ページ

2009年11月26日木曜日

北京留学記~その二三、ドゥーフェイ③

 ようやくこのドゥーフェイに関する記事も今日が最後です。下手すりゃ彼との交流だけで一本小説が書ける分量だなぁ。
 さて先の二回では私の留学中のルームメイトであったドゥーフェイから聞いた東欧、ルーマニアの情報を紹介しましたが、本日は彼と私の交流について書いていこうと思います。本来ならこっちから書くべきなのですが、あまりにも分量が多いことから今まで投げていました。

 まずドゥーフェイを語る上で外せないのが、彼の趣味のサッカー観戦についてです。他のヨーロッパ人留学生同様にドゥーフェイもサッカーの愛好家で、Wカップ期間中に至っては文字通り授業をサボって朝から晩まで観戦を続けていました。子供の頃はマラドーナのようになりたかったというだけあって割りと個人プレーがうまい選手が好きでしたが、何故だか当時にウクライナの至宝とまで呼ばれたシェフチェンコは嫌ってました。

 中国では割と普通のチャンネルでもイギリスのプレミアリーグの試合などが放映される事もあるので私も彼と一緒によく観ていたのですが、実はサッカー以上に彼とは相撲中継を観る回数の方が多かったりしました。というのも私があまりにも暇なもんだからNHKでずっと相撲を見ていたら彼も見始めるようになり、しまいには私がいない間に自分でチャンネル合わせて見るほどまでのめりこんでいました。そんな彼のお気に入りの力士は欧州出身だから琴欧州かと思いきや、私と一緒に土俵際の粘りが言いということで安馬こと現日馬富士でした。ちなみに朝青龍に対しては日本でのスキャンダルなぞ知らないくせに嫌っており、恐らく強すぎるというのが原因でしょうが万国共通で朝青龍は嫌われるんだなと思いました。

 話は変わって外国から日本がどのように見られているのか、そういったものが少し伺われるエピソードをいくつか紹介します。

 ある日ドゥーフェイに広島出身の留学生仲間が私達の部屋に来て彼にも紹介をしたのですが、その留学生仲間が帰った後に広島出身だと教えたところ、「俺達、放射能にやられないのか?」とドゥーフェイは聞いてきました。さすがに原爆の落ちた地だから広島という地名くらいは知っているのではと思って教えたのですが、知っているどころかドゥーフェイはまだ広島は放射能の汚染が続いていて、草木も生えぬ荒地のような場所だと考えていたそうです。
 彼がこんな風に広島を見ていた理由として、かつての旧ソ連時代にウクライナで起こったチェルノブイリ原発事故が大きく影響していることは想像に難くありません。ルーマニアでも一部で被害が起きたそうで、放射能に対してやはり極度に恐怖感を持っており、やや過剰に広島と長崎を見ていたようです。

 この広島と長崎については過剰な誤解を持っていたドゥーフェイですが、それとはある意味逆できちんと認識していた日本の事情として、変な話ですが森喜朗元総理の「神の国発言」がありました。このときの騒動は日本以上に海外にて大きく取り上げられていたとは以前から聞いていましたが、それほど政治に対して強い興味を持っていないドゥーフェイですらあの発言の内容を把握していたことを考えると、どれだけアホな発言をしたのかますますもって知られます。ある学者も、このときの発言にめちゃくちゃ激怒していたし。

 このようにいろいろと会話していて面白かったドゥーフェイなのですが、性格は前にも書きましたが非常に温厚で親切でもあり、ルームメイトとしては非常に恵まれた相手でした。しかし唯一の欠点というか、私が彼に対してただ一つ困っていたこととして、彼の強烈な体臭がありました。
 中国では水が少ないこともあって都会の北京でも一週間に一回くらいしかシャワーを浴びないという人も皿なのですが、彼の場合はそんなのを通り越して三週間に一回、下手すりゃ一ヶ月に一回くらいしかシャワーを浴びないのでとにもかくにも臭いがきつかったです。

 私も入寮当初はそのあまりの臭さに同じ室内にいて何度か気絶しそうになったり、夜に眠ることが出来なかったくらいなのですが、大体一ヶ月もする頃にはすっかり慣れて気にしなくなりました。しかしそうやって慣れるのも一緒に暮らしている自分だけの話で、日本人留学生仲間を部屋に呼ぼうものなら誰もがその臭いに耐え切れずすぐに出て行くほどでした。
 そんなもんだからドゥーフェイが外出している時などは換気をするため窓とドアをよく開け放していましたが、寮で同じ階に住んでいた留学生仲間によると換気をしていると私達の部屋の臭いがその階の廊下中に蔓延していたらしく、エレベーターから出るなり私が換気をしているかどうかすぐに分かったほどだったそうです。

 それほど強烈な臭いに適応できた私でも、彼が自分の服を洗濯した日に限っては耐えることが出来ませんでした。普通の留学生は寮にあるランドリーなどで洗濯をするところ私はそれほど選択する回数も少ないので自分で洗剤を買ってきて室内の洗面所で洗っていたのですが、ドゥーフェイも私と同じく自分で洗っていました。しかしその洗い方はというと、はっきり言ってちゃんと洗っているのかと怒鳴りたくなるような荒い方でした。

 ただでさえ臭いが強烈なドゥーフェイなのに、それこそ一週間以上ずっとはき続けている下着や衣服を中途半端に水を張った洗面所につけておくだけつけて室内に部屋干しするもんだから、彼が洗濯した日はとんでもない臭いに室内が包まれていました。もうこの日に限っては私も本当に頭がおかしくなるんじゃないかと思うくらいの悪臭で、夜に寝ようにもあまりの臭い刺激に悶えつつ眠ることが出来ずにいました。この際だから自分に洗わせろと言いたいくらいで、衣類を洗面所につけている間に内緒で洗剤を入れておいたことすらありました。

 多分こういうエピソードとかをふんだんに言っておけば、面接とかも余裕で受かっていただろうなぁ。

0 件のコメント: