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2018年10月30日火曜日

盗聴・録音はどこまで許容されるべきか

 最近税法勉強し始めたけど、社会主義の中国に相続税がなく、資本主義の日本の相続税が重いとか男のギャグだとか思い始めてきました。友人が中国について最近、「社会主義と資本主義のいいとこどりに対し、日本は悪いとこどり」と評しましたが、なんとなく私もそう思えてきました。
 そんな中国のような監視社会についていろいろ考えるこの連載ですが、さっきようやく来週のJBpress記事を送ったのでやっと再開です。前回が監視こと映像録画だったに対し、今回は音声録音についてですが、結論から言うとなるべくなら録音は社会で行わない方がいいという立場をとります。

 監視カメラは現在世の中に溢れていますが、基本的にどの監視カメラも音声を録音する機能はなく、よくある「監視カメラは見た!」的な番組でも無音の映像にナレーションが付けられ解説されます。やりよう、っていうか指向性マイクを付ければ映像とともに音声を録音することも十分可能ですし実際に録音機能の付いた監視カメラも世の中にはあるものの、現在ほとんどの監視カメラに録音機能が備わっていないというのは、コスト上の問題もさることながら音声を録音することの問題性を業界もうすうすわかってやっているのかもしれません。
 何故録音するとまずいのかというと、単純に機密遅漏につながりやすいということ以前に、人間を陥れやすくなってしまうというのが問題だと私は考えます。

 社会学士の立場から言えば、人間というのは自分が正しいとか本気で思っていることしか口にするわけではなく、咄嗟に普段はみじんも考えていない過激な発言や言葉を日常でも多々口にしてしまう存在だとみています。私なんかはほぼ毎日ぶっ殺すとか、ついさっきも友人にチャットで「昨日殺したけどね(蚊を)」などという言葉を念仏のように唱えていますが、私ほどではないにしろ、「あの野郎」とか、「今度罠にはめてやる」などという実際には実行しないけどこうした物騒な言葉を口にすることは誰にだってあるでしょう。
 仮にほぼすべての監視カメラに録音機能がついていた場合、こうした発言はもれなく拾われてしまいます。その結果、こうした発言が殺人企図として取られる可能性もあり、体制側からすれば目障りな奴はこれで片っ端からブタ箱に突っ込めるという優れものになってしまいます。また体制とまでいかなくても、会社の上司とかが自分を殺すという発言をした部下に対してその録音データを元に脅迫、解雇を迫るという可能性も十分ありうるでしょう。

 繰り返すと、人間は普段思ってもないことも口にしてしまう性質上から、たとえ公共の場においても何でもかんでも録音してしまうと他人を陥れやすい社会となってしまいかねません。また仮にそのような録音されることが認知されていたとしても、恐らく多くの人は揚げ足を取られぬよう余計なことは口にしなくなり、友人との会話でも録音されないように小声で会話するようになるため、私の目から見て社会は不健全となっていくことは確実です。
 多分この辺は実感湧く人はいないと思うのですが、私の中国語の恩師が昔の中国に行くとみんな小声でひそひそ話す傾向があったそうです。何故かというと文革期に密告が相次いだため、当時の中国人の間では盗み聞きされないようひそひそ声で会話することが身についてしまっていたらしいです。

 今少し出しましたが、社会のあちこちで録音することは即ち完全な密告社会であり、お互いがお互いを陥れ合う不健全な社会にしてしまう可能性が高いため、監視カメラを置くことについては基本山西ではある者の、社会で音声を録音することは基本的に望ましくはないと私は考えます。特に体制側の録音は厳しく制限されるべきでしょう。
 現在日本では裁判所の承認の下で犯罪につながる可能性の高い被疑者に限り警察が盗聴をすることを認められています。ある意味この辺が体制側による録音の妥協ラインだと思え、きちんとした手続きを踏まえた上での盗聴録音に限り認めるという意味で、現状の制度を私は許容しますし支持します。逆にこうした目的ではなく、手続きを踏まえない警察の盗聴行為(GPSで以前あった)に関しては、やはり厳しく制限し処罰するべきでしょう。
 まぁ許容するとか言いますが、そもそも日本に私はいませんが。

 では体制以外、具体的には個人の盗聴・録音はどうなのか。個人的にはやはり密告社会化する懸念から個人や民間団体も録音は控えるべきだとは思うものの、近年はICレコーダーが発達し、セクハラやパワハラ、浮気の証拠材料として録音されたデータがメディアや裁判に提出される機会が増えています。司法も浮気の証拠を得るためであれば、自宅内で夫婦のいずれかが盗聴器を仕掛け録音することを現在認めており、また先ほどのパワハラなども防衛上やむを得ないと私は考えています。
 許容されるべきラインを考える上のポイントとしては、

1、録音内容が当人に関係している
2、社会通念上認められる目的での録音に限られている
3、録音の対象がはっきりしている(浮気相手、パワハラ上司など)
4、意図的なネット配布など不必要な範囲で公開していない
5、使用目的を果たした後は削除する

 以上が守られるならば胸を張って盗聴してもアリだと私は考えます。
 ただ以上の条件には問題をはらんでおり、というのも浮気調査とかで興信所が音声録音を行ったらどうなるのかという点です。この点に関しては業界の倫理に依存する面が多いですが、無難なやり方としては「問題発生時には責任はすべて依頼者に帰す」という風にすれば、ある程度は制御できるのではないかと思います。また興信所側も、依頼内容を超えた盗聴行為や、録音データの二次配布、長期保存などをした場合は処罰されるようにするのがベターでしょう。

 逆を言えば、相手の見知らぬところで何気ない会話とかを録音したりすることは、刑罰化するまではいかなくても個人と言えども基本認めるべきではないでしょう。その音声が録音されてもよいかは基本的に音声発声者に帰すべきですが、まぁ公人相手とか、先ほどのセクハラパワハラに準ずるような報道価値があるなら、ジャーナリストが無断で録音するのは許容してほしいところです。

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