昨夜はこのガチャピンの光学迷彩が気になり過ぎたため、昨夜書いた記事で一番大事な内容を書きそびれてしまいました。それにしてもここ一ヶ月くらい、こんなに大笑いすることなかったなぁ。あとこのお天気お姉さんの対応の仕方は本当に素晴らしい……。
昨夜は「鴻海によるシャープの買収について」という見出しで鴻海精密工業によるシャープの買収についてあれこれ背景なり展望なりを書きました。書くべき情報はあらかた書きましたが一つ書き忘れたことがあり、これはほかの日系メディアが一社たりとも指摘しないというか触れもしないのでそっちも疑問なのですが、そもそも何故鴻海はこれほどまでにシャープを買収しようとするのか、この点がよく理解できず友人と一緒に頭を抱えました。
鴻海は数年前の時点でシャープの堺工場に出資していますが、当初はこの際にシャープ本体へも出資、あわよくば買収しようとも動いておりました。当時のシャープであれば確かにまだ液晶の生産技術は他社よりリードしていたし何よりも堺工場はできたてほやほやで設備などもよく、出資するだけの価値は私から見てもありましたが、現在においては状況は変わっており少なくとも数千億円を支払ってまで救う価値があるかと言えば採算的にやや疑問を感じる経営状態です。
昨日の記事にも書いた通り、確かに鴻海はI-Phoneを筆頭に液晶を用いる製品を多数生産していることから今回の買収は垂直統合となり、原価の圧縮だけでなく生産調整も行いやすくなるなどメリットが全くないわけではありません。しかし6000億円強ともいえる金額を支払うほどの価値があるかとなるとやはり疑問で、また買収後にシャープの経営が果たして再建できるのか、下手したら余計に赤字を生み続ける可能性もあるのではと考えるとややリスキーです。にもかかわらず何故ここまで買収にこだわるのか。2000億円くらいだったらまだ理解できたのですが。
この点が本当にわからなくて昨夜も友人と一体何なんだろうかなどと議論しつつも、結局答えは出てきませんでした。この点だけは謎のまま、なんて昨日の記事に付け加える予定だったのですが今日になってちょっと事態が変わったというか、全く根拠もないただの私の直感が告げる一つの仮説でしかないものの、一つの考え方を閃いたのでそれをここに記します。結論から述べると、真の狙いは液晶ではなく太陽電池だったのかもといったところです。
鴻海のCEOであるテリー・ゴウ(郭台铭)はかねてから記者に対して、「シャープの赤字は太陽電池部門が主犯で、この不採算部門を切り離せば再建は可能だ。シャープブランドもシャープの法人格も維持した上で再建してみせる」と話していました。この主張自体は至極もっともな意見で太陽電池業界は世界規模で深刻な不況が4年くらい前から続いており、生産量で世界最大手だった中国のサンテックパワー(尚德太陽能電力有限公司)も、一時期はニューヨーク市場にも上場してましたが不況の煽りをモロに受けて破綻へ至りました。
なのでテリー・ゴウの意見に私は納得、っていうか何故シャープはもっと早く太陽電池部門をリストラしなかったのかとも思っており、くそくだらねぇことばっかしか言わない日本の銀行関係者とかアナリストなんかよりずっとこの人の方がまともなこと言ってるし信頼できると思って今回の買収を歓迎する気持ちで見てたわけです。
しかし、今日昼飯食って歩きながらふと気が付いたこととして、シャープの太陽電池部門が切り離されるとして一体どこが買うのだろうかと考えたところ、まず日系他社は太陽電池市場が不況であることから絶対に買わないだろうと踏んで、となるとやはり中国企業……もしかして中国ファンドか……といったところまで考えが行ったところで、「もしかしてテリー・ゴウは中国政府の指示を受け、シャープの太陽電池部門を中国資本に引き渡す密命でも帯びているのでは?」という考えに至りました。
私はかねてからシャープについて、「言われている程この会社に技術はない」と言い続けました。今でもこの考えに変わりはないのですが、こういう時に言う「技術」というのは液晶技術を指しており、太陽電池となると話は別です。シャープは太陽電池の変換効率(光を当ててどれだけ電力に変えられるか)で一時期はずっと世界最高記録を出し続けており(この前どっかに抜かれたというニュースは見たが)、太陽電池の研究技術であれば世界最高水準にあると私は見ております。ただ先ほども言った通りに太陽電池は市場が不況であることからお金にはならずシャープに限らずどこも太陽電池で赤字を作ってる状態なのですが、中国であればたとえ事業が赤字であってもシャープの研究技術を欲しがる可能性が高いと思っています。
というのも中国はエネルギーや半導体などの分野で世界シェアを握り、かつてのレアアースのように出荷量をコントロールすることで外交のカードにしようとするところが見て取れ、特に半導体関連は中国政府指導者に理系が多いこともあって並々ならぬ情熱を燃やしていて実際この分野への投資は赤字だろうと何だろうとお構いなしとばかりにつぎ込んでいます。太陽電池も半導体の一種であることもさることながら不況の現状でも政府が中国国内の太陽電池メーカーを熱烈に支援し続けており、世界シェアを必死で高めようと補助金をつぎ込んでいます。
そんな中国からしたら、今すぐお金にならないとしてもシャープの太陽電池の研究技術は高い金払ってでも欲しいと思うのでは。あくまで仮説ですがこんな考え方が今日思い浮かんできたわけです。そもそも鴻海のテリー・ゴウ自体がいわゆる政商で中国政府とのパイプも強いだけに、好き勝手にドラマチックな陰謀論を組み立てるとしたら内心有り得なくもないかなぁと追加でさらに思うわけです。特に根拠も何もないですが少なくとも私にとってすれば、この理由であれば鴻海がシャープ買収にこだわったのも少しは理解できるかなと思えます。
おまけ
この記事書く前に友人へこの話題を振った際、こんな会話がありました。
「そもそも鴻海のトップは政商で中国政府にも近い。えっと名前は……レリー・ゴウだっけ?」
「似てるけどちょっと違う!」
4 件のコメント:
新聞だかなんかの報道では、OEMからの脱出を図っているという指摘がありますね。
しかし、この問題自称ネトウヨの私には、難しい問題です。確かに感情的反発はある、技術流出の懸念もある(すでに指摘されていましたが、そこまで技術があるのかという話もありますが。実際、以前提携の話が合った時にシャープの関係者が鴻海の工場を見学したら、もうすでに追い抜かれているといったという話が、あったような見たような・・・)。それと同時に、経済原則に反するのももっともですし。国が助けていいのか、何より、最近日本の経営陣がいざとなったら国が・・・という考えをしている気すらしてきます。
シャープの今の経営陣には少々同情しますが、以前の経営者はいいのかと思ったり。ショック療法が必要だと思ったり。日本人って(と日本人全体で持ってくるのはどうかという意見もあるでしょうが)経営が下手だなと思ったり(ここは中国のほうが中長期を見ている気がします。敵いません。もちろん全員ではないでしょうけどね)
ええ、いろいろ考えがあってまとまりませんね。
ただ、鴻海になったら(いつまでかしらないけど、)経営陣残すという話みたいですね。保身もはかれるという甘い誘いがあると、ふつうの経営陣は積極的になるでしょうし。こういう買収の仕方もあるのかとある意味感心しました。
・・・・ちなみに、何気に今回のおまけとか、本題に全く関係なく(結構無理やり)入れてくる小ネタが好きです。お父さまには大変申し訳ないですが、左遷された父が…とかこの枕詞だけでつい笑ってしまいます。
いつもコメントありがとうございます。
おっしゃる通りにこの問題は考慮すべき材料がたくさんあり、どの材料というか視点で話すかによって立場が大きく変わる問題です。私の場合は経済原則に忠実であるべきという立場が強いためこのような意見となり、仮にシャープが実際に大した技術を保有していたとしても、外資だからと言って差別するべきではないと同じ立場を取ったと思います。もっとも、個人的に気に入っている会社である富士フイルムが外資に買収されそうになったら全力で抵抗するかもと思うあたり、我ながらミーハーな気がします。
少し触れられているシャープの現経営陣についてですが、私も同じ意見というか同情する立場で、高橋社長をはじめとした人たちは去る必要はないと考えています。再建自体はならなかったもののよく頑張ってた方だと思うし、なにより前経営陣が残した負の遺産があまりにも大きすぎたでしょう。
おまけについては友人らからも高く評価されており、親父に対する枕詞については会った人全員から、「こんな風に書かれてて可哀相だと思いながらも面白い」と言われているため続けています。書かれている本人は、「ちょっと胸が痛む……」と言ってましたが。
あまり詳細は書けませんが、
シャープ内で現場レベル(ただし社員組)では案外と、
好意的に受け入れられているようです。
今の閉塞的な状況が今後もずっと続くくらいなら、
少なくとも金銭的問題も当面は回避できて、
来月倒産とか工場閉鎖といったデマ情報が出なくなる方が、
ぜんぜんイイと(笑)
ただ中国系というか中国人(台湾人)の気質に対して、
疑心暗鬼な部分の方がどちらかというと大きいようですね。
たまたま金持ってたから買うには買ったけど、
持ち金がなくなったので、
やっぱ転売みたいな行き当たりばったりの買収だと、
困っちゃうなというカンジですかね。
その辺は花園さんの見解を伺いたいところです。
あと鴻海は優秀な技術者をギャンブルで、
ヘッドハンティングするより、
まとめ買いして「ふるいにかけて」本当に使える人材を、
獲得した方が結果的には効率がイイと判断したのではないか?
という意見。
関西の企業ですから「目利きは利く」ハズとの読みではないかと。
もう一つはアフターサービス分野のノウハウと人材の、
お手軽入手もあるのではないかと。
今後、日本的なサービスができるかどうか?が今後の勝敗を、
決めていくことは明らかなので、そのへんの先手を打つ意味も、
あるのではなかろうか?という意見もあるようですね。
さて、どうなることでしょうかね?
私も今後注視していきたいと思います。
いつもながら面白いネタありがとうございます
(^^)
こちらこそいつもコメントありがとうございます。
鴻海ですが中国人が言う印象だと、「あそこはきつい会社」とのことで、もしかしたら「ふるいにかける」っていうのはあるかもしれませんね。特に技術部門のスタッフばかりよく話題になりますが、実はシャープで本当に問題なのは事務部門のスタッフで、なんかどこの会社行っても、「購買が全く技術を知らない」、「無茶な要求を平気でする」という声が聞こえるだけに、事務スタッフは嵐を見ることになるかもと密かに見ています。どちらにしろ、日系企業が関わるよりはドラスティックに変わっていくでしょうし、いい方向に変わってくれればと願うだけですね。
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