーンズの渡辺選手は恐らく史上最も低い位置から投げつけるアンダースローという特殊な投球フォームばかりが取り上げられますが、何気にもっとすごいんじゃないかと思うのがシンカーボールです。というのも先ほどにも書きましたがシンカーというのは手首を捻じって投げることからサイド・アンダースローと相性がいいのですが、渡辺選手のシンカーはその特徴的な下手投げというフォームから捻じって投げる投げ方ゆえに、ドリルの回転と同じジャイロ回転をしていると言われています。これがどのような意味を持つのかというと、なんでも一説には渡辺選手のシンカーは自身のストレートボールより球速が早いそうです。原理はジャイロ回転をしているゆえに空気抵抗が低いとのことで、それ故に「高速シンカー」という名前が冠されています。まぁそれ以上に、そもそも渡辺選手のストレートの球速が130キロ台と低いのが大きいですが。

 ただこの渡辺選手についてもう少し付け加えると、先の星野選手、今中選手同様に体格に恵まれず中学、高校と二番手以下の投手に甘んじていたそうです。そこでどうすればいいかということで父親と、唯一の取り柄でこれだけなら誰にも負けたことのなかった体の柔らかさを生かして「アンダースローになるしかない」という結論から今のフォームに至ったそうです。その後大学野球時代もあまり注目されませんでしたが、投げていた試合を見に来ていた社会人野球の新日鉄君津の監督の目に留まったことからチームにスカウトされたそうですが、本人の著書によると当時の大学の監督は、「いやいや、今日たまたまあいつは調子が良いだけでやめておいた方がいいですよ(;´Д`)」と止めたらしいです。ひどいよ監督。
 しかしそうしたやや日陰者の経歴ながら現在では球界を代表する投手となり、ひいては彼の影響からアンダースローに挑戦する中学、高校野球選手も増えてきているといい、人生譚として渡辺選手の「長所にかける」生き方には強い共感と尊敬を覚えます。同様の選手では元阪神の赤星選手がいますが、一試合一試合のプレイとともにこうした選手らのバックグラウンドを知ることでよりスポーツが楽しめるのではないかと思い、こうしてまとめてみました。

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