2018年3月11日日曜日

日本の転職で一致が要求される三条件

 先週日本へ一時帰国した際に会った友人がIT業界関係者ということもあって、ちょうどこの方面について取材している最中だったことからあれこれ話を聞いてきました。昨日書いたコメントで少しその時の話を書いていますが、最近システム発注側の企業におけるシステム管理者の質が極端に落ちており、仕様書やマニュアルに書いてあったりすぐ考えればわかるような内容ですら受注側にいちいち聞いてくることが増えたと話していました。

「35歳限界説」の定説希薄に 転職成功者の年齢、10年前より3歳上昇(SankeiBiz)

 そうした話をしていたところラブストーリーは突然にというくらいに急に転職市場の話となり、ちょうど出たばかりの上のニュースについて互いに言及し合いました。このニュース記事内容の真偽について確認したところ確かに以前と比べて年齢に関するくくりというか仕切りは日本の転職市場で薄くなってきていると友人が話し、その後出てきた「そもそも何故年齢でくくるのか?」という論点について二人とも即座に、「終身雇用制により年齢と給与がセットで結びつけられているからだ」という解を出しました。
 自分から意見はあまり出すことはないけど基本優秀な友人なので、かなり久しぶりなくらいハイテンポな会話をこの日は楽しめました。

 話は戻り先ほどの解を導き出した後で咄嗟に私は、「そもそも、日本の転職市場は条件が多いというより、条件すべての一致が求められるのでは?」と言って、「それはあるな」とまた即座に友人も私の言いたいことを理解していました。ぶっちゃけ理解速度や反応速度でいえば私よりこの友人の方が上でしょう。
 ここで私が言おうとしたこととは、日本の転職市場では雇用側は求職者に対して概ね三つの条件の一致を求める傾向があるということです。その三つの条件とは、経歴、年齢、給与の三つで、このうち経歴に関しては学歴、職歴、業務年数、役職経歴、勤続年数諸々を含みます。何が言いたいのかというと、日系企業はこの三つの条件を個別に審査するのではなく、三つの条件が各段階で全部一致するよう求めてくる傾向があるということです。

 例を挙げて説明すると、ある会社で課長級のポストが空いて募集することとなったとします。その会社における他部署の課長は40歳前後で且つ年収は500万円だったとすると、恐らく募集要項としては「40歳までの管理職経験のある人、年棒500万円」となるでしょう。
 この募集に対し、年棒は500万円でいいという45歳の管理職経験のある人が応募してきたら「ちょっと年齢が……」と言って落とし、一方40歳で且つ管理職経験はあるけど年棒は600万円欲しいという人が応募してきたら「ちょっと給与が……」と言って落とし、35歳で管理職経験はないけど年棒は400万円でいいという人が応募してきたら、「ちょっと経歴が……」と言って落としてくるのではないかと私は思え、友人も「年齢に関しては条件が緩くなりつつあるけど多分そうなる」と同意しました。

 逆にと言っては何ですが、30歳で果てしなく高い能力を持ちながら実績もあり、年棒も400万円でいいという人が上記の会社に応募したとしても、まず間違いなく「ちょっと年齢が……」と言って確実に落とされるでしょう。また仮にその高い実績を見込んで採用される場合も課長ではなく平社員として採用され、中間管理職でこそ発揮される彼の高いスキルは発揮されないでしょう。自分で書いてて非常におかしなこと書いている気がしますが、真面目にこうした現況を日系企業で目にすることが多いです。

 何故こうしたことが起きるのかというと、まず第一に採用段階で日系企業は「能力」については何も要求もしなければ審査もせず、見る点としては業務経験など経歴だけだからです。もっともこれは初対面の相手の能力を測るのは難しい点もあり、いくらか仕方のない点ではあると私も考えます。
 次の第二の問題点ですが、日系企業では給与と経歴(ポスト)と年齢がほぼ完全に紐づいており、どれか一つでも一致しなければ不適合者として取り扱う傾向があると私は見ています。先ほどの例の「40歳前後で課長で年棒は約500万円」のように、各会社で基準は異なりますがこうした三条件が相互に一致し合ってなければ、担当業務を出来る出来ないかに関わらず転職応募者を採用しない傾向があるように見えます。

 恐らく上記の私の主張を日本人は潜在的には意識しながら表層的には意識していない気がします。「年齢を基準とした雇用体制」という点については理解しながらも、その年齢に給与とポストが紐づいていて転職市場においては逸脱は決して許さないという事実については気が付いてないのではないかと思います。
 しかし結論から言うと、こうした日本の転職市場における慣習はほとんどメリットがないのに対してデメリットは盛りだくさんです。

デメリット1、優秀な人材の流出
 先ほどの例でも出ましたが、どれだけ能力が高く実績がある人物であっても年齢によって「まだ若いから管理職はダメ」と言って蹴られることがあります。これは三条件一致に反するということもありますが、それ以上に自分より年齢の低い人間の部下にはなりたくないという心情的理由もあります。
 また管理職でなくても、年齢に対して求める給与が高くてもまず弾かれるでしょう。スペック的にはその求める高い給与に見合うとしても「こんな若造に……」といったり、他の同年齢の従業員と差ができてしまうなどを気にして採用することはまずないでしょう。その結果、野心ある能力の高い人材はどうするかというと、やはりこの方面で融通が利く外資系とか外国へと行くことになるのではないでしょうか。

デメリット2、問題ある人材をゲット!
 多分この点については日本人は誰も気が付いてないと思いますが、上記の三条件が完全に一致する人材は果たしてその企業が求める人材なのでしょうか。はっきり言えばその可能性は高いか低いかでいえば低いように私は思え、というのも、経歴と年齢と給与の三条件がきちんと備わっていて且つ能力の高い人物が果たして転職などするでしょうか。普通に考えて、そんな日本社会において非常に好ましい条件にある人物はわざわざ転職などせずに、元々いる会社で順調に出世しながら働き続けるように私は思います。
 中には人間関係や出世競争、家庭の事情や給与アップ等の理由からそういう人であっても転職せざるを得ない人もいるでしょうが、能力を度外視するとして、経歴と年齢と給与の三条件が一致しながら転職しようとする人物というのは、何か他のところで問題を抱えているから会社を離れざるを得ない人物であることが少なからずある気がします。実際に私も、目も眩む大企業でそこそこのポストで働いていたという上記三条件の一致する転職者を見ましたが、「前の会社にいられなくなったから転職してきたんだな」という感想を覚えました。

 最後に何故こういう雇用、非雇用側のどっちも得しない悲しい出来事が起こるのかという原因について述べると、まず給与が能力ではなく年齢に結びついていること、次に各年齢ごとに給与テーブルが定まっていてそこからの逸脱が許されないのと、上司と部下の関係に年齢の逆転を認めないという慣行が日系企業にあるためだと思います。
 ある意味ここで書いた内容に気が付いたのは、中国の雇用慣行に私が慣れてきたからでしょう。中国の場合は初任給の時点でも企業や業務内容によって大きく差が出て、また転職市場も年齢が若い方が有利というのは事実ながら、年齢が高くても一営業プレイヤーとして優秀であれば若い管理職の人間の下でも生き生きと働く人もおり、また給与も職階や年齢に関係なくまちまちです。でどっちかといえば、そりゃ中国の雇用慣行の方が合理的だろうなというのが私の結論です。

5 件のコメント:

  1. 記事の内容とは関係なくて申し訳ありませんが,最近のコメントを表示しない設定にしたのですか?
    あった方が便利だとおもうのですが

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    1.  むしろよくぞ聞いてくれました( ;∀;)
       なんか昨日あたりから急に調子が悪くなり、少し調べてみたところこの最新コメント一覧を構成するFeedを管理しているサーバーっぽいサーバーがアクセスできなくなっていました。サードパーティ製なので仕方ないところもあるのですが、かといってBlogger純正のフィードだと最新コメントは5件しか表示されなくなり、ちょっとこれだと少なすぎます。
       以前にも似たようなことがありしばらくしたら直ったので、ひとまずは一旦様子を見ます。進展がなければ別のガジェットに切り替えますので、今しばらくは見守っていてください。

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  2. キミは全ての条件を満たせるでしょうか?

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  3. 年功序列の給与体系は若い人を低賃金で使い倒す代わりに晩年高給を約束する制度なんですよね。
    国保や年金と発想が同じという意味で、制度的に破綻してるんだろうなと思います。

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    1.  そのあたりの内容は城繁幸氏の著作に詳しいですが、これの何が問題かというと既に終身雇用制は維持できず崩壊しているにもかかわらず、雇用側が新たな人事モデルをきちんと構築できていないのが日本の問題点です。自分もいくつか見て感じたこととしては、中途採用者に対する研修を含めた受け入れ態勢がまるで整備されておらず、外部人材を入れても全く活用できないところがあります。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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