2013年12月1日日曜日

「予定通り」にアイデンティティを持つ日本人

 先日、たまたまテレビを見ていたらある芸能人(名前は失念)が番組内で興味深い一言を述べていました。その一言というのも下記の内容です。

「日本人というのは欧米人と比べて自我が弱い一方、予定というものに物凄いアイデンティティを持つ傾向がある。たとえば予定通りに一日が終われば達成感を感じ、逆に何か予想外の事態が起きてしまうともうそれで全部駄目だったみたいに思ってしまう」

 他の人はどうかわかりませんが少なくとも私にとっては「まさにその通り!」と言いたくなるほど得心する内容で、実際にその場で手を打つくらい感心しました。私はかなり以前にも個人的にもいい出来だと考えている「日本人の欠点」という記事中で日本では駅員への暴力が異常に多いことを取り上げましたが、これこそ予定通りに物事を運べないと何故だか不安や怒り、イラつきを覚える日本人の特性を如実に表している一例と言えるでしょう。

 と、ここまででも十分に面白い内容か問われながら思うのですが、今日はこの指摘をもう少し発展させて日本人の人生観についても触れようと思います。まどろっこしい言い方はよして結論を書きますが、日本人は予定通りに物事を運ぶことが成功、運べなければたとえ結果がオーライでも失敗と考える傾向があり、それは面倒くさいことに人生というかライフコースにおいても同じ価値観を持っているのではないかとみています。
 具体的な例を書くと、いい大学を卒業し、大企業に新卒で就職し、結婚適齢期に結婚し、一人か二人子供を産んで、管理職になった上で定年まで勤め上げ、年金生活をしながら最低80歳まで生きる。これらの条件をすべて達成して初めて「成功」した人生となり、逆に一つでも欠けたら「失敗」した人生になると本気で信じ込んでいる気がします。それにしても、「最低80歳」というラインをここで出してくる自分のセンスに呆れる。

 このように考えるきっかけとしては最初の予定達成に対する執着とともに、以前に聞いた話で外国人から見て日本人の行動で奇妙だと思える点として、血液型占いを頑なに信じているということとやけに結婚適齢期にこだわるというのを耳にしたことがあったからです。実際に自分から見ても日本人は伴侶に求める条件がやけに高い割には二十代、広げても三十代前半までに結婚しないと何か問題がある、男性の場合だと「あいつはホモじゃないか」と冗談っぽくではありますが平気で口にする行動が多々見られ、「お前らは一体何と戦っているんだ?」と見ていて奇妙に思うくらい気にします。
 この結婚適齢期と同様、新卒での就職にも社会全体で不思議過ぎるくらいこだわりがあり、比喩を用いて表現すると「ライフコースにおいて脱線を許さない」とでもいうべき奇妙な価値観に満ちている気がします。

 私自身はもう既に脱線しっぱなしのオフロード(4WD)な人生を送っているので逆にこういうライフコースを忠実になぞろうとする人々に対し、はっきり言って軽蔑に似た感情を持つと同時に、どうして自分の可能性を狭めようとしているのか、そしてどうして脱線してまでも求めるものを得ようとする人々を馬鹿にするんだという八つ当たりにも似た腹立ちを覚えます。もちろんライフコースをなぞるために必死で受験勉強して、嫌いな上司とも付き合い続けるなど努力している人は努力していると思いますが、それにしても社会全体で脅迫にも近いこういう感覚もたれると自分なんかは単純に動きづらくて不便なだけです。

 そうした個人的な感情は置いといて話を戻しますが、とにもかくにも日本人は「予定通り」に物事を運ばないと絶対的に駄目という特性は確実に存在すると思います。そしてそうした意識は期日通りにきっちり物事を運ぶといういい面に作用する点もありますが、その一方で想定外の事態に異常に弱い、異常事態に対して無力すぎるという欠点も生んでいるかと私は考えています。

 それが如実に表れたのはほかでもなく東日本大震災の時で、各自治体や自衛隊がいろんな規則や法律に縛られてちょっと機転を利かせればどうとでもなる問題への対処がずるずると遅れた一方、駆けつけてくれた米軍はそういうものを一切無視してぱっぱと被災者のためにストレートな救援活動を展開していったと聞きます。これも具体的な例を挙げるとヘリコプターでの救援物資の輸送で、日本は空中から直接下ろすことが許されずなかなか物資を孤立した集落に渡せなかったのを尻目に、米軍はとっとと物資を空中から降ろして現地の住人から感謝されたそうです。
 また同じ区東日本大震災の時の話で、米軍基地で働いている方から直接聞いたのですが米軍人は普段はいい加減でちゃらんぽらんな様子であるものの、あの震災の時はそれこそ人が違ったようにみんなが強い目的と意思を持ってキビキビと動いていたそうです。この辺り、国民性が強く表れている気がします。

 確か今年の前半、夏頃に書いた記事で二次大戦の日本軍の敗戦理由としてある従軍体験者が、「一番起こってほしくない事態は起こらない前提で計画を作る」という内容を挙げたことを記事に書きました。実際に旧日本軍は仮に米軍がある基地を優先して攻撃してきたら非常にまずい事態になるが、それは多分起こらないだろうという事にして計画を作り、案の定米軍はしっかり研究してきてその基地をきちんと狙って攻撃してくるという事態が本当によくありました。私はこの手のことを「日本人の不測事態に対する楽観性」って呼んでますが、不都合な事態から目をそむけてしまう国民病だと言っていいくらいだとも考えており、こうした特性も「予定通り」に異常な執着を持つことに起因するのではないかとこの前閃きました。

 ここまで読んでもらえばわかると思いますが、「予定通り」にアイデンティティを持つことに対して私は否定的です。さっきも言った通りにこのアイデンティティにはいい面も悪い面もありますが、現代においてはいい面が薄れ悪い面が濃くなっている傾向があり、全部捨てろとは言いませんが多少は偏りをなくしバランスを取るべきだと言いたいです。
 一体何故現代においてこのアイデンティティが不利なのかというと、単純に世の中の流れが異常に早くなり、予定を立てても前提となる条件や舞台がひっくり変わりやすい、言うなれば想定外の事態が雨後の筍の如くどんどん出てくるからです。

 また文字量が多くなりますがいくつか例を出すと、ほんの数年で世界中の大多数の人が携帯電話をノキア製からi-Phoneに持ち替え、プラズマテレビがなくなり、ハイブリッド車が当たり前に走り、民主党が政権奪取したかと思えば自民党が再び与党になったりと、数年越しの計画を作ること自体が馬鹿馬鹿しくなるくらい世の中の変動が激しいです。

 言ってしまえば現代の世の中は予定通りしっかりレールに乗せることよりも、予想しない突発的な事態が起きた時にどれだけ素早くその場で対応できるか、これがスキルとして求められていると思います。古い言い方ですが「有り得ないことは有り得ない」ということを肝に銘じ、予定に対してもうすこしざっくばらんであいまいな態度を持つことも今の日本人には必要ということが私のいいたい内容であります。

 最後に、書くか書くまいか一瞬悩んで即断で書くことにしたことを述べると、日本人がそこに存在していると思っているレールは既に存在しないと断言できます。その先にレールのない人生を車輪で走る気なのか、タイヤくらい履いたらどうだとちょこっと思います。

4 件のコメント:

  1. 投稿2000件達成おめでとうございますm(_ _)m
    これだけの文章をほぼ毎日の投稿ですからね。
    ただただ凄いなと・・・毎回楽しみに拝読させて
    いただいております。
    寒い季節になってまいりました、
    くれぐれもお体に気をつけくださいませ。
    では、今後ともよろしくお付き合いのほど・・・

    PS,そろそろ小説の方も始められるのでしょうか?
    (^^)

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    1.  実はもともと小説家志望だったこともありますが、最近に一つ書いてみたい歴史テーマがあって、もったいぶらずに明かすと幕末から日露戦争までを伊藤博文と山縣有朋の二者の視点で書いてみたいんですよね。言うなれば「翔ぶが如く」の長州版ですが、この二人はもっと評価されるべきだと思っているので自分で書いてみたいです。
       しかし、ちょっと立て込んでいるのもあって取材もままならない状況です。来年あたりにちまちま準備だけでも初めて見ようかなと計画中です。

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  2. 予定通りに、キミは来年再び上海に上陸します。
    予定通りに、安倍総理は2014年に退任します。
    予定通りに、。。。。

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    1.  安倍は今度ばっかしは倒れないんじゃないかな。中国から煙たいだろうけど日本としてはほかの人より随分マシだし。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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