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2018年2月13日火曜日

三浦瑠麗氏の北朝鮮工作員発言について

三浦瑠麗氏、ワイドナショーでの発言に批判殺到 三浦氏は「うがった見方」と反論(ハフィントンポスト)
朝鮮半島をめぐるグレートゲーム(山猫日記)

 知ってる人には早いですが、国際政治学者らしい三浦瑠麗氏の発言が議論を起こしています。簡単に発言内容を説明すると、日本にはすでに北朝鮮工作員がたくさん潜り込んでおり、金正恩が暗殺されたとしてもその報復として、あるいは先制攻撃として大阪を襲撃する可能性が高いとバラエティ番組で主張したそうです。結論から述べるとこの三浦氏の主張には私も疑問に感じる点が多く、少なくとも言えることとして、リテラシーもなければ危機管理意識もない人だなというのが偽らざる感想です。
 ほんとはあまりこの手の議論に与したいとは思わないのですが、例によって反論を述べるメディアを含めあまり論点が整理せずに無駄な議論を繰り返しているように見えるので、論点となる疑問点をまとめる目的でこのまま書きます。

疑問点1、何故組織名が「スリーパー・セル」?
 三浦氏によると日本に潜伏している北朝鮮工作員は「スリーパー・セル」という組織名だそうです。三浦氏ブログの「山猫日記」に詳しく書いていますが、特に大阪にいるそうです。
 先に述べると、この「スリーパー・セル」という単語一つ見てこの人おかしいなとすぐ思いました。というのも北朝鮮の軍関連組織であるにもかかわらず、韓国語(朝鮮語)でもなく日本語でもなく何故組織名が英語なのか。結論を書いてしまうと「スリーパー・セル」の情報ソースが英国の新聞だけだからです。逆を言えばほかに情報ソースは何もないということが示されています。
 第一、これ直訳すると「窃盗団」になりますが、北朝鮮ならもっと仰々しい名前つける気するんですけどねぇ。

疑問点2、情報ソースが英国の新聞だけ
 三浦氏によると上記のスリーパー・セルの情報源は英国の新聞だそうで、さらにその新聞では韓国の情報筋がネタ元だと書かれています。では何故このスリーパー・セルの韓国語名はないのかこの時点でおかしいですが、三浦氏は「英国の新聞に書かれてある」としてその存在は確かだと主張しています。
 しかし、英国の新聞が必ず真実しか載せないのかと言ったら疑問です。そんなの言ったらネス湖のネッシーもいるってことになりますし、第一何故日本や韓国、中国といった北朝鮮周辺国が一切報じない事実を遠く離れてあまり利害関係のない英国の新聞が報じるのか。そもそも英メディアは上記のネッシーをはじめ妙な報道も多いところだから、信用面でいえばむしろ怪しいところなのではと私は考えています。
 せめてその新聞がネタ元としている韓国の組織に直接取材していれば、もっと本当らしく言えたのにね。

疑問点3、何故大阪?
 報道などでも指摘されていますが、東京を差し置いて「大阪に特に潜伏している」と三浦氏はやたら主張しています。何故かというと第2の都市の方が意表を突けて狙いやすいからだそうですが、どう考えても東京や原発などの核関連施設を差し置いて大阪が狙われるという主張は無理がある気がします。そもそも、人口基準だったら日本第2位の都市は今や神奈川県です
 また大阪に工作員が多数潜伏しているという根拠について三浦氏は合理的に説明できておらず、挙げられている材料としては先ほどのように日本第2の都市であること、1980年に朝鮮総連関係者が事件を起こしたことしか出せていません。そもそも、40年近く前の事件を引き合いに現在も大阪には工作員が多いと主張する辺り、あんま学者として向いていない気すらします。

 はっきり言えば、大阪が危険だと言ったのは発言をした番組に大阪出身者が多く話題になると考え口を滑らせたか、ただ単に大阪に偏見を持っているかのどっちかでしかないでしょう。それくらいこの発言は突飛であり合理性に書いた主張で、実際にその潜伏工作員と接触しているとか、もっときちんとした直接知り合いの軍関係者からのソースがあるならともかく、そうしたものは見ていて情けなるくらい出せていません。

疑問点4、何故バラエティ番組で発言したのか?
 他の人はあまり指摘していませんが私が特に気にしているのはここです。
 もし具体的にそのような情報を掴んでいるのなら何故公安とかに伝えず、ああしたバラエティ番組でぶちまけたのか。一応三浦氏本人としては国民(特に大阪人)はもっと備える必要があり、また広くこの問題に議論する必要があるからと言っているようですが、私に言わせればそんなもの全く必要ありません

 例えば雪に閉ざされた山荘で他殺体が出てきて、誰かが「犯人はこの中にいる!」と主張するとします。この主張によって山荘にいる人たちは互いへの疑心暗鬼が生まれますが、彼らは外部から救援を呼ぶこともできない状況であり自分で自分の身をある程度守る必要もあることから、上記のミステリー開始発言は一定の必要性を備えると私は考えます。
 翻って今回のケースでは、北朝鮮の工作員が潜伏しているからと言って一般市民がどう対処すればいいのでしょうか。まさか怪しい奴を自分で見つけて捕まえろとでも言うのかと言いたいところですが、その役割はやはり公安が担うものであって市民ではありません。故に警戒を促したところで全く無意味でしかなく、方々でも指摘されている通りに今回の三浦氏の在日朝鮮人らに対する疑念や敵愾心を無駄に煽るだけの結果しか生みません。

 で、こう言っては何ですが、三浦氏本人はそういう意図で発言したわけじゃないと否定こそしているものの、そういう風に受け取っちゃう人たちは世の中には実際たくさんいるわけです。古今東西、根も葉もない敵愾心を煽る発言やデマによって迫害や虐殺が起きたケースは枚挙に暇がなく、現代においても中国事情を紹介するだけで反日認定されるほどなのですから(リアル)、こうした敵愾心を煽るような発言は極力控える慎重さがやはり求められてくると私は思います。
 仮に今回の発言が自分の著書やブログだけなら影響力も限定されることからまだしもと思いますが、今回のケースは影響力の強いテレビメディアでの発言です。その主張内容が事実であればたとえ一部の人たちの敵愾心を煽ることとなっても、報道することにやむを得ないと私は考えますが、先に書いたように呆れるくらいにあやふやな根拠と完全に思い込みだけの当て推量で、「大阪は危険だ(意味深)」と社会の公器を使って伝えてしまうのは、いくらなんでも無責任もいいところでしょう。
 同様に、この発言を編集でカットせずにそのまま放送してしまうテレビ局側にも疑問を覚えます。先ほども言った通りに事実であれば仕方ありませんが、現状の材料を見る限り今回の情報は十中八九思い込みであり、ましてや裏付けも何一つ取っていない情報です。差別や迫害を助長する可能性のある主張でもあるだけに、テレビ局のリテラシーも異常性を感じます。

 最終的に結論をまとめると、三浦氏とフジテレビのリテラシーは異常に低い水準だというのが私の感想です。その上で三浦氏のブログの主張を見ると、「こうした議論もできないなんて日本はよくない」みたいに言ってますが、議論しようってんならもっとまともな根拠や合理的な推測を用意しろよと言ってあげたいです。低水準の人間がいつまでも相手してもらえるほど世の中は甘くはないでしょう。

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