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2009年3月28日土曜日

満州帝国とは~その七、建国

 前回の記事にて満州事変を解説したので、本日はいよいよ満州帝国の建国に至る場面を解説します。

 日本は自ら引き起こした満州事変を中国軍との抗争と称して、戦火を一挙に満州全土へ広げることによって実効支配の確立に成功しました。とはいえ第一次大戦後の当時には既に、国際連盟の加盟諸国の間等で「パリ不戦条約」といって、外交の駆引きに戦争という手段を用いないという取り決めが交わされており、満州時返事の日本の関東軍の行動は明らかにこれに違反するものでした。その結果、当事者である中国が日本の侵略行為だとして国連に満州事変を問題に挙げたことにより、事件の責任者を探るためにリットン調査団が国連から派遣されることとなりました。

 このような事態を、日本側も全く気にしていなかったわけではありませんでした。
 そのため半ばこの満州事変を既成事実化して日本の植民地として確立するため、事変を起こす前に関東軍内で様々な対策が練られた結果、欧米からの批判をかわすためにまず清朝の皇帝であった溥儀を担ぎ出し、満州族、ひいては満州地域に住む日本、朝鮮、蒙古、漢族の五民族による自主独立国家を擬似的に作り上げる方針で計画を実行することに決めたようです。

 こうして日本は秘密裏に当時天津にいた溥儀と会い、計画を互いに持ち合いました。溥儀としても満州、ひいては中国の皇帝として再び即位することを考えていたようで日本の提案は渡りに船とばかりに承諾したようですが、建国後の地位として「満州国皇帝」に就任することに強いこだわりを見せていたようです。とはいえ日本としてはいきなり皇帝だとまずいということで、ひとまず主権者である「執政」という地位についてその後皇帝に就くということで納得してもらうよう説得し、これに溥儀も最終的に承諾しました。

 そして満州事変後、日本が急ピッチで組織や体制を作り上げることで満州帝国は建国されました。ただこの建国の直前、上海において第一次上海事変が起きていますが、この事件自体が欧米の目を満州帝国の建国からそらすために起こされたともいわれており、事実時期を同じくしております。真偽はどうだかわからないけど。

 未だに体調が悪いのでちょっと今日も文章があまりよくないのですが、ひとまず満州帝国の成立までの通史をこれまでやってきて、ようやくひと段落ついた感じです。こっから先は満州帝国が具体的にどんな国だったのか内容面での解説が主になるのですが、前にも少し触れたように満州において影響力のあった人物を取り上げ、彼らを通して解説していこうかと思います。

2009年3月26日木曜日

今日の相撲について

 相変わらず体調が悪いです。前もそうでしたが、体調が戻ると世界が変わるようになって物の見方とか激変することが多々あります。一昨年に体調崩してから復調すると、何故か三菱車に深い愛着を持つようになったし。

 そんなわけで今日も短い記事ですが、WBCの日本代表の大活躍のおかげというか私の大好きな大相撲大阪場所はすっかり目立たなくなっております。しかし昨日、平幕相手に簡単に星を落とす一方で大関、横綱相手だとめっぽう強い日馬富士関が相変わらずの番狂わせを見せつけ、先場所の復活優勝で波に乗る朝青龍関を見事に倒したかと思うや、なんと本日にもちょっと前に負けたけどそれまで三年くらい連続で勝ち続けていた琴光喜関にまたも朝青龍関が負けて二敗に後退してしまいました。

 その一方で白鵬関は全勝を続けており、早くも明日の結果次第では優勝が決まってしまうところまで来てしまいました。今場所前半の朝青龍関は文字通りシャレにならないほど動きがよく、元々相性のいい大阪場所ということもあってまたも優勝を掻っ攫っていくと思ったのですが、白鵬関はこのところ苦手としている日馬富士関を今日は万全の相撲で勝ったので、現状では朝青龍関の優勝はかなり難しくなっています。

 ところで話は変わりますが、私が直接場所を見に行ったことがあるのは二年前の大阪場所と名古屋場所で、特に名古屋場所は初日に行ってその日に朝青龍関が負けてしまって座布団が飛び交う場面に遭遇しました。私は投げなかったけど。
 ちょっと前のブログのコメントにも書きましたが、相撲というのは本当に一瞬で始まり一瞬で終わる協議で、それこそちょっと目を放した隙に終わってしまっていたということもざらです。それがテレビであればスローモーションつきのリプレイが流されますが、直接見に行くとそんなもんもないので、座席の位置によっては全然取組内容がわからなかったりして、改めてスポーツのテレビ中継は便利なものだと感心させられました。

 とはいえ直接足を運んでみることにメリットが全くないかといえばそんなこともなく、人気の高見盛関の入場の際などテレビではわかり辛いのですが、それこそ「ドスドスドスッ」っと、会場中に鳴り響くほどの大きな足音が鳴らされて迫力はたっぷりです。そのほかにも入退場の時に間近で力士を見ることも出来、立会いの際の「パーン」って身体がぶつかる音もよく聞こえ、椅子席だったら2,500くらいで見ることが出来るのでもし機会があるのなら一度観戦することをお勧めします。
 国技館にはまだ行ったことないから、来場所に行ってみようかなぁ。

2009年3月25日水曜日

私が影響を受けた偉人

 今週に入って気温が変動しているせいか、猛烈に体調を崩していて現在もあまりよくありません。昔はこうも身体が弱くなかったのですが、なんか定期的にひどく弱ることが増えてきました。先週は自転車で後輩を突き放したのになぁ。
 そういうわけで本音では満州帝国の連載を進めたいのですがそうもいかず、今日もさらりと流せる記事でごまかそうと思います。内容はずばり、私が影響を受けた偉人です。

 まず最初に言っておくと、私は一般のレベルからすると相当にケチな部類の人間に属します。お金があって欲しいものがあっても「粘ればもっと安くなる」と言っては我慢して、外食する際は一番安いメニューを頼んでいますがひどい場合には友人らと会っていても一人別れ、自宅で自炊することもザラです。極めつけは冷暖房ですが、夏場は扇風機だけで過ごし、冬場はホットカーペット、ひどい時なんかは毛布にくるまりながらゴールデンタイムのテレビを見たりしながら過ごして、結局一年を通してエアコンを一度も使わなかったこともありました。

 なんで私がそんな風にケチな子に育ったのかですが、自分で思うにどうも私が熱狂的に尊敬するようになった二人の偉人が影響しているのかと思っています。その二人の偉人はもったいぶらずに言うと、徳川吉宗と西郷隆盛です。二人とも歴史漫画から入って小学生の頃に初めて知りましたが、特に西郷隆盛は私が鹿児島生まれということもあって彼の生涯を知れば知るほど深くのめりこんでいったように思えます。徳川吉宗はまずそもそものキャラクターが面白い人ですし、それまでは織田信長とか徳川家康の活躍する戦国時代で主に戦記物のような歴史が私は好きだったのですが、戦争のない治世において如何に政治を切り盛りするのかということに対し、吉宗の話を聞いて初めて面白いと思いました。

 ここまで言えばわかると思いますが、吉宗も西郷も当時としても非常にケチ、というよりかは吝嗇な人間で有名でした。吉宗は当時の日本の最高権力者である将軍であったにもかかわらず、粗末な木綿の着物を着ては豪華な身なりの幕臣を見るとピーコのファッションチェックのようにじろじろ睨んでいただけでなく、食事も一汁一切でおかずが二品付けば喜んだというところまで食費を削っていたそうです。かといって何でもかんでも節約していただけでなく、収入を増やすために干拓事業を行い、その際に農業用水を確保するための見沼代用水の開削工事には大きな投資額をかけています。

 そして我らが西郷どんですが、この人も戊辰戦争後に筆頭参議として権力の中枢にいたのですが、ある日会議になかなか出てこないので木戸孝允が使いを送ると、
「洗濯した服がまだ乾いていない」
 と、なんと正装用の服を一着しか持っていなかったようで、慌てて木戸が自分の服を持たせて使いを向かわせたそうですが、結局会議に間に合わなかったそうです。仮に間に合ったとしても、木戸のサイズの服を西郷が着れたのか疑問ですが。

 このところちょくちょくまた西郷隆盛については調べていますが、どうもこの人は征韓論と最後の西南戦争のところばかりに注目されており、幕末期の活躍などについてはあまり日の目を浴びていないのではないかという気がしてきました。これは誰の言か忘れましたが、西郷がもしいなければ明治維新は遅れたどころか、倒幕すら難しかったのではないかという意見もあり、ちょっと再考してみる余地があるかもしれません。ちなみに、私は鹿児島生まれなのでやっぱり大久保利通は嫌いです、その功績は認めるけど。

 こんな具合に吉宗と西郷が好きだったので、私も「清貧こそが真の美徳だ」と信じ込んじゃったところがあるかもしれません。今でももし自分に許されるのならやってみたい贅沢というのも、毎日喫茶店に通ってコーヒーが飲める生活しか想像できないので、二十代でこんなんだから恐らく今後もこれ以上大きくならないと思います。ちなみに私が尊敬する水木茂氏は貧乏漫画家時代、一ヶ月に一回だけ喫茶店で飲むコーヒーが最高の贅沢だったと述べています。

2009年3月24日火曜日

小沢代表の続投について

「重大な犯罪」と批判=小沢氏続投への期待も-違法献金事件で与党(YAHOOニュース)

 本日、小沢氏の公設秘書で既に逮捕されていた大久保秘書が、今日を以って拘留期限が尽きるのを受けて政治資金規正法における虚偽記載の容疑で検察によって起訴されました。この起訴を受けて去就が昨日からいろいろと取り沙汰されていた小沢氏ですが、現在も記者会見が中継されていますが、民主党代表の座を降りないということを明言しました。結論から言えば、私は今回の小沢氏の続投には心から賛成します。

 もう何度もこの関連の記事で私は述べていますが、私は小沢一郎という政治家が嫌いです。彼がかつて主張していた政策論などは選挙の小選挙区制の導入などすでに現実化しているものが多く、いわばもう過去の政治家となっていて今後の日本の舵取りを任せられるかどうかについてはあまりいい評価をしておりません。しかし今回の彼の秘書の逮捕容疑となった政治献金元の虚偽記載についてはもともとの政治資金規正法がザル法で、しかも自民党を始めとした多くの議員も同じような献金を受け取っており、いわば皆で赤信号を横断している中で小沢氏だけを狙い撃ちして彼の秘書を逮捕したようなもので、とてもじゃないですが一私人として納得できるものではありません。

 仮にもしこの逮捕、起訴を受けて小沢氏が代表の座を降りるというのなら、それは検察が自分らの都合の悪い政治家を見つけるや無理やり事件を作り首を取れてしまうということになり、後世に対して悪しき慣例を残してしまうことになります。それに今回の事件では自民党の漆間氏が、「自民党議員にまで事件は波及しない」と、まるで自らが捜査主導者かのような発言をしているだけでなく、虚偽記載自体が突然身柄を拘束されるような問題性の高い事件でないこともあり、検察の捜査自体に非常に怪しい点が数多くあります。

 こうした検察の不審な行動に対してあらかじめサンデープロジェクト内で田原総一朗氏も、もし今日の拘留期限を迎えて大久保秘書に収賄罪など別の容疑を含めた再逮捕にまで事件が広がらなければ、明らかに民主党への妨害を意図したとしか思えない検察の失態となると指摘されていました。そのため検察は何が何でも自らの捜査の正当性を打ち出すために、それこそ存在しない事件を無理やり作ってでも収賄罪などといった他の容疑にて再逮捕するだろうと予想されており、私も何かしら別の容疑を作って今日に起訴してくるだろうと思っていましたが、結果は当初の虚偽記載容疑だけで、ますます検察が強引に捜査をすすめたのではないかと疑わせるような結果でした。検察もその辺を自分でわかっているのか、起訴前には異例ともいえる今回の捜査目的や趣旨の説明をマスコミに対して行っています。

 以上のような理由から私が今日の小沢氏の代表続投宣言を支持するのでありますが、一つ気になることとして、今回のような迂回献金を行っていたのは本当に西松建設だけなのかという点です。言ってはなんですが、こんな献金はどこもやっているようにしか思えず、特に大手ゼネコンの鹿島や大林はもっと大きな額で行っているのではないかと個人的に疑っております。今回の事件を見ていると、大久保秘書が献金を指示したとか額を指定したとかすべて「関係者の証言によると」という明らかに検察からリークされたといっている言葉とともに(大久保秘書はすべて否認しているようだが)西松建設との癒着にばかり報道が集中しましたが、何故他に同じことをしているゼネコンはないのかという具合に話が広がらなかったのが不思議です。

 仮に他のゼネコンが同じような迂回献金を行っているとしたら、まぁ恐らくは選挙どころじゃなくなるでしょうね、いろんな意味で。

WBC、日本代表優勝

 もはや何も言う必要ないでしょう。本日の決勝戦を優勝し、ついにWBC日本代表は優勝を勝ち取りました。MVPは前回の私の予想とは違って岩隈選手ではなく松阪選手でしたが、今日の岩隈選手は本当にいい働きを見せてくれました。

 以前に朝日新聞に載っていたある記事で、野球というのは数時間の試合の中で面白いところはほんの数分しかない特殊なスポーツで、観戦を楽しむのに本当に忍耐を強いられるスポーツだとある評論家が書いていました。近年、日本の野球中継の視聴率は下がる一方で、巨人戦の視聴率低下が日テレの凋落(これまでフジテレビと激しい首位争いをしていたが、このところは下がる一方で万年二位)の最大原因とまで言われ、私の目にも野球を見る日本人は随分と減ったと思っていたのですが、この前の休日の午前に放送された試合での平均視聴率はなんと48.1%と実に日本人の二人に一人が見ていたという恐ろしい視聴率をたたき出し、やはりいい試合をすれば野球をみんな見るのだと実感させられました。

 そして昨日にも書きましたが、暗いニュースばかりのこのごろの日本で、こうした明るいニュースこそ本当に必要なニュースだと改めて思えてきます。今日対戦した韓国も九回に追いつくなどすばらしい健闘を見せ、まさに世紀の一戦と呼ぶにふさわしい試合内容でした。
 個人的には最後に阪神の藤川選手に締めてもらいたかったのが本音ですが、すばらしい試合を見せてくれた選手一同と原監督に対し、心からおめでとうとこの場で言わせてもらいます。

2009年3月23日月曜日

私選、WBC日本代表MVP選手

WBC準決勝 日本、米国に快勝 韓国との決勝戦へ(YAHOOニュース)

 あんまり期待しすぎるとよくないとは言いつつもやっぱり気になってテレビ放送は欠かさず見ていたWBCですが、日本代表は優勝候補のキューバとアメリカを打ち破り、とうとう明日の決勝戦出場を決めました。まずは健闘した日本代表と就任当初は日本シリーズで西武に負けちゃっていろいろ叩かれていた原監督に対し、心からお祝いを申し上げたいと思います。

 それにしても、前回の北京五輪での星野JAPANがあまり振るわなかったのもあったので始まる前は正直不安でしたが、きちんと原監督の構想通りに「つないで点を取る」チームに仕上げて(ホームラン数が極端に少ない)ここまで勝ち進めてくるとは立派なものです。唯一残念だったのは村田選手が前回の韓国戦で足を負傷してしまったことで、これまでの試合でも活躍されてきたのでぜひとも最終戦まで残っていてもらいたかったです。

 そこで今日はやや気が早い気もしますが、今大会での日本代表の最高殊勲選手ことMVP候補を、私の観点から独自に選んで見ようかと思います。
 まず野手で言えば、文句なしにヤクルトの青木選手が最大候補でしょう。今大会の打率は日本人選手の中では群を抜いており、しかもチャンスの場面に必ず答えては外野方面の守備でもミスがなく、勝利への貢献という意味では現時点で私が最も評価している選手です。
 次に同じ野手とくれば、守りの中心こと城島選手です。打撃面での活躍もさることながらいろんなチームから集まってきた投手たちを見事切り盛りし、守り勝つという日本の勝利パターンの最大の立役者でしょう。特に私がこの城島選手に感心させられたのは、アメリカでの試合が始まる前のインタビューにて、

リポーター「なんか試合が始まる前に、審判によく話しかけていますよね」
城島選手「試合が始まる前の一瞬に、審判の国の言葉で一言二言話しかけています。その時に審判がどういう態度を見せるかで、この審判は(日本と対戦国に対して)どっち寄りかというのを判断するんですよ。それを考慮に入れて、ストライクゾーンや投手の配球を組み立てています」

 と、こっちが見ていて気づかないところで如何に勝利に結びつけるかと、城島選手が常に試合を考えて行動していたという事実には素直に驚かされました。

 こうした野手たちに対して投手陣での最高殊勲者と言えば、もし私が挙げるとしたら明日先発予定の岩隈選手を迷わず挙げます。岩隈選手については楽天入団の際のエピソードから大した人だと思っていましたが、試合中継にて改めてその投球内容を見ると、こんな恐ろしい投手が日本にいたのかと、敵ではなくて心底ホッとする様なすばらしい投球ぶりでした。韓国との第二戦では敗戦投手となったものの取られた点数はたった一点で、しかも失点直後は確か1アウトで二、三塁残塁かだったのに、取られた点数を気にせず後続をきちんと打ち取って追加点を許さなかったというのは見ていて血の気が引きました。まぁそれを言えば、しょっぱなにいきなりホームランを打たれたにもかかわらずその後は失点を許さなかった、今日の松坂選手もすばらしかったのですが。

 ただこうした試合中に活躍した選手が評価されるのはもちろんのことですが、どうも報道や試合関係者たちの話を聞くと、私も大好きなソフトバンクのムネリンこと川崎選手の貢献も見逃すことが出来ません。なんでも原監督やコーチ陣によると、ベンチで一番声を挙げて応援しているのはこの川崎選手で、彼の応援する姿勢を受けてベンチメンバーもスタメンとともにチーム一丸になれていると、皆が皆で川崎選手の姿勢を口を揃えて褒め称えています。
 そんな川崎選手ですが今日の試合ではスタメン出場して見事活躍するだけでなく、試合後のインタビューにて「ベンチですべて試合に出てました」と答えるなど、あのおすぎが贔屓にしてするのもよくわかる選手です。自分もパワプロで川崎選手を贔屓にしてますが、別に私はオカマというわけじゃありませんからね。

 そういうわけで、泣いても笑ってもとうとう明日が決勝戦です。ここまで勝ち上がってこれただけでも十分に日本人として誇りに思えるチームですが、是非明日も奮起し、優勝を勝ち取ることを心から願っております。

2009年3月22日日曜日

議員の世襲は是か非か

 今日の記事は前回の「国会議員の世襲比率」についての記事にて公開した、私と友人が私的に作成した国会議員の世襲比率データについて解説を行いますので、必要に応じて前回の記事をご参照ください。まず結論から言うと、国会議員の世襲について私は世襲政治家の資質が整っているのならともかく、現状においては必ずしもそうは言い切れないことからあまりよいものとは思っていません。

【選挙 ウワサの真相】「民主も世襲が多い…らしい」苦しい言い訳、そして沈黙(MSN産経ニュース)

 上記にリンクを張ったニュースのように、総選挙が近いということから国会議員の世襲について各所より厳しい意見や批判が行われているのをこのところよく見ます。私自身も以前の記事で取り扱ったこともあり、そこで実態的にはどんなものなのだろうか、以前と比べて本当に世襲議員の割合が上がっているのだろうかという疑問を解くために今回調査を行いましたが、前回の記事でも言い訳してますが1986年の総選挙時のデータでは野党の議員を中心にネット上にほとんど情報がない議員が97名いたため、大きく結果が変化することはないと思ってはいますが厳密なデータとは言えません。しかし現役議員の結果については細かく個人ごとにネット上で公開されている情報を精査したので、誤差の範囲はあったとしても十人以下ほどの、厳密なデータであると自負しています。
 ちなみに、いろいろ調べていて一番面白かったのは山中貞則氏でした。

 こうして前回の記事のデータを出したわけではありますが、どっかのニュース記事に「世襲の割合は自民で四割、民主で二割」という事が書かれており、私の調査でもほぼそれに沿う結果となりました。こうしてみると確かに衆議院で議席の三分の二を占める自民党内の半分近く、最大野党の民主党内の五分の一の議員が世襲議員という、確率論から考えると議員になるには世襲という条件が大きいということがはっきりと言えます。
 ただこうした世襲の議員以上に、実態的には総理大臣の近年の世襲率の増加の方が問題的には大きいと見るべきかもしれません。戦後の吉田茂から昭和最後の首相の竹下登まで、地方議員を含めた世襲議員の割合は15人中5人の33.3%であるのに対し、平成に入ってからの宇野宗佑から現在の麻生首相までではこれが13人中10人、宇野宗佑、海部俊樹、村山富市をのぞくすべての首相が世襲出身で率にしてなんと76.9%と、もはやこれでは世襲がなければ総理にはなれないような恐ろしい数字となっています。しかも次の総理候補として名前の挙がっている中でも、与謝野馨氏は世襲議員ではありませんが、石原伸晃氏や石破茂氏、そして民主党の小沢一郎代表はすべて世襲議員です。

 もともと選挙という制度というのは一人の人間、一つの一族に権力を固定せず、その時々で民意を政治に反映させるための選抜制度として作られました。しかし日本に限るわけではありませんが選挙には非常に大量のお金がかかるため、支援者たちなどの応援が必要となってくるため、いわゆる「三バン」こと「地盤」、「カバン」、「看板」が不可欠となってきます。
 この三つの要素を世襲議員の場合は親から受け継ぐことで始めから持っており、非世襲議員と比べて非常に優位な立場から政治家生活をスタートできます。しかしそれゆえに本来は民意を強く反映させ、かつ候補者の中から最も優秀な人間を送り出すべき選挙において、必ずしもそうでもないとしか言えない様な議員を当選させてしまっているという現状が以前から指摘されており、特に安倍、福田と、二人とも世襲出身の総理大臣(福田氏については父親も総理大臣)が二人揃って政権を投げ出すなど、あくまで政権放棄は個人の問題ではありますが、現実に資質を疑うような政治家が総理にまでなってしまうところまでこの問題は深刻化しています。

 とはいえ、世襲出身だからといって必ずしも優秀でないかとは言い切れないところもあり、小泉元首相や石破茂農水大臣など私が高く評価している政治家もおり、また叩き上げでも武部勉氏みたいにあまり頼りにならないのもおり、世襲だからといって政治家になるなとは言い切るべきではないと思います。

「世襲禁止、マニフェストにしたい」 民主・鳩山氏(asahi.com)

 そういう意味で、世襲の完全禁止ではなく上記のリンクに貼ったニュースに書かれているような、民主党の鳩山幹事長が提唱しているような政治家の子弟に対して出馬への年数制限や同一選挙区の禁止などを盛り込むなど、一定の出馬制限をかけることが現状で最も理想的ではないかと考えております。
 あくまで選挙というのは、その時々で最も民意を反映し、かつ能力の優れた人間を議会へ送ることに意義があります。また一人の人間が政治上の問題すべてに対応できるわけなどありえなく、農業漁業ならその方面、内政外交ならその方面の出身や専門家が集まり、それぞれの立場からそれぞれの意見を議論することこそが政治です。それが世襲出身で占められるような、純度の高過ぎる議場で果たして対応できるのかということにもなり、言ってしまえば私は雑多な種類、出身の人間が集まって議論するカオスな議会こそが、議場の形としては一番望ましいのではないかと考えています。そういう意味で、世襲出身の議員が三人にひとりとなっている現状はどうにかすべきでしょうという結論に至るわけです。