前回では朴正煕政権の行った経済政策、いわゆる「漢江の奇跡」を取り上げましたが、この経済政策では日本を含む海外からの経済支援が非常に重要な要素となりました。朴正煕はこれらの経済支援を受けるため様々な外交を執り行いましたが、その中の一つとして米国向けに、泥沼化していたベトナム戦争へ韓国軍を派兵するという施策があり、この点についてちょっといろいろ言いたいこともあるので解説します。
朴正煕はクーデターによって実権を掌握した後、1961年に米国へ赴きケネディ大統領と会っております。通説ではこの時の時点で韓国軍をベトナムへ派兵しようかと提案したとされますが、実際に派兵されたのはジョンソン大統領に変わった後の1964年でした。韓国側としてはベトナムに韓国軍を派兵する代わりに米国から資金援助を得ることが目的で、米国側としては戦力というよりも、同盟国から派兵を受けることによって戦争の正当性を高めるということが目的だったと考えられます。
このような背景で派兵された韓国軍でしたが、ベトナムに到着するやその兵力に比して多大な活躍ぶりをみせたことにより「猛虎部隊」などと呼ばれベトナム軍側からも恐れられたそうです。派兵人数は30万人以上とされ、この兵力規模は米国に次ぐ大兵力であったことから実質主力の一翼をになったと言っても過言ではないでしょう。派兵された韓国軍兵士に対する給与は米国は支払い、また戦争に必要な軍需物資の需要が跳ね上がったことからサムスンは大宇などの韓国財閥もこの時期に急成長を果たしております。
さてここからが本題になりますが、皆さんはライダイハンという言葉をご存知でしょうか。これはこの時に派兵された韓国軍兵士と現地ベトナム人との混血児のことを指しており、日本の中国における残留孤児問題同様に韓国への帰国、戸籍取得を認めるべきかで現在議論となっております。
韓国に限るわけではありませんがベトナム戦争中は現地人との混血時出産が相次いだほか、兵士による暴行、強姦事件が相次いでおりました。そして、虐殺事件も同様に相次いでおりました。米軍もソンミ村虐殺事件という有名な虐殺事件を起こしておりますが、韓国軍も下記に列挙する虐殺事件を起こしております。
・タイビン村虐殺事件
・ゴダイの虐殺
・ハミの虐殺
・フォンニィ・フォンニャットの虐殺
(すべてWikipediaより、一部にグロテスクな写真が貼られているため閲覧時は注意)
上記の虐殺事件はどれも無抵抗の村民を韓国軍が一方的に虐殺した事件とされております。これらの行為は米軍の調査によって明るみとなりましたが韓国軍側はゲリラ掃討のための正当な行為であるとして正当化し、当時の韓国軍司令官は現代においても同様の主張を続けていると聞きます。こうした虐殺行為の繰り返しに対し米軍も韓国軍を後方に移す措置などを、実行したかどうかはわかりませんが検討したとされます。
これらの韓国軍の虐殺行為は長い間知られておりませんでしたが、1999年に韓国の新聞「ハンギョレ」が大きく報道したことによって韓国国内にも知られるようになりました。ハンギョレの特集記事は現地で虐殺事件の生存者に対しても取材が行われるなど精力的な報道でしたが、韓国国内では報道に反発する動きもあり、退役軍人らがハンギョレの事務所に乱入し備品を壊すという事件も起きています。なお、あまり言う必要もないでしょうがこれら虐殺の事実が長きにわたって韓国で隠蔽されていたのは朴正煕以降も、韓国では軍事政権が続いていたからです。
非常に機微な内容なので詳しく述懐しますが、私個人としてはこれらの歴史事実を採り並べて韓国を批判するつもりは毛頭ありません。主張の仕方によっては「韓国は自国の虐殺事件を棚上げしておきながら日本に対して従軍慰安婦問題を主張するなんておかしい」などと言うことも出来るでしょうが、果たしてそういう逆批判をすることによって何か意味があるのかと考えたらあまりないように思います。そして何より、これらベトナム戦争中の虐殺事件について当事者であるベトナムが何か主張するならともかく、第三国である日本が余計な口を突っ込むべきではないでしょう。
では何故この連載でわざわざ取り上げたのか。それは本当にたった一つの理由からで、もし日本がベトナム戦争中に自衛隊を派兵していたらどうなっていたのかを読者の方にも考えてもらいたかったからです。韓国以外にもオーストラリアやフィリピンなど米国の同盟国はベトナム戦争へ派兵しており、状況によっては日本も派兵していておかしくなかったと私は思います。ではなんで日本は派兵しなかったのかですが、これはなんといっても憲法9条の存在が大きかったからでしょう。
ただ当時に日本は兵員こそ派兵しなかったものの、沖縄の米軍基地から飛び立った爆撃機はベトナムを何度も空襲しております。そのことに対して日本人は責任感を持てと言うつもりはありませんが、事実として知っておいてもらいたいというのが私の本音です。
4 件のコメント:
ライダイハンと言うのは、Lai Dai Hanと書きます。
正確には、Con Lai Dai Hanと言うんですが、これはかなり古いベトナム語です。たぶん50年くらい前のベトナム語ですね。
現在はCon Lai Han Quoc(コン ライ ハン クォック)と言います。
ベトナム戦争末期の1970年代、韓国は急激な経済成長途上でありましたが、戦地のベトナムはまだまだ混乱の中で、世界最貧国の“栄誉”はベトナムに移っていました。
戦地に赴いた韓国兵士達もその辺は自覚していたらしく、ベトナムと言う国や民族に対して優越感(蔑視)を持っていたのでしょう。
Dai Hanとはベトナム語で「偉大なる韓国」と言う意味です。
様々な非人道的事件も、突き詰めれば偏狭な優越感(関西人は、これを恥じない人間を“いなかもん”といいます)による自己満足とイジメであるとも言えるのではないかと思います。
得てして、(日本もそうでありますが)コンプレックスを抱える人間の方が、同じような状況下にある他者に対して憐憫をもつより迫害に走る事が多いのは人類史の克服すべき命題であると言えるのではないでしょうか。
昨今、ベトナムも「ドイモイ(Doi Moi)政策」以降の資本主義化の効果を得て、大きく経済発展をし自国に対する自信や民族の誇りを持てるようになった為か、韓国をDai Hanと言ったりする事に滑稽感を感じるらしく、Han Quocと言います。
Lai dai Hanと言う言葉には幾分の疎外感が含まれていましたが、現代語のCon Lai Hanと言う言葉には、単に片親がアジアの外国人というニュアンスしかありません。
結構な事であると私は思います。
因みに、私はベトナム歴12年でサイゴンには10年住んである関西人です。
私も、こちらのようなサイトを作って見たいと思ってはいるんですが、なかなか手につきません。
こちらのブログサイト、おもしろいですねぇ!!
Katsuji Mckee様、コメントありがとうございます。
ベトナム語でDai Hanとは「偉大なる韓国」という意味だったのですね。改めてそのように解説されると、中国語の音に通じるものが感じられ、文脈から察するに昔のベトナム語漢字表記は「大韓(ダイ・ハン)」だったのではないかと勝手に推量します。ちなみに「大韓」の中国語読みは「ダァハン」です。
民族的な差別観や優越感についてのご意見ですが、私も全く以って同感で、この記事で書いた韓国軍の事件はもとい海外滞在中の現地国民の見方などで自分も感じるところがあります。
あと最後にお褒めのお言葉、本当にありがとうございます!中国滞在者の読者はそこそこ多いですが、まさかベトナムにいらっしゃる方にも読んでもらっているとは思いもよらず、書いてるこちらとしてもやる気が湧いてきます。
お書きの文面で一番こころに残ったのは、他国の歴史上の非を言い立てても意味が無い。という点です。
私は「右」側の人間で、皇室に対する敬意は我が家の家訓でもあります。
そうであるが故に一層に昨今の日本に誇りを持とう。という趣旨で他国を誹謗するJapaneseの言動には憤懣を感じます。
誇り高く気高い人間は、他者の非をほじくり返して貶めるような言動は「恥」とするべきです。
日本に誇りを持とうと言うのであれば、世にはびこる誹謗中傷(事の虚実は別にして)を、雲散霧消させるような「自らの生き様」を持って反証とすべきです。
私の意見では、彼らは「大和魂」を知らないJapaneseであり、日本人とは申せません。
日本の誇りは、論争や非難の中からではなく気高い行いと誇りを掛けた努力の職人魂やプロフェッショナルの流儀からこそ見出される物ではないでしょうか。。。
話が逸れました、失礼しました。
19世紀にフランスの宣教師たちが、ローマ字表記のベトナム語を考案するまでは、基本的に日本と同じく漢字文化の国でしたのでおそらく「Dai」は「大」だと思います。
「Dai」には、「優れている」とか「際立っている」と言う様な意味があり、Dai Giaというのは富豪という意味ですし、Dai Hiepというのはロビンフットや快傑ゾロのようなヒーローという意味です。
度々コメントいただき、ありがとうございます。
ちょうど今、日本国内では「ヘイトスピーチはするべきか」が一つの論点となっていますが、私もKatsujiさんと同様に、無意味に他国を批判するべきではないと考えており、その点をこの記事で強く訴えてます。それだけにこうしてコメントに書いていただいて無性にうれしい限りです。
自分も一時期は軍国少年っぽく天皇家をやたら崇拝していた時期がありましたが、最近は以前ほどではないにしろ尊敬の念は持ち続けています。ほかの記事でも何度か触れていますが、「天皇に対して失礼だ」などとやたらと他国を批判する人ほど皇室への尊敬の念が薄いように思えます。
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