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2009年11月17日火曜日

何故フリーターやニート問題は顕在化したのか

 以前にある社会学者から、こんな話を聞きました。
 日本で失業率が最も高い都道府県は以前からずっと沖縄県なのですが、沖縄の住民は故郷に雇用がないと分かっていながらも、進学や一時出稼ぎなどで本州に一度出たあとに出戻ってくる人間が非常に多いそうです。言うまでもなく職がなければ生活を維持する事などできず、それにもかかわらず沖縄人はどうして沖縄に戻ってくるのかということをその社会学者は疑問に思い、ある年に詳しく調査してみたそうです。

 その結果、確かに表面上のデータでは沖縄は高い失業率の地域ではあるものの、沖縄の無職者の大半は親族や友人が経営する店舗の仕事や、農地を持つ者の農作業を手伝うなどして収入を得ていることが多く、このような地域での結びつきが失業による生活の徹底的な破綻を防いでおり、沖縄人の出戻り現象の一因となっているのではと分析していました。

 この話を聞いた当初はそれほど意識はしなかったのですが、最近不況になって周りの人間の話を聞くたびにこうした地域や親族の扶助がある者とない者とで、失業後の生活に大きく差がついてくるのではないかと
この話を思い出す回数が増えてきました。

 私の周囲でも中学や高校を不登校になっていったという人の話を噂で聞いたりするのですが、そういった者の内、家族の誰かが自営業者の者などはその家族の会社や店舗で正社員となって働くことで社会復帰しているケースが多いのに対し、そのような家庭ではない、家族全員が被雇用者である家庭の者はそのまま引きこもりになってしまっているケースが圧倒的に多いように感じます。もちろんそれぞれの個人的資質も大きく影響しているとも考えられますが、普通に考えるなら同じ社会復帰をするにしろ、なんの縁も伝手もない会社や店舗からスタートするよりもまだ親族や知人がいるところの方が定着しやすいそうに思えます。

 ここで今日の結論を述べますが、今日もなお大きな問題として残るフリーターやニート問題ですが、何故これらの若年失業者が現代において大量に発生したのかというと、現在の日本の就業形態がかつてないほど被雇用者で占められるようになった、言い換えるなら自営業主、家族従業者数が過去と比べて大きく減少したからではないかと私は考えております。

 よく最近の若者は就職しても定着せず、すぐに会社を辞めてしまうという話を聞きます。こうした若者の行動に対して上の世代からは最近の若者はわがままだとよく言われてしまうのですが、確かにそう言われても仕方がないという若者もいる一方で、想像だにできないようなブラック企業の話を聞いたりすると若者がわがままになっただけという理由では収まりがつかないのではないかと、同じ若者に属すゆえに私は考えていました。また同時に、現在の中高年世代が若者だった頃、彼らは今とは違ってみんな会社に定着していたのかという疑問がかねてよりありました。

 そう思うのも、当時の話を聞いてたりするとフォークソングやパンクロックなど、なんていうか上に反抗してなんぼの文化ばかりが目に付き、こんな文化を愛好していた人たちがそうも従順に従っていたのか疑わしかったからです。もちろん今と違って年功序列も終身雇用も確保されていたのだから明らかに会社の居心地は今よりよかったはずですが、それでも多少はいたであろう会社を辞めたりした人間、入らなかった人間がどうして今みたいなフリーターやニートにならなかったのか、この点には何か理由があるだろうと前から考えていました。

 そこで最初の沖縄の話です。これは詳しいデータの検証がなくあくまで私の仮説ではありますが、現代で問題となっているフリーターやニート問題が何故過去にここまで顕在化しかったのかというと、当時の失業した若者は比較的加入しやすく定着しやすい家族や友人の企業や店舗に吸収(雇用)され、社会復帰を果たしていたからではないかとこの前思いつきました。実際に過去のデータを調べてみると1955年には2312万人だった自営業主、家族従業者数は年々減少してゆき、2002年になると975万人にまでなって今もこの傾向は続いております(厚生労働省データより)。

 家族が経営する企業であればたとえその人間の素行や経歴に軽い問題があっても面接なしで雇用してくれますが、一般企業ではそれこそ学校の中退履歴などそれ一つの経歴が致命的となって雇用を阻んでしまうことすらあります。昔であれば一般企業に就職できない者でも実家が自営業であればそこが雇用のセーフティネットとなっていたわけでありますが、就業者の大半が被雇用者となってしまった今では、一般企業に入れなければそのままどこにも働けないという状況がずっと続いてしまい、それが現代のフリーターやニート問題を顕在化させることとなった原因ではないかというのが、私の意見です。

 もし仮にこの仮説が正しいのであれば、恐らく自営や小資本の中小企業を減らして大企業を増やせば増やすほど、その社会では職にあぶれた失業者が増えていくのではないかという風にもつながっていきます。もう少し煮詰めて調査をしてみたいものですが、その前にまず風邪治さないとなぁ。

  参考サイト
厚生労働省平成15年度調査

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