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2015年1月3日土曜日

グローカリゼーション

 00年代における経済学の主要な議論はグローバル化に対する態度、言うなればグローバル化を肯定する勢力とそれに反対するアンチグローバル派の対立でした。当時大学生であった私はアンチグローバル派に属してこのブログの設立当初はそのような立場を明確に打ち出した記事投稿が多かったのですが、このグローバル派(新古典派)VSアンチグローバル派(旧ケインズ派)の対立は現在においてはほぼなくなったと言っていいでしょう。

 何故争いがなくなったのかというと理由は単純明快で、2008年にリーマンショックが起こったからです。このリーマンショックによって金融取引を野放図にさせていれば一国の経済はおろか世界経済全体に対しても甚大な悪影響を与えることがはっきりとわかり、現在もこの時の負債によって欧州各国は不景気にあえいでいますが、現時点においては「極端な規制緩和は確実に問題であり、グローバルな取引拡大は是認しつつも一定の規制は必要」という考え方が米国を含む全世界で定着しているように思えます。
 このような結果論で言えば両者の対立はアンチグローバル派の勝利と言えそうですが、少なくとも現在の世界はかつてアンチグローバル派が主張していたほど国際取引に規制が作られているわけではなく、またFTA領域の拡大などグローバル化は現在もなお促進しており一方の勢力の完全勝利と言い切れる状態ではありません。恐らくこんな言葉を使う日本人ももはや私一人だけですが、「トービン税」の導入に至っては議論すらなくなっています。
 ひとまず現在においては不透明で過剰な取引に関しては規制を、その上でFTAの拡大と国際分業を促進していくというのが一つのトレンドです。なお以前あった「グローバル化の促進に伴う貧富の格差拡大」に対する懸念は、欧州各国が貧富の格差以前にみんな失業してきたのでもうどうでもいいやとばかりに一顧だにされなくなってきています。

 少しややこしい前置きを書きましたが、私が何を言いたいのかというと00年代には盛んに繰り広げられた経済議論がリーマンショック以降の現代においては全くなくなっており、今後の世界はどうなっていくのか予想する経済学議論がこのところはほとんどなく、こういってはなんですがやや面白味に欠ける状態となっております。ただ単に私がこのところ勉強していないから知らないだけでもしかしたらちゃんとした議論があるのかもしれませんが、折角だから自分自身で今後の世界の成り行きについて三週間前に30分くらい考え、当たるかどうかは別として一つの議論の柱になりそうだと思いついたのが今日の記事の表題に掲げた「グローカリゼーション」という考え方です。

 グローカリゼーションという言葉は読んで字の如く、「Global」と「Localization」を組み合わせた私の造語です。パッと検索したら教育学とかその辺で一部で使われているようですが、こういう経済学議論で使うのは多分私が日本じゃ初めてでしょう。
 このグローカリゼーションという言葉がどんな意味を成すのかというと、一言で述べるなら今後の世界は国家の枠内にある各地域がそれぞれ分立、独立的な傾向を持ち始め、それぞれ国家システムを飛び越えて独自に国際取引などグローバルシステムに参加しようとする傾向になると見え、そうした流れを敢えて一語にまとめるとこの言葉になります。横文字でやや気に入りませんが、無理矢理日本語にしようとしても「地域環球化」と冴えない言葉になるのでやむを得ません。

 一体何故このような予想を立てたのかというと、一番大きなきっかけは昨年に住民投票まで行われたスコットランド独立問題です。それまで英国の連邦制に属していたスコットランドが英連邦から独立しようとしたこの動きは最終的に過半数の賛成を得られず流れましたが、こうしたスコットランドの動きを受けてか他国でも同じように現在存在する国家の枠内から単独の地域で独立しようとする動きが見られ、スペインのカタルーニャ地方などかねてから火種のあった所でも独立運動が一時盛り上がったと聞きます。
 こうした動きは日本も他山の石というわけではなく、実現性はほとんど限りなくありませんが、沖縄県の選挙で公然と沖縄独立を掲げる候補者が出てメディアにも露出するなどかつては考えられない動きが出てきております。

 こうした国家から地域が独立しようとする動きと合わせて見逃せない存在なのが、勘のいい人なら想像がつくでしょうがイスラム国ことISISです。元々イランやイラク、シリアなど中東は国境線が緩く国家の概念が弱い地域であったものの、これらの地域で現在活動しているISISは既存の国家の枠では考えられない組織として現在も活動を続けております。
 あまり詳しく解説するのは本意ではありませんが、ISISはイスラム教を主是とした組織でありながら同じイスラム教徒をほぼ無差別に襲うこともあり、また日本や欧州、米国などからも参加者が出るなど民族の枠も非常に緩い組織です。一見するととんでもなく統率がなく中心のない組織に見えますがそれでもこれだけ勢力を伸ばして今も活発に活動を続けているあたりは考察に値する存在です。

 ISISに何故参加者が集うのか。これについては一概に言い切れるものはありませんが恐らく各人各様で、イスラム教の原理主義が好きだったり、米国が嫌いだったり、暴れたいだけだったりと別々でしょうが、そうしたバラバラな思想の集まりでありながらこうして一つの塊となってしまうのがかつてはなかった現代世界の傾向じゃないかと思います。その上でこうした組織は国家の概念が全く適用できないばかりか、何を以って区分するのかという意味では非常に難しい存在です。

 私の予想では今後、ISIS程とまではいかないまでもこうした国家や民族、文化、言語、経済範囲に縛られず活動する組織なり地域也は増えていくと思います。更にそうした組織や地域は国家の法律やシステムを無視して国際取引だったり人的移動を行い、国家の権力や縛りは今後どんどん緩くなるのではないかとも考えます。
 二次大戦以降の世界では大体、民族と文化と言語はほとんど1セットになってそれが国家という枠になっていきましたが、今後はこの枠を飛び越える、何かしらの一つの概念が一点突破的に集団をつくりそれが独自性を帯びていくのではないかと思います。

 何故そのように一点突破的な動きが成立するのか、これは仮説ではありますがネットの発達に伴うグローバル化による影響だと思います。それこそISISを例えても昔ではそんな組織の存在や活動を報道で映像を見るのも難しかったですが今ではYoutubeなりを使えば簡単に見ることが出来ます。また特殊な趣味、たとえば珍しいお茶を愛好する人がいたとしたらネットで同じような人を捜せば簡単に見つかり、同好会にも参加できるようになり、以前と比べ距離や時間、民族言語文化をすっ飛ばして集結することができ、それによって一点突破も可能になってくるのではないかと思います。

 またグローバル化の発展に伴い、海外の品物も簡単にインターネットで買えてしまうなど、江戸時代の朱印状みたいに規制する存在がなくなったばかりか国家のシステムを経由せずともこうした国際取引や国際交流が簡単に出来るようになりました。こうした種々の動きがあり、無理して国家に所属せずとも気の合う人間同士で小さくまとまりたい、そんな考えが上記のようなグローカリゼーションの動きを後押しするのではないかと言いたいわけです。
 更に言えば、日本を含め国家のルールを押しつけられたくない、負債を負いたくないと考える動きもあるかもしれません。実際自分だって日本の年金いらないから払いたくないし。

 最後に改めてまとめると、国家以下の組織、または個人が国家の枠を超えてグローバルにつながろうとする傾向が今後より強くなるのでは、そのような傾向をグローカリゼーションと言いたいのがこの記事の骨子です。その上で述べると、仮にこの傾向が強まるとしたら米国はより強くなる可能性があると見ています。何故かというと米国は合衆国せいで国家枠内の地域分立がかなり確立されているからで、こうした流れの傾向の影響をほとんど受けずに動じないのではと思えるからです。
 日本はどうかとなるとせいぜい言って沖縄の中で独立を叫ぶ勢力がやや強まる程度でそんな変わんないと思います。道州制の動きは増すかもしれませんが、日本は地域的なつながりよりも利益共同体、敢えて言うなら企業グループ間の紐帯のが圧倒的に強いのでそっちの方を弄った方が面白いかもしれません。

7 件のコメント:

サカタ さんのコメント...

今映画の待ち時間に映画館の中でこの記事読んでました。因みに見る映画はフゥーリーというアメリカの戦争映画です。

クローカリゼーション面白い考え方ですね。

何故かこの記事読んでいて一番に思い出したのは攻殻機動隊の個別の11人でした。目的も出自もちがう11人が集い事を成していくという。

そういう共同体がこれから増えていくかもしれませんね。イスラム国のように。

日本の場合は経済的な結びつきから経済特区のようなものができるのかもしれませんね。新浜地区のような?

サカタ さんのコメント...

誤字が多くてすいません。グローカリゼーション、フューリーですね。

他にもあったらすいません(笑)

花園祐 さんのコメント...

 誤字なんて気にしないでください、自分なんかほぼすべての記事で何かしらの誤字・誤変換をやらかしてますし。まぁその場の臨場感を残すために敢えて修正せずに放っていますが。
 この記事は全く手加減せず、読者への配慮を一切なくして自分のペースで書いたから読んでて理解し辛かったんじゃないかと思います。サカタさんのお兄さんなら一読して理解できるだろうから後で聞いてみるのも手かもしれません。
 もっとも、サカタさんも相変わらず勘がいいというかすぐに「経済特区」という言葉を出してくる辺りいい読者を持てたとうれしく感じます。自分の予想だと国の政策を待たずに各地域同士で独自に組み、独自に活動して世界市場に参加しようとする動きが活発化すると思え、日本で一番実現性が高いと見ているのがこの前書いた「九州特区」の構想です。逆に、本文にも書こうと思ってやめたのは大阪で、独自色を強めようと活動はするがどうあがいたところでその努力は実らないと予想しています。
 自分でもこの「グローカリゼーション」という概念についてはまだ手探りな概念なので、今後も記事を書いていく中で気づくことがあればどんどん言ってください。そこそこ考えてて面白いと思っているので。

サカタ さんのコメント...

フューリーなかなかいい映画でした。宣伝でプライベートライアンに匹敵すると言っているだけはありますね。

年末こうもゆっくりできるのは初めてで、気づいたら太平洋戦争のこと調べたり、何か面白い戦略ゲームないかさがしたりで時間が過ぎてしまってます(笑)何かありますかね?

記事とは関係ない話になってしまいますが、依然父がミッドウェー開戦でなんであんなに惨敗してしまったのかと漏らしていたので調べてみようと思いウィキで調べていたのですが、日本軍も善戦しているし、航空機の喪失数で言えば米軍のほうが圧倒的に多いので、時の運の要素も多々あったように感じました。

しかし、日本側も落ち度が多くまずミッドウェー島の奪取なのか敵機動艦隊の残滅なのかはっきりしていなかったことと、空母戦力の割譲が主な敗因ではないかとおもいます。

にしても、たった6分で空母3隻がやられてしまうなんて、戦場とは恐ろしいものだなと思いました。

花園祐 さんのコメント...

 フューリーっていうと自分の中ではメタルギアソリッド3に出てくるボスキャラが浮かんできます。あと一発で倒せるところで何度やられたことか、挙句自分が「フューリ(憤怒)」する羽目に。
 シミュレーションゲームではないですが、もしPSPかPSVita持ってるなら「ウォーシップガンナー2」が海戦を楽しむにはおすすめです。自分もこのブログでレビュー書いてますが魚雷出したりチャフ撒いたりカニ光線だしたりとかなりリアルな海戦を堪能でき、特に酸素魚雷の凄まじさを知る上ではこれ以上ない作品です。ミッドウェーに関しては色々自分も書きたいところですが、ほかの人もたくさん書いているのでまだ出る幕はないかな。

上海忍者 さんのコメント...

中々難しいテーマですわ。キミの文書を読んだところ、経済社会学に属しているかと思いますわ。非常に良い文書であり、評価しますわ。

花園祐 さんのコメント...

 経済学ととるか社会学ととるかで確かに解釈が変わるけど、あくまで自分は社会学の視点で現在の世界情勢を解こうと思ってこの記事は書いてある。ちょっぴり難しいけど、だからこそこういうテーマはたまには考えないと駄目だと思う。