今日の記事は前回の「国会議員の世襲比率」についての記事にて公開した、私と友人が私的に作成した国会議員の世襲比率データについて解説を行いますので、必要に応じて前回の記事をご参照ください。まず結論から言うと、国会議員の世襲について私は世襲政治家の資質が整っているのならともかく、現状においては必ずしもそうは言い切れないことからあまりよいものとは思っていません。
・【選挙 ウワサの真相】「民主も世襲が多い…らしい」苦しい言い訳、そして沈黙(MSN産経ニュース)
上記にリンクを張ったニュースのように、総選挙が近いということから国会議員の世襲について各所より厳しい意見や批判が行われているのをこのところよく見ます。私自身も以前の記事で取り扱ったこともあり、そこで実態的にはどんなものなのだろうか、以前と比べて本当に世襲議員の割合が上がっているのだろうかという疑問を解くために今回調査を行いましたが、前回の記事でも言い訳してますが1986年の総選挙時のデータでは野党の議員を中心にネット上にほとんど情報がない議員が97名いたため、大きく結果が変化することはないと思ってはいますが厳密なデータとは言えません。しかし現役議員の結果については細かく個人ごとにネット上で公開されている情報を精査したので、誤差の範囲はあったとしても十人以下ほどの、厳密なデータであると自負しています。
ちなみに、いろいろ調べていて一番面白かったのは山中貞則氏でした。
こうして前回の記事のデータを出したわけではありますが、どっかのニュース記事に「世襲の割合は自民で四割、民主で二割」という事が書かれており、私の調査でもほぼそれに沿う結果となりました。こうしてみると確かに衆議院で議席の三分の二を占める自民党内の半分近く、最大野党の民主党内の五分の一の議員が世襲議員という、確率論から考えると議員になるには世襲という条件が大きいということがはっきりと言えます。
ただこうした世襲の議員以上に、実態的には総理大臣の近年の世襲率の増加の方が問題的には大きいと見るべきかもしれません。戦後の吉田茂から昭和最後の首相の竹下登まで、地方議員を含めた世襲議員の割合は15人中5人の33.3%であるのに対し、平成に入ってからの宇野宗佑から現在の麻生首相までではこれが13人中10人、宇野宗佑、海部俊樹、村山富市をのぞくすべての首相が世襲出身で率にしてなんと76.9%と、もはやこれでは世襲がなければ総理にはなれないような恐ろしい数字となっています。しかも次の総理候補として名前の挙がっている中でも、与謝野馨氏は世襲議員ではありませんが、石原伸晃氏や石破茂氏、そして民主党の小沢一郎代表はすべて世襲議員です。
もともと選挙という制度というのは一人の人間、一つの一族に権力を固定せず、その時々で民意を政治に反映させるための選抜制度として作られました。しかし日本に限るわけではありませんが選挙には非常に大量のお金がかかるため、支援者たちなどの応援が必要となってくるため、いわゆる「三バン」こと「地盤」、「カバン」、「看板」が不可欠となってきます。
この三つの要素を世襲議員の場合は親から受け継ぐことで始めから持っており、非世襲議員と比べて非常に優位な立場から政治家生活をスタートできます。しかしそれゆえに本来は民意を強く反映させ、かつ候補者の中から最も優秀な人間を送り出すべき選挙において、必ずしもそうでもないとしか言えない様な議員を当選させてしまっているという現状が以前から指摘されており、特に安倍、福田と、二人とも世襲出身の総理大臣(福田氏については父親も総理大臣)が二人揃って政権を投げ出すなど、あくまで政権放棄は個人の問題ではありますが、現実に資質を疑うような政治家が総理にまでなってしまうところまでこの問題は深刻化しています。
とはいえ、世襲出身だからといって必ずしも優秀でないかとは言い切れないところもあり、小泉元首相や石破茂農水大臣など私が高く評価している政治家もおり、また叩き上げでも武部勉氏みたいにあまり頼りにならないのもおり、世襲だからといって政治家になるなとは言い切るべきではないと思います。
・「世襲禁止、マニフェストにしたい」 民主・鳩山氏(asahi.com)
そういう意味で、世襲の完全禁止ではなく上記のリンクに貼ったニュースに書かれているような、民主党の鳩山幹事長が提唱しているような政治家の子弟に対して出馬への年数制限や同一選挙区の禁止などを盛り込むなど、一定の出馬制限をかけることが現状で最も理想的ではないかと考えております。
あくまで選挙というのは、その時々で最も民意を反映し、かつ能力の優れた人間を議会へ送ることに意義があります。また一人の人間が政治上の問題すべてに対応できるわけなどありえなく、農業漁業ならその方面、内政外交ならその方面の出身や専門家が集まり、それぞれの立場からそれぞれの意見を議論することこそが政治です。それが世襲出身で占められるような、純度の高過ぎる議場で果たして対応できるのかということにもなり、言ってしまえば私は雑多な種類、出身の人間が集まって議論するカオスな議会こそが、議場の形としては一番望ましいのではないかと考えています。そういう意味で、世襲出身の議員が三人にひとりとなっている現状はどうにかすべきでしょうという結論に至るわけです。
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