既にあっちこっちでニュースになっているのでニュース記事リンクを貼りませんが、本日シャープので開かれた取締役会では、台湾の鴻海精密工業の出資を引き受ける方針が決定されたとのことです。かねてから官制ファンドこと産業革新機構と鴻海のどちらの出資をシャープは引き受けるのか議論されており、先週まではほぼ産業革新機構側の案でほぼ決定と言われながらも鴻海がこの度出資額を6000億円強にまで引き上げたことから、見事に逆転ホームランとばかりにこのディールを物にしました。この鴻海によるシャープの事実上の買収について私の意見を述べると、シャープにとっても日本にとっても一番望ましい形に落ち着いたんじゃないかと考えております。
私が何故このような意見を主張するのかというといくつか理由がありますが、一番大きなものとしては、取引として考えるのであれば高い値段を出した側が勝つべきだという商売原則上の正当性です。産業革新機構はうろ覚えだけどシャープの出資行に対して2000億円の債務放棄を行わせた上で1000億円程度の追加出資で合計3000億円のバリューを提示したと報じられているのに対し、鴻海が今回出してきたのは6000億円強と実質二倍です。もちろん金額が大きくとも再建案に中身が無ければ意味はないですが、それにしたってお金はあるだけある方がいいに決まっています。なお私の友人は以前、「お金イコール幸せじゃないけど、幸せになるためには最低限お金が必要だよ」と言ってました。
そしてシャープに出資する銀行団にとっても、返済期限の引き伸ばしなどの要求はあるかもしれませんが産業革新機構と比べると債務法規することが無くなり、言うなれば銀行側は2000億円の融資残高を捨てずに済みます。銀行団からすればこの上なくありがたいでしょうし、日本全体でも2000億円のキャッシュフローを潰さずに済むのだから、平等性という点から考えると私は前から鴻海案の方が理に適っているように考えていました。
次に再建案の中身です。鴻海案ではあくまで自力再生を図るとのことで収益の見込みがない太陽電池部門のみを切り離した上で、シャープブランドを存続したまま再建に取り組むとしています。目下の大赤字部門である液晶部門についてはシャープの顔であることから切り離しはしないとのことですが、鴻海は液晶パネルを使用する携帯電話やパソコンなど電化製品を作るメーカーでもあるので垂直統合の効果は確かに得られるしその点ではいくらか期待はできます。
逆に産業革新機構案は液晶部門を切り離して国内競合のジャパンディスプレイに統合させるという計画でした。しかし腑に落ちないというか非常に癇に障った点なのですが、仮にジャパンディスプレイと統合させるとなると同社の液晶パネルの国内シェアは確実に八割を超すと見られ、その場合に独禁法は適用されないのでしょうか。国策だからとかそういうもんではなく完全に市場を独占させていいものか、また日本国内はよくても海外市場で独禁法が適用され合併が認められない可能性もあり、合併手続きが長引く恐れもあることから私はこの案に対して非常に疑問を感じていました。それ以上に一切この手の話をしないマスコミには驚きを通り越して呆れていましたが。
また液晶部門の切り離し自体は別にいいと思うし再建案としてはよくわかる内容なのですが、昨年にシャープの銀行団が出した再建案は液晶どころか不採算の太陽電池部門も切り離さず、むしろその太陽電池部門を強化して収益を再建するという、どこの馬鹿が考えたクソ案だと言いたくなるようなひどい内容が出されていました。産業革新機構入りとなるとまた銀行団が口を出す恐れ、もといセンスのない経営者がでしゃばる可能性も感じられたために、それだったらグローバル市場で戦ってる外資経営者の方が絶対にマシだろうという確信がありました。
ここで一番最初の平等性についての話に戻りますが、鴻海の買収話が出るやネット、っていうか普通にマスコミも、「海外に技術流出する恐れが……」などと否定的に書き立てていました。断言してもいいですがこのようなことを主張してた連中は本気で技術流出を懸念しているというより、ただ単に外国企業によって日系企業が買収されることにアレルギーを持っているだけでしょう。
そもそも、今のシャープに流出するような技術があるのでしょうか。イグゾーだがイクゾー(ナイトハルト殿下)だか知りませんが、店頭に並んでいるテレビの液晶を見て一目でシャープの液晶だと気づくような人はいるのでしょうか。なんだかんだ言いつつLGとかスカイワース、TCLなども技術上げてきているし、パッと見だと区別つかないんだからシャープの品とか技術が特別だと言われても疑問符が付きます。おまけに、ジャパンディスプレイは来年あたりからとんでもない液晶パネル作ると言っているし。
これはこの件に限るわけじゃないですが、日本はもっと市場を外国に開放するべきだと思います。外資というと毎回悪者のようにされて批判されますが、その外資によって、むしろ外資でなければ救えない会社や従業員だっているのです。りそな銀然り。
自分なんか中国にいるから特に強く感じますが、やっぱり会社にも多様性があった方がよく、日本式経営ではなく米国式、中国式、インド式経営の方が肌に合う労働者もおれば相性のいい業種だってあるだろうし、外からの新鮮な風を受け入れる形で今回の鴻海の買収劇もはっきりとした結果が出るまでゆっくり見守ってほしいというのが偽らざる私の信条です。
おまけ
今日のニュースにあった、ガチャピンの光学迷彩には本気で爆笑しました。
2 件のコメント:
鴻海がシャープを買収した後、中国の某企業は鴻海を買収する予定です。中国企業が間接的にシャープを買収することは本当の背景と予想されます。
それほんまかいな。でもこの指摘で、閃いた事実があったので助かったわ。
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