2015年1月14日水曜日

漫画レビュー「もっけ」

 このブログのヘビーリーダーなら言うまでもないでしょうが私は妖怪漫画の第一人者である水木しげる氏の大ファンです。なんで好きなのかそこらへんは置いときますが、ある日ネットの掲示板で非常に良くできた妖怪漫画あると聞き、一つ試しに買って読んでみるかと手に取ってみました。

もっけ(Wikipedia)

 この漫画の大まかな概要を話すと、勿怪(もっけ)ことあちらの世界の人たちが直接目に見える姉と、そういったものにやたら憑りつかれやすい妹という組み合わせの姉妹のお話です。作中、姉は中学二年生、妹は小学五年生からスタートしますが話の進展に従ってそれぞれ高二、中二にまで成長し、この間の成長の過程で遭遇する様々な現象を基本一話完結の話でまとめられた上で話は進んでいきます。

 この漫画の最大の特徴は上記の、「あちらの存在」と関わる姉妹の役割が明確に分かれている点でしょう。姉妹は都市部に住む両親とは離れ田舎に住む元拝み屋の祖父と共に暮らしているのですが、姉は好むと好まざるを関係なく霊的な存在を見て危険を察知することができるものの、祖父の命令もあってそれを周囲には伝えられず、周囲の人が「障る(さわる)」ことによって怪我などするのを黙ってみているだけということにやきもきします。その甲斐あってこっちのお姉ちゃんはどの話でも困った顔をいつも浮かべてます。
 そんな姉に対し妹は姉ほど霊的な存在を事前に見えることないのに、ほぼ毎回不意打ち的に憑りつかれて一方的に被害を被ることが多いです。もっともこっちの妹は、大人しくて女の子らしい姉とは違い活発な性格、悪く言えばお転婆なキャラのため、毎回痛い目に遭いながらもめげることはないのですが、話によっては溺れ死ぬ直前にまで引っ張り込まれたりするので意外と笑えない事態に巻き込まれることも少なくありません。

 それで肝心のこの漫画に出てくる妖怪、といっても作中ではほぼ全く「妖怪」という言葉は出て来ず「彼岸(あちら)の存在」として表現されます。中にはかわいらしくデフォルメされたデザインで他愛もなく姉妹と関わりを持つのもいる一方、最初は姉妹に対し協力的な態度を見せながら、ふとした拍子に牙をむくというか彼岸の世界、つまり死後の世界へ姉妹を引っ張り込もうとするのももおり、一言では言い切れない強い不気味さを持ったキャラクターが多数出てきます。恐らく作者も意図してのことでしょうが、「何が目的かわからない、掴みどころのない存在」をうまく表現できているように見えます。

 こうした「あちらの存在」には元拝み屋の祖父が解説し、時と場合によっては姉妹に手を貸すことで祓うようなこともしますが、基本この祖父は妖怪たちについて「そこに存在していることが自然」であるとしてゴーストバスターズみたいに祓うという行為は積極的に行わず、むしろ姉妹に自己解決するよう突き放すことのが多いです。このような祖父の態度というのが私個人的には非常にツボで、妖怪など物の怪の類は「眼には見えないがそこにいるのが当たり前」、「祓うという行為自体が自然の摂理に反する」、「祟られないよう触れずにおく」という価値観が非常に納得するとともに、通常の妖怪漫画と一線を画す所だと思います。

 勝手な想像で描いていくと、この漫画における妖怪に対する思想は日本古来の霊的なものに対する価値観がよく出ていると思います。既に書いてある通り、日本は神仏はもちろんのこと動物霊なども含めてあちらの存在は「どんな理由があろうと触れてはならない」というもので、向こうが困っていても協力しない、こちらへ手を貸すと言われても耳を貸さないという具合に、こちらとは異なる世界の住人であるためどんな理由があろうと関わってはならないという鉄則が徹頭徹尾貫かれています。
 人によって意見は違うと思いますが、私は霊的な存在に対する態度というのは斯くあるべきだと内心考えています。頼りにしても駄目、頼られても駄目という具合に、興味こそ覚えても絶対に近づくべきではないし近づかれてもよくないという存在な気がします。しかしそうだとわかっていても何故だか興味を覚え、知りたくなる、近づきたくなるという不思議さこそが妖怪の妖怪たる所以でしょう。

 そのような存在、価値観が非常に丁寧に書かれてあり、また登場する「あちらの存在」も江戸時代の文献や絵巻をふんだんに引用しながら聞いてて本当に存在するかのような解説が加えられているため、一言で言って非常に面白い漫画で、どうして連載中に手に取ることが出来なかったのかと本気で後悔しました。

 あとちょっと専門的なことを話すと、作中の世界こと姉妹が住む田舎の風景が背景の中で非常に良く描かれており、まるで本当に妖怪の一匹や二匹が潜んでいてもおかしくない印象を覚えます。水木氏の漫画にも言えますが、こうした漫画というのは地味に背景が一番重要な気がします。水木氏の漫画もキャラクターは非常にデフォルメ化されていますが、背景は「点描を打ったような背景」と称されるほどこれでもかというくらいに緻密に描かれており、雰囲気を表現するのに大きな役割を果たしています。


  

2 件のコメント:

  1. キミは妖怪watchが大好きやろう?

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    1.  興味はあるがまだ見てないし、ゲームも触ったことないな。
       どうでもいいけど例の先輩が便秘らしく、妖怪のせいじゃないかと言っておいた。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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