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2015年8月19日水曜日

マージン率の上限規制

 先ほどGoogleアナリティクスでこのブログの検索ワードをかけたら、「マージン率 中国在住」というワードで検索してきた人がいたということがわかりました。「誰だこんな恐ろしく狭い条件で検索かけた人は」、という具合でちょっと考えさせられました。
 ただこのところマージン率に関して以前書いた記事への検索は増えており、アクセス数も未だに上がり続けています。複数の友人に言わせれば、「もっと注目されていい記事」だそうですが私個人としてはこんだけデータも揃えてやっているのに大手マスコミは何故引用しようとしないのかが逆に気になりますがそれは置いといて、先日少し気になるコメントが来ました。

 具体的にどういうコメントかまでは書きませんがそのコメント内にて、「マージン率は欧米の様に10%台にすべき」という記述があったのですが、率直に言ってこの「10%」という数字がどこから来たのかが疑問に感じました。マージン率というのは、厳密には異なりますが大まかな表現で言い表せば一般企業の粗利に当たるもので、粗利が10%なんて普通どの企業も経営が成り立たないほど小さい数字です。いくら人材派遣業はコストが小さいとはいえ本当に欧米の人材派遣企業のマージン率は10%なのか、はっきり言えば疑いました。
 なおマージン率の計算方法についてはリツアンSTCの野中社長がタイミングを合わせてくれたかのように下記記事で具体的な金額と共に紹介してくれているので、興味のある方は参考ください。なお野中社長によると、企業負担の社会保険料はマージン率には含まれないため企業が得られる利益額は一般の人間が考えているよりは低いとのことで、自分もその通りだと思います。

派遣のマージン率について少し掘り下げてご説明します。(『ピンハネ屋』と呼ばれて)

 話は戻りますが先程の欧米の派遣業界はマージン率が10%台ということについてネットで調べてみたところ、確かにいくつかのサイトでそのようであるという記述が見られたのですが、その数字的根拠をはっきりと示している人は誰もいませんでした。具体的に言えば英国の平均マージン率は〇%、米国は△%みたいな国際比較が出ていれば信用できますがそういったものは皆無でありながら何故か、「欧米のマージン率は10%台」という風に書かれてあり、中には「マージン率の上限規制によって10%台となっている」というような記述も見かけました。

 結論を書くと、欧米では派遣のマージン率が10%台というのは根拠のない情報であって、もしかしたらマージン率の定義が異なっていてそういう数字も一部出ているのかもしれませんが実態としてはやはり有り得ない数字でしょう。更に踏み込んで言えば、欧米にはマージン率の上限規制があるというのも一種のデマじゃないかと私は疑っています。

 まず前者の欧米ではマージン率が10%台という意見について、欧米のマージン率は具体的にどの程度なのか英語で検索かけまくってあちこちのサイトを駆けずり回った所、ようやく下記サイトにたどり着くことが出来ました。

What Your Supplier’s Gross Margin Can Tell You(Staffing Industry Analysts)

 上記サイト内に「大規模かつ公共人材派遣法人8社の中間マージン率」というグラフがあり、その中間マージンの数字はどれも20%台です。このマージン率のデータがどのような定義でどの地域、どのような会社を対象としているかは書かれていないため安易に信用できないところがあるものの、少なくともマージン率10%台は有り得ないとする根拠にはなり得るのではと思います。ってか欧米のマージン率のデータがわかるサイトがあれば誰か教えてください。

 次にマージン率の上限規制についてですが、これも散々「Staffing service」に「Upper limit」とか「Resistration」などの単語をつけて検索をかけ続けましたが、それらしい情報を載せてあるサイトにはとうとう辿り着くことが出来ませんでした。また日本語のサイトにおいても、比較的多くの人間が「欧米ではマージン率に上限があるのが当たり前」という風に書いていますが、その根拠となる数字、具体的には上限値を誰一人として挙げていません。このような点を踏まえると、この上限規制に関する意見というのは初めから眉唾だったのかもしれません。

 自分の記憶を紐解くと、派遣難民が社会問題となったリーマンショック明けの2009年に「欧米では当たり前」という言葉と共にマージン率の公開やこのマージン率の上限規制が主張されていたように思います。恥ずかしながら自分もこうした意見を当時疑うなく信じ込み、多分このブログでも古記事探れば、「欧米では上限値があるらしいぞ」みたいな内容を書いてると思います。
 しかし現状から察するとこの上限値に関しては根拠が明らかに不確かで、派遣の待遇改善を求めるあまりに広まったデマだったんじゃないかというのが私の見解で、昔に信じ込んでしまった自分への反省を込めて今回改めて調べてみました。

 最後に、なら今後日本でマージン率の上限規制を設けるべきかについて意見を述べると、はっきり言って私は反対です。理由としてはマージン率の公開が進めば市場の競争原理が働き、法外に搾取する派遣企業は自然に淘汰されることが期待できることと、一口で派遣といっても単純労働者、エンジニア、特殊技能者など様々なタイプの派遣があり、それらに対し一括で上限値を作って規制してしまうとかえって競争の自由がなくなります。一番重要なのはマージン率の公開であって、不必要な規制は作るべきではないというのが派遣労働者でもない私個人の立場です。

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