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2009年11月4日水曜日

現在の国際状況について

 久々に自分の専門の国際政治の話でも書こうと思います。本題を書く前にまず、私が2004年ごろに抱いていた国際状況を簡単に説明しましょう。

 2004年当時の国際情勢において何が一番重要な政治軸であったかといえば、それはやはりイラク戦争とその後のアメリカの孤立主義です。アフガニスタンについてはまだ苦しい言い訳が成り立ったもののイラク戦争においてアメリカはフランス、ドイツ、ロシアを初めとしたイギリスを除く各ヨーロッパ諸国より激しく批判されただけでなく、中東世界からも断絶に近い形で関係を一挙に冷やしてしまいました。
 そんなアメリカについた国はというとどれも経済面でもアメリカに追従して新自由主義を取り入れた国ばかりで、筆頭たるは同じくアングロサクソンのイギリス、そして地続きの南米北米諸国、最後にアジアからは日本や韓国といった以前からアメリカ依存の強かった国でした。

 私は当時、このように各国が持つ国際社会への立場や経済体制の違いから今後は本格的に親アメリカVS反アメリカという構図で、両者の対立がどんどんと大きくなっていくだろうと考えていました。先進国で言えばアメリカとイギリスのタッグに対し、フランス、ドイツが引っ張るEUに当時猛接近していたロシアというヨーロッパ諸国が挑むというような具合です。

 ただもちろんこの二派ですべて完結するわけでなくこのいずれにも属さぬ第三勢力も出てくるだろうと見ており、そんな第三勢力の代表には言うまでもなく米欧両者に距離を置きながら自らこそが世界の覇者だとして本当に信じて疑わない中国が来るであろうとして、三国志で言うなら呉のように状況次第でどっちつかずな勢力となっていくだろうと考えていました。それに対して我らが日本はどうするかといえば文字通り選択肢は三つで、このままアメリカに追従するか、ヨーロッパと組むことで彼らのアジアの橋頭堡として頑張るか、中国に従って一発逆転を図るかという風にシミュレーションしていました。

 そんな風に気の早い予想をしてすでに五年経ち、現在の状況をみるといくつか想定と違ってきた部分が見えてきました。まずその後の日本ですが、今の沖縄の基地問題を初めとして民主党政権に変わった事によってアメリカに対して少しだけ反抗を行うようにはなりましたが、基本的にはアメリカ追従路線を未だ継続しているといっていいでしょう。この点はまぁ予想通りだったのですが、この五年間における国際状況の最大の変化とくればやはりその当事者たるアメリカの大変貌でしょう。

 政治面ではオバマ大統領に代わったことによりこれまでの中東への強圧政策はまだ続いているもののややブレーキがかかり、なおかつ全く歩み寄りを見せなかった国際環境問題でもEU諸国に妥協する姿勢も見せ、そしてなにより非核化を強く訴える事で形だけとはいえ平和路線を内外にアピールするようになりました。
 また経済面でも、去年のリーマンショックの影響によって、もう大分戻っちゃったけど新自由主義が一時大きく後退することになりました。言っちゃなんだけど一番かわいそうなのはイギリスで、これまでアメリカにべったりとくっついてきたのにアメリカ自体が大きく転換し始めるようになり、掛けたはしごを外されるかのように政治面でも経済面でも不安定なままです。

 またイギリスに限らずアメリカと対立してるように見えたEUを初めとしたヨーロッパ諸国も、あれだけ新自由主義を批判していたくせに自分たちも結局は同じ穴のムジナであったためにリーマンショックの影響を強く受け、本当に皮肉な話ですが現在はアメリカに批判するだけの力すら無くなったように見えます。

 ただそうした経済面以上に私が注目しているのは、イラク戦争直後にはあれだけ協調路線を取っていたロシアが、どうもこのところまたヨーロッパと距離を置き始めたように見える点です。そもそも当時のプーチン大統領はドイツ駐在が長かったためにかねてよりヨーロッパ贔屓だという話を聞いていただけに理解できたのですが、プーチンに変わったメドベージェフ現大統領は手の平を返すほどではありませんが、どうもプーチンよりはヨーロッパに対して冷淡な気がします。さらにこれは今年の夏にちょこっと聞いた話ですが、最初はそれこそ両刀、じゃなくて両頭体制といわれたプーチンとメドベージェフですが、なにやら少しずつ両者の間に隙間風が吹き始めているという話を耳にしました。だとするとメドベージェフ現大統領はヨーロッパを嫌っているのではないかという話になってきますが。

 そうした欧米対立の変化に対してアジアでは、日本が首相がころころ変わる政治的混乱によって国際社会で権威を落としている中、依然と中国が強い存在感を保っております。ただ中国は北京五輪を終えて一挙に先進国入りかと思いきや終わってみると案外静かなもので、経済は未だ好調を保っているものの五輪直前ほどの圧倒的な存在感は感じられないように思えます。実態的にはGDPで日本を抜き、また外貨準備高で世界一位になるなど成長を止めてはいないのですが、前ほどの勢いがさすがに無いという事でなんとなく見劣りしてしまう感じです。

 最後に私が今後の注目株として目している国はどこかというと、2016年にオリンピック開催を決めたブラジルです。元々BRICS諸国の一つでその高成長は注目されていたものの、リーマンショックで一旦ブレーキがかかってやはりダメだったかと思われたブラジルですが、かえってアメリカのプレゼンスが弱まり今後は南米の雄として存在感が強くなっていくのではないかと考えております。あくまで、私の予想ですが。

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