では何故タリバンは予想外の速度で勢力を拡大できたのか。報じられている情報を眺める限りだと打倒された旧アフガニスタン政府への国民の支持がやはり低かったからではないかと思われます。かねてから政府内の腐敗が激しいと報じられておりそうしたものへの反感と、あとどこかで読んだ記事で、そもそもアフガニスタン人の帰属意識は国ではなく各部族ごとで、そうした部族意識の強さから統一政権はそもそも支持されていなかったとする論評もあります。
その記事と今回のタリバンの急進撃を感じたことですが、もしかしたら自分はアフガニスタンについて、イスラム原理主義の影響が色濃いという見方を持っていたことが間違いだったのではないかと思うようになってきました。
前述の通り、アフガニスタン人は国民というより部族民という帰属意識の方が強く、各部族間で独立した価値観があり、地域毎に部族の長が軍閥のように支配していると聞きます。この点については複数の情報リソースがあり、ほぼ確実だと思われます。
そして、そうした軍閥としては統一政権ができることによって自らの勢力は弱まることとなるため、あまり協力をしてこなかったそうです。これもその通りだと思うのですが、では何故そうした軍閥の中でタリバンが過去を含め強くなったのかかというと、イスラム勢力だからというよりイスラムの教義で各軍閥、部族を統合していたからではないかと今見ており、やはりアフガニスタン人の根底には、イスラム教義以前に部族意識の方が大きいのではないかと思うようになってきました。
いうまでもなくイスラム教は他の宗教と比べ教義による制限や拘束が強い宗教です。だからこそ価値観の異なる勢力を束ねる上では有用なツールなりえ、そのツールを活用(原理主義の採用)できたからこそタリバンがアフガニスタンの中で頭一つ抜ける勢力となりえたのではないかと考えています。
そういう意味では、イスラム教がテロリストを生むというより、アフガニスタン土着の部族意識(というより部族間対立)がテロリストを生んでいるのではないかという風にも見えます。イスラム教が全く無関係というわけではないでしょうが、この辺のアフガニスタンの土着状況をこれまで見過ごしてきたのではないかと、今回のタリバン復権を見て感じました。
その上で今後について展望すると、旧ソ連が撤退してからアルカイダが大きくなっていったことを考えると、やはりまたテロリストが勢力を伸ばすようになるのではないかと思います。仮に上記の自分の見方が正しかった場合、今後もアフガニスタンでは部族間で争いが続き、そによって軍事勢力も伸長し、テロ勢力も育っていくのではと見ています。その矛先が米国となるかはわかりませんが、少なくとも紛争は今後も続く可能性が高いのではないかと思います。
その上で日本に影響はあるのかについては、実際はそんな影響はないんじゃないかと見ています。テロの懸念がなどと言いますが、多分そんなのより中国軍機の接近の方が影響でかい気がします。そもそも日本赤軍など旧テロ輸出国代表だった日本が何テロの懸念してんだとか内心思うし。
リスクはゼロとは言いませんが、少なくともこれまでにも存在したリスクから急激に跳ね上がることはない、というより日本の国威は今後下がることを考えると、狙う価値がなくなってむしろ下がる可能性の方が高いとみています。世界経済に対する影響も、少なくともコロナよりは大きくないでしょう。
4 件のコメント:
もうカブール陥落してから5日経ちますがまだ正式な政権発足してないですね(国家元首も空席のまま)
結構内部対立してるのでは、と思います。
まぁ日本も明治維新してすぐ体制が決まったわけじゃないので、そこらへんはもう少し見てあげた方がいいでしょうが、内部抗争は起きてるでしょうね。基本内部抗争は、勝った後の方が起きるものですし。
部族対立が根っこにあるというのはボスニア情勢に似てますね。それぞれで国作った方がまともなのかもしれません。それでも紛争は起きるでしょうけど。
日本も島国でなければ、もっと地域ごとに対立し合ってた可能性はありますね。その地域の土着民の他地域への対抗意識は結構高いですし。高校野球の応援のされ方は都道府県の代理戦争みたいな側面がありますね。
実は自分も今回のアフガニスタンを見ていてユーゴ問題を思い出し、当時試合中に抗議文を掲げたストイコビッチを思い出し、彼のWikipediaみながら「今度RPGで名前つけるとしたら須藤彦一にしよう」などと思ってました。
おっしゃる通り、変にアフガニスタンで一国にまとめるのでなく、連邦制、合衆国制みたいな形で、緩い統合に持って行くべきなんじゃないかと自分も考えています。最低限、軍事紛争は控えるような形で。
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